ハイスクールD×D 諦観のダンタリオン   作:SINSOU

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12話

「こ、これは一体どういうことなの!?」

 

私は、目の前の状況に頭が追いつかなかった。

私だけじゃない、協力関係にある魔術師たちも戸惑っている。

当初の予定として、こちらに引き込んだ白龍皇の協力で奇襲作戦を行い、

和平会談に現れた各勢力のトップ共を一網打尽にするはずだった。

 

憎っき現魔王の一人、サーゼクス・ルシファーの妹、

リアス・グレモリーの眷属の持つ時間停止の力を用いて、何も出来ないまま殺すはずだった。

当初は予定通りに時間停止が発動し、私たちがそれに合わせて奇襲。

これで動けない奴らを一方的に倒せるはず・・・だった。

なのにこの状況はなんなの!?私たちが奇襲をかけた瞬間、時間停止が解除されたのだ。

まるで私たちが来ることを知っていたかのように、待っていたかのように。

 

「まさか白龍皇が裏切ったというの!?」

 

そんなバカな!現白龍皇は、自他ともに認める戦闘狂。

闘いの場を用意するという言葉で、簡単に仲間になるほどの戦い好き。

ならば、戦う機会を捨ててまで裏切る理由が無い。

 

なら、この状況はなんだ?どうして私たちが圧されている?

こんな状況になるなど、あちらに情報が漏れているという他に理由が無い。

ならばあの堕天使総督のせいか?だが堕天使勢力だけじゃない。

現悪魔も天使たちも、私たちの奇襲を知っていたように布陣だった。

 

「なぜ、なぜ、なぜ?どうして私たちが圧されている!?

 どうして?どうして!?どうしてぇぇぇぇえぇ!?」

 

「カテレアちゃん・・・」

 

混乱する私に声がかけられた。

声の方を見れば、私から先代の名を奪った憎き魔王、セラフォルー・レヴィアタンだった。

セラフォルーは、装飾の施された衣装を纏っていた。

衣装を飾る装飾には、豹とグリフォンの翼が描かれている。

 

「セラフォルーゥゥゥゥゥ!私から先代の名を奪った偽物の魔王!

 貴様さえ、貴様さえいなければ、私が『レヴィアタン』の名を受け継いだというのに!」

 

「カテレアちゃん、私は・・・!」

 

憎悪を込めて叫ぶ私を、セラフォルーは悲痛な顔で見返す。

おのれ!私をどこまでも、どこまでも私を憐れむか!虚仮にするか!

 

「そんなに私から名を奪ったことが嬉しいか!私の全てを奪ったお前を、私は絶対に許さない!

 この場でお前を殺し、『レヴィアタン』の名をもう一度取り戻す!」

 

私は懐から小さな瓶を取り出す。

その中には、奇襲前に借り受けた、無限龍の力が宿っている。

そして私は躊躇なくそれを取り込む。

その瞬間、私の身体に魔力が、力が満たされるのを感じた。

 

「カテレアちゃん!一体何をしたの!?」

 

驚くセラフォルーの顔を見て、私は少し溜飲を下げた。

その顔よ、その顔を見たかったのよ!

今まで私を見下してお前のその、私に恐怖を抱く顔。それが見たかったのよ!

 

「一部とはいえ、無限龍の力を取り込みました。

 どんな手を使おうと、私は貴女に勝つ!そして奪われた物を取り戻します!」

 

「カテレアちゃん!」

 

さあ来なさいセラフォルー・レヴィアタン!

貴女に勝ってこそ、私はようやく私(レヴィアタン)になれるのよ!

私と憎きセラフォルーがぶつかり、そして・・・

 

 

 

 

 

 

 

「あらあら、ようやくお目覚めかしら?」

 

その澄んだ油の切れたような声に、私は意識を取り戻した。

 

「私は・・・」

 

未だ微睡みの中にいるような感覚が頭に残る。

それに感覚もぼやけているせいか、目の前の人影をはっきりと視認できない。

誰かが椅子に座って私を見ていた。

 

「お前は・・・一体誰なの?」

 

「さあ、誰かしらねぇ?」

 

目の前で椅子に座っている人影の、まるで私を小ばかにした言い方。

私に対する無礼な言い方に、すぐさま殺してやろうとして気付かされた。

 

私の身体が動かないことに。

 

「なんで、私の身体が・・・?」

 

必死に身体を動かそうにも、まるで身体が石になったかのように、うんともすんとも動かない。

 

「動かそうとしても無理だよ。

 まだ分かっていないようだから言っておくが、君の身体は拘束されている」

 

「な、何を言って・・・!?」

 

少しずつだが視界が戻ってきたこともあって、私は首を動かし自分の姿を見た。

私の身体は、四方から伸びる鎖に縛られていた。

 

「こ、こんなもの、魔力で簡単に・・・!?」

 

おかしい、魔力が使えない。まるで栓をされたかのように、魔力が出てこない。

 

「解ったと思うが、君の下にある魔法陣は、私が少し弄った特別製。

 魔力と膂力を奪う効果は、今も体験しているから言わなくても良いわよね?

 あ、そうそう、鎖も同じ効果を組み込んでいるから、

 力で引き千切ろうなんて無駄のことは止めておいて方が良いわよ」

 

私は目の前の人物に目を向ける。

 

「だったら今すぐ、これを外しなさい。そうすれば命だけは助けてあげるわ」

 

「あら恐い怖い。そんな目で見つめられてしまうと、私の心は恐怖に打ち震えてしまうわ」

 

「いいからさっさと外しなさい!私を誰だと思って「カテレア・レヴィアタンでしょ?」

 

まるでどうでもいいかのように、目の前の人影は私の名前を言った。

 

「だったら解るでしょ?

 私は誇り高きレヴィアタンの末裔にして、レヴィアタンの名を受け継ぐ者。

 今すぐに私を解放しなさい。でなければ・・・」

 

私の言葉は続かなかった。

何故なら、目の前の人物が急に笑い出したのだから。

 

「何がそんなにおかしいのですか!?」

 

「そりゃおかしいわよ。捕まっている貴女が、私を脅迫するんだから。

 こういうの、普通は逆がやるものじゃないかしら?

 それに、まだ私が解ってないみたいだしねぇ。

 私が誰か解っていれば、そんなの意味ないって解るのに」

 

そう言うやいなや、人影はローブを脱ぎ捨てた。

ファサリと椅子に被さるローブから目を外し、私は人影の正体に、両目を見開いた。

なぜ、どうしてお前がいるの!?

 

「キアラ・ダンタリオン・・・!」

 

「お久しぶりねぇ、カテレア・レヴィアタン。それとも、ただのカテレアでいいかしら?」

 

紫の髪を腰にまで伸ばし、吸い込まれるような真っ黒の瞳の女悪魔が、

私を笑顔で見つめていた。

 

 

 

「なぜお前がここに!?そもそもここはどこです!なぜ私はこんな姿に!」

 

私の目の前で、カテレア・レヴィアタンが叫んでいる。

全く、貴女だって馬鹿じゃないんだから、状況くらい解るでしょうに。

それとも、感情が理解を拒んでいるのかしら?まあ、どちらでも良いけどね。

私は溜息を吐き、言葉を紡ぐ。紡ぐ呪文は沈黙の効果。

 

「!?」

 

「すこし静かにしてくれないかね?黙れば少しは頭も冷えよう」

 

突然声が出せなくなって驚くカテレアを見ながら、私は説明することにした。

 

「さて、順を追って説明しようか。

 どうして君がそんな恰好なのかの答えは簡単、君が負けて捕まったから」

 

「!?」

 

カテレアの目が見開く。

そんなはずがない!と訴えているのは、わざわざ調べなくても解る位に。

 

「次にここはどこか?だったかな」

 

私はカテレアに歩み寄り、彼女の目の前まで近づく。

 

「ここは、ある目的の為に拵えた私の部屋だよ。

 しいて言うなら、ある目的の為に作らされた部屋でもあるんだけどね」

 

カテレアは何かを叫ぼうとするが、声を出させないようにしたので、口からは何の音も出ない。

 

「そして最後、どうして私がここにいるのか?だったわよね?

 私が言わなくても分かっているんじゃないかしら?それとも理解を拒否しているのかしら?

 まあでも、答えなきゃダメよね」

 

私は少しカテレアから離れるように移動し、くるりと彼女に顔を向けて答える。

 

「それは私がダンタリオンだから、と言えば解るんじゃないかしら?」

 

「!!」

 

私の言葉の意味が分かったのか、カテレアの顔が青ざめる。

 

「その様子だと、解ってくれたみたいね。

 貴女の考えている通り、私が呼ばれたってことは、つまりそう言うこと。

 解ってくれて嬉しいわぁ」

 

私は一歩ずつ、カテレアの方へと歩く。

カテレアは、動かない身体を必死に動かそうと足掻き、

その目は少し泣いているのか、滲んでいるように見えた。

 

私は暴れる彼女に歩み寄り、激しく振るう彼女の頭を両手で押さえる。

そしてその頭を私の胸にもっていき、彼女の頭を抱きしめ、

安心させるように、彼女の頭を撫でる。

しばらく撫でた後、私は彼女の頭を胸から外し、彼女の顔を見る。

あらあら、カテレアったらまだ泣いてるじゃないの。

私は指で涙を拭う。うん、これで安心ね。

 

そして彼女の耳元に囁く。

 

「じゃあ、洗い浚い喋ってもらおうかしら。

 私はキアラ・ダンタリオン、私の前ではあらゆる秘密は意味をなさない」

 

そしてしっかりと彼女の頭を押さえ、

 

「そして貴女の感情さえも、私にとっては思うが儘」

 

彼女の目を見つめ、彼女を安心させるために口元をあげて、

 

「だから、抵抗しない方がいいわよ?」

 

笑うことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい、これが資料よ」

 

「ありがとう。助かったよ」

 

私は手に持っている資料を、サーゼクス・ルシファーに渡す。

サーゼクスの方も、思いのほか嬉しそうに受け取った。

資料に書かれているのは、カテレアから聞き出した、彼女の知る禍の団のメンバーだ。

取りあえず、サーゼクスに頼まれた仕事を終え、私は出された紅茶で喉を潤す。

やっぱりメルアの紅茶の方が美味しいわね。

 

「やはり、旧魔王派は禍の団と手を組んだということだね」

 

資料に目を通しながら、サーゼクスが言う。

 

「その資料を見る限りわね。

 でも、それはあくまでカテレアが知ってる情報でしかない。

 だから、それが全てだとは思わないでほしい。

 私はあくまで、その人物が知っている情報を抜き出すことしか出来ないんだから」

 

私はサーゼクスに一言言っておく。

 

「解っているさ、クレア。一応、参考資料として受け取っておくよ」

 

一通り目を通したのか、彼は資料をテーブルに置く。

 

「それにしても、よくカテレアを捕まえられたわね。

 実力は君たちよりも低いとはいえ、それでも魔王の末裔に申し分ない力だったのに」

 

それと記憶を見るに、無限龍の力を使ったみたいだしね。

たとえ力の一部とはいえ、最強の龍の力が宿ったカテレアって、

それこそアザゼル匹敵するほどに危険じゃなかったかしら?

 

「それは君のおかげだよ。

 君が事前に情報をくれたおかげで、私たちも準備が出来ていたからね。

 そのおかげで、こちらも対処が出来たんだ。アザゼルやミカエルも君にお礼を言っていたよ」

 

「一応素直に受け取っておきましょうか。

 ミカエルはまだしも、アザゼルは皮肉交じりに言ってたでしょうね」

 

あの堕天使総督のことだ、苦虫を噛み潰したような顔をしていたに違いない。

私はクククと笑う。

 

しばらくの談笑した後、屋敷に帰ろうとした私を、サーゼクスが尋ねた。

 

「それで彼女は?」

 

「あら、気になるのかしら?それは感傷?それとも不安?」

 

私の言葉に、サーゼクスは「両方さ」と答える。

私は表情を変えずに答えることにした。

 

「なら安心していいわ。カテレアは死んだから」

 

私はさらりと答えることにした。

 

「そうか、彼女は死んだのか」

 

「ええ、死んだわ」

 

私はサーゼクスの目を見る。

 

「だからセラフォルーにも伝えておいて。

 思うところがあるなら、私に会いに来なさいって」

 

そう言うと、私は屋敷へと跳んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、一体これはどういうことですか、お嬢様?」

 

「だから言っているじゃない。

 最近何かと誰彼が家やってきて、かなり賑やかになってるでしょ?

 だからメルアも人手不足かなぁ・・・って思って」

 

私はメルアの視線から目を逸らしつつ、なんとか言い返す。

 

「だからと言って、事前に連絡もなしにつれてくるのは些か急すぎます。

 こちらも色々と準備と言うものがあるのです。

 お部屋はあると言いましても、この方のために何かと用意しなければなりませんのに」

 

ちらりとメルアは彼女を向く。

彼女はびくりと身体を震わすも、その顔はどうにか体面を保っている。

 

「分かりました。

 お嬢様が連れてきたということは、一応信頼できる方だと思います。

 それでは私について来てください。お部屋にご案内いたします」

 

メルアは彼女を一瞥すると、彼女についてくるように言う。

彼女は、まるで縋るような目で私を見るが、私は笑うことしか出来ません。

そんな私を見て何かを察したのか、彼女は青ざめた顔でメルアの後に続いてく。

奥の部屋へと案内されていく彼女の後姿を見ながら、私は溜息を吐く。

 

「さて、思いつきでやっちゃったけど、これからどうしようかしらね・・・」

 

私は、彼女が案内された部屋から聞こえる悲鳴を聞きながら、

これからのことを考えるのであった。

 

「先生、誰か来たんですか?」

 

「そうねセイウェル。しいて言うなら、新しいメイドさんかしら」

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