IS~あの娘だけのヒーローに~<凍結>   作:カタヤキソバ

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第七話 

「・・・何しに来たの」

 

 簪に会いに来た本音という少女を居間に上げ、簪と本音が正面に座り、簪の横に一夏が、少し離れた所で士郎と桜がその行く末を見守っている。

 

 だが、簪の向ける視線は冷たい。それは本音を嫌っている、という訳ではない。怖いのだ。傷付く事が、傷つけられる事がどうしようも無く怖いから、踏み込まないよう、踏み込ませないように精神的に距離を取る。

 

 そうさせてしまう事を、本音は心から悲しく思う。自分はただ簪が心配で、必死に探してここまで来た。

 けれど、一目見た時に分かった。簪が自分に、自分達にどのような気持ちを抱いているのか。どうしてここまで追い詰めてしまったのか、と。

 

「・・・かんちゃんの事が、心配で・・・」

「・・・っ」

 

 何を今さら。そう怒鳴りそうになって、簪はそれを堪える。

 

「・・・心配で、それで何。私は更識に居たときより、余程幸せ」

 

 だから帰って。簪の視線がそう告げる。

 

 そう。簪は更識に居たときより、ここにいる方が幸せだと感じている。そして本音が『一人』でここにいるという事実だけで更識への、家族への最後の希望も失った。

 

 やはり私は必要とされていなかった。

 

 姉が一緒に居ればまた違ったかも知れない。けれどどんな理由があれ、失踪した妹よりも他の用事を優先させた事実は変わらない。

 忙しいのは分かるし、大切な用事を抜けられないのも分かる。

 けれど、理解出来るのと納得出来るのは話が別だ。

 本音に簪を連れ戻す気が有るのならば、引き摺ってでも刀奈を連れて来るべきだったのだ。

 

「・・・なあーーーっ」

 

 二人の様子を側で見て、一夏が声を掛けようとした矢先の事だ。

 轟音が響き渡った。

 

 空から鉄塊が降ってきたようなその轟音は、まさしくその通り。衛宮邸の庭に、鉄の塊が降ってきたのだ。

 巻き上がる砂煙。捲り上がる地面。

 

 それを、轟音を聞いて慌てて外に出た全員が視認した。

 黒い鉄の塊に、その肩に乗る一人の女性。

 そして一夏だけが、その人物が誰であるのか瞬時に理解した。

 

「た、束さん!?」

「やーやーいっくん!ちーちゃんに頼まれて、いっくんを迎えに来たよー!」

 

 やって来たのはISの開発者にして、千冬の唯一の親友である篠ノ之束。

 

 そして、束の言葉を聞いて一夏は少しだけ嬉しくなった。千冬姉は俺の心配をしてくれていたのだと。

 けれどーーー

 

「・・・束さん。千冬姉には悪いけど、俺は帰りません」

「んー?どうしてかなー?ーーーもしかして、そいつのせい?」

 

 ニコニコとした束の表情は変わっていない。けれど、その瞬間この場にいる全員が感じた。

 一夏の隣にいる簪に向けられた、身も凍るような冷たい視線を。

 

 先程簪が本音に向けた視線になど、束の前には児戯に等しい。簪は拒絶する為のもの、束はーーー

 

 ーーー虫を見るのと変わらない、そんな視線だった。

 

 簪はビクッと身を震わせ、一夏の背に隠れる。

 

「束さん・・・なにを・・・」

 

 一夏ですら声が震える。束が人に何の感情も抱いていない、人を判別出来ないのは知っていた。

 けれど、これ程までの殺意を感じさせられたのは初めてだった。

 

「いやね、いっくんの近くにお邪魔虫がいるからそれを掃除しようと思って。ーーープロトゴーレム君」

 

「ーーーやっちゃって」

 

 その言葉を聞いた瞬間。直感に従い、士郎は駆け出し、一夏は簪を抱えて後ろに飛んだ。

 

「ーーーっ!」

 

 鉄の塊だと思ってたそれは体を起こし、その太い腕を簪に向かって振りかぶる。

 

「ーーー熾天覆う七つの円環《ロー・アイアス》!!」

 

 だがその腕は簪には届かない。士郎の展開した七枚の花弁を持つ盾によって、その腕は受け止められた。

 

 一夏はその光景を見て驚きに目を見開く。

 あれは何なのか、士郎さんは一体何をしているのか。そして混乱する頭で理解できた事、それはーーー

 

「ーーーIS・・・なのか」

 

 鉄塊だと思っていたもの、それがISだという事だ。簪を抱き起こしながら、眼前の光景に釘付けになる。

 

「んーなになに、そのピンクの?んー・・・IS・・・じゃあないし」

 

 ぶつぶつと独り言を言う束だったが、その現象にピンと来たようで、ポンッと手を打つ。

 

「あーなるほど。お前、魔術師かぁ」

「・・・まさか、ISなんて物を開発した科学者がそれを知っているとは驚いたな」

「そりゃーそうだよー。だって私は天才だよ?」

 

 けど、と束は続ける。

 

「そんなものを使ってるから、人は宙に目を向け無いんだよ。だから私はソレ、嫌いなんだよね」

 

 それはここに来てから初めて感じた、束の人間的な声だった。

 

「ーーーさ、プロトゴーレム君、どんどんやっちゃってー!」

 

 だが束は気を取り直して、とでも言わんばかりに元気よく、それこそなんの感慨も抱かないように、無邪気な殺意を眼前の士郎に向ける。

 

 士郎はアイアスを消し、その攻撃を後ろに下がって避ける。アイアスで受けきることは不可能では無いが、消費魔力と釣り合わない。第一、守るだけではこの危機を脱する事は不可能だ。

 

 士郎はチラッと後ろを見る。既に一夏、簪、本音は桜の指示で土蔵の辺りまで離れている。

 ーーーこれだけ離れていれば巻き込む心配も無い。

 

「ーーー投影・開始《トレース・オン》」

 

 士郎は立ち止まり、意識を自分の内部に向ける。

 既にプロトゴーレムは腕を振りかぶり、こちらに降り下ろそうとしている。ーーーだがそれだけあれば十分だ。

 生半可な武器では太刀打ち出来ない。図体がでかいというのはそれだけで脅威だ。ましてやここは町中で、動き回って翻弄することも出来ない。

 そして、後ろには守るべき人たちがいる。

 

 ・・・そうだ、これはあのときの再現だ。

 

 ならばここで投影するものは一つしかあり得ず、それを使うことがこの場での最善だ。

 

 ーーー体調万全、気力万全、魔力に不足無し。

 

「ーーー投影、装填《トリガー・オフ》」

 

 イメージするのは彼の大英雄が手に持つ剣斧。

 その贋作を投影し、掴み取る。

 だがこの巨体を吹き飛ばすには、それだけでは足りない。

 

 プロトゴーレムが迫り、その腕を降り下ろす。

 士郎は降り下ろされた腕をその剣斧で受け止め

ーーー地が割れる。

 だがその豪腕を受けて尚、士郎は怯まない。

 巨大な剣斧を振り回す怪力ごと投影し、その力を解放する!!

 

「全工程投影完了《セット》ーーー是、射殺す百頭《ナインライブズ・ブレードワークス》!!」

 

 九つの斬撃がほぼ同時にゴーレムに炸裂し、その衝撃は一夏たちの所にまで伝播してーーー

 

 ーーーゴーレムは弾け飛び、二度とその身を動かす事は無かった。




 お読み頂きありがとうございました!

 これがやりたかったんです!
 因みにプロトゴーレムがプロトな理由は、ビームが撃て無い事です。まだ付いてません。

 批評や感想・質問などいつでもお待ちしておりますので、お気軽にお願いします!

 ゴーレムを破壊された束さんはどうするのか、次回をお待ちください!
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