IS~あの娘だけのヒーローに~<凍結>   作:カタヤキソバ

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 今回は少々短いです。


第十五話

 グツグツとお湯が沸騰する鍋に豆腐と戻したワカメ、そして油揚げを入れ、合わせ味噌で味を整える。皮がパリッと焼けた鮭の切り身をグリルから取り出せば、香ばしい香りが辺りを包み込む。

 

「おはよ~簪」

 

 一夏は朝の鍛練でかいた汗を風呂場で流し、濡れた髪を拭きながら居間に入ってくる。

 

「ん、おはよう一夏。朝御飯、出来てるよ」

 

 簪はそれを笑顔で迎え、朝食を並べる。

 

 衛宮家に厄介になり始めて早半年、すでに見慣れた朝の風景だった。

 

 

「簪、士郎さんたちは?」

「士郎さんと桜さんは一夏がシャワー浴びてる間に出掛けちゃったよ。ライダーさんはバイトだって」

 

 そうか、と返事をして一夏は食事に戻る。

 

 味噌汁を啜り、鮭を食べる。

 それだけで、この半年での簪の成長が実感できた。

 昔は形も大きさもまちまちだった具材たちは一定の大きさに切り揃えられ、味噌の濃さも丁度良い。鮭は皮はパリッと、身はホクホクになっていて箸が進む。

 そう、形が揃っていなかったり異常に焦がしたりしない、主婦としてのスキルを身に付けた簪がそこにいた。

 もちろん掃除もお手のものだ。あの日、風呂場を泡だらけにして涙目になっていた簪はもういない。今ではカビの一つも見逃さないカビキラーになっていた。

 

 和気藹々とは言わないものの、穏やかな空気の流れる和やかな時間だった。

 しかし不意に、朝のニュースを伝えているテレビから聞こえてきた言葉に簪は顔をしかめる。

 

「・・・またやってるね」

「まあな。やっぱり、皆気になるんだろ」

 

 簪とは対照的に、一夏は他人事のような物言いだった。

 

 テレビで報じているのはここ最近で最も世間を騒がせた事件。『織斑一夏』という『男』がISを起動した、という内容に関する事だった。

 

 それはつい先日の事。突如日本中のテレビをジャックした束は姿を消してから初めて大衆の前に姿を現し、こう宣言した。

 

『やーやー凡人共、今日はお前たちに面白い話を聞かせてあげよう! なんと!元世界最強である織斑千冬の弟、織斑一夏君がISを動かしました~!はいパチパチ~』

 

 一人で喋り一人で手を打ち鳴らした束は、それだけ言うとさっさと回線を元に戻し、またしても姿を眩ませた。

 突然の事にテレビを見ていた人々は事態をよく理解出来ず。それはテレビ局の人間も同じだったようで、その後の報道番組は全て束の発言についての話題で持ちきりとなった。あの発言は本当なのかとか、男にISが扱える訳が無いとか、テレビの有識者たちは口々に根拠の無い推論を述べていた。

 そんな訳で当然の如く織斑家には多くのマスコミが押し掛け、千冬自身にもそのマイクが向けられた。

 千冬は素直にその事実を肯定するとマスコミは気を良くし、次は一夏の学校の生徒たちや近所の人たちに一夏の話を聞き出した。

 

 簪の気分が悪いのはその部分だ。

 テレビに映る人たちは嬉々として一夏の事を話した。

 

 ーーーそれまでの自分達の行いなど全く省みず、あまつさえ失踪した一夏を心配する言葉を口にした。

 

 失踪したのは誰のせいなのか、一夏が姿を消しても誰も心配していなかっただろう・・・と。

 勿論簪だってその映像が編集されている事や、全ての人が一夏の味方で無かった訳では無いことは知っている。

 しかし・・・それでも納得出来なかった。

 

「簪、気持ちは嬉しいけどそんなに怖い顔するなよ」

 

 簪はハッと一夏の顔を見ると、恥ずかしさで赤くなる。

 

「・・・そ、そんなに・・・?」

「ちょっとだけな」

 

 一夏は苦笑いを見せ、簪は赤くなって縮こまる。

 

「俺は気にしてないから、簪もあんなのに反応しなくて良いからな」

「・・・うん、分かった」

 

 一夏は一度頷き、二人は食事を再開する。

 

 ・・・昔の一夏ならどういった反応を見せただろうか。勝手なことを言う人々に怒りを見せただろうか、それとも人々の期待を背負い込み、重圧に膝を折っただろうか?それともーーー

 

 ーーーしかし、現在の一夏はそのどれでもない。

 他人の勝手な言動など関係無い。俺は俺だと。そう言える強さを持っていた。それは物理的な、肉体的な強さでは無くて、精神的な強さの成長の証だった。

 

 

 朝食を食べ終えた一夏と簪は一緒に洗い物をする。簪だけにさせるのは気が引けると言う一夏と、自分がやるから一夏は休んでてと言う簪の間で決められた折衷案だ。

 そしてこの時間にその日の予定を決めるというのも、二人の日課だった。

 

「簪、今日は倉持技研に行こうと思うんだけど」

「ん、分かった。じゃあ私も一緒に行くね」

「良いのか?」

「うん。けど午後からで良いかな、午前中は屋敷の掃除がしたくて・・・」

「なら、俺は庭の草むしりをしておくよ、最近生えっぱなしだからな」

 

 そんなこんなで、二人は世間の喧騒なんかそっちのけで日常を満喫していた。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 その頃・・・

 

「一夏がISを・・・つまり、IS学園に行けば一夏に会える!」

 

 一人の少女は幼馴染みとの再開を心待ちにし、

 

「あいつ、どこ行ったのよ・・・。ーーー早く、早く日本に帰らなきゃ」

 

 一人の少女は友人の安否に心を痛め、

 

「ふん、男がISに乗るなんて許せませんわ」

 

 一人の少女は彼の存在を許せず、

 

「上から指示を貰ったけど・・・これってチャンスかな?」

 

 一人の少女は彼の登場を機に自由を求め、

 

「奴が教官の弟・・・あいつがっ」

 

 一人の少女は敬愛する女性が慈しむ存在を認めることが出来なかった。

 

 彼女たちは一夏を中心として集まり、互いに影響を与えて行く。

 ただしーーー

 

「アイツが織斑一夏・・・待っていろ、すぐに私がーーー」

 

 彼に集まるのは決して良いものだけでは無く、

 

「彼女が?」

『ああ、アレが我々の目的の為の最後のピースだ。戦力が整い次第、活動を開始する』

 

 波乱は、すぐそこまで近付いていた。




 お読み頂きありがとうございました!
 
 熱い手のひら返し。一夏の周囲の人間は手首が非常に柔らかいようです。
 
 次回からはIS学園に入学します。
 少々fate要素が減ってしまうと思いますが、楽しんで頂けるものを書けるよう頑張りますので応援よろしくお願いします!

 簪が朝食を用意してくれる・・・・・・。
 令呪を持って命ずる。一夏、末長く爆ぜろ。

 批評や感想・質問などいつでもお待ちしていますので、お気軽にお願いします!
 点数と共に理由を付けてくださると今後の改善点の参考になるので、どうかよろしくお願いします。

 では、次回をお待ちください!

 
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