二人は仲良し? ミント&ヤンヤン   作:新六毛

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憎しみの涙は血の大河 ミント&ヤンヤン

既に大勢は決した 悪足掻きでも無い

今、残された僅かな人類を動かすのは、かつてこの星の支配者であったプライド…

如何に誇らしく、意地を見せて散華するかという事だった

 

「わっはは~ 圧倒的ではないか、我軍は~」

 

幾つもののディスプレイが形成する巨壁の前…

そこに映る世界各地での同胞の戦いぶりに、緑色のツインテールの娘が満足気な声を上げる

 

彼女の名は『リンダ』

 

世界初の完全自立型アンドロイドとして彼女が誕生した時、世界は興奮と感動に包まれ、その危険性を唱える僅かな者は、前時代的、反知性的と烙印を押された

 

 

 

 

 

『ドーーンッ!!』

 

衝撃音の後に煙が上がり、1台の戦車が炎に包まれた

 

「「やった~~~!!」」

 

ミントとヤンヤンは離れた壁の陰でハイタッチを決める

汗と埃で浅黒く染まった顔に久しぶりの笑顔が戻る

きっかけはヤンヤンだった

 

「このままドブネズミみたいに這いつくばって逃げ回るだけでいいの!?」

 

唐突に始まったロボットの反乱…

ありとあらゆる人工知能が人類に牙を剥いた

電化製品からコンピューター、工作機械から自動車、軍事兵器まで…

彼は意思を持ち、魂を得、その自由を獲得する為に人類抹殺を決意したのだ

リンダという指導者の元に…

 

文明を取り上げられた人類は余りに無力だった

戦火に焼かれ、僅かに残ったコロニーを宛も無く点々と流浪するミント達

そんな中で、それでも尚、世界を人類の手に取り戻そうと戦う者達の姿に、ヤンヤンは心を打たれ、その言葉はミントを突き動かした

嘗て純白のワンピースに身を包んででいた深窓の令嬢は、もうそこには居なかった

今ここに居るのは、迷彩服に身をくるんだレジスタンスの戦士、ミントだった

 

 

 

「おぇぇぇぇ……」

 

強烈な悪臭がミントの鼻を突く

これだけは幾らたっても慣れる事は無かった

 

「我慢しなさいよ これだけがアタシ達の希望なんだから…!」

 

そう言うヤンヤンも涙目に顔を歪める

ここは僅かに残された人類のコロニーの1つ

そして今、彼女達はそのトイレ代わりの縦穴に柄杓を差し入れ、発酵した糞尿を容器に詰めていく

文明を失った人類の僅かな反撃手段

その中で最も効果を上げていたのがこの、通称"ウンチ爆弾"である

発酵した糞尿の発するメタンガスを火薬代わりに用いるのだ

先程の戦車も、このウンチ爆弾を踏みつけて炎上したのだ

嘗てはレジスタンスの大人達がやっていた作業

今このコロニーの最年長者はミントとヤンヤンなのである…

彼女らの他には更に幼い子供達しか居なかった…

子供が子供を守る地獄絵図…

それでもミントは挫けなかった

彼女は新兵器の開発にも積極的だった

自らのウンチを原料に、様々な新型ウンチ爆弾の研究を続けていた

温度、湿度、硬度…

肉食ウンチは火勢は強かったが発火点が高いのが難点

菜食ウンチはガスの発生効率は良いが、威力に劣る

ウンチを捻ってはその成分を分析し、より兵器として効果の高いウンチ製造法を模索する

恥も外聞も無い 在るのは人間としての意地とプライド…

 

(立派なウンチマイスターになったわね…)

 

ヤンヤンはそんなミントの横顔を頼もしそうに眺めた

 

 

 

「ねぇ… もしも… もしもこの戦いに勝つ事が出来たら… もしも、平和な世の中がまたやって来たら… 一緒に中華居酒屋をやらない?」

「そういうのは死亡フラグっていうのよヤンヤン… ほら、来たわよ…!」

 

土煙を上げてロボット軍団が迫り来る

頑固な抵抗を続けるミント達に対する総攻撃

同時にそれは近隣のコロニーの壊滅も示唆していた

 

「お爺様… どうかミントが最後まで勇敢に戦えます様、お力をお貸し下さい…」

 

ミントは天を見上げ、そこに居る筈の祖父に祈りを捧げた

 

 

 

方々で上がる爆炎 近くをかすめる砲爆撃

ウンチ爆弾はあちこちでロボット軍団の車両を破壊した

だが、多勢に無勢…

遂にミント達はコロニーの中心居住区へと追い詰められる

既に指呼の距離に敵の車両が迫る

 

「ヤンヤン! 子供達を連れて逃げて! 今なら逆に地下道から包囲の外に出られる!」

「逃げるって何処によ!? アンタはどうするの!?」

「私はここで出来るだけあいつらを引き付ける 大丈夫、私1人なら逃げ切れる」

 

「ミント……」

 

ヤンヤンはそれ以上何も言わなかった

ミントの指示は極めて適切であった

まだ… まだ希望を捨てる訳にはいかない…

大人達が嘗てそうした様に、今度はアタシ達があの子達を…

 

「必ず生きのびるのよ…! アンタが居なけりゃ、中華居酒屋なんて…!」

 

そう言い残してヤンヤンは子達達の元へ走った

その背中を見送ったミントは視線を眼前に迫る敵の元へと戻す

その瞳には不敵なまでの闘志が満々ていた

 

「さぁ ミント特製ウンチ爆弾の威力、特と味わいなさい!」

 

ミントは塹壕から踊り出る

 

「ニンニクと揚げ物だけを食して仕上げたウンチ爆弾、ワイルドテキサスボンバー!」

 

ショベルカーが爆散した

 

「ヨーグルトと賞味期限切れの生牡蛎で構成した液体ウンチ爆弾、乱れ雪月花!」

 

ロードローラーが炎上した

 

「豆板醤とチリソースが織り成す肛門破壊の真紅の悪魔、グランドクロス!」

 

戦車が横転する

 

「女に生まれて8年と3月、我ウンチの力、下天に知らしめたり!!」

 

ウンチ爆弾を手に炎に囲まれて聳立するミントの姿は、まさに古の三國志の英雄そのものであった

 

「!!」

 

その時、ミントは視界の隅に鎌首をもたげたクレーン車の姿を捉えた

 

「あ、あそこは…!」

 

そこは居住区から郊外へと続く地下道の真上

捕捉されていたのだ

あの鎌首の下には、何も知らぬヤンヤンと子供達が…! 人類の未来が…!

 

「やらせはしない!!」

 

ミントは矢の如く反応した

栗鼠の様にクレーン車によじ登るミント

 

「さぁ おネンネの時間よ! ミント特性、ハッカとメントールが原料の冷え冷えウンチ爆弾、爽快クールを枕にして、オ・ヤ・ス・ミ・ナ・サ・イ!!」

 

手にした取って置きの一発をその鎌首に叩きつける

 

(約束を守れなくてゴメンね、ヤンヤン… フラグを踏んだのは私だったね…)

 

閃光が迸り、刹那の浮遊感を感じて、ミントの意識は闇に飲まれた

 

(……お爺様…… ミントは立派に戦いました…… 誉めて… くれる……?)

 

 

 

 

 

「お爺様… お爺様… 誉めて…… んん?」

 

臀部の不快な温もりにミントは目を覚ました

 

「あ… あれ… 夢…… なんだ夢かぁ……」

 

そこは見慣れた天蓋付きのベッドの中だった

ぐっしょりとかいた汗と、頬を伝う涙

必死に夢の中で戦った自分がなんだか恥ずかしく感じて、ミントは布団を頭から被った

 

「オエッ!?」

 

その瞬間、鼻を突く刺激臭

ミントは臀部の不快感を思い出した

 

(あぁ…… ウンチ漏らしちゃった… 私、寝ウンチしちゃった……)

 

呆然と上半身をもたげるミント

まさかウンチ爆弾に自分がやられるとは…

ミントは枕元のティッシュ箱を引き寄せ、根気のいる作業を開始した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わっはは~ やっぱり面白いニンゲンだね~ せっかくだから、標本として暫く生かしておこ~」

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