「どうだい?俺はしつけえぞ?」
亨介は不敵な笑みでゆっくりと綾斗達に近づいていく。『野点』による一部の固有結界、約2畳分、そこだけが亨介の攻撃範囲と絞られる。
「本当に厄介な奴だな!」
ユリスは亨介に苦笑いしながら睨む。ゆっくりと歩みながら近づく亨介の様子を見て綾斗は判断した
「ユリス、亨介は限界に近いのは確かだ」
「窮鼠猫を噛む、か…あそこまでタフだとこちらがやられかねないな」
「亨介の気力をできるだけ削るしかない。」
「つまるところ…今の亨介は作戦とか考えないでごり押しでいかないと勝てない、か?」
ユリスは黙った手頷く綾斗に相づちをうつように頷く
「わかった…穿て、『紅槍の炎姫華(カメリア・ウェルナーリア)』‼」
亨介の360度の周りに大きな赤い炎の槍が囲むようにたくさん発現される。数百以上も発現された炎の槍をみてさすがの亨介もこれには苦笑いをした
「…マジかよ。さっすが炎のツンデレ姫だな」
「だっだれがツンデレだ‼焼き穿て‼」
顔を真っ赤にしたユリスの合図で炎の槍は亨介に向かって一気に飛んできた。亨介は炎の槍が自分の間合いに入った途端に翡翠色の木刀を展開して弾き飛ばす。先ほどの青白い炎の槍よりも強度が高く、力を強く込めないと弾き飛ばせない。飛ばしたとしても一本折れてしまう
「ずいぶんと力を込めてんな!」
「亨介、弱音を吐いてる暇はないぞ?まだまだいくぞ!」
ユリスは更に魔法陣から赤い炎の槍を発現させ亨介に向けて飛ばす。一本折れたらまた一本構築して弾き飛ばす、その繰り返しをして防いだ
「おらおらおらおらおらおらおろおらおらおらおらっ!!」
その姿は幾百本の弓矢を剣の舞で弾き落とすかのように、亨介は踊るように炎の槍を全て弾き落とした。残りの一本を弾き落とした寸前、綾斗が一気に亨介の間合いに詰め寄っていた。
「っ!」
「天霧辰明流中伝…」
綾斗は技を発現する前に殺気を感じ一瞬止まった。その刹那に綾斗の目の前を翡翠色のデッキブラシが通り過ぎる
「ふう、あぶなかった…」
「ちっ、引っかかると思ったんだけどなぁっ!」
亨介は木刀を振り下ろす。綾斗はとっさに防ぐ。思った以上に重い一撃だった、黒炉の魔剣を握っていた手が振動で負担がかかる
「ぐっ、結構力入れてるね!」
「おうともさ、こちとらどっかのアホの帝王のせいでストレス溜まってんだよ!」
「俺達に鬱憤を晴らされるのも困るんだけど…」
もう一撃、亨介の木刀が振り下ろされる。綾斗はその攻撃を躱して切る。亨介のもう片方の手から新しい翡翠色の木刀が構築されるのをちらりと見て、その木刀が握られる前に黒炉の魔剣の持ち手を変えて下段から斜めへ斬り上げる
「天霧辰明流中伝『逆宵月』‼」
亨介の校章を狙って剣撃が繰り出される寸前、先ほど木刀を破壊され空いていた片手に木刀がすでに握られて振り下ろされ防がれてしまう。そしてもう片方の手に握られて木刀の突きをくらう。その痛みに耐えながら綾斗は下がる
「うぐっ!?まさか二刀流!?」
「そろそろ目が慣れてくると思ってな。構築のスピードを速めたんだ」
まさにごり押しのバーゲンセールだ。今の亨介は肩で息している状態なのに自分をさらに追い込むような状況を作っても、亨介はへばらず不敵な笑みで綾斗とユリスを見る。
「その体力で星辰力を消費をさらに強めるなんて…無茶苦茶だね。」
「はっはっは、オリ主だもん」
「オリヌシ…?じゃあこっちも…無茶苦茶をさせてもらうよ!」
綾斗は目でユリスに合図をする。
「囲め!『炎輪の灼円華(インパチエンス)‼』」
ユリスが煌式武装の剣を床に刺すと亨介を囲むように炎の壁が発現された。亨介が立っている2畳分の幅を囲むようにして炎の壁が揺れる
「あっつ!暑いんだけど!?」
亨介は周りを警戒しながら身構える。おそらく、亨介が動揺している隙を狙って、綾斗が炎の壁を突き破って一気に亨介の間合いに迫り、虚を突かれ動けない亨介の校章を切る算段だろうと亨介は読み、いつ飛び込んでくるか伺っていた。しかし、一向に来ない。亨介の警戒の糸が緩んだ瞬間だった
「天霧辰明流剣術『柏鷹(かしわだか)』‼」
炎から飛び出したのではなく、亨介の頭上から綾斗が剣を振り下ろしてきた
「な゛っ!?上からかよ!?」
一瞬の気のゆるみで綾斗に迫られてしまった。亨介は振り下ろされた剣を躱し、反撃に移る
「天霧辰明流『矢汰鳥』‼」
「うおおおおおっ‼」
綾斗の黒炉の魔剣のラッシュと亨介の翡翠色の木刀のラッシュがぶつかる。亨介は木刀が切られては構築して攻撃し、壊されては構築すると繰り返し、綾斗は黒炉の魔剣の攻め手を緩めなかった。
(綾斗の奴…ますます速くなってきてやがる!?)
亨介は焦った。亨介のLevel2による構築スピードの速さに綾斗の剣が追い付いてきていたのだ。このままではこっちが負けてしまう。亨介はいちかばちかの賭けに賭ける
「構築スピード、4倍だ‼」
ズシリと体に負担が伸し掛かる。それでも亨介は歯を食いしばって持ちこたえ木刀を振るう。先ほどまで押されていたが今度はこちらの流れになってきた
「くっ、まだまだ‼」
綾斗も負けずに剣を振るう速さを上げる。だが、わずかにできた隙を亨介は見逃さない。木刀を上段へ叩き込み、綾斗の手から黒炉の魔剣を離させた
「っ!?」
「…もらった!」
亨介はすかさず木刀を校章に狙いを定め叩き込もうとした。
__勝った!
そう心でほくそ笑んだ
「亨介!私がいることを忘れるなよ!」
炎の壁からユリスが飛び出してきた。ユリスの片手には大きな炎の剣が握られていた
「刻め!『剣星の斬焔華(ロードデンドロン)‼』」
炎の剣を亨介に向けて振り下ろす。
「ふんごおおおおおっ‼」
亨介は力をフルに込めて木刀をスイングする。木刀と炎の剣がぶつかり、両方とも壊れる。すかさず亨介は木刀を構築させユリスに向けて振るおうとした。しかし、ぐらりと亨介の体が揺らぐ。綾斗が亨介がユリスの方を向いてる隙に腕をつかみ自分の体重をかけて目一杯亨介を投げていた
「天霧辰明流組討術…」
「おおっ!?」
亨介は投げられて思い切り床に叩き付けられた。そしてそれに追い打ちをかけるかのように綾斗はそのまま真上から肘を叩き込んだ
「『刳輪祓(くるわはらい)』‼」
「おぶふっ!?」
亨介は胸に痛みが走りせき込む。そして自分の校章がパキリと砕けているが見えた
「‥‥」
「……亨介、ご苦労様」
こちらを見ながら優しく微笑む綾斗に亨介は無言で苦笑いをして頷く。亨介は負けたのだった、だがそれは悔しい気持ちはなかった。
「…やっとかぁ…綾斗、ユリス、お前ら強すぎ」
「こっちが焦っていた。もしお前は疲労していなかったら私達が負けていただろうな。…亨介、お前はよく頑張ったものだ」
ユリスはため息をつき笑って亨介を見る。亨介は大きく息を吸って大の字になって寝転がる。
「…もう疲れた。お前ら、あと頑張れよ」
『千利亨介、校章破損』
機械音が響き、歓声が巻き上がる。
『遂に!遂に、決勝戦まで単騎で戦い勝利をあげていた千利選手が天霧選手とユリス選手ペアとの戦いに敗れました!』
『千利選手、これまでの疲労がここでぶり返したみたいっすね。もし快調だったら結果は違っていたかもしれないっす』
綾斗とユリスはお互いを見て頷く。まだ、終わっていない。あと一人、今まで戦わずして決勝に上り詰めた奴が1人、残っているのだ
「ユリス、あと一人だ」
「ああ、油断はするなよ?」
そしてお互いその『あと一人』である男の方を見る。これまでの戦いを椅子に座ってドヤ顔で見ていた、サザンがゆっくりと椅子から立ち上がる
「フハハハハハッ‼」
サザンはあくどい笑顔で高笑う。
「フハハハハh…ガフッ!?」
「そこ咽るの!?」
思わず綾斗は突っ込んでしまった。サザンは咳払いをして再び立ち上がる
「フハハハ、待ちかねたぞ!」
「いや、こっちが待ちかねたんだが…」
「ユリス、これ以上突っ込んだら埒が明かないよ」
サザンはドヤ顔でユリス達を指さす
「さすがはお前たちだ、遂に亨介を破り俺の前に立ちはだかるか!だが…この帝王に勝てるかな?」
「…この試合、お前に手を出していないと思っていたのか?」
ユリスは煌式武装を床に突き刺す。するとサザンの足下に赤い魔法陣が展開される
「むっ?」
サザンは見上げると頭上から大きな火炎の花が落ちてきていた
「咲き誇れ、『熔空の落紅花(セミラータ)』‼」
火炎の花がサザンに当たり爆発を巻き起こす。
「い、いきなりだね…」
「当たり前だ。ずっと亨介に任せていたヤツだ、これぐらい灸をすえてやらないとな」
爆炎が立ち上り中、ユリスと綾斗は様子を伺っていたが炎の中からサザンの高笑いの声が響く
「フハハハハっ‼」
爆炎を突き破り、無傷のサザンが飛び出す。
「なっ!?無傷だと!?」
「フハハハ‼残念だったなユリスよ!この帝王、貴様の炎なぞ効かぬわ!」
ユリスの炎が効かない。サザンという男、思った以上に手ごわい相手かもしれない、二人はそう思い身構えた。さらにサザンはドヤ顔して指さす
「…だが、炎が効かぬからといって熱くはないということはない!」
「「‥‥」」
あうやく二人ともずっこけそうになった
「や、やせ我慢してるんだ」
「はっきりしろ!」
本編の綺凛ちゃんのドレスはゴクリとしました。
かわいすぎでしょ