照り付ける太陽 焼けつく空気
砂漠は熱したフライパンの様に、そこに足跡を刻む3人の身体を容赦なく調理する
汗は吹き出すそばから蒸発する
息をする度に肺が蒸される様な感覚に襲われる
「何で私がこんな目に会わなきゃならないのよ!」
ヤンヤンがこの日何度目かになる感情の爆発を見せる
言うまでもなく切欠は貴女よヤンヤン…
口を開く余力も無いミントは心で呟く
『サハラ砂漠で朽ちた3号戦車のボディで目玉焼きを焼きたい!』
いつものトチ狂った思い付き
卵5ダースとハム3キロ 氷を満載したクーラーボックスに牛乳10リットル
スイカにビーチパラソルにビーチチェア…
ジャックが操縦したクラーク家の自家用セスナは、重量オーバーでサハラ砂漠のド真ん中に不時着した
お祖父様の目を盗んでの秘密旅行
今、ミント達がここに居る事を知る者は居ない
完全なる遭難
ミント達はこの灼熱地獄から逃れる為、宛もない放浪を始めていた
『ゴク… ゴク… ゴク…』
「だ、駄目だよヤンヤン! 飲み過ぎだよ! 水分は大事にしなくちゃ!」
暑さにいたたまれず牛乳をガブ飲みするヤンヤン
「うるさいわね! このままじゃ干物になっちゃうわよ!」
そういうジャックも、そして口数少ないミントも、喉はずっとカラカラである
飲んだそばから汗になり蒸発していく
恨めしい太陽が漸く西の地平に隠れる頃、無限の砂世界に初めて見つけた人工物
古い戦闘機の残骸
その陰で始めての砂漠の夜を過ごす事にした
あの灼熱が嘘の様に気温が下がっていく
心地よい涼感はほんの一瞬、瞬く間に極寒の世界となる
「うぅ~ 寒い~ 何でこんなに寒くなるのよ~」
残骸の陰で肩を寄せ合い震える3人
もしこの残骸を見つけられなければ、きっと凍死していたに違いない
昼は殺人的日差しを避ける為、夜は寒風から体温を守る為…
ミント達はいつ来るかも分からない救助を、この残骸の陰で待つ事にした
限界は予想より早くやって来た
ヤンヤンが牛乳瓶を逆さまにして、最後の1滴を喉の奥に送り込む
放浪はせずとも喉の渇きが収まる事は無かった
「あぁ アタシ達、死ぬのね… 」
1人で8割方の牛乳を飲み尽くしたヤンヤンが空瓶を投げ捨て呟いた
後は時間との戦いだ
飲料が尽きた今、残された時間は余りに少ない
残骸の隙間から見える鮮やか過ぎる青空を、ミントは力無く見詰める
空は何処でも同じ空だった
お屋敷のガーデンテラスの白い椅子とテーブル
ミントのお気に入りの場所だった
ざく切りにした黄桃に暑いダージリンを注いで、それをクラッシュアイスで満たしたノリタケに移す
氷の砕ける心地よい音と甘い紅茶の香り…
大好きなそれを呷る先に見えた空も、こんな綺麗な空だった
(お祖父様… リオ… )
恐らくはもう戻る事の無い幸福の日々に思いを馳せて、ミントは少しだけ眠った気がした
「ウォォォォッ!!」
突然の雄叫び ミントは飛び起きる
「ヤンヤンどうしたの!?」
見れば砂漠を疾走するヤンヤンと、それを必死に追うジャックの姿があった
「み、水よ! 水よ! あそこに水よぉぉぉぉっ!!」
「ヤンヤン落ち着いて! 水なんて無いよ! しっかりして!」
人一倍水分を取っておきながら、早くも極限に達したヤンヤンは幻覚に襲われた様だ
なんとかジャックに引き摺られて残骸の陰に戻るヤンヤン
「うぅあぁ… 水… 水… おみずぅ… 」
虚空に手を伸ばし呻くヤンヤン
口角から泡を吹き、目の焦点は合わなかった
「ミント… ヤンヤンはもう駄目だよ…」
涙を浮かべた瞳をミントに向けるジャック
唯一の男の子として気丈に振る舞ってきたジャックだったが、親友の発狂を目の当たりにして、遂に彼の心も音を立てて崩れようとしていた
「………………」
思い詰めた表情をヤンヤンに向けるミント
彼女とて親友の苦しむ様に、心が激しく締め付けられていた
「ジャック… 少しだけヤンヤンをお願い…」
そう言うとミントは残骸の陰を出て行く
「ミント、何処に行くの?」
不安そうなジャックの声に答えないミントの横顔には、悲壮な決意が滲んでた
「ミント、それは!?」
暫くして牛乳瓶を手にして戻って来たミント
その牛乳瓶には少量の琥珀色の液体が入れられていた
またしてもミントはジャックの問に答えず、その牛乳瓶の中身ををヤンヤンの渇き切った口内に注ぐ
「……んっ!? う……ん? ゴク… ゴク…」
待ち焦がれた水分の到来にヤンヤンは気を取り戻し、一気に牛乳瓶の中身を飲み干す
「ミント、何処にそんな水が?」
「…………」
ミントはまたしても答えない
「あ… アンタァ! 水を隠し持ってたのねぇっ!!」
突然飛び上がったヤンヤンがミントに飛び掛かる
「うわぁ!? ヤンヤン、止めなよ!」
ジャックが必死に引き離そうとするが、文字通り命の掛かったヤンヤンはミントの首に手を掛け、渾身の力で絞め上げる
「く… 苦しい…! ゆ、許してヤンヤン…! 正直に話すわ…!」
水を隠し持った事は許せないが、自分を助けたのも事実だ
流石のヤンヤンも手の力を緩め、ミントの弁明を聞く事にした
「えぇっ!? 私にオシッコを飲ませたの!!」
ヤンヤンは大声を上げた
「ごめんなさい… でも貴女を助ける為には…」
ミントはヤンヤンの前に土下座した
どんな理由があったとしても、排泄液を飲ませるのは人の道に反しているのは事実だ
ミントは言い訳するつもりは無かった
ヤンヤンの罵倒を甘んじて受けようと今一度頭を垂れた
だが、ヤンヤンの見せた反応はミントの予想を真っ向から裏切った
「!?」
垂れた頭を優しく持ち上げられ、ミントの唇に柔らかい何かが触れた
ヤンヤンの唇だった
「ありがとう… ミント… 貴女を疑ってごめんなさい… 」
「えっ!?」
慌てて唇を離すミント
悪ふざけかと見遣ったヤンヤンの顔は涙に濡れていた
「ヤンヤン…… 」
ミントの心に熱い波紋が広がっていった
小水を飲ませた私を責める訳でも無く、これまで1度たりも見せた事の無い、感謝の気持ちを体現する親友
ミントは思った
彼女を助ける為にオシッコを飲ませて本当に良かった
2度目の接吻はとても自然だった
互いの手の指を絡め、ゆっくりと、そしてとても深く相手の咥内に舌を伸ばした
渇き切った咥内が、互いの唾液で潤っていくのが分かる
ミントはヤンヤンをもっと身近に感じたかった
それはヤンヤンも同じだった
ワンピースと清服はそれを妨げるとても無粋な物だった
全てを脱ぎ捨て、とても自然な姿になったミントとヤンヤンは蛞蝓の様に互いの身体を絡めあった
暑さも寒さも感じ無かった
ただお互いの体温だけがとても愛しく感じた
この砂漠の世界に2人きり…
「ミント… 貴女も喉が乾いたでしょ…」
「ヤンヤンも… まだ飲み足りないでしょ… 」
行き残る為の、頗る健全で自然な行為だった
互いに相手の股間に顔を埋め、臀部に力を込める
溢れだす小水を1滴も溢さぬ様に舌で舐め回す
「……ふぅん……」
「あぁ……んっ……」
思わず嬌声が洩れる 理性は完全に崩壊した
後は盛った二匹の雌が、互いの身体を激しく求めるだけだった…
「はぁ… はぁ… はぁ… ちょっ… ちょっと何やってるのぉ…! ふ、2人ともぉ…!」
1人蚊帳の外に取り残されたジャックは、目の前で繰り広げられる官能劇に、目と心のやり場を完全に失っていた
それは少年ジャックには余りに強烈な刺激だった
見てはいけないが見て見たい…!
それより何より… 自分も交ざりたい…!
ジャックの心臓は早鐘を打ち、股間は経験の無い程怒張していた
「ぼ、僕も喉が… 喉がカラカラだよぉ…!」
だが二匹の蛞蝓は、ジャックの存在など完全に思考の中から消し去っていた
結局ジャックの生殺しは翌朝、クラーク財団の救難ヘリが到着するまで続くのだった