ハイスクールD×D 諦観のダンタリオン   作:SINSOU

5 / 16
5話

あの婚約解消をかけたレーティング・ゲームから数日後、

私は応対室にある自分の椅子に腰を下し、今朝の新聞を楽しんでいた。

 

「どうぞお嬢様、紅茶を淹れました」

 

「うん、ありがとう」

 

メイド長の淹れてくれた紅茶を口に運びながら、私は娯楽欄に目を通す。

今、私の屋敷にいるのは私とメイド長だけだ。

セイウェルは、私とメイド長との朝食を終えると、直ぐに外へと出かけていった。

なんでも、オーちゃんというお友達が出来たらしく、

今日はその子と一緒に町を探検するらしい。

 

うむ、部屋に籠ってばかりでは駄目だ。子供は外へ出て世界を知るべきだと私は思うぞ。

一応、お昼には帰ってくるようには伝えておいた。

それに、そのオーちゃんという友達も一緒に呼んでも構わないよ、とも。

ま、まぁ、オー『ちゃん』というのだから、その子は女の子なのかもしれない。

だがしかし、だがしかし!仮に男の子であった場合は、

私がく・ま・な・く!そして、徹・底!して『視る』必要がある。

愛弟子のことを思うのは当然のことだ。

そのことをメイド長に言ったところ、「馬鹿ですか?」とぶった切られました。

失礼、話が逸れてしまったね。

 

私は、娯楽欄にでかでかと書かれている内容に、呆れを持った溜息を零した。

 

「あーあ、結局はこうなったのね。

 全く、シスコンもここまで来ると害悪だと気付きなさいよ」

 

「お嬢様、今朝の新聞に何か面白いことでも?」

 

「面白いかは別としてね。メルアもこれ、読んでみる?」

 

「お嬢様、私はただのメイド長です。その名で呼ばないでください」

 

「良いじゃない。今この部屋にいるのは私とメルアだけよ。

 この場にいるのは、貴族のお嬢様でもメイド長でもないわ」

 

「その言い方は・・・卑怯ですよ」

 

私の言葉に、メルアは何かを堪えるようにして、言葉をこぼす。

根負けしたメルアは、私が差し出した欄の内容に目を通す。

 

「『今代の赤龍帝、囚われの姫君を助けに結婚式に乱入』ですか。

 そう言えば、キアラ様に結婚式の招待状が送られてきましたが、お出かけになりませんでしたね」

 

「まぁね、色々と理由をつけて断っておいたよ。

 私のような者があの場に行ってしまうと、他の貴族が口うるさいからね」

 

「キアラ様・・・」

 

「それにしてもメルア、相も変わらず私を様付けなのね。

 キアラで構わないって言ってるのに」

 

「これが私が出来る最大の譲歩です。

 キアラ様を呼び捨てなど、私には恐れ多くて・・・」

 

「貴女の真面目さは美徳だけど、生真面目過ぎるのも考えものよ?

 もっと気を楽に生きなさいな」

 

「生憎、これが私の性分ですので」

 

顔を少し赤らめ、私を睨みつけるメルアに、私は面白さと申し訳なさが入り混じって苦笑する。

 

「それにしてもキアラ様、先ほどの漏らした言葉はどういう意味でしょうか?」

 

「なんてことないわ。

 これは妹離れが出来ないサーゼクスが、起死回生に行った『奇跡』よ。

 赤龍帝を使ってのね」

 

首を傾げるメルアに私は語る。

 

「こうなったのは、サーゼクスの介添えでしょうね。

 そう考えれば、色んな疑問が解決するのよ。

 それこそ、どうやって赤龍帝が結婚式の場に現れたのかしら。

 どうやら彼、自分で転移出来るほどの魔力すら無いらしいじゃない。

 それに赤龍帝とライザー・フェニックスが戦うことになったのは、サーゼクスの口添え。

 文を読めば書かれているけど、余興として赤龍帝を呼んだみたい。

 そんな話は、事前の打ち合わせでは無かったらしいのに。まさに、サプライズ企画。

 流石に魔王様のお言葉に逆らう愚者なんて、あの場にいなかったでしょうし。

 まあでも、これはただの予想でしかないから、真実なんて分からないけどね」

 

渇いた喉を紅茶で潤す。

 

「結果は赤龍帝が勝利し、妹君の婚約は見直し。すべては彼の思惑通りってことなのかしら。

 それに、妹君と赤龍帝に華々しい経歴が着いたわけだしね。

 『姫君を救った素晴らしい眷属』だの『無敗を打ち破った期待の新人悪魔』だの。

 これなんて特に面白いわ、『主と眷属の麗しき愛の勝利』」

 

書かれている記事に、私は渇いた笑いが浮かぶ。

そして直ぐに、溜息を吐く。

 

「でも、サーゼクスは気付いているのかしら。

 この結婚式騒動の影響は、良いものだけではないってことに」

 

「それはどういう意味ですか?」

 

「婚約に関しては、以前からグレモリー家とフェニックス家で結ばれていたもの。

 そして今回の婚約騒動に関しては、フェニックス家のおぼっちゃんが先走りしたが、

 レーティング・ゲームで決着を決めるというのは正式なもの。

 それも、魔王様直々に取り決めたものよ」

 

「ええ、それは確かにその通りです。

 そしてリアス・グレモリー様は敗北し、結婚式を挙げることになりました」

 

「その通り。でも、その結婚式はぶち壊された。

 リアス・グレモリーの眷属である赤龍帝によってね。

 しかも、それを魔王様が補佐した可能性がある。

 さて、問題。

 誓約に則って行われていた結婚式ですが、それを直前で破談にされました。

 しかもそれが、相手側による一方的な言い分な上に、それを支援したのが魔王様という可能性。

 そして魔王様の実家は、今回の件で一方的に破談したグレモリー家。

 さて、他の貴族たちはどう思うでしょうね?」

 

私は残った紅茶を飲み干して、深い溜息を吐く。

 

「サーゼクスだって馬鹿ではないわ。でも今回の件は拙かったとしか言えないわね。

 まあでも、やってしまったことはもうどうにもならないし、あとは野となれ山となれ、ね」

 

私は彼の妹君、リアス・グレモリーについて思い出す。

今回の件で、彼女は世間から注目されるだろう。

『無敗を打ち破ったルーキー』『赤龍帝を従える紅髪の滅殺姫』

『魔王ルシファーの妹君』『情愛のグレモリー』などなど、多くの賞賛を浴びて。

願わくばその賞賛が、彼女の破滅に繋がらないことを願うばかりだ。

天狗にならないと良いわね。

 

私はふと、レーティング・ゲームで見た赤龍帝が頭を過った。

私は彼のことを『面白い』と評した。

 

確かに、洋服破壊(ドレスブレイク)といった技は面白勝ったと言える。

あの後すぐに、人形に鎧を着せて同じようなことをしようとし、

それを見たメルアが顔を真っ赤にして怒ってきたのだが。

 

あの時、私が『視た』赤龍帝は、はっきり言って『歪』だった。

まるで、三文役者が舞台で必死に役を演じているような、そんな歪さだ。

それに加え、何やら赤龍帝以外の何かを感じたと言っても良い。

それこそ、何か身の丈にあっていない何かを持っているような。

まあでも、サーゼクスのことだ。

先ほども言ったが、彼だって馬鹿ではないのだから、

私の言葉の意図を見抜いてくれるだろうさ。

それに、赤龍帝が私に対して無害ならば、こちらから喧嘩を売る気もない。

うむ、平和が一番。

 

そう思っていた私は、部屋の空気が重苦しくなっていることに気が付いた。

しまった、自分の勝手な予測を語ったせいで、空気が重い。

は、話を変えてこの空気を変えなければ!

 

「そ、そう言えば、セイウェルがお友達を連れてくるかもしれないと言っていたな!

 いやぁー、楽しみだなぁ!どんな子を連れてくるんだろうなぁ!」

 

「キアラ様、声が震えていますが大丈夫ですか?」

 

「ええ、もちろんですとも!私はキアラ・ダンタリオン。

 ダンタリオン家の当主にして、あらゆる情報をぶち抜く悪魔よ?

 ええ、徹底的に調べて、もしもセイウェルを騙していたなら、

 地獄よりも地獄を見せてあげなければね」

 

「お嬢様、正気に戻ってください!」

 

メルアのお盆攻撃が私の頭に直撃!私は正気に戻ったぞ!

痛む頭を擦りながら時計を見れば、もうすぐ正午をさしそうな時間。

そして噂をすれば、入り口の扉が開く音が聞こえ、「ただいまー!」というセイウェルの声。

 

「お帰りなさいセイウェル。まずは手を洗ってうがいをしなさい」

 

「はーい!」

 

「はいは一回ですよ、セイウェル様」

 

うがいと手洗いをしたセイウェルは、私とメルアの二人へとやってくる。

 

「あのね先生、私、お友達を呼んできたんだけど、いいかな?」

 

「何をいうんだセイウェル。言っただろ、お昼を一緒にどうだい?と。

 私もセイウェルの言う、オーちゃんを『視て』みたいからね!」

 

「お嬢様、字が違ってますよ」

 

「本当に!?良かった!じゃあ呼んでくるね!」

 

そう言うと、セイウェルは入り口へと声を張り上げる。

 

「入ってきていいよー!」

 

ほう、入り口にいるのだな?

さてオーちゃんとやら、その姿をじっくりと調べ上げてやらねば!

 

「我、セイウェルの友人」

 

ちんまりとした背丈のゴスロリ少女が入ってきた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。