___『ドリフターズ』より妖怪首を置いていけ__
‥‥それではスタートです
あと、前編後編に分けます
____熱い____
俺は熱さで暗く閉じていた瞼をゆっくりと開けた。周りは囂々とと燃え盛る炎。今いるところは炎で焼けていた。
「__うそだろ…」
俺は絶句した。覚えている限りでは自分がいるこの場所は静かで平和だったあの白い大きな屋敷。白い壁だったのもは赤い炎に焼かれ燃え盛っている。
「!!そうだっ!助けなきゃ!」
気が付くのが遅かった。ここは自分の部屋だ。急いで俺は部屋を出る。ここで呑気にしている場合ではない。俺はあの人を助けなきゃいけないんだ。廊下へ出て広間へ駆け下りていく。廊下に倒れている使用人たちは血だらけで動かない。
「無事でいてくれ…!」
俺は必死になって走る。炎をかいくぐり、広間へたどり着くとそこに白い服を着た女性が倒れていた。間違いない、あの人だ
「おいっ!しっかりしてくれ!!」
俺はその女性を抱き起し揺らす。女性は俺が来たことに気づいたのかゆっくりと意識を取り戻していく
「…よかった…無事だったのね…」
こっちがいいたいぐらいだ。よく見ると体に切り傷を負っているではないか。急いでここから脱出して山を下れば手当をできる場所にたどり着けるはずだ。
「もう大丈夫だ。俺が助けてやる…!」
俺は必死に女性に語る。だが、女性は弱弱しく首を横に振る
「…ごめんなさい…結局私は何もできなかったのね…」
何を言ってやがる。弱音なんかはいてんじゃねえよ。俺は答えようとした
「さすがだな。最後の最後まで偽善を演じるか。だが、それでいい」
俺はぞくりとした。恐る恐る後ろを振り向くと梟の男がいた。そいつは呆れながら拍手をしていた
「てめえ…なんでここにいる…!」
「すべては卿を完全なる『うつわ』にするため。その為なら何も惜しまない」
そいつの左手には禍々しいオーラを纏った両刃の刀が握られていた。今までに感じたことのないどす黒く邪悪な気配を感じた。俺はそいつの前に立ちはだかろうとした、だが足が震えて何もできない
「君には感謝するよ。『モノ』を壊すためには『こころ』を満たしてから『奪う』のが一番効率的なのだ。おかげで第一段階は完了するのだからね」
「あなたは…恐ろしい人ね…」
女性は梟の男を強く睨んだあと、俺を強く優しく抱きしめた
「…私は…最後まで貴方を傷つけてしまう…許してなんて言わないわ…でも、これだけは忘れないで…」
女性の顔には冷たいしずくが…涙が流れていた
「貴方が育んだ『こころ』は必ず貴方を助ける大切な『モノ』。だから…私を忘れても、それだけは忘れてないで」
俺は何も言えなかった。脳裏にその女性と一緒にごはんを食べ、山へ登り、海辺を歩き、自然と触れ合い、星を眺め、一緒に寝て、その女性から多くのことを学び、『こころ』を奏でてくれた思い出がよぎる。女性は俺からいなくなる。俺の本能がそう知らせる。
「や…やめろ…」
俺の恐怖に耐えてやっと出てきた声も届かず女性は俺から離れて梟の男に歩み寄る。
「…それから、貴方は多くの人に愛されるわ。そして大事な人を…守ってあげなさい」
女性は涙を流しながら俺の方へ振り向く
「だから今から起こることは、私の事は忘れて。」
「さて…これで卿は『うつわ』になれるのだ。卿の内なる『モノ』を引き出してやろう」
梟の男は刀を上へ掲げる。
__やめろ…やめてくれ…___
俺は恐怖に縛られ口から声も何も出てこようとしない。震えながら必死に出そうとした。忘れるもんか。忘れてたまるか。俺はいやなんだ。あんたがいなくなるなんて…!!
「卿から『自我』を貰い、『狂気』を送ろう」
梟の男は残酷に告げて刀を女性に向けて振り下ろした。その寸前、女性は俺に小さな声で告げた
「……愛してるわ、きょうすけ」
そして、その女性は
________
「やめろおおおおっ!!!」
俺はガバリと起き上がる。息を荒々しく呼吸をする。外は既に明るく眩しい。部屋には目覚まし時計が喧しくなり喚く。
「‥‥」
目覚まし時計を力任せにたたき黙らせる。暑い。気が付けば汗でびっしょりだ。呼吸も落ち着いてきたのでシャワーを浴びていこう。
「‥‥今日は準決勝だったな」
シャワーで汗を流しながらつぶやいた。そうだ、今日は準決勝だ。この試合に勝てば決勝戦。それが終われば優勝。そういえば、優勝者は願いが叶えることができるんだったよな…
「俺の『願い』は‥‥」
やめておこう。今つぶやいたって何にもならないしどうにもならない。体を吹き終えて飲むゼリーを一気飲みして朝食は完了。歯を磨き、髪を整え、服を着替えて支度はできた。俺は靴を履いて外へ出る。そうだ、出る前に一言言わなくっちゃ。くるりと体を何もいない部屋へと向ける
「…じゃあ行ってきます、母さん」
~*~
「亨介、なにやら元気がないではないか」
「はっ、誰のせいでこんなになってんだと思ってんだ。」
「フハハ!照れるでない!」
もうツッコミを入れるのはやめた。サザンは相変わらず理解をせずに高笑いをしたままだ。
「気づけば準決勝なんだよなぁ…」
「フハハハ!未だに帝王に挑む輩がおらんではないか!これは帝王の勝ち確だな!!」
「いや、誰のせいで挑まれてないと思ってんだよ!」
「…試合のせい?」
「やっぱりね!!」
ついついツッコンだが思った通りだった。
『さてさて!≪鳳凰星武祭≫準決勝第一試合の内容をご説明いたします!!星導館からは千利亨介選手と南星サザン選手です!!このペアはサザン選手が千利選手選手がやられない限り自分は戦わない宣言をし千利選手が単騎無双を奮ったダークホースのペア!!』
『さすがは序列一位の千利選手っすね。この試合も単騎無双をするのか注目っす』
「フハハハ!さすがは俺!!星導館の帝王の日は近いぞ!!」
「聞いてた?お前の解説一つもなかったぞ?」
『そして!千利選手の試合の相手といいますと!こちらは逆に単騎で押し進んだ強豪!!レヴォルフから『戦闘マシーン』と恐れられた鬼!!『鬼義弘』こと剛鬼義弘選手!!そしてその相方の寧々選手です!!』
ステージが一気に歓声を巻き上がり、入場ゲートから剛鬼義弘と寧々がステージへ歩み進んできた。
「うおおおおっ!!」
義弘はというと待ち遠しかったのか嬉しそうに大きく雄たけびを上げた。そうして亨介を不敵に笑いながら睨む。
「ずいぶんと待っていたぞ」
「待たされていませんぞよ」
亨介は軽く素早く返すも聞いてはくれなかった。義弘は待ちきれないのかうずうずいている。殺気がびりびりと伝わってくる。今にも襲い掛かってくるほどだ
「寧々!お前はどっか下がっちょけ!!」
「あ、あの!義弘様!その前に寧々にあれをしてほしいのです」
中学生かなにか?と尋ねたいくらい幼い容姿の寧々は顔を赤らめもじもじとしていた。情報によるとこれでも同い年らしい。義弘は首をかしげていた
「ああん?なんじゃい」
「義弘様は約束してくれましたよね?千利亨介と戦う前にあれをしてくれるって」
「あー…そうじゃったのう」
義弘は思い出したかのように、面倒くさそうに寧々を抱き寄せて
ズキュウウウン
キスをした。おれたちにはできないことを平然とやってのけた。シビレないしあこがれない。
「んっ…ぷあっ…んんっ!」
「しかも深いほうですか!?やめて!このままだと事案になっちゃう!!」
「ぷはあ…それでは義弘様、頑張ってくださいね!」
満足したのか寧々がにっこりとして離れていった。
「うっし、それじゃあいくど!!」
「いくど、じゃなくて今の空気やばいことになってんだけど!?バカなの、お前らバカなの!?」
観客からは笑い声だけではなく「ヒュー!!」とか「リア充爆発しろ!」だの「もっとウスイホンを!!」「幼な妻モノも悪くねえ!」ととんでもない声が飛び交う。実況と解説の人なんか恥ずかしさで顔真っ赤ですぞ
「夫婦の行事でなにか悪いのか?」
「うるせえよ!もうこうなったらやけくそだ!!」
亨介は翡翠色のデッキブラシを展開して構える。義弘はそれを見てニヤリとし、ゆっくりと腰に下げている刀を手に取る。相変わらず鞘と鍔を紐で縛って刀身を抜けないようにしている。
「さあ、兵同士この戦を楽しもうか!!」
『そ、それでは準決勝第一試合を始めます!!果たして勝つのは無理やり単騎無双の千利亨介選手か、それとも『戦闘マシーン』の剛鬼義弘選手か!!いよいよです!!』
『≪鳳凰星武祭≫準決勝第一試合、開始!!』
機械音の合図とともに一瞬で亨介のデッキブラシと義弘の一撃がぶつかり合った。
気付けば準決勝やん!?嗚呼、長かった鳳凰星武祭が終わっちゃう…