グレイフィア魔王夫人(私の一番の天敵)から招待状を頂いてから10日後。
私は招待状に書かれている場所へと、魔法陣を用いて転移する。
直接冥界の列車を用いても良かったが、いかんせん、
時間と手間がかかる上に、お忍びという名目が断たないので泣く泣く諦めた。
そして魔法陣の光が消えれば、
目に入ってきたのは、先ほど自分がいた自室よりも小さな部屋。
そしてこちらを見て、待ちくたびれた様な顔を向ける人影。
「ああ、来てくれたんだね、クレア」
私に笑顔を向ける、胃が痛む諸悪の根源にして旧友(魔王サーゼクス・ルシファー様)と、
私に嫉妬ビームを向けてくる、胃を痛めてくる原因(グレイフィア魔王夫人)が立っていた。
「ええ、せっかく魔王様が直々に、家の名まで用いて誘ってくれたんだ。
友人である君の好意を無下にするほど、私は薄情ではないからね」
「そう言ってくれるなら、誘った私としても嬉しく思うよ。
取りあえず、腰をおろしたらどうかな?」
「感謝するよ。久々の長距離転移をやったからね。
おっとそうだ。サーゼクス、腰を下す前に君に謝らなければいけない」
「私に謝らなければならないこと?何かあったのかい?」
「私の他に、この試合を見たいという子がいてね。
取りあえずは君の許可を貰うまで待てと言っているんだ。
もし良かったらだが、彼女たちを呼んで構わないだろうか?」
「ああ、君の知り合いならば私も大歓迎だよ。
しかしクレア、彼女たちとはどういう意味だい?」
「まぁ、こういうことさ」
訝しむサーゼクスに、私は苦笑を向けながらも右手の指を鳴らす。
すると、私の隣に新しい転移魔法陣が出現。
驚くサーゼクスと、直ぐに臨戦態勢をとるグレイフィアを見ながら、
私は魔法陣から出てくるゲストを待つ。
魔法陣の光が消えれば、2つの影が現れる。
そして1つの影が、直ぐに私に飛びついた。
「ありがとう、先生!私のお願い聴いてくれて!」
「セイウェル様、お嬢様に飛びつくのはおやめ下さい。
淑女として、褒められたものではありませんよ」
「はーい」
メイド長に窘められたセイウェルは、渋々と言った口調で私から離れる。
そしてくるりとサーゼクス等に顔を向けると、ぺこりと頭を下げる。
「はじめまして!私はセイウェル・ダンタリオン!
先生の家族で、愛弟子です!」
「クレア、これは一体・・・?」
「理由を話すから、とりあえずは腰を下させてくれないかな。
ああ、愛弟子のために席も一つ追加でね」
私は溜息を吐きながら、少し呆けている魔王様と奥様にお願いをした。
「私も一緒に行きたい!」
「あのねセイウェル、招待されたのは私だけだから、私しか行けないんだよ。
分かってくれないかな?」
「でも私だって一緒に行きたい!
先生のお友達に会いたいし、レーティング・ゲームも見てみたいの!」
「セイウェル様、堪えてください。
これはお嬢様が魔王様から受けたお誘いです。
御呼ばれしていない私たちが行けば、あちらも迷惑になります。
それこそ、友人の少ないお嬢様の友人関係が崩壊してしまいます」
「ちょっとメイド長ー?今の発言は何かなー?」
「えっと、先生・・・ごめんなさい。でも私、行ってみたいの」
「セイウェルはなんで謝るのかなー?私はこれでも友人はいるんだよー?」
取りあえず、私は反論するために友人たちを思い浮かべる。
畜生!碌なのがいなかった!
まぁ、私の友人関係は今は関係ない。
私とメイド長は、出発まですっとセイウェルを宥めるも、彼女は行くのいってん張り。
内心、反抗期になったのか?と心に衝撃を受けつつも、
自分の意志を言えるようになったセイウェルに感動していた。
結局は私が折れ、サーゼクスが許可をしてくれるなら、魔法陣で召ぶという約束になった。
そして無事許可が下り、こうなったというわけだ。
「なるほど、そのようなことがあったんだね」
私の話を聞いたサーゼクスは、面白そうにセイウェルに目を向ける。
「それにしても、君が弟子をとるなんてね。ましてや家族だなんて。
何かあったのかい?」
「別に良いじゃない。しいて言うなら見過ごせなかった、それだけよ」
「興味深そうな話だけど、詮索するのは止めておくよ。
君を怒らせるのは得策じゃないからね」
私を見るサーゼクスの目が、一瞬だけども変わった。
私は話を変えるために、この試合へ話を向ける。
セイウェルはメイド長の膝元に座り、彼女に背を預けながら、
待ちきれないという風に足を動かしている。
そしてメイド長は、私を見つめるグレイフィア魔王夫人を見つめている。
牽制ありがとうね。
「それにしてもお忍びとはいえ 婚約の話がレーティング・ゲームにまで発展するなんてね。
そんなに妹君は反対だったということか」
「いやはや、解ってはいたけれど、結局はこうなってしまったよ。
私も穏便進めようとはしたんだけど・・・ね。
ライザー・フェニックス・・・知っての通りリーアたんの婚約者だけど、
彼がリーアたんを迎えに人間界へ出向いたんだ。
先に形だけでも夫婦であることを示すために、結婚式を行いたいと言ってね。
後のことは、君なら想像が出来るんじゃないかな」
「解っていたのなら、なぜ対処をし・・・なかったわけではないわね。
いえ、出来なかったのが正しいかしら。なにせ、今の君は魔王ルシファーなのだから」
「まあね」
私の言葉に苦笑するサーゼクス。ようは体裁の話なのだ。
魔王様が身内、ましてや自分の家のことにあれこれ言い出せば、周囲は嫌でも警戒するだろう。
サーゼクスは魔王に相応しくないと思えるほど、一気に信用を失うレベルで。
貴族とて馬鹿ではない。
それこそ、自己保身(自分を守るための術)に長けている奴等ばかりだ。
弱みを見せれば、一気に食い尽くされるだろう。
欲望に呑まれた奴等に歯止めは効かない。
ましてや、そこに力を供えている奴は特にな。
まぁ私から言わせて貰えば、とっくに身内贔屓してるとしか思えないんだけどね。
特に妹や奥様関係で言えば。
「それにしても、どうして私を呼んだんだ?
こういっては何だが、私はグレモリー家、ましてやフェニックス家とは縁も所縁もない。
それこそ、部外者と言っても良い。
なのになぜ、わざわざ私を誘ったのかね?」
「やれやれ、やっぱり解っているんだね」
「私と君との付き合いの年月を考えなさい。嫌でも解るわよ」
サーゼクスがグレイフィアに声をかけると、彼女は私に紙束を渡してきた。
一瞬、彼女と目が合い、得も言えない寒気を感じたが、無視した。
そしてそれに目を通すと、私は一言告げる。
「酷いわね」
「そうなのかい?」
「ええ、この資料から思えたのはそれだけよ。
まあでも、現実は何も言えないけどね。
やりようはあるだろうけど、十中八九無理」
「理由は?」
「玄人と素人の違い。準備期間の有効活用方法の差といったその他諸々。
そして何より、情愛のグレモリー家であるということだよ」
「そうか。でもそれがリーアたんの、私の家のいい点でもあるんだけどね」
『ホントウニ?それが優しさだとオモッテイルノカ?』
「私もそう思うよ。長所と短所は裏表なのだからね」
私はサーゼクスの言葉に対し、苦笑いをしながらも、試合が始まるのを待つのだった。
さて、『赤龍帝』のお手並みを拝見させて貰おうかな。
「ほう、『洋服破壊(ドレスブレイク)』というのか。
魔力は想像力で形を変えるが、なるほど!こういう使い方があるんだな!」
いやはや、これは面白い。
「先生、どうして裸になっちゃったの?」
「うむ、それはだな・・・!いった~い!?」
「お嬢様、セイウェル様の情操教育に劇物投与はおやめください」
「な、何故殴る!?これは魔力の使い方という意味では非常に有意義な・・・」
「あははは、相変わらずクレアは目の付け所が違うね」
今代の赤龍帝であるヒョウドウ・イッセーの行いに、私は膝を打った。
『洋服破壊』
一見ふざけている技だが、なかなかどうして強力なものだ。
どんな鎧を纏おうと、それを受ければ一瞬で裸(守るモノがなくなる)になる。
これは戦場では恐ろしい。
それこそ前線で、殺し合いの中で丸裸にされれば、簡単に死へ繋がりかねない。
それを思えば、彼の能力は面白いと言えた。
そして・・・試合終了
試合の内容に関しては、私個人の意見としてだが、酷いと言えるだろう。
いや赤龍帝の話ではなく、全体の話だ。
なにせ、試合会場として設定された学園?が一切合財『吹っ飛んでいない』のだから。
私としては、互いに死力を尽くしての戦いと期待していたわけだが。
それこそ開幕で、『敵陣地を吹っ飛ばす』位をやってくれると思っていたんだけどね。
何故やらなかったのだろうか。それが一番手っ取り早いと思うけど。
まあ、私が一番許せないのは、『リアス・グレモリーの投了』という結果なのだが。
彼女の行動は、多くの人が見れば、苦しむ部下を哀しみ、
自らの勝利を放棄してまで部下を守ろうとした英断に思えるだろう。
それこそ、美談として語られるかもしれない。
でも、私からすればそれは詭弁だ。
リアス・グレモリーは、
『私事で臣下を巻き込んでおいて、臣下を理由に、彼らの頑張りを無下にしだだけ』だ。
それこそ彼女の為に戦ったのだろう、彼女の眷属の頑張りを。
まぁ、これは私個人の意見でしかないのだから、
とやかく言うつもりもなければ口に出す気もない。
「さて、残念な結果になってしまったが、私はこれで帰らせてもらうよ。
私の愛弟子も疲れて眠ってしまったからね」
「ああ、ありがとうクレア。私自身も残念だとは思うけど、結果は出てしまった。
取りあえず、これでリアスも納得してくれるだろう。
まあでも、奇跡が起きれば何とかなるかもね」
「そうね、『奇跡が起きたら』素晴らしいわね」
私は眠ってしまったセイウェルを抱え、メイド長に帰り支度を整えさせる。
「ところでクレア。君から見て、『赤龍帝』はどんなふうに『視えた』んだい?」
私は彼の問いの答えを考える。
そう、これがサーゼクスが私を呼んだ理由。
私に『赤龍帝を視させる』ため。
「そうね、『面白い』わ。
それこそ、色んなものが混ぜこぜになってて、『面白かった』。
『妹君の赤龍帝』は、『色んな意味で面白い』わよ」
私はそう言って、セイウェル、メイド長と共に、我が家に帰るのだった。