ハイスクールD×D 諦観のダンタリオン   作:SINSOU

14 / 16
13話

まるで火山が噴火でもしたかのように、地面を揺るがすほどの轟音が響く。

一直線に光が走り、その光に触れた木々たちは、灰すらも残らずに消える。

空を見れば、薄暗い闇の中を、白い光と赤い光が飛び交っている。

その光たちが数回交わる度に、その中心から溢れた暴風が雲をかき消し、

そこから覗く星の光が、辺り一面を明るく照らす。

 

「あの子たちも元気ねぇ」

 

その光景を、私は屋外に置かれた椅子に腰を下し、紅茶や茶菓子と共に見守っている。

観客は私だけではなく、テーブルを挟んだ向こう側では、

オーちゃんも椅子に座って、メイド長お手製のクッキーを頬張っている。

私の隣には、メイド長と新人メイドが控えており、メイド長はいつも通りの無表情。

一方で、新人メイドは、目の前で起っている光景に呆然としている。

 

ちなみに私たちがいるのは、私の屋敷の庭であり、

大惨事が起っているのは、私の領地内の出来事である。

私の屋敷の周辺は森で囲まれており、その一部を遊び場にしたのだ。

取りあえず、防音や魔力洩れ防止といった結界をこれでもかと敷き詰めたので、

余波による轟音や暴風の類いが外に洩れることはまずない。

もちろん、民の皆を危険な目にあわせる気は毛頭ないので、何かあったら私が止めるつもりだ。

時折、紅い方から放たれた大きな火の玉、白い方から放たれた無数の光、

暴風にあおられて巻き上げられた木々などが、何度かこちらに向かってくることもある。

と言っている内に、風で舞い上がった一本の木が、こちらに向かってくる。

そこまでは大きくは無いにしろ、人を潰すには十分な太さの幹だ。

 

「シッ!」

 

その声と共に、その木は方向を変え、私たちと屋敷を逸れて地面に刺さった。

 

「ありがとうね」

 

「滅相もございません」

 

既に隣に戻ったメイド長に、私はお礼を言いつつも、紅茶を口にする。

やはり、美味しいわ。

 

そんな中、リスのようにクッキーを頬張っていたオーちゃんは、

彼女の為に置かれていた紅茶を飲んで、ふぅと息を吐く。

 

「我、クッキーに満足」

 

「ありがとうございます」

 

オーちゃんの言葉に、ぺこりと頭を下げるメイド長。

ふむ、オーちゃんもだいぶ、私たちに馴染んできたようだ。

少し前までは、週に数回、気まぐれのようにやって来たのだが、今では毎日こちらに来ている。

昼ごろにやって来ては、セイウェルと一緒になにやら遊び、夕暮れになると帰っていく。

もはや私の屋敷に来るのが日課みたいなものだ。

 

一方で新人の方は、まだ私たちと一線を引いているみたいで、まだまだ棘が残っている。

私と目を合わせて会話をしてくれない上に、何かと私を避けている。

私としては、いい関係を結びたいと思っているのだが、そうそう上手くは行かないものだ。

まあ、彼女の経緯からすらば、当たり前ではあるのだがね。

 

「お嬢様」

 

メイド長の声に促され、私は空へと目を向ける。

すると、どうやら決着が尽いたらしく、紅い光が一直線に地面へと降下し、そのまま激突した。

一方、上空の白い光は、ゆっくりと降下していく。

 

「さてメイド長、冷たい飲み物とお菓子を用意してちょうだい。

 多分、二人ともお腹が空いていると思うわ」

 

「承知しました」

 

メイド長は踵を返し、屋敷へと入っていく。

途中、メイド長は未だ呆然としている新人メイドに声をかける。

新人の方は、「なぜ、私がそのようなことを」と愚痴を零すも、

メイド長の目が鋭くなったことに気付くと、冷や汗をかきながらメイド長の後に続いた。

 

メイドたちが席を外すこと数分、

大惨事が起きた場所から、二人の人影がこちらに向かってくる。

二人の内、長い髪の方は泥だらけに砂まみれで、髪は所々でボサボサで、衣服はボロボロだ。

 

「先生!私、負けちゃった!」

 

私は泥だらけのセイウェルを抱きしめ、よしよしと頭を撫でる。

言葉とは裏腹に、彼女の顔はとても嬉しそうに笑っている。

どうやら、随分と楽しんだようだ。

 

「なに、セイウェルが楽しめたならそれでいいさ。それに、これからの課題も見つかったからね。

 基礎は出来てはいるが、逆に基礎に倣い過ぎていると言ったところかね」

 

頭を撫でられ、気持ちよさそうなセイウェルを見つつ、私は今後の問題について考察する。

なにぶん、基礎を徹底的に教え込んだ訳だが、これからは臨機応変さを学ばせるか。

そう考えつつ、私はセイウェルに身体を洗うように言い、

洗い終わったらお菓子を用意してあるわ、と言っておく。

一目散に屋敷へと駆けて行くセイウェルに、その幼さを苦笑しつつ、嬉しくもあった。

 

「それで、貴方からの感想はどうかしら?」

 

私は、もう一方に声をかける。

 

「発展途上といったところか。お前の言う通り、基礎は出来ている。

 が、それが足を引っ張っているとも言える。

 躱すことは容易かったが、こちらの攻撃は寸でのところで防がれる。

 責め手には苦労した」

 

「そう」

 

そしてオーちゃんの方にも顔を向ける。

 

「セイウェルはまだ未熟。でも、我は楽しみにしている。

 いつか、本気の我と遊んでくれることを」

 

「セイウェルにも言ってあげてくれないか。きっと喜んでくれるさ」 

 

そう言うと、オーちゃんはパタパタとセイウェルを追って、屋敷へと駆けて行った。

うむ、仲良きことは良いことだ。

 

『ダンタリオン、一体どういうつもりだ?今回の件は、我としても理解出来ぬ。

 急に我らに頼みごとするのもそうだが、なぜ我らと奴を戦わせた?』 

 

「暇つぶし、って言ったら?」

 

私の言葉に、空気が少し冷たくなる。

 

『誤魔化すのはよせ。貴様のことだ、何か見えているのではないか?』

 

訝しむ声に、私は肩を竦める。勝手について回った悪名も考えものだわ。

私は自分の範囲で出来ることをしてきただけだというのに。

 

「半分は正解で、半分は見当違いよ。

 今回の件は、我が愛弟子の成長を知るためのいい機会だっただけ。

 それ以外には理由はないわ。」 

 

私は溜息を吐く。

 

「それにこんな辺境のいる、『純血』だけが取り柄の十派一絡げの悪魔が、

 いったい何を考えるっていうのだ?旧魔王派のように、クーデターをするとでも?

 考え過ぎるのも大概だよ」

 

私はそう言って話を切りあげ、セイウェルの方へと足を運ぶ。

クッキーを食べるセイウェルに、私は微笑むのだった。

 

 

 

 

 

「お嬢様、お休みなさい」

 

「ええ、お休みなさい。私はもう少し本を読んでから休むわ」

 

「そう言って、最後まで読もうとして朝を迎えたこともありましたね」

 

私は飲んでいた紅茶に咽る。

 

「お嬢様、御身を軽んじることは止めてください。私は・・・」

 

「解っているわよ、メルア。無茶をすることはしないわ」

 

パタンと扉を閉めるメイド長を見ながら、私は苦笑する。

メルアを心配させる自分自身に、辟易というものだ。

 

しばらく本を読んでいると、不意にランプの灯りが揺らぐ。

私は本を読む手を止めず、来訪者に声をかけた。

 

「それで、今日の二人の遊びを見てどう思ったかしら?」

 

「恐ろしい、というのが正直な感想です。

 貴女のせいでこうなった私が言うのもなんですが、上には上がいることを理解させられました」

 

「それで、貴女はどうしたいの?」

 

「正直に言えば、今ココで貴女を亡き者にしたところで、もはや意味はない。

 ならば新たな私として、一から築き上げるのも悪くはないかもしれません」

 

「そう」

 

私は読んでいたページにしおりを挟み、本を机に置く。

 

「ならば私に、貴女を一から築き上げる手伝いをさせてちょうだい。

 私とて、こうなった責任は取るつもりよ?」

 

「かのダンタリオン卿が、私に手伝いをさせてほしいと頼むのですか。

 それはどういう魂胆ですか?」

 

少し警戒を抱いている彼女に、私は苦笑する。

 

「あら、家族を応援するのは同然じゃないかしら、カレン?」

 

「貴女は本当に食えない人です」

 

そう言ったカレンの顔は、少し赤らめていた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。