ハイスクールD×D 諦観のダンタリオン   作:SINSOU

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3話

「ふんふふーん」

 

私は、年甲斐もなく鼻歌を歌いながら、本棚に収まっている本を見上げている。

本棚は他にも何十、何百と佇み、まるで城塞のように私の目の前に聳えている。

その姿に、私は歓喜に打ち震える。

 

「うん、やはりここは良いものだ。心が安らいでいくな」

 

私はこの本棚に囲まれたこの場所に大変満足していた。

ここは私が秘密裏に拵えた別空間、

自称『私の安らぎ』であり『憩いの場』であり、そして『私の知識の図書館』である。

ここには、私が長年集めてきた何百、何千、何万以上の本が収まっている。

いやはや、悪魔という長命種だからこそできる芸当である。

前世の時には出来なかった夢が、今、叶っているのだ。

まぁ、時間だけは腐る程ではないがあったからね。趣味につぎ込んで何が悪いんだ!と。

 

私は、本棚に収まっている自分のコレクションを満足げに見つめている。

一通り読んだとはいえ、こうしてまた読みたくなるのが本の魅力だ。

ゆえに、捨てることはしないで、本棚に収めていく。

ちなみに、目の前の本棚は娯楽関連の本だ。まぁ、漫画や絵本といったものが収めてある。

ふと、何気なく一冊取り出してみる。

 

「あら、懐かしいわね」

 

取り出したのは『マシーナリーキャット・ブラック』である。

悪の科学者によって改造され、マシーナリーキャットとなった飼い猫ブラックが、

時に町の平和を、異世界を、果てに宇宙を救う話だ。

多くの仲間たちをぶん投げたり、叩き付けたり、振り回したりと大暴れ。

かと言って、時にほろりとくる内容もあったりする。

 

「これも懐かしいなぁ」

 

次に取り出したのは『怪盗王(ファントムキング)』

怪盗を名乗る主人公が、相棒と共に世界中のお宝を盗む冒険活劇だ。

まぁ、正式には1巻毎に世界観がリセットされ、その世界での話になるので、

続き物ではありつつも、かといって1巻で完結しているとも言える。

注目すべきは、独特の世界観と魅力的な登場人物。

各世界観は、異質であるも魅力的。もう訪れたいという衝動に駆られたものだ。

登場人物も、その世界観から外れることはない。

まぁ、ヒロインが可愛いってもの良かったのかな。

 

それにしてもと、改めて周りを見れば、本棚しかない空間と、

その中心に置いてある、照明の灯りの乗ったテーブルと装飾された椅子。

人が見れば、殺風景この上ないだろうが、先にも言った通り、ここは私だけの場所だ。

何人たりとも、この場所を侵すことは許さない。

もちろん、そのための手回しはしっかりしている。

この場所は一部を除いて秘密だし、私の許可なく入ることは原則として不可能。

何重にも結界を張り巡らせ、入り口は古典的な封印(鍵)を用いている。

まさに、鉄壁の守りであ「お嬢様、来客がお目見えです」

 

振り返れば、この空間の入り口である扉の前で、この屋敷のメイド長が立っていた。

無表情ではあるが、その雰囲気からは、

「さっさと務めを果たしてください」というオーラが見えている。

 

この空間に入れるのは、私が許可した者だけと言ったが、

一人は私の眼の先に立っている、私専用のメイドであり、この屋敷のメイド長。

そしてもう一人が、「先生!この本を読んでも良いですか!?」と、

『マジックマスターぶろっさむ』を手に、私に駆け寄ってくるセイウェルである。

というか、この2人しか許可をしていない。まぁ、大切な家族だからね。

 

ちなみに『マジックマスターぶろっさむ』は、

漫画からアニメへ、そして映画にもゲームにもなった有名な作品である。

同じ系統では『魔法少女ミルキー』があるが、

こちらはあくまで魔法に関する事件や問題を解決するお手伝いをする流れだ。

メインは、登場人物たちの頑張る姿や優しい世界である。

この話題に関しては、セラフォルー様と殴り合いに発展したこともあるので、

今は割愛させて貰おう。

 

駆け寄ってくるセイウェルを抱き留め、私は良いよと答える。

セイウェルは嬉しそうに、その場でぴょんぴょんと飛び跳ね、私の椅子へと駆けだす。

どうやら、私の席がお気に入りになってしまったようだ。

 

「お嬢様?セイウェル様を愛でるのは結構ですが、お客様が待っております。

 私としては別に構いませんが、そろそろお相手しませんと、厄介なことになりますよ?」

 

なにやら含んだことを言うメイド長に、私は来客のことを尋ねる。

 

「ところで、一体誰が来たんだい?」

 

「グレイフィア様です」

 

私は一目散に扉へ駆け出した。

 

 

 

 

 

 

「お久しぶりでございます、ダンタリオン卿」

 

「ええ、お久しぶりですね、グレイフィア魔王夫人」

 

来客用の大接間に置かれたテーブルを挿み、

私は椅子に、グレイフィアはソファに腰を下ろして、互いに向かい合っていた。

私の目の前にいるは、グレイフィア・ルキフグス。

現魔王、サーゼクス・グレモリー・ルシファー・魔王様の奥様だ。

奥様であると同時に、サーゼクスの女王でもあり、最強の女性悪魔。

光を映しだす様に煌く銀色の髪を携えていることから、

二つ名は「銀髪の殲滅女王(ギンパツノクイーン・オブ・ディバウア)」という、

私からすれば(色んな意味で)何とも言えない名がある。

ちなみに現魔王の一人、

セラフォルー・シトリー・レヴィアタン・魔王様と最強の座を争ったことも有名である。

正直、私のような十派一絡げな悪魔貴族からすれば、恐ろしい存在とも言えるが、

私からすればもっと別の意味で苦手な、寧ろサーゼクスたちより会いたくない御方だ。

 

「ところで、先ほどまでどちらにいたのですか?

 随分と待っていたような気がするのです」

 

「野暮用で少し席を外していてね。いやはや申し訳ない。

 もしも連絡をいただいていれば、私も優先したのですがね」

 

互いに笑みを携えたまま、しばしの沈黙。

なお、私の胃はきりきりと痛みを発し出している。

 

「して、グレイフィア魔王夫人。私に何かあったのですか。

 連絡もなしに来られたということですが、急ぎの用事でしょうか?」

 

「いえ、そこまで急なことではありません。

 魔王様から渡してほしいと頼まれた物がございまして」

 

そういって出されたのは、何も書かれていない真っ白な封筒が一封。

裏を捲れば、グレモリー家の紋章で封蝋されている。

つまりこれは、グレモリー家からの正式な物と言うことだ。

 

「開けてもよろしいですか?」

 

グレイフィア魔王夫人の許可を得て、私は開封する。

すると、中から出てきたのは一枚の紙きれ。

目を通せば、その内容に私は首を傾げた。

 

「フェニックス家とグレモリー家によるレーティング・ゲームの招待状?」

 

「ええ。これより10日後、ライザー・フェニックス様とリアス・グレモリー様との間で、

 レーティングゲームがお忍びで行われます。それはその招待状です」

 

グレイフィア魔王夫人の言葉に、私は溜息を吐く。

 

「たしか、以前からグレモリー家はフェニックス家と懇意でしたね。

 消えゆく純血悪魔の血を絶やさぬようにと、婚約の約束もあったみたいですが、

 どうやら上手く行かなかったようですね。これを見るに」

 

チラリとグレイフィア魔王夫人へと目を向けるが、本人は顔色を変えず無言である。

 

「そしてこの内容からして、結婚を決めるためにレーティング・ゲームが行われる、と」

 

「その通りです」

 

私は更に深い溜息を吐く。

何かと情報に疎い私の領土ではあるが、グレモリー家の次期当主、

まぁ、サーゼクスの妹であるリアスお嬢さまが、結婚に大反対というのは聞いていた。

サーゼクスがこちらに来る際に、何度か愚痴を零していたっけか。

 

「リーアたんの気持ちは解るが、これ以上魔王である私が肩入れすれば、

 まず間違いなく身内贔屓となってしまう。

 ああ、リーアたん!お兄ちゃんはリーアたんの味方だけど、立場がそれを許してくれない!

 本当にすまない!」

 

などと、無関係な私の前で愚痴るので、嫌でも知ってしまった経緯でもあるのだが。

 

「分かりました。魔王様には、喜んで受け取ったと伝えてください」

 

まぁ私には断る理由など無いし、せっかく招かれたのだから行ってみようじゃないか。

それに、気になることはいくつかあるからね。

 

「魔王様には、喜んで受け取ったとお伝えします」

 

変わらぬ無表情な顔のグレイフィア魔王夫人。

この人はやっぱり苦手だなぁ。

まあでも、用事は済んだみたいだし、直ぐにお帰りねが「ところで」

安心した私に、グレイフィア魔王夫人が口を挿む。

目を向ければ、そこには顔は変わらないのに、

湧きあがる嫌なオーラを纏った彼女がいる。

 

「サーゼクスは、ダンタリオン卿の所に何度か見えていますが、

 一体何を話されているのですか?」

 

彼女の目は、私を射抜くように鋭く、身体から迸るオーラは色濃く映る。

そして、私の胃は更にも増してきりきりと痛み出してきた。

毎度の事だが、どうもグレイフィア魔王夫人は勘違いをしているらしく、

ことある毎に私に謎の敵疑心を抱いている。いや、もはや嫉妬であろう。

まぁ、この人は寂しがり屋だから、不安で仕方ないのだろうとはわかっているのだが、

被害者でしかない私としては、勘弁してほしいとしか言えない。

 

あのね、サーゼクスと私はただの旧友なんですよ、と言っているのだが、

肝心のサーゼクスが、仕事から逃げるため等で時折こっちに来るせいで、

潔白がはれないでのある。

それも相まって、私はグレイフィア様が駄目だ。全ては魔王様のせいなのに。

 

「解りました。お話しますので抑えてくれませんか?

 このままでは私の屋敷が倒壊しそうですので」

 

何度目の溜息かも忘れ、私は説明(繰り返された同じ行動)をするのであった。

 

 

 

 

 

 

「ああもう!魔王夫妻は私を虐めて楽しいかこん畜生!」

 

グレイフィアを扉まで見送った後、私は全力で叫んだ。

 

「しかも厄介な話に巻き込んくるんだから性質が悪い!

 まぁ、二人が全て悪い訳では無いんだけどさ・・・」

 

私はもう一度、招待状の内容を見る。

リアス・グレモリーとライザー・フェニックスのレーティング・ゲーム。

ということは、双方の眷属も出てくるということだ。

ライザー・フェニックスの方は、名のあるプレイヤーであることから、

私も全ての眷属を知っている。

どれもこれも、女の子で構成されている、男の子の欲望丸出しな面子だが、

これがなかなか手ごわいし、フェニックス(再生)の力を持つライザーの実力もあり、

今のところ無敗のプレイヤーである。

 

一方、リアス・グレモリーの眷属に関しては、赤龍帝がいるということ以外、

殆ど知らないと言っても良い。故に、未知数。

だが、そんなことはどうでもいい。

私が最も危惧しているのは、『赤龍帝』という存在がいることだ。

 

まぁ、行くと言ってしまったのだから、今更断れないし、

私自身、どういう存在なのか気になったわけだ。

知りたいという誘惑には勝てなかったよ。

 

「まあでも、なるようにしかならないか」

 

私が今、この世界に存在しているにも、セイウェルを拾ったことも、

結局はなるようにしてなった結果でしかない。

 

私はチラリと『図書館』への入り口へと目を向ける。

入り口では、「お話は終わったの?」と、セイウェルが私を見ている。

メイド長も、「苦手なのは解りますが、主としての義務を果たしてください」

という視線を送ってくる。

 

私は「もう終わったよ」とセイウェルに声をかけ、手招きながらも、ふと思う。

サーゼクス曰く、彼の妹君でおられるリアス・グレモリーは、

偶然にも『赤龍帝』と出会い、眷属にしたという。

そして仲間関係も良好で、かつ眷属として頑張っているとか。

 

「それにしても、赤龍帝か」

 

私は呟いてしまう。

赤龍帝は神滅具とされた後、各宿主へと転移する。

多くの赤龍帝が生まれ、そして滅ぶ度に、神滅具は転々と移り変わる。

そして、同じものが存在することはない。

つまり、『赤龍帝は1人しか存在できない』はずなのだ。

 

じゃあ、セイウェルは一体何なんだろうな?

 

私は苦笑する。

まあいいさ、セイウェルは私の愛弟子にして家族の一員だ。

今更なんであろうと、私にはどうでもいい。

 

「それに、どうせ大したことにはならないだろうしね」 

 

私はそう結論付けると、駆け寄ってくるセイウェルへ、微笑を向けるのだった。 

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