ハイスクールD×D 諦観のダンタリオン   作:SINSOU

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加筆修正しました


2話

サーゼクス・ルシファーは、悪魔における魔王の一人である。

本来の彼は、グレモリー家の長男であった。

だが、彼の種族である悪魔、そして敵対者の天使や堕天使との戦争の結果、

先代の四大魔王が戦死し、彼を含めて新たに4人の悪魔が、魔王の座を受け継いだのである。

 

もちろん、彼自身の実力は、魔王の名に恥じぬ程の折り紙つきであり、

その魔力は先代のルシファーを凌ぎ、母方の血筋からの恐ろしい力、

相手を文字通り消滅させる『滅びの力』を受け継ぎ、

長年に渡り、時間をかけて磨き上げられた才能による実力は、

サーゼクスを最強の存在へと昇華させたのである。

そしてその血のように真っ赤な髪の色から、

呼ばれた異名は『紅髪の魔王(クリムゾン・サタン)』

 

まさに、真の意味でも魔王と言えるのである・・・。

 

 

 

 

 

 

「そんな偉大なるサーゼクス・ルシファー・魔王様、ご無礼を恐れながら申し上げます。

 一体どうして、偉大なるサーゼクス・ルシファー・魔王様が、

 こんな山奥にひっそりと住んでいる、偏屈な私を訪ねてきたのですか?」

 

テーブルを間に、私はあまり歓迎しない来客と対面していた。

テーブルの上には、2つのカップ。私には緑茶を、相手には紅茶が淹れてある。

私の言葉に思うところがあるのか、相手は誤魔化すような笑みを浮かべる。

だが、私からすれば、それはもはや何十回、何百回と見た光景だ。

ゆえに、私は目をさらに細める。

 

「あははは・・・随分と手厳しいね、クレア。

 昔みたいに、サーゼクスと呼んでくれても構わないんだよ?

 君は、僕やセラフォルー等と共に、互いに競い合った学友じゃないか」

 

「それは昔のことです、サーゼクス・グレモリー・ルシファー・魔王様。

 それに当時、貴方様はまだ魔王になっていらっしゃらなかった。

 他の方々もそうです。皆さまは、今では立派な魔王様ではないですか。

 昔のこととは言え、今思えば、私はとんだ失礼をしていたのですね。

 本当に申し訳ありませんでした」

 

私の取り付く島もない発言に、魔王様は言葉を詰まらせる。

いかんせん、いくら旧友とは言え、立場的には私が下で、魔王様が上なのだ。

取りあえず、振る舞いだけでもとりつくろっておかなければならない。

 

「クレア・・・。

 もしかしなくても怒っているのかい?いや、怒っているよね?

 さっきから僕を見る君の目が、とても突き刺さる程に鋭いんだけど。

 やっぱり怒っているよね?」

 

「いえいえ、勘違いですよ。

 結婚して子供までいらっしゃるのに、なんで時折、私の所へ遊びに来るんですか?とか、

 そんなに無関係の私を、グレイフィア様の嫉妬光線に晒させて、

 私の胃壁を削りたいのですか?とか、そんな失礼なことは思っておりません。

 ところでサーゼクス・グレモリー・ルシファー・魔王様、

 奥様のグレイフィア様は、気丈に見えてとても寂しがり屋です。

 ですから、私の平穏の為にも、グレイフィア様の傍にいてあげてください。

 そして二度とここに来ないと、私はとてもとても嬉しいんですが。」

 

「それは問題ないよ。私はグレイフィア一筋だからね。

 僕も彼女も相思相愛さ」

 

惚気たね?惚気ましたね?惚気やがりましたね?この魔王様は。

だったら、奥様による私への嫉妬光線を止めさせてください。

顔を合わす度に、私への思い(嫉妬)が駄々漏れなんですよ。

 

「それは良かったですね。だったら、早くお帰り願います。

 私も暇ではありませんので」

 

そう言って、私は玄関の入り口へと手を向ける。

この手の場合は、そうそうにお帰り願うのが一番だ。たとえそれが魔王様でもだ。

 

「いやいやいや、まだ話は終わっていないよ、クレア。

 というか、まだ話すら出来ていないじゃないか。

 取りあえず、僕の話を聞いてくれないだろうか?」

 

魔王様は、少し慌てた後、まるで縋るような目で私を見てきた。

まるで、話を聞かない私が悪いような雰囲気である。

これも繰り返し行われたことだが、いかんせん、

これを断れるほど、私も畜生にはなりたくない。

私は溜息を零した。

 

「仕方がありませんね、サーゼクス。

 他ならぬ魔王様にして、私の数少ない友の頼みとあれば、私も聞かざるを得ません」

 

私が姿勢を正すと、サーゼクスも「助かるよ」とお礼を言う。

 

「実は・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ・・・」

 

サーゼクスが帰った後、私は椅子に腰を下ろしたまま、何度目かの溜息を零した。

テーブルに置かれたカップは既に空で、私は再度緑茶を注ぎ直し、喉を潤す。

 

「まったく、いつもいつも厄介な話ばかりを持って来る・・・」

 

私は、サーゼクスの話を思い返す。

 

 

 

「赤龍帝?あの二天龍の片方が、貴方の妹君の眷属になったと?」

 

私の言葉に、サーゼクスは首を縦に振る。

 

「なんでも、偶然とはいえ、神器持ちの人間を転生させたら、

 それが当代の赤龍帝だったと、いうことらしい」

 

「まぁ、なんて偶然」

 

私は、その話を聞きながら、緑茶を口に運ぶ。

 

 

赤龍帝

その名を聞けば、長年生きてきた悪魔からは、畏怖の念を抱かられる存在だ。

かつて、私たち悪魔は、仇敵である天使・堕天使と戦争をした。

それはまさに、互いの種の存続を賭けた戦いと言っても良かった。

だが、とある理由による、その戦争は停戦となった。

その理由が、二天龍による介入だ。

結局は、戦争していた私たちは、その二天龍を押さえるために死力を尽くし、

多くの犠牲を出して封印に成功したというわけだ。

 

「それで、どうするつもりなの?」

 

私の言葉に、サーゼクスは、伏せていた顔を上げる。

その表情は、どうするべきか迷っている、と言ったところだ。

 

「赤龍帝を眷属に出来たということは、少なくとも、

 強力な存在を、二天龍の一角を、悪魔側に惹き込めたと言うこと。

 これは悪魔側にしては、大きなことよ。

 貴方の妹君・・・リアス嬢の評価も、これで上がったと言ったところかしら?」

 

カップの緑茶に目をおとしながら、私は続ける。

 

「でも問題は、当代の赤龍帝が、素直に協力してくれるかしら?ってところね。

 いくら転生悪魔とは言え、眷属の関係は簡単に裏切れるほどに脆く、

 悪魔の駒だって万能じゃないわ。

 それこそ恨みなんて買われたら、みんな龍の餌になるでしょうね。

 それか、龍の逆鱗に触れて、悪魔共々冥界の終わりかしら」

 

私の言葉にサーゼクスは、首を振るう。

 

「いや、そんなことはないよ。

 実際、赤龍帝の彼は、リアス・・・リーアたん等といい関係を結んでいる。

 だから今のところは、裏切ることなんてないさ

 それに、上層部の連中も、赤龍帝が自分たちの側になったことに喜んでる」

 

その言葉に、私は目を細める。

 

「そう、それは良かったわ。

 私とは違って、赤龍帝の主様は信用されているようね」

 

「クレア・・・」

 

「冗談よ」

 

サーゼクスの言葉に、私は微笑む。

力とは、本人がどうであれ、厄介なものだ。

それこそ、疑われてしまったら、それを払拭することが難しくなる。

 

「それで、私にそれを話した理由は?まさか私に監視をしろと?」

 

「いや違うよ。単に君に知らせたかったただけさ。

 それに、こうして旧友と話が出来るだけでも、僕には助かるからね。

 それじゃ、僕は行くよ。」

 

「それじゃあね、サーゼクス。今度来る時は、お茶菓子でも持って来てほしいわ」

 

「善処するよ」

 

そう言って、サーゼクスは出て行った。

 

 

 

 

「赤龍帝、赤龍帝ねぇ・・・。ほんと、訳解んないわ」

 

私が椅子にもたれかけながらまた溜息を吐くと、

不意に頭に手を置かれた感触がする。

気が付けば、一人の少女が私の前に立っていた。

彼女の手が私の頭に置かれているのだ。

 

「先生、どうしたんですか?また何か困ったことでも?」

 

心配そうな表情と、撫でる様な手に、私は「何でもないよ」と答える。

 

「いや、セイウェルの気にすることじゃないんだ。

 ただ、厄介な話を聞いてしまったなぁ、とね」

 

「?」

 

私の言葉に、彼女、セイウェルは首を傾げる。

私は椅子から立ち上がり、逆にセイウェルの頭を撫でる。

 

「心配してくれてありがとう。

 セイウェルが気遣ってくれるおかげで、私もなにかと心が安らぐよ」

 

「♪」

 

頭を撫でられるセイウェルは、気持ちよさそうに顔を綻ばせる。

その表情に、私も笑顔になる。

 

「それでセイウェル、今日は何をしてきたんだい?」

 

「えっと、今日はお空を飛べたんだ!

 背中から大きな翼が出てきて、こう、動かしたらフワーって!」

 

必死に伝えようとするセイウェルの動きに、私は口からよだれが出る。

くわぁいい。

いかん、子供の成長を喜ぶというのはこういうことか。

前の私のがそうだったが、なるほど、嬉しいものだ。

 

「そうか、空を飛べたのね。

 うんうん、少しずつ課題をこなしているわね。

 じゃあ、この前のおさらいをしましょうか。

 見せてくれるかな?」

 

「はい、先生!」

 

そう言うと、セイウェルは自分の右手を掲げて、力を込めた。

すると、彼女の右手は光り輝き、そして・・・。

 

「見て先生!ちゃんと出来たよ!」

 

彼女の右手は、朱い鱗に包まれた、龍の手をしていた。

その姿に、私は満足げに頷き、セイウェルの頭を撫でる。

 

「良く出来ました。うん、力の制御は順調のようね。

 まだまだ至らない点はあるけれど、少しずつ熟していけばいいわ。

 時間は幾らでもあるんだからね」

 

私に撫でられ、気持ちよさそうに顔を綻ばせる彼女に、

私は不思議と笑みをこぼす。

 

「さて、無事合格したセイウェルには、何かご褒美をあげないと。

 何がいいかしら?」

 

私の言葉に、セイウェルは腕を組み、うんうんと唸りながらも考え込む。

悩めよ若人、悩めば悩むほど土壺に嵌ることもあるけどね。

 

「ケーキ!」

 

彼女の要望に、私は顎に手を置き、考える。

 

「ケーキ?ふむ、どんなケーキだ?

 苺のショート?チョコレート?抹茶シフォン?モンブラン?

 いかん、多すぎて何を買えばいいのか判らなくなってきたぞ・・・」

 

あれもこれもと考え出し、頭から湯気が出始める。

 

「手作り・・・」

 

「なんだと?」

 

セイウェルの言葉に、私は聞き返す。

今なんと言った?

 

「一緒にケーキ、作りたい・・・」

 

セイウェルは、私の服の裾を掴み、見上げるように言う。

 

「駄目・・・?」

 

その瞬間、私はセイウェルを抱え、自治領の市場へと転移。

店の方々に「キアラ様は相変わらずですねぇ」と、

苦笑と呆られの視線を受けながらも、材料を購入。

直ぐさま屋敷にと舞い戻り、台所へと駆けこむ。

 

「さぁ、セイウェル!何を作る?どんなケーキを作るんだ?

 私が、この私が教えてやるぞ!さぁ、早く言うんだ。

 ハリー!ハリー!ハリーハリーハリー!」

 

「お嬢様、セイウェル様がドン引いておられます」

 

メイド長にプレートで頭を叩かれて正気に戻り、

私はセイウェル(と監督役のメイド長)と共に、ケーキを作るのだった。

ちなみに、分厚いホットケーキを作ろうとしたが、

薄いパンケーキになってしまった。

まぁしかし、美味しかったので、私にはそれで十分だった。




キアラ=クレア

名前に関しては、こうした対応名があるので、
呼び方って大変ですよね。
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