翡翠色のアスタリスク   作:サバ缶みそ味

27 / 30
終盤から長くなりますので前編後編にお分けいたします
お待ちの方、申し訳ございません


それではスタートです!


黒猫と手錠と時々蜥蜴 前編

「…本当にここ?」

 

 紗夜は目の前にあるビルを見て如何わしい表情を見せた

 

「まあ、俺が調べた限りじゃ一番怪しいのはここしかねえ。それでも可能性は高いと思うぜ?」

 

 英士郎はとぼけた様な表情で答えるが目は真剣だ。

 

「で、でも夜吹先輩は顔が広いのですね、助かりました」

「いやーそれほどでもーっ」

 

 綺凛に褒められて英士郎はまんざらでもない様子だった

 

「…つまり夜吹は普段からこのあたりで遊びまわっている」

「うっ…そ、それはその…なんといいますか‥」

 

 夜吹は気まずそうに苦笑いする。とはいえ顔の広さは本物であった。綾斗と亨介が絞り込んでくれた情報であったとしても正確なフローラの居場所がわかったとはいえない。紗夜も綺凛も歓楽街に来るのは初めてであるが昼間は店はほとんど閉まっている。賑わっているのは24時間営業の大型カジノぐらいだがそれでも人混みは少ない。

 綺凛と紗夜は情報を集めるのに苦戦していたが夜吹があっさりと店から情報を聞き出して今に至る。

 

「ここのビルは改装工事をやっていてな、最近客が大暴れをして中をめちゃくちゃにしたらしい。それ以降は工事が止まっているんだとさ」

「…止まっている?」

 

 紗夜が眉を顰めると英士郎はにやりと笑った。

 

「担当していた業者にトラブルがあったんだ。」

「じゃあ今は…空き家状態?」

 

「そゆこと。それじゃあさっそく中に入ろうぜ」

 

 夜吹は意気揚々と鼻歌を歌いながら携帯端末を取り出し、正面入り口横の端末に接続する。慣れた手つきでキーボードを操作するとぷしゅうと気の抜けた音と共に扉が開いた

 

「ほい、いっちょあがり!」

「…え?警備システムとかは大丈夫なの?」

 

 こともなげに言ってのける英士郎に紗夜は慌てて聞いた。いくら改装中のカジノでさえ警備システムはつけているはずである

 

「どうやら中が壊れたときに警備システムもおしゃかになったんだろう。今作動してるこれはやっすい簡易物だ。改装中ならこれで十分かなと思ったけどラッキーだったな」

 

「でも、それにしたって…」

「…いくらなんでも手際がよすぎ」

 

 二人の不審な眼差しを受けて英士郎は慌てる

 

「い、いや大したことじゃないし…ツールはネットで手に入れたものだし、何度か試したし…って細かい事は気にすんなって。さっさと探そうぜ!」

 

 英士郎はごまかすようにビルへ入り、二人もビルの中へと入っていった。中は思ったよりも広く、がらーんとしており殺風景であった。

 

「意外とあるな。見たところ地下一階、上5、6階はあるなこれは…」

 

 英士郎のいう通り中には上の階につながる階段がある。ホールの側面にはエレベーターもあるがさすがに使用する状況ではない

 

「…上か下か」

「そうですね、どちらにしてももし犯人がいるなら別行動は危険ですし。一緒に行動すべきですね」

「ぜひそうお願いしたいね。おれは荒事が苦手だし」

 

 綺凛の意見にうんうんと頷く英士郎に紗夜はじとーっと見る

 

「…男なら俺に任せろという場面」

「適材適所ってやつ。俺だって努力はしたんだぜ?」

 

 悪びれもせずに答えた英士郎に紗夜は首をかしげる

 

「努力?」

「おれは役に立てないけども、俺よりも役に立つ奴を呼べばいいわけだ。まあ来てくれるかどうかはあいつら次第だけど…ってなんじゃこりゃ!?」

 

 英士郎の声に目を向ければ柱の影でなにかが湧き出るように蠢いている。

 

「あれは…人、なのでしょうか」

 

 綺凛が千羽切の鯉口を切りながら、訝しげに呟いた

 

「…あのあたりから万応素が集まっている。たぶん、設置型の能力」

 

 それは綺凛の言った通り人の『形』をした凹凸の無い黒い物体。全身は人影を切り取ったように真っ黒で両手先端は鋭い角のように尖っている。

 

「どうやた当たりを引いたようだな」

 

 英士郎はいつの間にか壁際まで避難していた。本当に紗夜と綺凛に任せるつもりのようだ。影のようなものはゆゆらゆらと身じろぎをせずにじっとしていたが突然綺凛たちに襲い掛かってきた。

 が、綺凛は慌てることなく迫ってきた影を一つ、一太刀で切り伏せる。千羽切の一撃を受けた影はまるで風に飛ばされる砂のように散った。

 

「な、なーんだ大したことねえじゃん。このぐらいなら俺にも…」

 

 攻撃は単純で読みやすく倒しやすいと見た英士郎はそんなことを言ったが途中で固まった。柱の影から一つや二つだけじゃなく沢山の影が湧き出してきたのだ。

 

「これ…どれくらいやるんでしょうか」

 

 出てきた影はざっと50体ぐらいはいる。しかしまだ湧いて出てくるようだ。

 

「くっ…!」

 

 紗夜はハンドガン型の煌式武装を展開させ早打ちの要領で影を5.6体倒す

 

「こ、こりゃあ自律型の能力だな!いくらなんでもこいつら全員を同時に操るは無理だ!」

「…じゃあ単純な命令でしか聞かない?」

 

 ホールの中を逃げ惑う英士郎に紗夜は聞く。

 

「だろうな。自律型の能力ってのは単純な命令しか受けない。侵入者を排除とかだろうな」

「…じゃあ相手にする必要はない」

 

 いくらここで全部を倒そうとしても時間の無駄である。だが、無視をしようとしても邪魔になるのは間違いないだろう。

 

「…綺凛、悪いけど…」

 

 紗夜は綺凛と息を合わせて一気に突破口を作ろう。そう決めた時だった

 

「ちょっとまったー!」

 

 後ろから大きな元気いっぱいの声が聞こえた。振り向けば艤装を身に着けて腕を組んで仁王立ちをしている清霜がいた

 

「…清霜」

 

「紗夜先輩!ここは私達にお任せください!」

 

 清霜の後ろには凛とした表情の神通と不機嫌そうな顔をしているレスターがいた

 

「‥‥英士郎の呼んだ助っ人って」

 

「ったく!夜吹、なんで俺まで呼ぶんだよ!二人がいるならいいじゃねえか!」

「いやー助かったぜ!俺はあくまでお助けをお願いしただけなんだけどなー」

 

 にやにやしている英士郎にレスターはうんざりするように睨む

 

「てめえのお願いってのは人の弱みをちらつかせて交渉することか?そりゃ脅迫っつーんだよ!」

「まあまあ落ち着いてください、レスターさん。まずはフローラちゃんを助けてから文句を言うことにしましょう」

 

 神通に催促され仕方ないとため息をつくレスター。うっぷんをぶつけるかのように果敢に影の方へ駆けて斧を振るった。

 

「さすがはレスター先輩!よーし私も負けていられないぞー!戦闘艤装『高雄』、主砲放てーい!!」

 

 主砲は影の群れへと照準を合わせ砲撃をした。その隙に神通は小太刀を構え影の群れの隙間を通り抜けるように斬り進む。駆け終えたときには一気に影の群れが四散した。

 

「…すごい、圧倒的」

 

 紗夜は感心するように頷くが、それでも湧いて出てくる影は止まることはない。一掃してもすぐに元に戻ってしまう。

 

「さあ今のうちに!」

 

「…ありがとう、みんな。後はよろしく頼む」

「ご、ごめんなさいです!お願いします!」

 

 紗夜は軽くぺこりと綺凛は丁寧にお辞儀をして影の群れを切り進む

 

「おい!これが終わったら飯を奢ってもらうからなー!」

 

 レスターが叫んでいるが二人は一気に進んでいた

 

「綺凛…上か下かどっちだと思う?」

「紗夜さんはどちらだと?

 

 二人は襲い掛かる影を倒しながら斬り進んでいる。綺凛、の質問に紗夜は考えることなく答える

 

「…下」

「私もです」

 

 綺凛は紗夜の勘ににっこりと答えた。

 

~*~

 

 地下へ降りると大きな扉に行き当たった。電子ロックではなく手で押し開けるものだった。上の階で人影相手にあれだけやりあったのだ。おそらく犯人はすでに綺凛たちがすでにここまで侵入していることは察しているだろう。相手には人質もいる。ここは慎重にいかなければならない。

 

 「紗夜さん…ここは私が」

 

 足を負傷しているとはいえ前に立つのは綺凛の役目だ。紗夜が頷いたの見てゆっくりと扉を開ける。そこは一回と同じようなホールが広がっていた。ただし柱が多くありランタンの明かりしかなく薄暗い。

 その薄く照らされる照明のふもとのひとつに小さな女の子が照らされているのが見えた。猿轡をされて手足を縛られてぐったりとしている。

 

「フローラちゃん!」

 

 綺凛が声をかけるとはっとしたように顔を上げた

 

「んんんー!」

 

 猿轡をされていて何を言っているのがわからないが首を横にぶんぶんとふっていた。

 その瞬間い綺凛は不意に殺気を感じてから横へ飛び退いた。わずかに遅れてから柱の影から黒く巨大な棘が、さきほどまで綺凛がいた空間を刺し貫く。更に他の柱の影から棘が次々と飛び出し綺凛を襲う。

 

「つっ…」

 

 綺凛は痛みに耐えながら攻撃を躱していくがきわどい状況だ。なにしろどこから飛び出してくるのか予想がつかない。綺凛はこのとき相手は影を武器にする能力者と判断する。ホールには無数の光源が空間を照らす。上下左右どこからくるのか警戒しなければならない。

 

「__なるほど、刀藤綺凛か。随分と大物が来たな」

 

 ぴたりと攻撃がやむとフローラがもたれかかっている柱の影から一人の男の姿が現れた。それは闇ににじみ出たかのようで、無機質で冷たくぞっとする気配を感じた

 

「…あなたが誘拐犯ですね?」

 

 綺凛の問いに答えることなく男は小さく指を振り、フローラの影から伸びた棘が喉元に突き立てられる。

 

「武器を捨てろ。オレの邪魔をすれば、この娘の命は保証しない」

 

「そ、そんな…もうやめてください!そんなことをしてもあなたが不利になるだけです!」

 

 仮に__想像はしたくはないが最悪な事態を起こしてしまえばもう歯止めはきかない。男の望みは達成されず、ただ罪が増えるだけだ

 

「一つだけ教えてやろう。俺がどうなるかなどということは、俺にとってどうでもいいことだ」

 

 その言葉に綺凛はぞっとした。この男は本気だとわかったからだ。この男は綺凛が従わなければ躊躇いなくやるだろう

 

「まずは武器を捨てろ」

「…くっ」

 

 それが分かった以上、綺凛はその選択を跳ね除けることはできない。綺凛は仕方なく千羽切をゆっくりと床に置こうとした時だった

 

「綺凛さん、その必要はねーですぜ?」

 

 ふと後ろから声がした途端物凄いスピードで誰かが綺凛を通り過ぎ男へ迫った。

 

「なっ!?」

 

 男が影でフローラの喉元を突き刺すよりも早く、男に強烈な一撃をお見舞いした。ふっ飛ばされた男は受け身を取って体勢を整えその方を見る。金髪のツインテールの少女がフローラの猿轡と手足の拘束を解いてこちらを見ていた

 

「いやー、鳳凰星武祭の間は出番はないと思ったんですけどねー。まさか風紀委員の出番とは光栄ですよ」

 

 紗夜と綺凛は駆けつけてきた少女を知っている。星導館の風紀委員長であり、かの星導館の問題児もといアホの帝王もといサザンを懲罰房に押し入れた生徒。フローラはその少女にくびをかしげて尋ねた

 

「あ、あのあなたは…」

 

「初めまして、うちは星導館の風紀委員長の水無月風香といいます。よろしくおねげーします。」

 

「風香、ナイスタイミング」

「風香先輩、助かりました!」

 

「いいですよー。お礼は万事解決してからでー」

 

 風香はにっこりと笑った時、柱の影から黒い棘が風香に襲い掛かった。フローラを抱き上げて一気に紗夜のいる門のあたりまでかけた。

 

「風香様、ありがとうございます!」

 

「どうもー…さてと幼い女子を誘拐する犯人にはきつーいお仕置きが必要ですね?」

 

「…水無月風香…リストには載ってなかったな」

 

 先ほどの一撃には痛みを感じてないかのうように男は冷静に風香をじっと見た。それを風香は肩をすくめてため息をつく

 

「なるほどねー、さっきの『攻撃』を避けなかったのはそれでですか。無知とは怖いですねー。それでどうします?大人しくお縄についてくださいますか?」

 

「知れたこと、お前たちを排除して娘を取り戻す」

 

 男の腕から黒塗りの刃が滑り出る。風香は手錠型の煌式武装を展開した。

 

「ん?…貴様の武器はそれか?」

 

「ご心配どーも、うちは風紀委員ですから。悪い人をお縄に着けるのが仕事なので」

 

 それと…と風香は男を睨む

 

「先に言っときますけど、最初の『攻撃』をうけたあんたさんにもう勝ち目はねーですよ?」




データの管理はしっかりと!

アニメアスタリスクではシルヴィアの歌のシーンはどうなるか気になってたけども感動した

( ;∀;)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。