二人は仲良し? ミント&ヤンヤン   作:新六毛

14 / 21
出会わなければ幸せだった ミント&ヤンヤン

『トンネルの向こうは、不思議の街でした…』

 

人里離れた山奥にある、古く小さなトンネル… そこを潜った先に広がる趣のある温泉宿…

人の世と物の怪の世界が重なり合ったかの様な不思議な世界…

そこで出会った可愛らし湯女… 心の籠ったおもてなし…

 

 

 

「……どうよ!?」

「……どうって言われても…」

 

鼻の穴を広げてドヤ顔を見せるヤンヤンを前に、ミントも返答に窮する

今回もきっかけは当然ヤンヤンだった

二人だけの女子会をしよう

ヤンヤンのが企画した一泊温泉旅行

普段なら乗らないミントだったが、たまたま私生活に悩みがあり、気分転換も兼ねて山奥の秘湯にやって来たのだ

そこはブルジョアのミントからしても豪華な宿だった

山奥とは思えぬ豪華な食事、見晴らしの良い最上階の部屋…

 

(温泉なんてお年寄りの行く所だと思っていたけど、来てみると良いところね)

 

気の置けない親友と過ごす非日常…

普段よりゆったりと流れる時間…

宿を去るのが正直心惜しかった

いっそこのまま人生のしがらみから解放されたい…

そんなことをロビーの天井を眺めながら考えていたミントに、ヤンヤンが信じられない言葉を投げ掛ける

 

「お会計、二人合計11万円お願いね!」

「えぇっ!?」

 

話が違う 最初の話では1人三万円の筈

ミントは抗議した

 

「一番良いお部屋が空いてるって言うからプランを変更したのよ 昨日の舟盛りもオプションよ アンタ金持ちなんだから余裕でしょ!?」

「…………」

 

確かに普段のミントなら造作も無い金だった

だか、今のミントにその支払いは不可能だった

そもそもこの旅行に来た理由、私生活の悩みとは、ミントが保護者である祖父の勘気を被った事である

 

 

 

「ミントの目利き力を見てみたい」

 

HBAトレーニングセール… 日本最大の競走馬のセリ市…

Mr.クラークはやがて財閥の全てを継ぐ孫娘の目利きのセンスを確かめる為、10億の予算を与え、馬を選ばせたのだった

 

「う~~~ん……」

 

初めてのセリ市 馬の色艶、足の長さ太さ、馬体の優美さ…

ミントなりに熟考を重ね選んだ一頭

それが日本ばんえい競馬史上最高額で落札された道産子になった

よもやサラブレッドと道産子の違いも分からぬとは…

失望したMr.クラークからミントは蟄居閉門を言い渡された

生まれて初めて祖父から受ける叱責だった

謹慎生活を抜け出しての旅行

ミントが大きなお金を自由に出来る筈がなかった

 

 

 

「使え無いわね~! 一体どうするのよ!」

「どうするって……!」

 

無茶苦茶なヤンヤンの言い分に腹もたったが、お金が無いのは事実…

警察に突き出されるか、宿賃を働いて返すか…

支配人に二者択一を迫られ、ミントとヤンヤンは湯女になる事になった

湯女とは謂わばコンパニオンである

手っ取り早く団体客をいてこませて、宿賃に小遣いも稼いでシャバに戻ろう

到底堅気とは思えぬヤンヤンが企画したのが、冒頭の団体客向けプランだった

 

「……どっかで聞いたフレーズだし… 具体的に何をするの?」

「アタシに任せて! アンタはただ言う通りにしていれば良いのよ!」

 

こういう事に関しては人一倍バイタリティーのあるヤンヤン

ミントは胸騒ぎを抱かずには居られなかった

 

 

 

その夜、ミントとヤンヤンの最初で最後である筈の、湯女仕事が幕を開けた

 

「いらっしゃいませ、ようこそ油屋へ、」

「いらっしゃいませ… ぇぇぇっ!?」

 

宴会開場の襖を開け、かしずきながら挨拶をするミントの声は裏返った

そこに居並ぶのは強面のパンチパーマの集団だった

はだけた浴衣から覗く色鮮やかな刺青… ジョッキを握る指の数の少ない手…

どう見ても反社会的集団

ミントは血の気が引いて行くのを感じた

 

「ちょっと、ヤンヤン… 怖いわよ…!」

「大丈夫よ… こういう連中の方が金払いが良いのよ…!」

 

呑気にウインクを見せながらヤンヤンは上座に進み出る

 

「これから不慣れではありますが、余興をご披露したいと思います! 皆様方にもご参加頂きたく存じます! お気に召しましたらご祝儀などを…!」

 

会場の強面達から大きな拍手が上がる

 

「それでは早速…!」

 

ヤンヤンが背後の紐を引くと、奥の幕が割れ、そこから大きなルーレットが現れた

 

『ブロロロロロ……』

 

何処からか唐突に流れ出したドラムロールと共に、ルーレットの周囲を彩る電飾が回転を始める

 

「あぁ…………」

 

ミントはもう何となく分かった

自分だけが知らない、この用意周到さ… 何時ものパターン…

あのルーレットに書かれたおぞましい文言… それを実行するのは多分……

 

「これだよ~~!!」

 

ヤンヤンの絶叫と共にルーレットの電飾が停止する

 

【帯引きグルグル対決】

 

「さぁ 皆さん! あそこのおかっぱ頭の帯をグルグルして楽しんで下さいね!」

 

「「ウォォォォォッ!!」」

 

野獣の如き咆哮が木霊する

ミントは慌て会場を出ようとするが、当然襖は固く閉ざされていた

 

「いやぁぁぁぁぁっっっ!!」

 

ミントの身体が一瞬宙を舞い、直後にフィギュアスケートの選手の様に高速回転を始めた

一瞬で吹き飛ぶ着物と帯

あられもない姿のミントが野獣達の中央に投げ出される

 

『ブロロロロロ……』

 

再び流れるドラムロール

 

「今度はこれだよ~~!!」

 

【アツアツ沸騰牛乳浣腸】

 

「いやゃゃゃぁッん!!」

 

手足を掴まれ俯せにされるミント

その白桃の様な可愛らしいヒップの割れ目に、白濁液を満たした極太の浣腸が遠慮なくぶち込まれる

 

「熱いぃぃぃぃぃっっっ!!」

 

鮎の様に跳ね回るミント

暴れた衝撃で尻から漏れる白濁液からは湯気が立ち込める

 

『ブロロロロロ……』

 

「お次はこれ~~!!」

 

【名人芸デスソース一気飲み】

 

荒々しく頭を掴まれたミントの口の奥に、デスソースのビンが乱暴に刺し込まれる

 

「ヴォォォォォォォッ!? ゴホォォォォォッ!!?」

 

目玉が飛び出るほど見開いた瞳から滝の様に涙が溢れる

鼻の穴から得体の知れない液体が吹き出る

ミントの白い肌が見る見る紅潮していく

 

『ブロロロロロ……』

 

「もうやめ…「最後はこれよ~~!!」

 

【お座敷全裸安来節】

 

不意に会場の電気が消え、倒れたミントの上にスポットライトが注がれる

 

『やす~~ぅ~~き~~… 』

 

間の抜けたBGMが静かに流れる

聞き入る様に場の喧騒は掻き消えた

衆目がミントに注がれる

ミントはそれを意識したが動かなかった

 

当たり前だ 誰がやるものか 殺せ いっそ殺せ…!

 

ミントはもう何もかもが嫌になった

お祖父様に見限られ、友にはまたも裏切られ、浣腸をぶち込まれ、デスソースに胃を焼かれ…

ミント・クラーク…

この世にこれ程無様な生き物がいるのか…

 

 

 

「ミント、頑張れ!」

 

その時、場違いな野太い声が響いた

強面の1人が真剣な声をあげた

 

「頑張れ、ミント!」

「負けんな、ミント!」

「ミント! 俺達は応援しているぞ!」

 

先程までの凶暴な連中とは思えない、真面目な声援が方々から上がった

 

「……………」

 

ミントは自嘲した

こんな人達に応援されるなんて…

こんな人達しか応援してくれないなんて…

いえ、無様で不器用で世間知らずの私には、十分過ぎる声援なのかな…

そうね… こんな情けない私は、全裸で安来節を踊るのが相応しいわね…!

ミントはゆっくりと起き上がった

会場のあちこちから拍手が上がる

何処からか竹ザルが投げ込まれた

それを拾ってミントは構える

 

「…………やす~~ぅ~~き~~……」

 

 

 

〈こんなに心の籠った安来節を見た事は無かった〉

 

広域暴力団『網組』の若頭、国本幸司は後にこう語った

それ程ミントの安来節は見事な物だった

この世のしがらみを振りほどくかの様な気迫の籠った全裸舞踏

得体の知れない感動と一体感が、場の空気を支配していった…

 

 

 

「遅れちゃってゴメン…」

 

襖が勢い良く開いて小柄な影が飛び込んで来た

 

「あぁ 坊っちゃん… 先に始めさせて貰ってますよ… それより見て下さい… あの見事な安来節を…!」

 

 

 

「え………… ミント…… なにやってるの……」

 

 

 

そこには今まさに畳の上を泳いでいるドジョウを掬わんと、竹ザルを構えて大股に腰を落とす憧れの少女の姿があった

 

「…………ジャック…………」

 

気まずい沈黙が、永遠にも思える時をミントの心に刻むのだった

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。