ハイスクールD×D 諦観のダンタリオン   作:SINSOU

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10話

「それで、お話は終わったのですか?」

 

メイド長の言葉に、私は溜息を吐く。

椅子に背を預けながら、彼女の淹れてくれた紅茶を口に運ぶ。

うん、美味しいわ。それに落ち着く。

 

「ええ、問題なくね。

 サーゼクスを探して、アザゼルと既に会話を終えたことを伝えたわ。

 これで私が会談に出る意味もなくなった・・・はずだったんだけどねぇ」

 

私の言葉に、メイド長は訝しげな表情をする。

 

「何かあったのですか?」

 

「ええ、ちょっとした問題が見えたのよ。

 まぁ、私からは何もする気はないから、あちらの出方次第だがね」

 

ますます意味が解らない、と言った顔をするメイド長。

私は、出かけて行った後のことを話すことにした。

 

 

授業参観と言う名目で、私は学校を訪れた。

そして人々の中に紛れ、学校中を見て回った。

 

学校の構造、材質、強弱、脆さ、建築様式、その他の情報を知る為に。

どの場所に何があるか、職員室、各教室、視聴覚室、保健室、

地図を見れば簡単だが、私はこう見えて地図の認識が苦手の様だ。

ようは、道に迷いやすい。

ゆえに、実際にその場所を歩かなければ実感しないのだ。

どういった場所で、雰囲気で、どのように行けばいいか、

どういった環境下を知らなければ、私はその地域を知ることが出来ない。

 

途中、不審者が出たということで、不届きものを捕まえに走り回ったが、

結局は逃げられてしまった。悔しい。

まぁ、運よく堕天使総督と出会い、概ねの目的を果たした。

そして、サーゼクスにこのことを伝えようとして、町を歩き回ったところから始まる。

 

 

「あまり変わっていないな」

 

てくてくと徒歩で移動しながら、私は駒王町を観察する。

町の雰囲気、人々の活気、車や人々、鳥や動物が織りなす音の数々。

それを感じながら、私は歩いていく。

 

あの時との違いを見つけようと、私は歩いていく。

人々の合間を縫いながら、道路のアスファルトを焦がすほどの日の光を受けながら、

私はあの場所へとたどり着く。

 

「ああ、ここね」

 

ビルとビルの隙間にあった小路。

生ごみの詰まった、プラスチック製のゴミバケツ。

騒々しいファストフード店の音に、ファストフード独特の臭気。

ああ、やっぱりここだ。

あの子と・・・違うわね、存在価値を奪われた『存在』と出会ったのは。

 

今でも思い出せる。

あの子がここにいたことを。黒い塊だったあの子がいたことを。

どうしてあの子を助けようと、拾おうと思ったのか、あの時の私の気持ちは判らない。

興味があったのか、同情か、憐れみか、好奇心か、今となっては忘れた。

でも、そのおかげで私はあの子と家族になれた。それでいい。

 

「ありがとう、この世界に現れた同類さん。君のおかげで家族が出来たわ」

 

私はそう呟くと、小路を後にし、サーゼクスを探そうとまた歩き始めた。

 

 

 

 

 

「それにしても、悪魔の直轄地と言うわけだが、これは及第点以下だな」

 

サーゼクスを探しながら、私はこの駒王町を歩いているのだが、

やはり気になって仕方がない。

この町には結界といった物が無く、その上侵入者を知らせるようなものが見当たらない。

はっきり言って、領地と言うにはあまりにもお粗末な防衛状況だ。

これでは、様々な存在に入り放題じゃないか。

案外、堕天使総督の存在も気付いていないんじゃないか?

それこそ、私と言う存在も気付いていないようだしな。

 

せめて、邪なものを弾く結界くらいは張っておくべきだろうに。

 

「本当に、コカビエルが目を付けたのは間違いなかったわね」

 

私はコカビエルの評価を一つ上げ、サーゼクスの妹君である、

リアス・グレモリーの評価を一つ下げざるを得なかった。

民を守る為には使える手段は必ず用意しておく、これは領主の義務だと思うのだが。

まぁ、愚痴っても仕方がないか。

 

「っと、ここにいるのか」

 

私は目の前の一軒で足を止めた。

目の前にあるのは、ごく普通の家。何の変哲もない家だ。

表札には『兵藤』という名が彫られている。

 

だが、その中から感じるのは、恐ろしいまでの魔の気配。

凶悪な魔の気配が3つ、とそれよりは弱い気配が7つ。そして人の気配が2つ。

ただし、7つの気配の中には、堕天使や妖怪、龍といった気配が混ざっている。

間違いない、ここだな。

 

「とりあえずは、彼に報告をすればすぐに帰るとしようか」

 

そう言って、私は家へと足を進める。

その時の私は、軽い気持ちで戸を叩いたのだった。

 

 

 

 

 

 

「それでどうなったのですか?」

 

メイド長の言葉に、私は溜息を零す。

 

「どうもこうもない。サーゼクスに出会ったのは良いが、そこから一悶着さ。

 いや、サーゼクスとは話をつけたよ。アザゼルに話したから、会談には出ないとね。

 彼は残念そうだったが、納得はしてくれたよ」

 

「では何が?」

 

「彼の妹君であるリアス・グレモリーと、その眷属たちが私に不信感を持っていたんだよ。

 私自身としては、何もしていない。むしろ駒王町の危機を助けたわけなんだけど」

 

「何か余計な事でも仰ったのでは?」

 

細い目で私を見るメイド長。

それは些か見当違いも甚だしいと思うのだが。

 

「そんなことはないわよ。単に、領主の義務を果たしなさい、と言っただけ。

 それだけよ?」

 

私の言葉に、合点がいきました、という表情のメイド長。何を納得したの。

 

「それで、どうしたのですか?」

 

何かもやもやする私を無視して、話の先を促すメイド長に、私は更にもやもやする。

 

「単に、私と言う存在はなんなのか?とか、サーゼクスとはどういう関係なのか?とか、

 色々と訊いてきたわ。

 もちろん、答えるつもりもなかったから黙っていたんだけどね」

 

私は先のことを思い出して頭を押さえる。

 

「そしたら、赤龍帝が怒らせたみたいでね

 お前は一体何なんだ!?どうしてお前のような存在がいるんだ!と、急に叫んだわけ。

 それこそ、私を殴りかかる気満々だったわ」

 

「そうですか」

 

私の言葉に、メルアの目が細くなり、室内の温度が一気に冷えた・・・気がする。

 

「メルア」

 

「!・・・申し訳、ございません」

 

私は紅茶を皿に戻すと、椅子に座ったまま、大きく伸びをする。

 

「貴女の忠誠心はよく解っているわ。でも、勝手な行動は駄目よ。

 それがたとえ、私を思っての行動でもね」

 

「心得ております」

 

頭をあげるメルアに、私はニコリと微笑む。

 

「赤龍帝は主であるリアス・グレモリーにお叱りを受けていたし、何も問題はなかったわ。

 そう、『今のところは』ね。

 

「?」

 

私は赤龍帝のことを思い出す。

ライザー戦での時は、ガラス越しにしか視ていなかったが、今回は直接相対した。

ゆえに、私は彼を視ることが出来た。

そして私は結論付けた。

 

ああ、こいつが・・・。

 

私は先ほどの言葉を訂正する。お前に感謝する気はなくなった、と。

 

 

 

 

 

メイド長に語り終えた後、私はふと、セイウェルのことを思い出した。

帰ってきてから会っていないのだけど。

 

「そういえば、セイウェルはどこかしら?」

 

「オーちゃん様と、オーちゃん様のお友達と一緒にお外で遊んでおられます」

 

「ああ、あの子たちね・・・」

 

メイド長の言葉に、私は額を押さえる。

セイウェルとオーちゃんが連れてきたお友達との初遭遇。

私はその面子に頭が痛くなった。

何故ならば、

 

「よりにもよって、どうして知り合いがいるんだ・・・!」

 

そう、彼女たちのお友達の中に、知り合いがいたのだ。

それも、私の黒歴史を知っている存在が。

どうしよう、私の黒歴史をセイウェルに知られるわけにはいかない。

取りあえずは、あいつと話し合って黙ってもらおう事にしよう。

それが無理なら、情報操作も止む負えない。

 

私があれこれと考えている中、玄関の扉が開く音がした。

どうやら帰って来たらしい。

 

「ただいまー!」

 

「我、帰ってきた」

 

出迎えれば、そこには砂やらなんやらに塗れた二人。

おい、何をしてきた。

 

「ヴァーくんと一緒に遊んだんだよ。追いかけっこをしたり、かくれんぼしたり」

 

「我、頑張った」

 

朗らかに話す二人に、私は安堵の溜息を吐く。

そして、また誰かが家に入る音がした。

 

『どういうことだ、なぜこいつにも?』

 

「解らん。それこそ、目の前の彼女に聞いたらどうだ?」 

 

セイウェルとオーちゃんの後に続いて入ってきた、白髪頭の子供。

確か、ヴァーくんと言ったか。

私は彼に詰め寄た。

 

「話がある。今から私の部屋に来てもらいたい。拒否権は認めない」

 

「ああ、丁度いい。俺もお前に話がある」

 

私は、ヴァーくんを連れて、自室に移動する。

そしてヴァーくんが入った瞬間、私は自室を結界で覆い、部屋を隔離した。

これで外からの侵入も、声の漏洩も、色々なことが一切不可能となった。

解除するのは、私自身。

 

 

『答えてもらうぞダンタリオン。あらゆる情報を扱うお前なら解るはずだ。

 あの子供、一体何者なんだ』

 

ヴァーくんとは違う、別の声。

 

「久しぶりね、二天竜の一角。あの時以来かしら?

 まさか、こうして再び出会うなんてねぇ。本当に、神はこの世にいないと実感するわ」

 

『話を逸らすな。お前は知っていた筈だ。なぜ奴の気配がする』

 

「せっかちは嫌われるわよ?」

 

「御託は良い、さっさと結論を言え」

 

ヴァーくんの視線が鋭くなる。

やれやれ、あなたもせっかちねぇ。

 

「良いわ、答えてあげる。彼女は・・・・・・」

 

私の言葉に、ヴァーくんしばらくの間黙っていたが、急に笑いだす。

 

『どうした』

 

急に笑い出したヴァーくんに、別の声が声をかける。

 

「いや、運命の巡り合わせとは面白いものだな、とな」

 

そしてヴァーくんは私を見て、言った。

 

「気が変わった。こっちの方が面白い」

 

「?」

 

「ダンタリオン、と言ったか?

 どいうやらこいつと知り合いの様だし、コカビエル戦での実力と、

 援軍としてやって来たことからして、魔王と知り合いだろう?

 なら、面白い話がある」

 

その言葉に、私は嫌な予感を感じるのであった。 

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