ハイスクールD×D 諦観のダンタリオン   作:SINSOU

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6話

「コカビエル?たしか、戦いが大好きで大好きで堪らない、

 頭の螺子がぶっ飛びまくってる堕天使のことだった・・・かしら?

 それがどうかしたの?」

 

応接間にある自分の椅子に腰を下し、私は尋ねる。

私の目の前にいるのは、緑髪を携えた美青年。

四大魔王の一人にして、サーゼクスと並ぶ『超越者』の一人、アジュカ・ベルゼブブ。

見るものを魅了する様な妖艶を醸しつつ、端正な顔立ちを携えている。

そしてその美顔に、少し困惑を刻んでいた。

 

「教会に保管されているエクスカリバーを強奪して、

 サーゼクスやセラフォルーの妹等が治めている駒王町にいるみたいなんだ。

 先ほど、リアス・グレモリ-の眷属から連絡があった」

 

「あらあら、あの戦闘大好きの堕天使がそんなことをするなんてね。

 大方、悪魔や天使、堕天使がいつまでたっても戦争をしないことに、

 とうとう我慢の限界になったんじゃないかしら?」

 

私の言葉に、アジュカは皮肉を含んだ苦笑いをする。

 

「お察しの通りさ。コカビエルの目的は戦争の再開。

 始めにエクスカリバーを盗んで天使たちとやりあるつもりだったみたいだが、

 どうやら当てが外れて、今度は駒王町にやって来たみたいだ」

 

「部下の手綱を握っておきなさいよ、あの中二病総督・・・」

 

私の頭の中では、あの渋い声で子供の様にはしゃいでいる堕天使総督が浮かぶ。

やる時はやってくれる切れ者なのに、こんな時に何をしているのやら。

今度会った時、ブレイザー・シャイニング・オア・ダークネス・サムラァイソードについて、

自分から暴露するようにしてやろうかしら。

 

「まあでも、ミカエルはコカビエルの目的に気付いてるみたいね。

 箝口令でも敷いてるのか、この件は上層部の一部だけとどめてるみたい。

 聖剣が堕天使に強奪されたなんて信徒に知られたら、即座に戦争勃発でしょうね。

 まぁ、私に秘匿は通用しないのだけど」

 

「やはり君の力は恐ろしいな。

 頭では解っているが、いざ目の前でやられるとね。改めてそのことを認識するよ」

 

「安心しなさい。

 数少ない旧友との関係を壊すほど、私は狂っていないから」

 

私はアジュカに答える。これは紛れもない本心だ。

 

「それにしても、大事な聖剣を盗られるなんて、教会の管理って随分と杜撰なのね。

 それともコカビエルが強いのかしら」

 

「無茶を言ってやるな。

 戦争を生き残ったコカビエルを止められる奴は、それこそ上級悪魔でも少数だぞ。

 それにミカエルたちも手一杯なのだろう。

 おいそれと出られる立場でもない」

 

私の言葉に、アジュカは笑いながら小言を言う。

まぁ、天使たちも大変なのは知っている。すこし意地悪だったか。 

 

「それにしても、次に駒王町に責めるなんて、コカビエルは目の付け所が違うわね。

 駒王町は悪魔が治めている町で、その管理者はグレモリー家とシトリー家の次期当主。

 そして二人は現魔王様の妹で、その魔王様たちはシスターコンプレックスを絶賛拗らせ中。

 何かあったら、黙っていられることなんて無理ね。

 目の前に餌を置かれた犬の方が、よっぽど長く待てるでしょうね」

 

「それは言えてるな。

 現に、サーゼクスやセラフォルーは、職務を放り出して駆けつけようとしたらしい。

 今は二人とも羽交い絞めにされている。

 こちらも色々と準備をしているが、連絡が遅かったせいで対応が遅れている。

 しかし、もう少し早く知らせてくれれば・・・」

 

アジュカが溜息を吐く。

私はこの状況を知っている。そして知っているからこそ溜息を吐く。

 

現状、凄く拙い状況だ。

下手をすれば、また戦争が勃発するかもしれない。

一度戦争に突入すれば、今度は互いを絶滅するまでに行き着くだろう。

赤龍帝や白龍皇の乱入と言うハプニングなんて、起る可能性はゼロに等しい。 

それに、今度は無関係な人間界を巻き込んでの殺し合いになるかもしれない。

 

ああ、駄目だ。それは駄目だ。

それは私が許さない。私の過去が許さない。

無関係な命が失われることは、私のとって大嫌いな部類だ。

ゆえに、戦争の火種になるだろうこの件は見過ごせない。

 

私はもう一度深い溜息を吐いた。

 

「貸しにしておくわ」

 

「助かる」 

 

私の言葉にアジュカは頭をあげる。

 

「全く・・・。

 今から愛弟子とその友人と一緒に、市井を案内する予定だったのだけど、

 どこかの我儘っ子が暴れるせいで、全て台無しよ。

 あーあ、あの子たちを泣かせること、私は大嫌いなんだけど。

 この落とし前は、きっちりと付けさせないといけないわね?

 それに、魔王様や天使、堕天使総督に貸しを作っておくってのも、

 私の生活にとっても有意義なものだし」

 

「出来れば加減はしてほしい。

 生かしたままの方が、なにかとこちらも助かる」

 

「しょうがないわね。」

 

アジュカは私の了承を聞くと、直ぐに転移魔法で消えた。

大方、絶賛シスターコンプレックスを発症している二人に、話をつけにいったのだろう。

さて、私も話をつけにいかないとね。

 

 

 

 

 

 

 

 

「えー!?先生は一緒に行けないの?」

 

「ごめんねセイウェル。急に外せない予定が入ってしまったの。

 だから今日のお出かけに、私は一緒に行けなくなったの。

 本当にごめんね」

 

急な予定が入ってしまい、観光に行けなくなったことをセイウェルに告げると、

彼女の顔はみるみる泣き出しそうになっていく。

というか、もはや涙目である。

 

「私、先生と一緒に行きたかったのに!」

 

納得がいかないセイウェルの言葉と表情に、私は心がズタズタにされていく。

だが、私は謝るしか出来ない。

 

「本当に、本当にごめんね?

 今度は絶対、ぜっっっったいに一緒に行くから、今日はメイド長と一緒に行ってくれる?」

 

「お嬢様、私を射殺すような目で見るのはおやめ下さい。

 グレイフィア魔王夫人のようになっておられます」

 

私の代わりにメイド長と一緒に回るように言うも、やはりまだ納得できない様子。

 

「セイウェル、泣いてる?何故、泣く?」

 

セイウェルの様子に、彼女の友人であるオーちゃんは、無表情のままに首を傾げる。

 

「楽しみにしてたのに!楽しみにしてたのに!先生のばかぁ!」

 

「」

 

セイウェルの言葉。効果は抜群だ!急所に当たった!一撃必殺だ!

私は目の前が真っ暗になった。

 

セイウェルは、泣きながら自分の部屋へと走り出す。

 

「セイウェル、待つ」

 

それに続いてオーちゃんも後を追う。

勢いよく扉が閉められるが、私は頭が真っ白のせいで動けない。

 

「うふ、うふふ、セイウェルに、愛弟子に嫌われた・・・」

 

「お嬢様、お気を確かに。ただの致命傷です。」

 

崩れおちた私に、メイド長、メルアが声をかけてくる。

 

「こちらはなんとか、セイウェル様のご機嫌を取っておきます。

 ですので、お嬢様はお仕事を済ましてください。

 それに、もしも早めに終わらせた場合、一緒にお出かけが出来るかもしれません」

 

「そうだな!よし、ちゃっちゃとブッ飛ばしてくる!」

 

私は転移魔法陣を形成すると、こうなった元凶をぶちのめしに跳んだのだった。

 

 

 

 

 

「つまらん!全くもって弱すぎる!

 赤龍帝の力を持ってしてもこの程度か!とんだ期待外れだ!」

 

10の翼をはためかせ、空に舞うコカビエルは憤慨した。

コカビエルの目下に見えるのは、傷つき、息も絶え絶えな悪魔たちとエクソシスト。

 

現魔王サーゼクス・ルシファーの妹にして、『紅髪の滅殺姫』と謳われたリアス・グレモリー。

自身の同胞、バラキエルの娘にして、悪魔に堕ちた姫島朱乃。

戯れに奪った聖剣による実験のなれの果てにして、聖魔剣へ至った木場裕斗。

デュランダルに選ばれたエクソシスト、ゼノヴィア・クァルタ。

そして『赤龍帝』の兵藤一誠と、その他。

 

そのどれもが、彼にとって話にならなかった。

聖魔剣とデュランダルの攻撃を受けようと、倍加された滅びの力や雷を受けようと、

彼にとってはつまらなかった。

挙句、戯れに神の死を知らせてみれば、デュランダル使いは崩れ落ちて戦意を失った。

 

「まあいい、ならば俺は俺の目的を達するのみだ。

 お前たちを殺せば、嫌でもサーゼクスたちは動く。

 そして俺の望んだ戦争が始まる!

 我ら堕天使が最強であることを、天使にも悪魔にも教えてやる!」

 

「ふざけるな!てめぇ勝手の都合で、俺の町も、仲間も、みんな巻き込みやがって!

 絶対にゆるさねぇ!てめぇをブッ飛ばして、俺はハーレム王になるんだよ!」

 

赤龍帝の怒りの叫びに、コカビエルは腹の底から笑う。

 

「それが貴様の願いか!ならば俺とくればその願い、俺が叶えてやろうか?

 女を抱き放題だぞ?」

 

「ば・・・馬鹿野郎!だ、だれがそんなか、甘言に惑わされるか!」

 

「イッセー!こんな時まで何を考えてるのよ!

 だったらこの戦いが終わったら、私を好きにしていいわ!約束よ!」

 

「い、色々!?色々ですって部長・・・?

 よっしゃコカビエル!今すぐてめぇをブッ飛ばす!

 そして俺は部長になんなことやこんなことをするんだ!」

 

その赤龍帝の叫びを聞いてか、今まで打ちひしがれていた者たちの目に光が燈る。

まるで赤龍帝の力が、周りへと広がっていくように。

 

「面白い!面白いぞ!ならばもう一度チャンスをくれてやる!

 俺を楽しませろ!」

 

そしてコカビエルは歓喜に満ち溢れ、

 

『落ちろ』

 

地面に叩き付けられた。

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