ソードアート・オンライン 仮想世界に降り立つ暁の忍 -改稿版-   作:鈴神

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第九十九話 舞い降りた女神

 

「うわぁ……かなり深いね。一体、この階段って何段あるんだろう」

 

「アインクラッドの迷宮区タワー一個分は確実にある高さだ。それより早く行くぞ」

 

ユウキの呟きに対し、手短に答えて、目の前の階段へと駆け出すイタチ。その後を、ユウキをはじめとした六人のパーティーメンバーが追随するのだった。

イタチとその仲間達――エクスキャリバー獲得クエストのパーティーが現在下っている階段は、イタチとラン、リーファが以前成功したトンキー救出クエストを契機に開通した、ヨツンヘイムへ通じる回廊である。現時点において、アルンからヨツンヘイムへ向かうための最速・最短の移動経路であるとともに、件のエクスキャリバーが封印されているダンジョンへ到達する唯一の経路でもある。

 

「イタチ、ヨツンヘイムにはどのくらいで到着するの?」

 

「五分程度下り続ければ、断崖の入口に到着する。例のダンジョンへは、さっき話したトンキーと名付けられた邪神に乗って向かうことになる」

 

「邪神に乗る、かぁ……確か、邪神級モンスターはケットシーでもテイムできないって話だよね。僕、楽しみだよ!」

 

眼を輝かせ、屈託の無い笑みを浮かべて話すユウキに対し、イタチは相変わらずの冷静な態度で応じていた。そんな、気兼ねなく他愛の無い会話を交わす二人の姿を、しかし容認できないメンバーが三人ほどいた。

 

「あのね、ユウキ。一応言っておくけど、トンキーは正確にはテイムモンスターじゃないからね。あたし達を運んではくれるけど、あたしが呼ばない限りは来ないから、そこら辺忘れないでね」

 

「そうそう。イタチ君と二人っきりで乗ろうなんて、考えないようにね」

 

純粋なユウキとは真逆のニュアンスの籠った、それはそれは良い笑顔を浮かべながら、忠告と言う名の牽制を行うリーファとアスナ。シノンも無言ながら、言いたいことは全く同じらしく、恨めしそうにユウキに視線を送っていた。

 

「へぇ~……そうなんだ。ちょっと残念だね、イタチ」

 

「まあ……呼び出せるに越したことは無いがな」

 

イタチと並んで階段を下るユウキに対し、笑顔のまま警戒姿勢を継続させる三人のことなど、当人はまるで意に介さない。敢えて無視しているのではなく、天然で気付いていない様子だった。

だが、勘の鋭いイタチは、自分達に注がれる視線の意味に気付かないわけはなく……三人が発する視線によってグサグサと身を串刺しにされるような感覚を味わっていた。

 

(初対面で関係が上手くいかないのはよくあることだが……これは、相当拙いかもしれんな)

 

エクスキャリバー獲得クエストを前に、パーティーの中に立ち込める不穏な空気をどうにかしなければと苦心するイタチ。だが、イタチがユウキを庇うような真似をすれば、火に油を注ぐようなもの。ここは、第三者であるコナンとランに協力してもらうほか無さそうだ、と考えていた……その時だった。

 

「えい!」

 

「っ!!?」

 

途端、イタチの全身の体毛が、まるで電撃が走ったかのように逆立った。声こそ上げないものの、目を見開いて震え上がるその姿は、普段のイタチには有り得ないものであり、その場に居た一同もまた驚きの表情を浮かべていた。その原因を作ったのは、先程までイタチと並走していた少女だった。

 

「…………ユウキ、何をしている?」

 

「いやぁ……何かこう、ニョロニョロとしていたから、気になっちゃって、つい……」

 

ギギギ、とイタチが首を回して後ろの方へ視線をやると、そこにはイタチの黒い尻尾をぎゅっと握るユウキの姿があった。すぐ後ろから視線を突き立ててくる三人への対応に思考を走らせていたイタチの後ろに回り込んだユウキは、その隙を突いてこのような行動に及んだらしい。

 

「ケットシーの耳と尻尾には、特殊な感覚が走っているっていうけど……結構敏感だったんだね!」

 

「俺を使って、そんなことを確かめるんじゃない。そして、いい加減に離せ」

 

「えぇ~、別にいいじゃん、面白いんだし。あ、そうだ!今度は耳に触りたいけど、いい?」

 

「駄目に決まっているだろう……!」

 

悪びれる様子が全く無く、その反応を心底楽しんでいるユウキに、イタチは頭が痛くなる思いだった。同時に、背後から追随していた三人の女性達の視線が、急速に殺気を帯び始めていることに気付いたのだから、尚更だった。だが、ユウキの所業を許容できない人物は、他にもいた。

 

「そうです!そんなの駄目です!」

 

「わわゎっ!」

 

イタチとユウキの間を遮るように飛び出したのは、イタチのことをパパと呼ぶ、ナビゲーション・ピクシーのユイだった。頬を膨らませて怒りを露にしながらユウキを睨み付けるその姿に、さしものユウキも動揺していた。

 

「パパの耳と尻尾に触っていいのは、ママと私だけです!」

 

「…………おい」

 

ユイの登場のお陰で、ユウキも大人しくなるかと思いきや、この爆弾発言の投下である。沈静化しかけていた頭痛が、さらに増すのを感じていた。

 

「あ、あははは……ちょっとふざけ過ぎたかな?ごめんね、ユイちゃん」

 

「分かってくれれば良いんです。それよりママ、どうぞ!」

 

ユイの勢いに押されて大人しくなったユウキが、イタチの尻尾を話す。だが、今度はユイが解放された尻尾にしがみ付き、それをアスナに差し出してきたのだ。

 

「え!?……それじゃあ、折角だから……」

 

「ちょっとアスナ!あんたが握ってどうするのよ!」

 

「そうですよ!抜け駆けなんてずるいです!」

 

「駄目です!パパの尻尾は、ママだけの……」

 

「お前は黙っていろ。あと、いつまでも掴んでいるんじゃない」

 

「むぐぐっ!」

 

アスナに尻尾を差し出し、握れと言っているユイを引き剥がし、ポケットへと突っ込むイタチ。暴走するユイを無理矢理に黙らせたものの、触発された後ろの三人による尻尾の争奪戦は、治まる気配が全く無い。

 

「…………ハァ」

 

階段を下るスピードを落とさず、躓く様子も見せず、すぐ後ろで揉み合う三人に対し、イタチは深い溜息を吐きながら、「もはや止められない」と半ば匙を投げてしまった。

 

「本当に大丈夫かよ、イタチの奴……」

 

「リーファちゃん、負けちゃだめだよ!」

 

パーティーのリーダーであるイタチ。彼を巡って争うアスナ、リーファ、シノンの三人。爆弾のような存在として現れたユウキ。相変わらずリーファを応援する姿勢を崩さないラン。そんな六人の姿を見て、コナンは自分達がこれから臨むクエストの行方が、その難易度とは別の意味で、さらに心配になるのだった。

 

 

 

 

 

階段を下りながら、イタチを巡る争いをするという器用な真似をして進むことしばらく。遂にイタチ等七人は、ヨツンヘイムへと到達した。

 

「すごい……!」

 

「わぁぁあ!すごい景色だね!」

 

階段を下り切った先にあったのは、高さ約一キロメートルの地点に切り立った、断崖絶壁。そこから望む眺望は、ヨツンヘイムを初めて訪れたシノンと、この場所を初めて訪れるユウキを感嘆させる程のものだった。天蓋から突き出す幾つもの巨大な水晶と、地底に広がる邪神族の城や砦に灯る篝火が放つ仄かな光が織り成すコントラストは、この場所へ幾度か来たことのあるイタチやリーファですら魅入られるような美しさがあった。

だが、このアルヴヘイムの地下に広がる地下迷宮『ヨツンヘイム』は、そんな壮麗な美しさからは考えられないような、残酷な弱肉強食の世界でもある。

ヨツンヘイムに犇めく邪神型モンスターは、アルヴヘイム・オンライン屈指の強さを誇る強大なモンスター達であり……生半可な腕前のプレイヤーでは、全滅必至の凶悪なフィールドでもある。しかし、邪神族討伐には、その突出して高い難易度に比した報酬が望める。スキル熟練度の大幅向上が約束されることは勿論、ドロップアイテムとしては、レアなポーションや素材といったアイテム、或いは酒類のような食材アイテムすら手に入るのだ。故に、常に全滅と隣り合わせの氷の世界であっても、挑む者達は後を絶たない。エクスキャリバー獲得クエストの噂が立ってからは、挑戦者の数はさらに増えているらしい。

だが今回、イタチ等パーティーが目指す先は、眼下に広がる邪神族が闊歩する地下迷宮ではない。断崖絶壁から望むヨツンヘイムの景色への感慨を横へ置くと、イタチは本命のダンジョンへ向かうための準備をするために、アスナとリーファに声を掛ける。

 

「アスナさん、皆に支援魔法(バフ)をお願いします」

 

「任せて、イタチ君」

 

イタチの言葉に応じたアスナは、右手を翳し、魔法発動のスペルコードを唱え始める。詠唱が完了すると、イタチ等パーティーメンバー全員の体を、青いライトエフェクトが一瞬で包み込む。光が消えた後には、視界の端にバフを示すアイコンが付加され、寒さが緩和される。アスナが唱えた凍結耐性を向上させる支援魔法は、デバフの凍結状態への耐性を上げる以外に、体感的な寒さも緩和するのだ。

寒さによる感覚のブレが緩和され、剣を振るうのに問題が無いことを確認したイタチは、そろそろ出発すべきと判断し今度はリーファへ声を掛ける。

 

「リーファ、トンキーを呼んでくれ」

 

「オッケー、お兄ちゃん」

 

イタチの言葉に頷いたリーファは、右手の指を唇に当てると、高く口笛を吹き鳴らした。その数秒後、「くおぉぉーん」という特徴的な鳴き声が、ヨツンヘイムに吹き荒ぶ寒風を裂くように響き渡った。すると、断崖の真下に広がる、底無しの闇を湛えた大穴――ボイドから、巨大な影が浮上してきた。

四対八枚の翅を広げて飛来する巨大な影は、無数の触手が生えた胴体と、片側三個ずつの目と象を彷彿させる長い鼻を携えた頭部を持つ。イタチやリーファからは『象水母』と表現される邪神型モンスター――トンキーである。

 

「トンキーさん!お元気でしたか?」

 

トンキーが断崖へと姿を現すと共に、イタチのポケットの中に押し込められていたユイが飛び出し、その顔の近くまで近付く。するとトンキーは、それに応じるように再度鳴き声を上げていた。

一方、トンキーを初めて見たユウキとコナン、シノンはというと……

 

「わぁー!ほんとに邪神が来た!すっごいね!それに、なんか可愛い!」

 

「イタチ……お前って奴は、ホント非常識だな……オイ」

 

「今更でしょ。別に驚くことでもないわ」

 

トンキーの姿に目を輝かせて感激するユウキ。それと対照的に、コナンの方は、SAO時代から変わらず、自身の理解が全くと言って良い程及ばないイタチの規格外ぶりに顔を引き攣らせていた。シノンはシノンで、イタチならばこんな光景は珍しくもないとばかりに冷静な様子だった。

ちなみに、トンキーのことを屈託のない笑みで「可愛い」と称したユウキの言葉に、リーファとランは、笑みを浮かべていた。その奇妙な容姿故に、中々言われない表現なだけに、トンキーを気に入っている二人にとって、ユウキの言葉はかなり嬉しいものだった。

 

「イタチ、背中に乗っていいんだよね!?」

 

「ああ。じゃないと、目的地には行けないからな」

 

「よーし、それじゃあ行くよ!そぉーれっ!」

 

イタチの了承を得たユウキは、トンキーを見てハイになったテンションのまま、助走を付けてその背中へとジャンプした。

 

「おっとっとと!……やった!」

 

勢い余って若干バランスを崩したユウキだったが、どうにか持ち直すことに成功した。トンキーの背中に乗ってイタチ等の方を向くと、Vサインを決めていた。

その姿に、イタチ等はやれやれと肩を竦めて若干呆れながらも、後に続く形で背中に飛び乗っていく。以前にエクスキャリバーの封印されているダンジョンに挑戦した際にトンキーに乗ったことのある、イタチ、アスナ、リーファ、ランの四人は危なげなく乗り込む。相変わらず肝の据わったシノンと、高所には滅法強いコナンもまた、飛び乗った。

 

「それじゃあトンキー、エクスキャリバーの封印されているダンジョンまで、よろしく!」

 

リーファの求めに応じ、「くぉおーん」と一鳴きしたトンキーは、七人をその背中に乗せて、ヨツンヘイムの薄明かりが照らす寒空へと飛び立つのだった。

 

 

 

 

 

「イタチ。あれが、エクスキャリバーがあるダンジョンなの?」

 

「ああ、そうだ。ボイドの真上にある関係上、ヨツンヘイムの地表からでは、その存在を確認できない。さっきの断崖か、トンキーの背中にでも乗らない限りはな……」

 

トンキーの背に揺られることしばらく。ヨツンヘイムの寒空を飛行していたトンキーは、徐々に目的地へと近付いていた。その最中、ユウキの視線が捉えたのは、天蓋から縦横無尽に伸びる世界樹の根に絡め取られた、巨大な結晶体。逆さまに吊るされたピラミッドのような形状のそれこそが、これからイタチ等のパーティーが挑むエクスキャリバーが封印されたダンジョンである。

 

(入口までは、もうそろそろ、だな)

 

ダンジョンの壮麗な造りに感動しているユウキを余所に、イタチはダンジョンの上部側面へと視線を向ける。そこに設けられたテラスには、以前このダンジョンに挑戦する際に使った、ダンジョン内部へと通じる入口が存在することが分かっている。このまま近付けば、あと一分と掛からず到着する筈。そう考えたイタチは、メンバーに呼び掛けて準備を始めるよう促そうとする。だが、その時だった。

 

 

 

くぉぉぉおお――――ん!!

 

 

 

「っ!?」

 

「え?」

 

「は?」

 

突如、何の前触れも無く高い声で鳴きだすトンキー。それと共に、突如体から重力の感覚が失われたことに、何人かのメンバーは、思わず呆けたような声を出してしまった。いきなりのことに、一体何が起きたのか、それを理解する頃には――――急降下を開始したトンキーが、最高速度に達していた。

 

「むっ!」

 

「ぐぅぅうっ……!」

 

「「きゃぁぁぁあああ!!」」

 

襲い掛かる風圧に、イタチとコナンは呻き声を漏らし、アスナ、ラン、シノンの三人は絶叫を上げる。一方、リーファとユウキの二人は……

 

「ひゃっほぉお――――――う!」

 

「イエ――――――イ!!」

 

この予想外の急展開に見舞われる中、ジェットコースター気分で仲良く歓声を上げていた。

 

(トンキーの異常……まさかこれも、エクスキャリバー獲得クエストに関係しているのか……?)

 

トンキーの背中に、振り落とされないようにしがみ付きながらも、現状を把握しようと思考を走らせるイタチ。このタイミングで発生したトンキーの異常は、エクスキャリバー獲得クエストの不自然な内容と、何か関わりがあるのか。その結論が出ない内に、トンキーは急ブレーキをかけ、ヨツンヘイムの地表五十メートル程度の空中で静止した。

 

「一体、何が……」

 

「ここって……」

 

トンキーが停止したところで、ようやく余裕ができたのか。イタチ同様に何が起こったのかについて考えを巡らせ始める一同。そんな中、周囲を見渡していたリーファが、あるものを見つけた。

 

「お兄ちゃん、あれ見て!」

 

リーファが指差した方向へと視線を向けるイタチ。するとそこでは、三十人超の大規模レイドパーティーが、トンキーと同類の象水母型邪神を攻撃していた。しかも、それだけではない。レイドパーティーの近くには、もう一体の人型の、剣で武装した邪神が立っており、一緒になって象水母型邪神を攻撃していたのだ。

 

「これって……」

 

「ああ。間違いない。俺達がトンキーと初めて出会った時の状況に、かなり近い。だが、構図がまるで違う。あの武装した邪神は、明らかにレイドパーティーを援護している」

 

イタチの指摘した通り、その場で戦闘を繰り広げていた象水母邪神、人型邪神、レイドパーティーは、相互に敵対しているというわけではなかった。戦況は、象水母邪神が人型邪神とレイドパーティーの一方的な攻撃に晒されており、防戦一方となっている。一方で、人型邪神とレイドパーティーは、互いを攻撃してはいない。

しかも、それだけではない。象水母型邪神が倒された後、人型邪神とレイドパーティーは、揃って同じ方向へ移動を始めたのだ。まるで、味方同士で協力関係にあるかのように。

そしてその光景は、ヨツンヘイムの当たり一面を見渡していれば、至る場所で起こっていた。武装した人型邪神とレイドパーティーが組んでの、象水母型邪神の討伐……その異様な光景に、トンキーの背に乗るメンバーの誰もが困惑していた。

 

「まさかあの邪神、テイムされているの?」

 

「有り得んな。現在実装化されているスキルとアイテムを最大限に活用しても、邪神級モンスターのテイムはシステム的に不可能だ」

 

テイムモンスターこそいないが、イタチとてケットシー特有のスキルであるテイム関連の情報には精通している。故に、イタチが言っている以上は、邪神級モンスターのテイムは不可能なのだろうと、一同は納得する。

ならば、一体この状況は何なのか。メンバーの誰もが疑問に思う中、真っ先に答えを導き出したのは、現実・仮想世界の両方で名探偵として知られるコナンだった。

 

「考えられる可能性は、例の“クエスト”だな」

 

「俺も同じことを考えていた。まず、間違いないだろうな」

 

コナンの出した結論に、イタチもまた同調する。アスナやユイが集めた情報によれば、ALOを現在賑わせているエクスキャリバー獲得クエストは、モンスターを討伐するスローター系である。ヨツンヘイムの現状と照らし合わせると、標的はトンキーの同胞たる象水母型邪神。それを、人型邪神と協力して討伐するという内容だろうか。

 

(このクエストは、NPCから発注されているもの。ならばそのNPCは、人型邪神をレイドパーティーに与える権限を持っているということになる……)

 

ALO最強の伝説級武器、聖剣『エクスキャリバー』の入手クエストが、前代未聞の邪神同行型のスローター系クエスト。しかも、標的はトンキーの同類。繰り返し発生する異変の数々を鑑みるに、これはいよいよ、この世界――アルヴヘイムにおいて、天変地異にも等しい重大な事象の前触れなのかもしれない。

他のパーティーメンバー達が困惑の真っ只中にある中で、イタチはこの世界の舞台たるアルヴヘイムと、そして自分達が置かれた状況とを分析するべく、さらに思考を走らせようとする。だが、その時だった。

 

「誰だ!?」

 

「えっ……!?」

 

「お兄ちゃん!?」

 

突如背後に感じた気配に、思考を中断したイタチが勢いよく振り返る。イタチのいきなりの挙動に驚いた他のメンバーも、倣って後ろを振り向く。すると、彼等の視線の先、トンキーの背中の一番後ろの空間において、奇怪な現象が起こった。

どこから発生したのか分からない、光の粒が空中に集まり、凝縮し始めたのだ。凝縮された光の粒子は、やがて巨大な人影を作り出した。

身を包むのは、ローブのような長い衣装。足先まで届くかという程の長い金髪。そして、優雅かつ超然とした……女神を彷彿させるような美貌の女性だった。三メートル超の、およそ一般的なアバターのサイズからかけ離れた長身の女性は、イタチをはじめとしたパーティーメンバー達を見下ろすと、静かに口を開いた。

 

 

 

「私は、『湖の女王』ウルズ」

 

 

 

「ウルズ?……それって、もしかして」

 

「北欧神話に出てくる、運命の女神の一柱ね。過去を司る女神、だったと思うわ」

 

『ウルズ』という名前には、イタチも覚えが会った。リーファとシノンが言うように、北欧神話に出てくる運命の女神、ノルニルの一柱であり、過去を司ることで知られている。そして、ALOの世界観は、多数の神話や物語をベースにしている。北欧神話はその中でも中心的な要素であり、その中に登場する名前は、このゲームの中で重要な意味を持つ。

目の前に出現した女神もまた、このクエストを左右する何かを秘めている。イタチはそう確信していた。問題は、目の前の女神が敵なのか、味方なのかにある。

 

「ユイ、あの女神のNPCが敵か分かるか?」

 

「いいえ。そこまでは私には分かりません。けど、あのNPCのHPはイネーブルにはされていないようです」

 

「ならば、現状では敵にはならないということか」

 

目の前の女神が敵にはなり得ないことに、内心で安堵するイタチ。少なくともこれで、翅が使えないヨツンヘイムで、トンキーに乗って空中戦を繰り広げるという無茶をするリスクは無くなった。

 

「けれど、少し妙なこともあります。通常のNPCとは違って、コアプログラムに近い言語エンジンモジュールに接続しており……AI化されているようです」

 

「確かに……それは少し妙だな」

 

ルーチン化された会話しかしない通常のNPCとは異なる、特殊な仕様の女神の登場。これもまた、エクスキャリバー獲得クエストの特殊性故なのか。疑問は増えるが、今は目の前に現れた女神の目的を知ることが先決だと、イタチは考えた。イタチが身構える中、やがて女神ウルズは再び話しだした。

 

「我等が眷属と絆を結びし妖精たちよ。そなたらに、私と二人の妹から一つの請願があります。どうかこの国を、『霜の巨人族』の攻撃から救って欲しい」

 

「眷属?女神の眷属って、一体……?」

 

「トンキーと同じ、象水母型邪神のことだろう」

 

ウルズの言葉の意味が分からず、他の面子同様に首を傾げるばかりだったユウキの疑問に答えたのは、イタチだった。

忍の本分は、戦闘だけではない。破壊工作はもとより、諜報活動と、それによって得た断片的な情報を整理し、真相を導き出すことも含まれる。故に、アルヴヘイムに現在起こっている異変の数々を繋ぎ合わせ、推測を立てることも、イタチにとってはさして難しいことではなかった。

 

「霜の巨人族の攻撃とは、レイドパーティーと行動を共にしている、人型邪神による、象水母型邪神への攻撃だろう。事態の流れから察するに、エクスキャリバーを餌にしてレイドパーティーを嗾けている黒幕は、霜の巨人族。違うか?」

 

イタチがすらすらと述べた答えに対し、ウルズは静かに頷いた。そして、ウルズが手を振るうと、傍らの空間が歪み、スクリーンのように別の光景を映し出した。

 

「かつてこの『ヨツンヘイム』は、そなたたちの『アルヴヘイム』と同じように、世界樹イグドラシルの恩寵を受け、美しい水と緑に覆われていました。我々『丘の巨人族』とその眷属たる獣たちが、穏やかに暮らしていたのです」

 

その言葉を皮切りに、ウルズが造り出した空中のスクリーンの光景が、変化していく。それと共に、現状ではイタチ等プレイヤーが知り得ない、北欧神話に基づくアルヴヘイムに秘められた真相が語られていく…………

 

 

 

その昔、邪神級モンスターの闊歩する氷の世界としてしられるここ、ヨツンヘイムは、まるで異なる様相を呈していた。一面を草木や花々が覆い尽くし、ボイドと呼ばれる大穴があった場所には、清らかな水を湛えた湖が存在していたのだ。

だが、そんな豊かな大地を狙い、地下深くにある氷の国『ニブルヘイム』を支配する霜の巨人族の王、スリュムがある謀略を巡らせた。それは、鍛冶の神ヴェルンドが鍛えた、『全ての鉄と木を断つ剣』として知られる聖剣『エクスキャリバー』を、ヨツンヘイムの中心にある『ウルズの泉』へ投げ込むというもの。ウルズの泉には、世界樹イグドラシルの根が全面に伸びており、これを介してヨツンヘイムは恩寵を授かっていた。泉に投げ込まれたエクスキャリバーは、最も重要な部分の根を断ち切り……その結果、暖かく豊かな大地が広がるヨツンヘイムは、冷気に満ちた、さながら氷河期の様相を呈する凍土と化した。

ヨツンヘイムを覆い尽くす冷気は、泉に満ちていた大量の水すらも凍結させた。そうして出来あがった巨大な氷塊は、泉へ伸びていた世界樹の根に絡め取られて上昇し……ヨツンヘイムの天蓋へと突き刺さった。氷塊が取り除かれた跡に残っていたのは、一筋の光も差さない暗く深い巨大な穴――ボイドだった。

 

 

 

「王スリュム配下の『霜の巨人族』は、ニブルヘイムからヨツンヘイムへと大挙して攻め込み、我々『丘の巨人族』を捕らえ幽閉しました。そして、かつて『ウルズの泉』だった大氷塊に居城『スリュムヘイム』を築き、この地を支配しました。私と二人の妹は、凍り付いたとある泉の底に逃げ延びましたが、最早かつての力はありません」

 

スクリーンに映し出された映像と、ウルズの話から状況を正確に理解し始める一同。だが、ここまでの話は、過去に起こったという設定上の話でしかない。問題は、恐らくここからなのだ。現在アルヴヘイムに起こっている異変が、この世界にどんな影響を齎すのか。そのリスクを語ろうとするウルズの瞳は、心なしか悲愴を湛えているかのように思えた。

 

「霜の巨人族たちは、それに飽き足らず、この地に今も生き延びる我等の眷属の獣たちを皆殺しにしようとしています。そうなれば、私の力は完全に失われ、スリュムヘイムは上層のアルヴヘイムにまで浮き上がることでしょう」

 

その言葉を聞いた途端、イタチ達の中で緊張が走った。ゲームの設定上とはいえ、スリュムヘイムの上昇は、温暖な大地だったヨツンヘイムを氷河期に激変させる程の影響力を持っている。それ程の変化が、今度は地上部たるアルヴヘイムにまで及ぼうとしているのだ。仮にそんなことになれば、真上にあるアルンの街は勿論、世界樹のイグドラシル・シティへの影響は免れない。下手をすれば、九種族全ての首都すら崩壊させる可能性がある。

 

「王スリュムの目的は、世界樹ユグドラシルの梢に実るという、『黄金の林檎』です。それを手に入れるためならば、ここヨツンヘイムより地上へ攻め入り、アルヴヘイムすらも凍てつかせることでしょう。そして今、スリュムは新たな策謀を巡らせました」

 

「それが、エクスキャリバーの獲得クエスト……」

 

「そういうことだ。プレイヤー達にクエストを発注しているNPCは、恐らくスリュムの手先だろう。エクスキャリバーの獲得に血眼になっているプレイヤー達を利用して、ウルズの眷属に相当する邪神級モンスターを駆逐して、アルン侵攻の布石にするつもりだろう」

 

「邪神級モンスターの手を借りて邪神を狩ることができるんだ。エクスキャリバーが手に入るだけでなく、膨大な経験値と大量のレアドロップも手に入れることができる。プレイヤーの欲望を利用した、見事な策略ってわけだ」

 

イタチに続き、コナンがそう付け加える。既に二人は、エクスキャリバーを巡る一連の出来事をゲームの中の出来事とは捉えていない。ウルズの話に出た、スリュムという名の霜の巨人族に対する認識もまた、単純なNPCという枠に収めていない。

二人をはじめ、この場にいるほとんどの者の心は、かつて仮想世界の死闘に臨んだ時へと回帰しようとしていた。

 

「それじゃあ、報酬のエクスキャリバーも……」

 

「出まかせか、あるいは贋作と見て間違いあるまい」

 

氷のダンジョンに封印されているエクスキャリバーは、ニブルヘイムからヨツンヘイムへと進行するための楔であり、アルン侵攻に際して引き抜くことは許されない。ならば、クエストの報酬はイタチの言うように、まず本物ではない筈。そしてその推測は、ウルズによって肯定される。

 

「恐らく、鍛冶の神ヴェルンドが鍛えた時、槌を一回打ち損じたため投げ捨てた、偽剣『カリバーン』を与えるつもりでしょう。見た目は同じでも、真の力は持たない、しかし強大な力を持つ剣を」

 

「影打ちというわけか。これで全て、合点がいったな。それで、眷属が殺されて、あんたの力が完全に失われ、アルンが崩壊しようとしているこの最中、俺達に何をさせたいんだ?」

 

既にその答えについて確信は持っている。それでもイタチは、目の前の女神に先を促した。忍びとして、自分と仲間達がこれから臨む『依頼(クエスト)』を改めて引き受けるために。

そして、ウルズはイタチ達の目指す先だった氷のダンジョン、スリュムヘイムに腕を差し伸べながら、それを口にした。

 

「妖精たちよ、スリュムヘイムに侵入し、エクスキャリバーを『要の台座』より引き抜いてください」

 

その言葉を最後に、ウルズの姿は一瞬の発光とともにその像は崩壊し、無数の光の粒子と化した。だがその後、残留した一部の粒子が、虚空を伝って移動し、リーファのもとへと流れ込んできたのだ。

 

「お兄ちゃん、これ!」

 

イタチをはじめ、パーティーメンバー全員が、リーファの手元へ視線を向ける。集まった粒子は、リーファの掌中で丸い形を取り……やがてそれは、大きな宝石が嵌め込まれたメダリオンと化した。だが、その宝石は、カットの六割以上が黒く染まっていた。

 

「成程。これが全て染まった時が、タイムリミットということか。かなり時間は差し迫っているようだがな」

 

「う~ん……よく分かんないけどこれって、とにかく急いだ方が良いんだよね。どうするの、イタチ?」

 

「元よりエクスキャリバー獲得のためにここへ来たんだ。今更引き返すつもりは無い。譬えこの先に、どのような結末が待ち受けていたとしてもな」

 

それだけ言うと、イタチはリーファを促してトンキーを件のエクスキャリバーが封印されている、氷のダンジョン――スリュムヘイムへと向かわせた。

その道中、ランが先程のウルズからの依頼内容について、不安を感じた様子で、イタチへと問い掛けた。

 

「このクエストって、エクスキャリバーの正規の獲得クエストで間違いないみたいだけど……失敗したら、どうなるのかしら?さっき言われたみたいに……本当にアルヴヘイムに霜の巨人族が攻め込むなんてことになるのかしら?」

 

「まさか。いくらなんでも、街をモンスターの群れが襲撃するようなイベントでしょ?まさか、何の告知もされないままにそれが実行されるなんて有り得ないわ。それは、どんなゲームでも同じじゃないの?」

 

ジャンルは違えど、シノンのホームグラウンドであるGGOも、ALOと同じくVRMMOである。プレイヤーの拠点たる街をモンスターが襲撃するような重大イベントが発生するならば、事前に告知する筈である。故に、仮にクエストに失敗したとしても、先程のウルズが言ったようなことは、現実には起こり得ない筈なのだ。それは、シノンだけでなく、この場に居る全員の共通認識だった。

しかし……

 

「その“まさか”が、起こり得るかもしれんぞ」

 

ただ一人、イタチだけは、その固定観念を否定した。

 

「GGOをはじめとしたゲームは、『ザ・シード』規格だが、このALOだけは、SAO事件中から運営しているVRMMOだ。そのシステムは、SAOにて運用されていたものに限りなく近いコピーだ」

 

「SAOのシステムには、ALOには無い……本当にこの世界を崩壊させるような特殊なものがあるのか?」

 

一同が神妙な面持ちで見守る中でのコナンの問い掛けに対し、イタチは静かに頷いた。

 

「SAOには、ネットワークを介して世界各地の伝説や伝承を収集して、それを基にクエストを無制限にジェネレートし続ける『クエスト自動生成機能』がある。そうだな、ユイ?」

 

「はい。パパの言う通りです」

 

イタチの説明について、確認を求められたユイは、首肯した。そして、説明をバトンタッチするかのように、その続きを話しだした。

 

「ご存じの通り、SAO事件当時の運営は、全て内部のシステムが担っていました。このALOについては、人の手によって運営されており、クエストについても同様に管理されていますが……一連の出来事から考察して、現在ALOで起こっているエクスキャリバーを巡るクエストは、管理されたものではありません。恐らくは、何らかの要因が重なった結果、クエストを生成するシステムが再起動したと考えられます」

 

「何故システムが起動したかは、この際問題ではない。重要なのは、『クエストの再現度』だ。多少の制限はあるが、生成するクエストは、モデルとなった世界や出来事を非常に忠実に再現することができる。つまりは、システム的に可能であれば…………『神々の黄昏(ラグナロク)』に至る可能性も、十分に有り得るということだ」

 

イタチの口から出たその言葉に、それを聞いていたパーティーメンバーの間に、再度の驚愕と、戦慄が走った。

『神々の黄昏(ラグナロク)』とは、北欧神話の神々による最終戦争であり、神話の終焉そのものを意味する言葉として知られている。巨人族の双子の狼である、スコルが太陽を呑みこみ、ハティが月を粉砕したことで、神々のあらゆる戒めや枷が力を喪失。結果、ヨツンヘイムとニブルヘイムの霜の巨人族をはじめ、ムスペルヘイムの炎の巨人族までもが地上へ侵攻したことで、神々による大規模な戦乱が勃発。最終的には、炎の巨人族のスルトが放った炎により、地上はおろか、ヨツンヘイムやニブルヘイムまでもが焼き尽くされる、世界の終焉と呼ぶに相応しい結末を迎えると言われている。

それがこの、ALOという世界において、具現化しようとしているのだ。ゲーム世界とは言え、慣れ親しんだこの世界の光景が、焦土になろうとしている。そのような可能性を突き付けられても、受け入れることは出来る筈も無い。イタチの話を聞いたメンバーは、コナン以外の内心は混乱の渦中にあるようだった。

 

「け、けど……マップ全体を壊すような事態なんて、本当に起こるの!?」

 

「可能か不可能かといえば……可能だ」

 

信じられないとばかりに発したリーファの言葉に……しかし、イタチは即答した。

 

「SAOを管理していたシステムは、全層クリアと同時にプレイヤー達を解放した後、アインクラッドそのものを崩壊するよう設定されていた。ALOのシステムがそれに限りなく近いものならば……ゲームマップを崩壊させるだけの権限は、十分にある」

 

SAOの開発スタッフとして、そのゲームシステムについて茅場晶彦に次ぐ知識を持つことを、アスナをはじめとしたSAO帰還者や関係者達は知っている。そのイタチが言っているのだ。このALOに現在流布されているエクスキャリバー獲得クエストの裏には、アルヴヘイム崩壊の危機が迫っていることを疑う余地は、既に無い。そしてそれを止めることができるのは、真のエクスキャリバー獲得クエストに挑もうとしている自分達なのだ。

ALO最強の武器たる、聖剣『エクスキャリバー』を獲得することだけを目的としたクエストが、仮想とはいえ世界の命運が懸かった戦いと化したのだ。気後れするなというのも無理な話だった。だが、タイムリミットは刻一刻と迫っている。早々にダンジョンへ向かわねばならない以上、皆には覚悟を決めてもらわねばならない。そう考えたイタチは、改めてクエストへ挑む決意を促そうとする。

 

「皆、早く行こうよ!」

 

だが、それより先に、思わぬ人物――ユウキが声を上げた。その顔には、皆が浮かべているような沈痛な面持ちは無かった。この場の空気に似つかわしくない反応に、その場にいたメンバー全員が目を丸くした。

 

「さっきの話、ちょっと僕は部外者っぽくて、よく分かんなかったんだけど……でも、この世界に大変なことが起こっていて……それを止めるには、僕達が何とかしなきゃならないってことだけは、分かったよ」

 

「ユウキ……」

 

「だから、きっとこんなところで立ち止まっている暇なんて無い筈でしょ?目的地とやることが決まっているなら、今すぐ行くべきだよ!」

 

「けど、もし失敗したら……」

 

「大丈夫だよ!」

 

クエスト失敗のリスクに押し潰されそうな、アスナが抱える不安を……しかしユウキは、陰りというものを全く知らないような、満面の笑顔と明るく元気な、力強い声で振り払った。

 

「ここにいる皆なら、きっとやり遂げられる!だって、イタチが信じた仲間なんだよ?失敗することなんて、ある筈が無いよ!」

 

ユウキが口にした、このクエストを必ず成功させられるという根拠に対し、呆気にとられる一同。名指しされたイタチも、常には無い困惑の表情で、赤い瞳を見開いていた。

 

「さあ、早く行こう!」

 

理屈では語れないような根拠に対し、どうコメントして良いかが分からず、沈黙したままのパーティーメンバーの様子など気に留めず、ユウキは再度出発を促した。それにより、逸早く再起動したイタチは、それに応じるように静かに頷き、口を開いた。

 

「リーファ、出発を頼む」

 

「え?……あ、うん!トンキー、お願い!」

 

リーファの求めに応じ、くぉぉおん、と鳴いたトンキーは、目的地たる氷のダンジョンを目指して飛行を再開した。

 

「よーし!頑張るぞー!」

 

この先に何が待ち受けているかも分からない状況の中、不安など一切抱かず、相変わらず元気を失わないユウキの姿を見た一同の顔に、ふっと微笑みが浮かんだ。それと同時に、先程のユウキ言葉に対し、特定のメンバーは、ある感慨も浮かべていた。

 

(こんな状況下でも、イタチ君を信じてあんなことが言えるなんて……)

 

(お兄ちゃんが信頼してメンバーに誘ったのが、よく分かるよ)

 

(これは……想像以上に手強いライバルが出現したものね)

 

イタチに想いを寄せる三人は、ユウキに対する認識を改める。イタチを巡るライバルということに変わりは無いが、警戒心は幾分か和らいだ。先程の発言から、ユウキが自分達と同様かそれ以上に、イタチを信頼していることが伝わったからだ。

そして、その三人だけでなく、イタチを含めるこのクエストに挑戦するメンバー全員は思った。

 

 

 

ユウキの言う通り、ここに集まった皆の力を合わせれば、きっとこのクエストを成功させることができる、と――――

 


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