二人は仲良し? ミント&ヤンヤン   作:新六毛

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死して尚、目的完遂 ミント&ヤンヤン

ミントは照準器の中央に赤いボディの敵機を収める

すかさずトリガーを引く

12.7mm機銃の曳光弾が、ずんぐりとした敵機の脇腹に吸い込まれる

 

「やったぁ!」

 

コックピットのミントは撃墜を確信して目を見開く

だがその敵機は着弾の寸前、くるりと機首を反転し、必殺の弾幕を回避する

やはり尋常ではない手練れ

一週間前はショコラが、一昨日はシャルロットが、この憎き手練れに葬られた

相次ぐ戦友の討死に復讐心をたぎらすドールズハウスの面々

三人三機が1チームになり、敵を追い求めていた最中、そいつはミントの属するチームの前に現れた

 

「後ろに目があるの…!?」

 

呆然と敵機の後ろ姿を見送るミント

その影に今度は僚機が間を詰める パイの乗機だ

ミントの目にも十分優位な位置からの攻撃に見えた

今度こそ…!

 

「!?」

 

だが、またしてもそいつは嘲る様に弾幕を回避する

更には鋭い角度で機首を反し、復讐の好機を逃したパイに反撃する

衝突する程の間隙、まさに射撃のお手本

ミントはその手腕に思わず息を飲んだ

僚機の風防が砕け、太陽の光を浴びて輝く

 

「あぁっ、パイッ!?」

 

全ての弾薬を叩き込まれたパイの乗機はバランスを崩し、キリモミをして急降下していく

たなびく黒煙が、流れ出た血の様に青空に一筋を残した

 

「よっ よくもぉぉぉっ!!」

 

ミントは己の血がたぎるのを感じた

スロットルを全開にして敵機に迫る

その時、チームリーダー、ザクロの機から閃光弾が打ち上がる

撤退の合図

三機かがりでも倒せぬ相手 懸命な判断だった

ミントは悔しさ紛れに、拳を風防越しの敵機に叩き付け、作戦空域を後にした

 

 

 

インド洋に浮かぶ小さな無人島、ドールズハウスの根拠地

その夜、パイの戦死を悼むささやかな追悼会が開かれていた

私があの時、あいつを仕留めていれば…

ミントは独り、離れた砂浜で膝を抱き、己を責めた

 

「自分を責めちゃダメよ… ミント、貴女は良くやったわ…」

 

ザクロがミントの傍らに腰を降ろし、その肩に優しく腕を回した

 

「うぅ… うぅぅ…… ごめんなさい……」

 

ミントは涙の堰が切れたかの様に、ザクロの胸に顔を埋めて号泣した

 

 

 

籠に閉じ込められた鳥の様な、自由の無い生活に嫌気がさし、巷で噂の美少女航空遊撃隊『ドールズハウス』に志願したのは先月の事だった

悪名高いイスラム国の活動に痛撃を与える、空の傭兵ドールズハウス

翼を得たミントは大空を自由に舞う

自分の求めていた生き方がここに…

連戦連勝でミントとドールズハウスの名は世界中に響いていた

事態が急変したのは、イスラム国がドールズハウス対策として雇ったあいつが現れてからだった

空の殺し屋の異名を持つ、凄腕美少女パイロット、『サクラ』

ドールズハウスはまるで子供扱いだった

今日、三人目の仲間を失い、戦力は更に削がれた

最早後が無い…

 

 

 

翌日、ドールズハウスのリーダー、イチゴは総員を集め、余りに過酷な作戦を提案する

ロケット戦闘機による体当たり…

敏捷なサクラを仕留めるには、これ以外に手はない

仲間の機体に吊るされ、サクラを確認したら射出される

操縦者は命と引き換えに必中させるのだ

 

「だ、ダメよ、イチゴ!」

「リーダーが死んだら、ドールズハウスは終わりじゃ…」

 

イチゴは当然、そのパイロットに志願した

そして当然、仲間はそれに反対した

 

「それは私の役目ね…!」

「絶対ダメですぅ!」

 

イチゴの代わりにザクロが志願した

だが誰も納得しない

 

「あの… じゃ… 私が……」

 

存在感の無いメンヘラヨーコが志願した

 

「ダメよ! 貴女はそんな事をする娘じゃ無い!」

 

みんな戦友の敵を討ちたかった

だが、誰も犠牲にはしたく無いのだ

ミントは昨日とは成分の違う涙を流した

仲間を思いやる仲間達…

こんな素晴らしい仲間達と戦えた事が嬉しかった

ドールズハウスに入隊して、本当によかった

 

「私が行くわ…!」

 

こんな素晴らしい仲間の為に命を捨てられるなら本望

ミントはパイロットに志願した

 

「ミント… やってくれる…?」

「ミント… 貴女の事は忘れ無い…!」

「ミントなら… ミントならやってくれるですぅ!」

 

満場一致だった

誰一人、反対を唱える者は居なかった

 

「……………………」

 

 

 

ロケットに操縦室を着けただけの特攻兵器

その操縦席にミントは縛り着けられた

 

「…………別に縛らなくても……」

 

射出の衝撃で外に放り出されない為の処置とイチゴは説明した

 

「もしも…… もしも…… 上手く当てられなかったら……?」

 

整備担当のアマレッティが自爆装置をドヤ顔で解説した

 

「…………もしも、サクラが見つから無かったら……?」

 

ザクロは中東の地図を出してバツ印を着けた

イスラム国の拠点だそうだ

 

プロペラの回転数が上がり、ゆっくりと滑走路を走り出すイチゴの愛機

その下に抱えられたミントの乗る特攻兵器、ミントロケット

 

「…………いやだ…… なんで私が……」

 

高度が上がるに従って、ミントの心に後悔の念が広がっていく

 

「なんで…… 誰も止めないの……」

 

一度綻んだ決意は音を立てて崩れ始めた

 

「ヤダヤダヤダッ! やっぱり死ぬのは嫌よ!」

 

イチゴの愛機のレーダーに反応が現れる

間違いない、奴だ!

 

「降ろしてぇぇぇぇっ! 死にたくない! お家帰るぅぅぅぅっ!!」

 

機体が大きく体勢を変えた

ドッグファイトの始まりだ

火線がミントの視界のずき先を流れていく

ミントロケットを抱えて鈍重なイチゴは、何とかサクラの攻撃をかわして背後を取る

 

「覚悟はい~~い?」

 

イチゴはミントロケットの射出ボタンを押す

 

『バシュ!』

 

強烈なGがミントの小さな身体を操縦席に押し付ける

 

「いやぁぁぁぁぁっ! お爺様ぁぁぁぁ! リオォォォォッ!!」

 

 

 

「サクラ、後ろっ!!」

 

複座席に陣取るヤンヤンが絶叫する

 

「なんだっ!?」

 

その声でサクラは宙返りを決める

機体の鼻先をミントロケットがかすめる

 

「今度は僕の番だ!」

 

攻守が一瞬で入れ替わる

すかさずミントロケットに必殺の20mm機関銃を叩き込む

 

『ドォォォォン!!』

 

爆音を響かせ、大きな炎の塊が大空のただ中に広がる

 

「いや~ん!」

 

秘密兵器のミントロケットを打ち落とされ、イチゴは思わず絶頂を迎えるのだった

 

 

 

 

 

空と海原を金色に染めながら、夕陽が今、水平線の彼方に沈む

あの空戦の直後、休戦協定が結ばれ、戦いは終結した

 

「お~~~い!」

 

砂浜をサクラとヤンヤンが駆けて来る

 

「遅いぞ~! もう無くなっちゃうから!」

 

ドールズハウスの催したバーベキューに、サクラとヤンヤンは招かれた

戦いが終われば敵も味方も無い

ここに居るのは、空を愛する乙女達だけ

シャルロット、ショコラ、パイも先刻到着した

サクラはパイロットを傷付ける様な事はしなかったのだ

結局誰一人、傷付く事は無かった

美しい南国の島の美しい星空の下、美しい少女達の宴は何時までも続いた

 

「やっぱり平和が一番ね…」

 

イチゴはポツリと呟いた

 

「平和もいいけどNETもねっ!」

 

ヤンヤンの合いの手に、少女達は大笑いするのだった

その後、少女達は各々、末長く幸せに暮らしましたとさ

めでたし、めでたし

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