二人は仲良し? ミント&ヤンヤン   作:新六毛

10 / 21
憎しみ合う為に生まれた ミント&ヤンヤン

ミントは煮られていた

それは揶揄で無く、実際に尋常ならざる高温の湯の中で悶え苦しんでいた

目の前に垂れた細い麻布の切れに口を伸ばす

 

『ゴク…… ゴク……』

 

布切れには冷たい水が染み込んでくる

それをしゃぶって喉を潤す

ほんの一瞬、灼熱地獄から解放される

だが、飲んだ水は瞬く間に大量の汗となってミントの全身から吹き出し、お湯の中へと溶けていく

それが更にお湯の熱さを体感させる…

 

ウォータースライダーの先にあった小さな壺湯……

ミント1人で一杯になるそこに彼女が飛び込むと、上から蓋が降りて来た

頭だけが出せる小さな穴が空いたその蓋が、ミントの自由を奪った

隣の壺湯に抑え付けられた少女がガクッと頭を落とした

 

「し、しっかり…! 諦めちゃダメ…!」

 

自分が極限状態にもかかわらず、隣の少女を気遣い励ますミント

彼女の声に、その銀色の長いお下げ髪の少女は何とか頭を上げ、小さく頷いてミントに答える

周りには幾つもの壺湯が並び、それぞれに若い娘達が拘束されていた

猛々と湯気の立ち込める中、娘達の苦悶の呻きが方々で木霊する

まさに地獄絵図…

一体彼女達に何のカルマがあるのか…?

強いて言えば、皆一様に人並み以上の器量を備えた者ばかりであるという事だけ…

諦めるな、と励ましたミントであるが、彼女自身、心はもう折れる寸前であった

 

「お爺様… リオ…」

 

再びミントは布切れに口を伸ばす

飲めば更に苦しく、しかし飲まずには居られない…

 

 

 

きっかけはヤンヤンから渡された1枚の招待券だった

極楽湯島之内店オープン特別招待券…

極湯マニアのミントは目を輝かせた

 

「ひろ~~い!」

 

新規オープンのその店は、極湯マニアミントをしても未経験の広さだった

 

「そして誰もいな~~い!」

 

本開業前の特別招待…

広々とした館内施設を独り占めできるという

極湯マニアの夢の実現に、ミントは歓喜の声をあげた

 

そう… 誰もいない…

 

まだ幼いミントにはその異常性に気付く事は出来なかった

白湯、温湯、足湯にサウナ…

極湯マニアの作法に乗っ取り、浴槽を巡るミント

そんな彼女の目に止まったのが、地下へと続くウォータースライダー…

 

(こんな設備、今まで見たことない!)

 

躊躇する理由などなにも無かった

勢いよく身を投げ出し、長いスライダーを滑り落ちるミント

そして彼女を待っていたのが、この地獄だったのだ

最初は何らかのアクシデントだと思った

新規開業にはよくあるトラブル

だが、助けを呼ぶ叫びを無視され、そして周囲の湯気の中に同じく湯攻めにあう女性達の姿を認めた時、これが何者かの悪意の結果である事が漸く理解できた

一体誰が何の為に…?

朦朧とする意識の中で答えを探すが、ヤンヤンの不敵な笑み以外が浮かんで来る事は無かった…

 

 

 

 

 

時計の針が深夜の零時を回る頃、一端消えた筈の晏々の明かりが再び灯る

それに惹き付けられるかの様に、何処からとも無く暗いオーラを纏った男達が現れ、店先に列を成す

 

「いらっしゃいませ~ お待たせしました~」

 

晏々の引き戸が開いて、ヤンヤンが顔を覗かせる

それを合図にゾロゾロと男達が店内に吸い込まれて行く

 

「それでは端のお客様からご注文をどうぞ~」

 

今夜も狂気の闇晏々が開業する…!

 

「ミント増々、びん娘多め、撫子硬め、さやか追加で!」

「アーニャ普通、ミント少なめ、朧普通、ピンクコアラ追加!」

「ミント増し、真宵多め、ほむら多め、ざくろ追加でお願い!」

「ロット乱すなボケ!」

「ムイムイ普通、ミント多め、あやか少なめ、なのは追加で…」

 

「はい喜んで~!」

 

ヤンヤンがコックを捻ると、ドンブリに熱々のスープが注がれる

幾つもの並んだコックを操作し、客のオーダーに合わせてスープを調整していく

サッと湯がいた麺を乗せ、青葱を散らせば、特製上湯ラーメンの完成である

若い娘のエキスがたっぷり染み込んだ狂気の逸品

一杯五万円という破格ながら、闇サイトでの口コミで広がったこのラーメンの人気は衰える事を知らない

今日は新鮮な幼女の入荷とあって、いつにも増して客足が伸びていた

"グロリアン"と呼ばれる娘スープ愛好家達の御用達、闇晏々は不定期で開業する

 

 

 

 

 

『ゴボゴボ…』

 

ミントの浸かる壺湯の底から湯が抜けていく

そして再び新たな湯が注がれる

出枯らしの様に生気を絞られたミントは虚ろな目でぼんやりと中空を眺めていた

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。