ソードアート・オンライン 仮想世界に降り立つ暁の忍 -改稿版-   作:鈴神

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第二十三話 闇装束の男達

突如現れた少年、イタチの姿を、PoHは警戒しながら観察する。その手には、チャクラムがあった。恐らく、ジョニーの刃を弾き飛ばしたのは、あのチャクラムだろう。

 

(俺が反応できない程の速度で投擲したってのか……しかも、この距離で俺が感知できない隠蔽スキル……)

 

 この突然の襲撃にあって、PoHは至って冷静に事態を把握していた。襲撃者がこの襲撃に使った諸スキルが、洗練されたものであることも。そして、PoHは直感する。今目の前に立つ男こそが、自分を探していた、そして自分も会うことを渇望していた人物であることを……

 

「Mm……俺を探していたって奴は、お前か。」

 

「知っていたのなら、話は早い。どんな用事があるかも、分かっているのだろう?」

 

 それだけ言葉を交わすと、二人はその場に立ったまま睨み合う。そんな中、PoHは目の前の人物が自分の予想を裏切らない存在であることを感じていた。

 

(あの技……あの眼……たった半年間、殺し合いの世界にいただけでできるものじゃねえな……)

 

 その常軌を逸した、自分に近い同類の空気を纏う目の前の少年に、PoHは気持ちが昂ぶっていた。この日本と言う平和な国にあって、こんな眼のできる人間が、このSAOに参加しているとは思わなかった。こんなに若い少年が、どうして殺し合いの世界を知っているのか、理解はできないが、今はそんなことはどうでもいい。

 

「挨拶が遅れたな……お前の察した通り、俺こそがお前の探し求めていた、PoHで間違いない。」

 

「やはりな……軍に二十五層のボス攻略を唆して、犠牲者が発生するよう仕向けたのも、お前の差し金だな。」

 

「だったらどうする?正義の味方気取りで、俺を捕まえるか?それとも……ここで殺すか?」

 

「大人しく投降してくれるならばそれに越したことはないが、それが無理ならば止むを得ん。」

 

 それだけ言うと、イタチは背中に差していた片手剣、キアストレートを抜き放つ。同時に、左手に持っていたチャクラム、ヴァルキリーを装備し直す。そんな臨戦態勢のイタチに対し、命の危機にあった筈のキバオウが噛み付く。

 

「おい、ビーター!何でお前がこんな所におるんや!?」

 

「俺もその男に用があった。ただそれだけだ。お前に特段、用事があるわけではない。」

 

 イタチの言葉に、しかしキバオウの苛立ちは治まらない。だが、一人で敵地に飛び込むという無謀を犯した末路として、こんな状況にあるのだ。今更、何を言っても負け犬の遠吠えでしかない。それを頭では理解しているだけに、キバオウはそれ以上何も言えなかった。

 

「テメエ……調子に乗ってんじゃねえぞ!!状況分かってんのか!?」

 

 イタチの最初の襲撃によって手に傷を負わされたジョニーが、怒りを露に喚き散らす。対するイタチは、相変わらず冷静な様子で周囲にちらと目配せして返す。

 

「……十二人といったところか。それがここに隠れている仲間の数だ。違うか?」

 

 イタチの言葉に、ジョニーとキバオウは凍りつく。確かにこの場には、PoHの仲間が大勢潜んでいる。それも、全員が高度な隠蔽スキルを有する隠密プレイヤーである。それをものの数秒で人数を見抜いたのだ。恐らく、居場所も大体把握したのだろう。PoHは自身の予想を遥かに上回るイタチの能力に、またも歓喜する。

 

「!?……それが分かっていながら飛び込むとは、相当な馬鹿だな!おい、皆!構わねえ、やっちまえ!!」

 

 ジョニーの言葉に応じ、辺りに立つ木の影から無数のプレイヤーが姿を現す。その数は、イタチの予想と違わず、十二人。頭上のカーソルは、いずれも犯罪者プレイヤーを示すオレンジ。

 

「ハハハ!これでお前も、終わりだなぁっ!?」

 

 オレンジプレイヤーがイタチを取り囲む光景に、狂喜するジョニー。キバオウは顔を青くしている。PoHはただ一人、イタチがこの状況にどう対処するかを、楽しそうに眺めていた。

 

「It’s show time.」

 

 PoHの口から、常にはない興奮を伴った、完璧な英語のイントネーションをもった言葉が発せられる。それと同時に、オレンジプレイヤー達は各々武器を手に取る。それに対してイタチは、

 

「やれやれ……」

 

「調子に乗ってんじゃねえぞ、オラァッ!!」

 

 この期に及んでも平静を崩さないイタチに痺れを切らしたオレンジプレイヤーの一人が、片手剣を手に斬りかかる。ライトエフェクトを伴うそれは、垂直斬りソードスキルのバーチカル。だが、イタチは眉一つ動かさず、

 

「ふん……」

 

「がぁああっ……!!」

 

 向かってくる斬撃を軽々避けると、ライトエフェクトと共に剣を振るう。次の瞬間、斬り掛ったオレンジプレイヤーの四肢が地面に落とされる。

 

「お、俺の手がっ!足がぁっ!」

 

 手足を切断されて泣きわめくオレンジプレイヤー。包囲していたオレンジプレイヤー達も、その様子に唖然とする。イタチはそんな男達に目もくれず、ジョニーやPoHのいる場所へと歩き出す。

 

「な、何やってんだ!毒ナイフだ!毒ナイフで奴を動けなくしちまえ!!」

 

 ジョニーの言葉で我に返ったオレンジプレイヤー達が、急いで懐から麻痺毒を塗ったナイフを取り出し、投剣スキル、シングルシュートを発動する。単発型のソードスキルだが、ジョニーを含めた十二人で放つのならば、イタチとて対処できない筈。次の瞬間には、イタチのもとへ十二の光芒が殺到していた。だが、イタチは回避不能な攻撃が自身に及んだこの状況に至っても、一切表情を変えることなく、事態に対処する。

 

「……はぁっ!」

 

 八方から迫る閃光に対し、イタチはコンマ二秒以下のメニューウインドウ操作によるクイックチェンジで新たな武器を手に取る。そして、目にも止まらぬ速さで迸るのもまた、閃光――――

 

「なっ……!!」

 

「Wow……」

 

 次の瞬間には、イタチを中心に、辺りには中を舞うナイフの群れ。何が起こったのかを理解できたのは、PoHだけだった。残りのオレンジプレイヤー、そしてキバオウには、イタチが何かの武器を振るってそれを弾いたことしか分からなかった。しかし、一振りで八方から迫るナイフ十二本を一気に弾く武器とは何なのか。その答えを知る前に、再びイタチの右手に持つ武器から光が走る。

 

「ぎゃっ!」

 

「ぐわっ!」

 

「うおっ!」

 

 再び弾き飛ばされる、宙を舞っていたナイフ。光に打たれて撃ちだされたそれらは、それぞれの持ち主へと飛来して射抜く。刃に塗られた麻痺毒により、その場に崩れるオレンジプレイヤー達。だが、

 

「ひっ!」

 

「……ふっ!」

 

 ジョニーの元に飛来したナイフだけは、PoHが手に持つナイフで弾き落としたのだった。理解不能な事態の連続に、ジョニーは後ずさってしまう。

 

「い、一体、何をしやがったんだ!?」

 

 ジョニーの上ずった問いかけに、イタチは口ではなく、武器を手に持つ右手を振るうことで答えた。その勢いに、武器は“撓り”、地面を強かに打つ音を響かせる。

 

「“戦鞭スキル”、か。なかなかクールな武器じゃねえか。」

 

 戦鞭とは、棒状の柄に革紐を取り付けた武器である。繰り出される速度は、現実世界においては音速を超えるが、SAOにおいてはシステムアシストも手伝ってさらにその上を行く。だが、元々の鞭の使用目的は拷問であるため、戦闘には不向きである。SAOの戦闘においても、モンスターのタゲを取る程度の役にしか立たない。だが、ワンモーションで音速を超える技を繰り出せるのならば、それはSAOに存在する中で最速の武器であることを意味する。

 第二層における、PK狙いのプレイヤーが出現した時から、イタチは対プレイヤー用の武器として、戦鞭に注目していた。プレイヤーが反応できない音速を超えるソードスキルを繰り出せる武器ならば、牽制も容易いからだ。

 

「しかも、そのリーチで八方からの攻撃にまで対処したばかりか、投擲武器を全て持ち主に弾き返すはなぁ……」

 

「それで、どうする?まだやるか?」

 

三メートルにも及ぶリーチを持つ戦鞭、「スレイプニルテイル」を手にイタチは問いかける。対するPoHは、相変わらず面白いものを見る様な顔でイタチを観察していた。

 

「Hmm……お前は本当に予想を裏切る男だな。だが、」

 

「死、ね……!」

 

「!」

 

 イタチの背後から襲い掛かる、十三人目の緋色の影。赤い光と狂気をその双眸に宿し、イタチに襲い掛かる。イタチの隠蔽スキルを掻い潜る実力を持っている以上、別格なのは間違いない。その手に持った武器は、アスナが持つ細剣以上に「刺す」という攻撃に特化した得物――エストックだった。

 

「中々の動きだな……」

 

「避けた、か……!」

 

 危なげなく回避するイタチだったが、内心では冷や汗ものだった。目の前の赤眼の男が潜伏しているのには気付けたが、刺突のスピードと正確さは完全に予想を裏切るものだった。攻略組に引けを取らない実力者であることは間違いなく、何よりその眼に宿す光が危険そのものだ。

 

「次は、殺す……!」

 

「まあ、待て。」

 

 エストックを構えてイタチに再び突きかからんとする赤眼の男。だが、それを止めたのはPoHだった。PoHの言葉に、赤眼の男は大人しく従い、手に持ったエストックを懐に納める。

 

「今日のところは、お前に会えたことだし、大人しく引き下がってやる。そろそろ、お前のお仲間も来る頃だろうしなぁ……」

 

 PoHは何やら右手を動かしている。おそらく、システムウインドウを呼び出しているのだろう。同時に、その視線は、薄暗い森の向こうを見据えていた。察するに、主街区にいる仲間からのメールにより、イタチの仲間であるクライン達攻略組プレイヤーがこちらを包囲するために動き始めていることを知ったのだろう。この場に残ったオレンジプレイヤー十三人――それも大部分が麻痺になっている――では、これから来る攻略組プレイヤー達を相手にできる筈もない。

 

「お前も、こいつを死なせたくはないんだろう?」

 

 PoHが指し示す人物とは、キバオウである。キバオウは自身がオレンジプレイヤー達が逃げるための手段に利用されていることに、怒りに顔を歪める。

 

「ビーター!わいに構わず、こいつ等を捕まえろ!!」

 

「……ああ。」

 

 キバオウの言葉に、しかしイタチは頷いた。他のギルドから顰蹙を買っているキバオウだが、解放軍を束ねる重役にある以上、安易に見殺しにするわけにはいかない。だが、ここでPoHとその側近を逃がすわけにはいかない。何としても捕縛、あるいは抹殺しなければ、二十五層の悲劇がまた繰り返されることは明らかだからだ。イタチはクイックチェンジを再び発動。武器を片手剣、キアストレートに持ち替えた。

 

「Mm……やる気満々なのは嬉しいが、悪いが今日はここまで、だ……最後にお前の名前、聞かせて貰えるか?」

 

「……イタチだ。」

 

「イ、タ、チ…………貴様だけは、必ず、殺す。お前も、覚えて、おけ……俺の、名前は……ザザ!赤い眼を、持つ者は、二人も、要らない……!」

 

「チッ……覚えてやがれよっ!!」

 

 そう言うと、ジョニーは懐からボール状のアイテムを取り出す。それが煙玉であることを視認したイタチは、ジョニーがアイテムが地面に叩きつけるよりも先に、キアストレートの切っ先を向けて駆け出す。だが、

 

「おいおい……今日は、ここまでだって言ったろう?」

 

「っ……!」

 

 PoHが横合いから刃を構えて介入し、イタチの刃を受け止めた。次の瞬間、ジョニーの放った煙玉から煙幕が発生する。視界の悪い場所で、あのPoHやザザを相手にするのは分が悪い。イタチは飛び退いて体勢を立て直すが、煙が辺りに満ちる前に、その奥から青白い光が垣間見えた。

 

(転移結晶を使ったな……逃げられたか……!)

 

レッドプレイヤーの主犯格達を取り逃がしてしまったことに歯噛みするイタチ。本当ならば、この場で始末しなければならない相手だった。今日という日、あの三人を逃がしてしまったことを後悔する未来が来ることを、イタチは一人予感していた……

 

 

 

 

 

「イタチ!無事だったのか!?」

 

 オレンジプレイヤーの巣窟たる十一層郊外の森に残されたイタチとキバオウを迎えに来たのは、予想違わずクライン達だった。見慣れぬ額当てに、赤い眼をしたイタチは、クライン達の知るイタチとはまるで別人の雰囲気を纏っていたが、本人であることに間違いはなさそうだ。

 

「……すまない。主犯には逃げられてしまった……」

 

 自身の無事に安堵した様子の攻略組プレイヤー達だったが、この事実だけは伝えなければならないと思った。イタチの言葉を聞いたプレイヤー達の表情は、やはり暗かった。イタチも表情には出さないが、その内心は晴れやかには程遠かった。だが、そんな中、

 

「気にすんなよ、イタチ!俺は……俺達は、お前ぇが帰ってきてくれただけでも、十分だ。」

 

「その通りだよ、イタチ……それにしても、君は本当に無茶が過ぎるよ……一人でオレンジ……レッドプレイヤーに挑むなんてね。」

 

「ったく……次は、俺達も絶対に付いて行くからな!」

 

 イタチを責める者は、誰一人としていなかった。皆、イタチ一人を死地に送ってしまったことを後悔していたのだ。だからこそ、無事に帰ってきてくれたことの方が、嬉しかったのだ。

 

「お前達……」

 

「イタチ一人で、何もかも背負うことなんて無ぇんだよ。」

 

「そうだぜ。オイラ達は、弱い……だからこそ、こうやって仲間なんじゃねえか。」

 

 にかっと笑いかけるヨウに、しかしイタチは内心で戸惑ってしまう。クラインをはじめ、攻略組のプレイヤー達が、自分を心配してくれたことには、感謝しているし、嬉しいとも思っている。だが同時に、自分にはそんな感情を抱く資格が無いとも、イタチは考えていた。

 二十五層のボス戦の最中、クラインは身を呈して他のプレイヤーを救おうとした自分を止め、「仲間は死なせない」と言ってくれた。自分を仲間と認めてくれたのだ。だが、攻略の後、レッドプレイヤーとの戦いに赴いたあの時、自分はそんな彼等の手を振り払ったのだ。そして、前世同様、何もかもを一人で背負おうとした結果、軍を罠にかけた主犯のPoHには逃げられてしまった。かなり前から目を付けていた相手だったにも関わらず、結局犠牲者を出すに至ってしまった。そんな事実を前に、イタチは自身の無力に打ちひしがれていた。

 

(結局……俺には、生き方を変えることも、失敗を活かすこともできなかった……)

 

 生前の姿を模倣し、横一文字の傷が入った額当てを装備し、両眼を写輪眼の如く赤に染めた。前世のうちはイタチに戻る覚悟を……非情になり切る覚悟を持って、戦いに臨んだのだ。しかし、所詮は恰好だけ。再現できたのは、失敗だけ。前世と同様、自分一人では果たせないと分かっていながら、その業を他者に背負わせまいと一人で立ち向かったがために、本来できた筈のことを蔑にしてしまったのだ。

 

(だが、譬え宿命だとしても……やはりこれは、俺が背負うべき業だ……)

 

 己の失敗の原因を悟っていながら、結局イタチにはそれしか道を選べなかった。こんな人殺しが罷り通る世界を作り出した責任の一端……罪は、自分にもある。ならば、自分のすべきことは、ただ一つ……己の全てを犠牲にして、この世界を終わらせる。それだけだった。

 イタチは一人、無表情な仮面の下に、誰に打ち明けることもできない悲しみを背負い、森を後にした。クライン達がその背中を呼び止めようとしていたが、イタチの耳にはその言葉が届くことはなかった――――

 

 

 

 第十一層、フロリアンの主街区を横切るイタチ。向かう先は転移門広場である。目的は、最前線の階層にいる情報屋、アルゴに会うためである。逃げられはしたが、目当ての人物であるPoHと邂逅することができた以上、一刻も早く全プレイヤーに警告をかけねばならない。あの死闘の直後である今でなくても、日を改めて他のプレイヤーとともに報告に向かえば良いのだが、イタチは到底休む気にはなれなかった。むしろ、休む資格などないと考えていたのだ。

 精神的に重い足取りで、イタチは転移門を目指して歩き続ける。その足は、止まることを知らない。だが、そんな彼の目の前に現れる、五つの人影があった。

 

「イタチ!!」

 

 俯きがちだった視線を上げると、青白い転移門の光と共に、イタチの視界にはつい最近見知った顔があった。クォータースタッフ使いの少年をリーダーとした、五人組のギルド、月夜の黒猫団である。正直、今は事務的な話以外はする気になれなかったが、転移門の前に立ちふさがっている以上、話をせざるを得ない。

 

「……何故、ここへ来た?」

 

「アルゴから聞いたんだ。イタチが、レッドプレイヤーを捕まえるために、この階層に来てるって。」

 

「昨日、あれだけ危険な目に遭っておいて、性懲りもなく出てきたのか?」

 

 イタチの質問に答えたのは、リーダーのケイタ。察するに、自分のことを心配してくれたのだろうが、余計なお世話である。それに、主街区とはいえ、危険な場所にメンバーを連れてくるとは、ギルドのリーダーとして軽率すぎるのではないか、とイタチは口には出さず、視線で訴える。対するケイタも、そのあたりは自覚していたのか、申し訳なさそうに返す。

 

「ご、ごめん……どうしても、君が無事なのか、気になったんだ。それに、サチが行くって言って聞かなくて……」

 

 ケイタが名を口にすると同時に、それまで後ろのほうにいたサチが、イタチの前に出てきた。イタチの方も、呆れ半分にサチに向き直る。

 

「ごめんなさい、イタチ。どうしても、あなたに謝りたくて……」

 

「謝る?……何を謝る必要があるんだ?」

 

「アルゴさんから聞いたの。二十五層の攻略で、軍の人が大勢犠牲になったって……私が、あの地下水路での会話をもっと早く知らせていれば、こんなことにはならなかった筈なのに……」

 

「やめてくれ。」

 

 サチの言わんとすることは分かった。だが、そんな慰めの言葉は、今のイタチには苦痛以外の何物でもない。レッドプレイヤーを逃し、あまつさえ犠牲者を出したのは、他でもない自分の責任であると、イタチは疑わない。

 

「お前が気に病むことじゃない……この攻略の犠牲は、レッドプレイヤーのPoHに……奴の動向を察知していながら、未然に防げなかった俺のせいだ。」

 

「けど……」

 

「悪いが、話はここまでだ。俺には、行かなきゃならない場所がある。」

 

 まだ何か言いたげだったサチだが、イタチはこれ以上の問答に意味はないと断じ、五人の間を通って転移門に立つ。

 

「イタチ、待って!」

 

「転移、エルバフ。」

 

 サチが制止をかけるよりも早く、第二十五層の主街区の名前を口にしたイタチ。彼女の本当に伝えたかった言葉は、この時、イタチに届くことはなかった……

 

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