ラブライブ!~化け物と呼ばれた少年と9人の女神の物語~   作:そらなり

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どうも、そらなりです。

やってきました! アニメ最終回後のオリジナル回! 映画編もありますがこれが一つの幕引きになります。

それでは、今回も予想外なことに驚く10人の様子を見届けてやってください!


始まりの終わり

 ジュースを買い出しに行くときに空也に言われたことを思い出して、みんなを連れて穂乃果たちは講堂へとやってきた。

 

 穂乃果を先頭に今日ここにやってきたときと同じ場所から講堂に入る。大きくドアを開けた穂乃果は大声でそこにいるだろう人の名前を呼んだ。

穂乃果「空也く~ん!」

 講堂内を見てみればステージの上にある演台手を添えるようにして立っている空也がいた。

 

 一瞬何をしているのだろうと、何をしたいのだろうと穂乃果以外にもここにいる全員が思ったことだろう。その疑問を解消する一言が空也の口からマイクを通して告げられる。

???「これよりμ'sの一時休止式を始めたいと思います。皆さんは名前の書かれてある席にお座りください」

 スクールアイドルはラブライブが終わったら終わり。そう決めて今まで練習をしてきた。そして今日が3人の3年生が卒業した日。この日に一時ではあったとしても休止する為の式を空也は設けたのだ。空也が言うようにステージ前の席にはメンバーそれぞれの名前が一席ごとに書かれており、そこに座るのだということは分かる。

 

 しかし、なぜこんなことをしているのかわからない。

ことり「空也君? なにしてるの」

 それはことりだけではなく、穂乃果も海未も……この場にいる全員が思ったことだろう。みんなはその場からなかなか動けなかった。

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空也side

 

 ここに来て、空也がアナウンスをかけてもなかなか入り口から動かない穂乃果たちを見かねた空也は早く座るように最速をした。

空也「早くお座りください!」

 この式自体は穂乃果たちが席についてもらわないと成立しないものだ。それに、この場所を借りられる時間も限りがある。だからなるべく早く式を始めたいと思っていた。

 それにこの式を開くにあたってとあることで手伝ってもらっている人もいる。その人のためにも早くこの式を始めたかったのだ。

 

 だけど、なかなか詳しく説明をしない空也にみんなは疑問を持っていた。別にこのような式をやるということは決めていないし、ラブライブが終わったらスクールアイドルは終わりとみんなで決めている分このような式を行う理由はあまりないと思っていたからだ。

真姫「もう、なんなのよ!」

 それでも空也の言う通り名前の書かれた席にみんなは向かって行った。

 

 全員が席に着いたことを確認すると空也は再びマイクを使って式の進行を始めていく。

空也「それでは表彰に移りたいと思います。高坂穂乃果!」

 それはまるで卒業式と同じような、それでいて堅苦しいわけでもない緩い雰囲気の元はじまった。空也が表層を宣言するとどこからともなく音楽が鳴りだす。落ち着いた曲調で、表彰をするにはうってつけの曲。しかし、空也はただアナウンスをしただけで曲を流せるようなそぶりは見せていない。ということは誰かがこの曲を流したということになる。

 

 しかし、普通ではない雰囲気からか少しだけ緊張している穂乃果たちにはそれを考える余裕がなかった。穂乃果は空也に名前を呼ばれて、そのままステージの上に向かった。

穂乃果「はっはい!」

 この式自体、予行をしているわけではないためどう動けばいいのかわからない穂乃果だけど、卒業式と同じように右の階段から登り、空也の前に向かい合わせの状態で立った。

 

 穂乃果が自分の目の前に来たことを確認した空也は手元にある賞状を見て読み始めた。

空也「高坂穂乃果。あなたは音ノ木坂学院スクールアイドルとして、この学院の廃校を阻止しリーダーとしてμ'sのみんなを引っ張ってきたことをここに証明するとともに2年のμ's脱退を認めます。μ'sプロデューサー時坂空也」

 そして空也は穂乃果に証書を渡す。その内容は式の名の通り、μ'sとしての活動を一旦終わりにするというものだった。完全な終わりではないものの自分たちが頑張ってきたことがこうして表彰されるのは頑張ってきた者にとってこれ以上に嬉しいことはないだろう。

 

 賞状を受け取った穂乃果は目尻に溜まる涙を袖で拭ってから空也に笑顔を見せた。

穂乃果「…………。ありがとう! 空也君!」

 本当に嬉しいと心から思っている。それが外から見ても分かるくらいに幸せそうな笑顔だった。

 その後、穂乃果は降壇し、次のメンバーへの表彰へと移る。

 

 次に表彰するメンバーの名前を空也がまた呼び上げる。

空也「南ことり!」

 

 ことりは穂乃果と同じように壇上へと昇った。

ことり「はい!」

 

空也「南ことり。あなたは音ノ木坂学院スクールアイドルとして、この学院の廃校を阻止し、μ'sのみんなをサポートし続けてきたことをここに証明するとともに2年のμ's脱退を認めます。μ'sプロデューサー時坂空也」

 

ことり「空也君……。ことりうれしい!」

 

 そして次のメンバーへ……。

空也「園田海未!」

 

 海未も、先にやった穂乃果たち同様にステージへと昇る。

海未「はい!」

 

空也「園田海未。あなたは音ノ木坂学院スクールアイドルとして、この学院の廃校を阻止し、μ'sのみんなの練習をしっかりと指導してきたことをここに証明するとともに2年のμ's脱退を認めます。μ'sプロデューサー時坂空也」

 

海未「空也、ありがとうございます」

 

 その後、空也に名前を呼ばれるとみんなが穂乃果と同じようにステージに上って表彰を受ける。

空也「西木野真姫!」

 

真姫「はい!」

 

空也「西木野真姫。あなたは音ノ木坂学院スクールアイドルとして、この学院の廃校を阻止し、曲作りに熱心になりμ's輝きを支えたことをここに証明するとともに2年のμ's脱退を認めます。μ'sプロデューサー時坂空也」

 

真姫「空也、本当にこんなことするなんて……。うれしいわ。ありがとう」

 

空也「星空凛!」

 

凛「はいにゃ!」

 

空也「星空凛。あなたは音ノ木坂学院スクールアイドルとして、この学院の廃校を阻止し、自分を見つけ直し、明るい雰囲気を作ってくれたここに証明するとともに2年のμ's脱退を認めます。μ'sプロデューサー時坂空也」

 

凛「空也君。ありがとう!」

 

空也「小泉花陽!」

 

花陽「はっはい!」

 

空也「小泉花陽。あなたは音ノ木坂学院スクールアイドルとして、この学院の廃校を阻止し、勇気を持つことを覚え、苦手なことを克服したことをここに証明するとともに2年のμ's脱退を認めます。μ'sプロデューサー時坂空也」

 

花陽「ありがとう。空也君」

 

空也「矢澤にこ!」

 

にこ「はい!」

 

空也「矢澤にこ。あなたは音ノ木坂学院スクールアイドルとして、この学院の廃校を阻止し、アイドルになるために熱心に活動をしていたことをここに証明するとともに2年のμ's脱退を認めます。μ'sプロデューサー時坂空也」

 

にこ「空也……やってくれるじゃない。ありがとう」

 

空也「東條希!」

 

希「はい!」

 

空也「東條希。あなたは音ノ木坂学院スクールアイドルとして、この学院の廃校を阻止し、影ながらにμ'sを支え、自分とみんなの居場所を作ってくれたことをここに証明するとともに2年のμ's脱退を認めます。μ'sプロデューサー時坂空也」

 

希「ありがとうな。空也君」

 

空也「絢瀬絵里!」

 

絵里「はい!」

 

空也「絢瀬絵里。あなたは音ノ木坂学院スクールアイドルとして、この学院の廃校を阻止し、自分のやりたいことを精いっぱい楽しめたことをここに証明するとともに2年のμ's脱退を認めます。μ'sプロデューサー時坂空也」

 

絵里「こんなハラショーなことないわよ。ありがとう空也」

 

 この1年間、みんなは本当に頑張ってきた。大好きな学校を守るため。最初はただただこのためだけに、学校の名前を広めるためにスクールアイドルの活動を続けてきた。時には学校内でμ'sの活動が認められないときもあった。

 それでも、めげずに……決して成功だけの道ではなかったのだ。それがこうして続けてきた結果、スクールアイドルの甲子園であるラブライブで優勝できるまでに成長できた。優勝したときにきっとみんなはスクールアイドルのμ'sのことを盛大に祝っただろう。それに、廃校を阻止できたときだって学校のみんなはμ'sに感謝をした。それでも、この2つをおめでとうと心から祝うことができるのはμ'sであってμ'sではない主観的でも客観的でもこのグループを見ることのできた空也だけ。

 そんな空也に講堂を借り切ってまで、こんなに盛大におめでとうと、お疲れさまと自分たちのやってきたことが認められたのだと思うとみんなの涙が止まらない。それは卒業式で流した涙と同じくらいの涙。

 

 けど、これだけで空也のサプライズが終わるわけがなかった。今まで空也は約束を破ったことはない。なぜ今、そんなことが出てくるのかと言えば、まだ空也が果たしていない約束があった。それはソロ曲を作るというもの。

それが今、果たされる。

空也「それでは最後に記念品授与! 記念品は帰りに渡されますが、それでは皆さん。耳を澄まして聞いてください。それでは絵里の品から『ありふれた悲しみの果て』! 今回の仮歌は俺が歌ってます」

 空也はまたマイク越しにそう呟いて、機械室にいる協力者にアイコンタクトで合図をした。

 

 少し曲調は寂しく感じるこの曲。そしてイントロが終わりようやく歌が始まる。この曲は絵里は最初に反発してしまったが故になかなかスクールアイドルに入ると言い出せなかった。やりたいことをやろうとしてもできなかった。そんなもどかしい気持ちを経験している絵里ならこの歌に想いを込められると空也は自信をもって完成させた。

 そして仮歌を空也自身が歌って音源にしたのだが、流れてくる声が本当に空也のものなのかと疑ってしまうものだった。

絵里「嘘! 私の声じゃない!」

 スピーカーから流れてきた歌声は完全に絵里のもの。絵里自身この曲は初めて知った曲だし、歌った記憶のない。それなのに自分の声で歌はどんどん進んでいくともなれば驚くのも無理はない。下手をすれば恐怖だって覚えるものだろう。

 

 けどその驚きは空也が一言喋るだけで納得するものだった。

空也(絵里)「そうよ。こうやって声帯模倣ができるの。すごいでしょ?」

 声帯模倣。簡単に言えば声マネ。それをして空也はこの曲を歌ったようだ。ずっと聞いていても自分の声との差が分からないくらい、空也の声マネは似すぎているものだった。

 

 今さらになって空也の特技を知った絵里は再び驚くかと思えた。

真姫「もう驚かないわよ……」

 が、もう空也なら何でもできると思っているのだろう。先ほど以上に驚くことはもうなかった。

 そんな絵里だけど、呆れているようにしゃべっても自分1人だけの曲があるというだけでどこか子供のように喜んでいるようなそんな雰囲気を醸し出していた。

 

 そして絵里の歌が終わると空也は次のメンバーに渡すソロ曲の名前を出していく。

空也「続きまして、東條希『もしもからきっと』」

 あの時、希の想いを聞いた。本人の気持ちをそのまま代弁することなんてできないけど話してくれた内容から当時感じていた希の想いを受け取ることは出来る。それがたとえ電話の向こうにある表情の見えない言葉だろうと。

 最初はμ'sのみんなはただの他人だった。それなのに希は自分の居場所が欲しいという願いと占いの元この9人を集めた。集まってからも希は先々で穂乃果たちのことを見守り、みんなのやる気を途切れさせないようにした。あの時に話してくれた内容と今までの希を見ていたからできた詩だった。

 

 絵里の時同様にスピーカーから出てくる声は希ではない希の声。もう絵里の時に全員分が声マネして歌われているのだろうとわかっていたのだろう、希は驚くことはなかった。

希「なんやろう、この歌……。うち涙出てくるわ……」

 いや、驚くこともできないほどに自分のために作られた歌に感動していたといった方が正しいのかもしれない。大粒の涙をぽたぽたと流しながらも、ずっと希は歌を聴いていた。

 

 希の歌が終わると再び訪れる少しだけの静寂。今までのように空也は次の曲を送る人を呼び上げる。

空也「そして矢澤にこ『まほうつかいはじめました!』」

 にこは誰よりもアイドルであることに誇りを持っていた。そしてμ'sに入った時に言っていたことを誰も忘れてはいない。アイドルは笑顔を見せる仕事ではなく笑顔にさせる仕事。人一倍お客さんを笑顔にしようと努力を重ねてきたのは他でもないにこ本人だ。

 この詩を何の苦労もなく書けたわけじゃない。本当にアイドルとしての矢澤にこを見て、想っていること、やろうとしていることが見えてようやく完成したもの。ラブライブ本選の時にあのヒントがなければ完成しなかったものだ。

 

 この曲を聴いたにこは涙を見せないように俯いていた。肩は少しだけ震え、泣いているのは明白。

にこ「……空也! にこのことわかってるじゃない!」

 そして次の瞬間、ステージの上にいる空也に向かって涙ぐみながらサムズアップをして見せた。

 

 にこのサムズアップに答えながらも曲が終わるとまた次の曲に移る。

空也「そして小泉花陽『なわとび』」

 なかなか自分に自信が持てずに、夢をあきらめていた花陽。色々悩みに悩みぬいていろんな人に支えられて花陽は今ここに立っている。そして、想像でしかないけど自分が思い描いたイメージに限りなく近づいた。昔だったらできなかったこと、今だからできることを綴った歌はきっと花陽なら感情をこめて歌ってくれると信じて空也はこの詩を書いた。

 

 講堂内に響き渡る花陽だけの歌を聞いた花陽は涙を抑えることができなかった。

花陽「…………」

 何もしゃべれないくらいに涙を流している花陽。それでも嬉しく思ってくれていることはなんとなく伝わってきた。

 

 やがてアウトロだんだんと小さくなっていき、空也は次の曲の説明に入った。

空也「そして星空凛『くるりんMIRACLE』」

 可愛い女の子になりたくて、でもトラウマが邪魔をしてなかなかできなかった凛。リーダーを経験してファッションショーを経験して可愛い私になれた。まだ見ぬ未来に心躍らせるそんな凛の心情を想像して書いた詩だ。

 

 空也にもらった曲を聴いた凛はその場で飛び跳ねるようにして喜んでいた。

凛「わぁ~、うれしい!」

 凛はかすかに目尻には少しだけ大粒な雫が溜まっているが今は歓喜が上回っているようで涙を気にすることなく、心から嬉しがっていた。

 

 凛の曲が終わり、次の曲が始まろうとする。

空也「西木野真姫『Darling!!』」

 初めてあった時、真姫は孤高だった。そして自分に自信を持っていて、それを最大限に生かそうとする。時には素直になれずにむきになったりすることもあるけれど、最後には素直になるただ、普通の女の子。そんな真姫を見てきたからこそかけた詩が今、歌となりこの講堂内に響き渡った。

 

 この曲自体、真姫は存在を知っていた。だってμ'sの作詞担当は真姫なのだから。

真姫「自分で作曲してたのに、私一人で歌うなんて……。でもうれしいわ」

 それでも、みんなで歌うことを前提に作っていたがために自分一人の曲になると知った真姫にはみんなが覚える以上の感動があった。大粒とはいかないまでも真姫は瞳が潤みながら空也に感謝の笑顔を見せた。

 

 その笑顔に応えつつ、空也は次の曲の説明に戻った。

空也「園田海未『私たちは未来の花』」

 幼馴染として長い年月を重ねてきたからこそ、書ける詩があった。海未に一番似合う曲は何かと考えた時、和を取り入れたほうがいいのではないかと思った空也は花を主軸に詩を書いた。清楚で大和撫子のような凛としている海未だからこそ映える詩を作り上げた。これなら想いを込めて海未が歌えると信じて。

 

 きっと空也が考えていることが伝わったのだろう。一度大きく目を閉じた海未は数秒の間流れてくる歌に耳を傾けた。

海未「私にぴったりなのですね……。すごいです空也」

 海未だから歌える歌があるわけで、海未はそれをわかっている。今流れている曲が自分に合っているということが分かっている彼女なら、きっと仮歌以上の想いのこもった作品にしていることだろう。決意のこもった視線が空也に向けられた。

 

 海未の視線に笑顔で頷いた後、次の曲の紹介に入る。

空也「南ことり『スピカテリブル』」

 ことりは以前、μ'sを離れようとしていた。……いや、離れるかもしれない状況に立たされていた。けど誰の後押しもなければ言い出せないある種の小心者。それが悪いわけではない。けど、そんなことりだからこそ、伝えたいけど伝えられないことを経験しているからこそこの歌が歌えるのだと、空也は願ってこの詩を完成させた。

 

 きっと海未同様に空也の考えていることはお見通しなのだろう。

ことり「空也君……」

 指で涙を拭いながらもことりは真っ直ぐに空也のことを見つめていた。その視線からはありがとうと言っているように感じる。

 

 そんな視線を受けながら長かった曲紹介も次で最後。

空也「最後に高坂穂乃果『シアワセ行きのSMILING!』」

 完全に高坂穂乃果を詩にまとめたといっても過言ではない曲。まぶしい笑顔も、やりたいことに真っ直ぐなところも、勢いがいいところも穂乃果の言いところがいっぱい詰まったずっと穂乃果のことを見ていたから書ける詩だった。

 

 この曲もこの曲で流れてくるのは空也の歌っている穂乃果の歌声。この歌が流れた瞬間、すでに穂乃果の瞳から大きな涙がこぼれ落ちていた。

穂乃果「空也君……もう……。泣かせないでよ……」

 本当に嬉しそうに、手で涙を拭いながら呟く穂乃果。それでも歌にあるように笑顔を絶やさずに喜んでくれている。

 

 そんな穂乃果に答えつつも、空也は言葉をつづけた。

空也「悪い悪い。でもこれが俺の出す宿題であり、プレゼントだ。きっとみんななら心を込めて、想いを込めて歌えるだろう。だから絶対にサボるんじゃないぞ!」

 これから先、おそらくみんなで歌の練習をできる機会は少ない。ラブライブを優勝したことによってプロになる権利を得た今、これから活動できない2年間の間に自分たちでできることをしていかないといけない。その中で自分が経験した、してきたことを歌えば自然に自分の感じてきた想いや、感情を乗せた歌になる。それはどれだけ人を感動させる歌でも曲調でもかなうことのない最良の歌なのだから。

 

 こんなプレゼントをもらった穂乃果たちはあの言葉を言わなくてはいけない。感謝を伝えるのにふさわしいあの言葉を。

μ's『ありがとう。空也(くん)!』

 タイミングを合わせたわけではないのに穂乃果たちは声を合わせてステージにいる空也にお礼を言った。

 

 その言葉を受け取って若干涙ぐむ空也だけど、まだまだ喋れなくなるわけにはいかなかった。

空也「じゃあみんな! 最後だ! 俺たちはまだ終わりはしない。意味わかるな? 穂乃果」

 そう。例え絵里たちが卒業したとしてもμ'sの物語は終わらない。この先もずっと続いていく。

 

 空也の言葉を理解した穂乃果たちはステージの上に駆けあがった。まるで再スタートを切った時のように、ステージの中央に集まって。この前と違うのはみんなで円陣を組んでいることくらいだろう。

 ライブ前にいつもやるようにピースサインを真ん中に出す。

穂乃果「うん。みんな行くよ! 1!」

 

ことり「2!」

 

海未「3!」

 

真姫「4!」

 

凛「5!」

 

花陽「6!」

 

にこ「7!」

 

希「8!」

 

絵里「9!」

 

空也「10!」

 

10人『μ's ミュージック……スタート!』

 これで空也たちの中ではスクールアイドルの物語は終わり。後悔もなく最高の結果も残せた。これからの2年は寂しくなってしまうとしても、その先にある未来のためにこれから頑張っていく。そうみんなは心に誓った。

 スタートをここで切ったように、再スタートをここで切ったように、この場所でまた新しい物語が始まるのだ。今までの話は穂乃果たちの人生の本の一端でしかない。大事なのは過去ではなく今と未来。これからの未来にどんなことが起こるのかはわからない。けど、不思議とμ'sのみんなはそう遠くない未来にまたライブができるようなそんな予感がしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 コツコツと甲高いヒールの音が徐々に穂乃果たちのいる講堂に近づいてくる。淡々と、確実に。穂乃果たちに近づいているのはこの学院の理事長でもあり、ことりの母。その手には1通の手紙が握られていた。

 

 どうやら、まだスクールアイドル『μ's』の物語は幕が引かれないようだ。

 

 




ここまで読んでいただき誠にありがとうございます。TVアニメ分が終わり、今回の話はオリジナルではありますが映画編の前に最後の話となりました。

物語を読んでいいただけた皆様ならわかっていただけると思いますが、もちろんこの話の続きはあります。スクールアイドルとしてプロにはならずに終わりを選んだ映画のストーリーとだいぶ変わっていくとは思いますが、それでも続いていきます。

ですが、今回のこの話を持ちまして一旦筆を置いてみようと思います。ここまで一度の休憩期間はありましたがほぼ毎週月曜日には必ず投稿してきて、中には週2、3回投稿していた期間もありました。それがあったおかげでこうして3年目を迎えた今、TVアニメ編を終わらせることができ、ちょっとだけこの余韻に浸りたいなと思っております。

開催時期は未定ではありますが、もちろんやり始めた以上絶対に完結をさせますし、別の作品はもしかしたらちょこちょこ投稿することもあると思います。ですが、今回で一旦この場所ではお別れです。

至らぬ点も多くありましたがここまで読んでいただいた読者の皆様、この作品を作るにあたって手を貸してくださった作家の皆様には感謝しかないです。

またいつか、この場所でお会いしましょう!

それでは、次回もお楽しみに!! またね!


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