ハイスクールD×D 諦観のダンタリオン   作:SINSOU

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8話

「謹んでお断りさせて貰うよ」

 

私はにっこりと、笑顔で答えた。

メイド長の淹れてくれた紅茶を口に運びつつも、私は目の前の人物を見る。

 

「そこを何とかしてもらえないかな?」

 

私の言葉に目の前の人物、サーゼクス・ルシファーは困った顔をしつつも引き下がらない。

私はその頼みごとに、頭を抱えるのであった。

 

さて、少し時間を戻そうか。

私がセイウェルとその友人であるオーちゃん、そしてメイド長(私の監視役として)と共に、

買い物をしてから日が過ぎた後、つまり今日だが、サーゼクスが私の所にやって来たのだ。

居留守でも使おうかと思ったが、メイド長が普通に通してしまったことで、私の作戦は失敗。

まぁ、今回は菓子折りを持ってきたから良かったのだが、

手ぶらで来ようものなら、君の奥様を呼んでやろうかと思ってしまうところだったぞ。

え?私もヤバいだろうって?

あははははははは!死なば諸共って言葉を知っているかい?

 

菓子折りを受け取ったことで、私は気分が高揚してしまったせいか、

いつもの警戒心を緩めてしまい、しばらくの間は気兼ねない会話をしていた。

なんでも、彼の妹君であるリアス嬢の学校で、近々授業参観があるらしい。

それで、自分とグレイフィア、そして彼の父君と共に行くつもりらしい。

どうやら、リアス嬢の赤龍帝とそのご家族と親睦を深めたいとかなんとか。

私としては、そんなことを話されても反応に困るだがな。

 

その後は、授業参観のリアス嬢を想像して、ウキウキなサーゼクスの話を聞き流した。

途中、現魔王の一人、セラフォルーに関して、彼女の妹君が授業参観を黙っていたショックで、

天界勢力を纏めてエクスカリボルグ♪しようとした話に関しては、流石にドン引きした。

もしも堕天使の件に私が行かず、セラフォルーが対応していたら、

確実にコカビエルのもくろみ通り、戦争勃発からのアポカリプスナウ!だっただろう。

優秀かつ、力を持っているからこそ、そのシスコンぶりは厄介極まりない。

もちろん、目の前の魔王様にも言えることだけど。

 

そんなこんなで、色々と話をしていると、急にサーゼクスが黙り込む。

その表情は先ほどまでとは違い、緊張していた。

その瞬間、私は思い出した。ああ、これは絶対に厄介事だと。

私の悪い予感は的中した。そして今回は、私個人としての厄介事だった。

 

なんでも授業参観も兼ねて、

人間界の駒王学園で、悪魔・天使・堕天使の三すくみ会談を行うとか。

その際に、私が八つ当たりと鬱憤晴らしも兼ねて、

堕天使幹部(家族タイム妨害者)をフルボッコした件が取り上げられるとか。

その会議に私(フルボッコした張本人)を呼んでほしいと、

堕天使総督(アザゼル)に言われたらしい。

 

そして私は答えたのだ。「オコトワリシマス」と。しかも拒絶のにっこりスマイルで。

 

 

「なんと言われようとお断り。私は絶対に参加しません。

 今回の件だって、君たちが動いたら拙いからってことで、アジュカに頼まれたこと。

 そして私が対処したことは秘密扱いだった筈。

 今更、約束を違えられても困るわ。」

 

「それは解っているんだ。それでも、参加してくれないかな。この通りだよ」

 

私に頭を下げる魔王の姿に、私は溜息を吐く。

 

私個人としては断りたい、という思いでいっぱいだ。

私は目立ちたくない。私は周りの目に触れられたくない。

だって、そのせいで私は・・・。

 

けれでも、目の前の旧友の姿に、私は気持ちが揺らぐ。

彼は私に、申し訳ないことを理解した上で頭を下げている。

そして彼の頭を下げさせたのは私だ。

本心を言うならば、その姿を無視して、私は断りたい。

だが、そうなると私は自分を許せなくなる。

この感情も、前の私によるものなのだろうか。私には解らない。

 

私はもう一度溜息を吐く。多分、私の目は諦めが宿っていただろう。

 

「解ったわ・・・。だから頭をあげてちょうだい。

 まったく、魔王様がホイホイと頭を垂れるものじゃないわ」

 

「それじゃあ・・・!」

 

「この件に関しては、コカビエルに直接手を下した私が無関係と言える立場じゃないもの。

 私のせいで会議に影響が出るというなら、私としても嫌な気分よ。

 良いわ、その会議に参加するわよ」

 

「ありがとう、助かるよ」

 

「ただし、私の名前は伏せてほしい。

 解っているでしょ?私は誰にも知られたくないし、目立ちたくないの。

 旧友なら、その理由は言わずとも理解していると・・・信じているのだけど。

 会議の間、私はずっと顔を隠すからそのつもりで」

 

「・・・!

 ああ、十分に解っているよ。それと・・・、まだ・・・傷は癒えないのかい?」

 

私の沈黙に、サーゼクスは溜息を吐く。

ああ、理解してくれてありがとう。その表情だけで、私は嬉しいよ。

 

その後、行われる会議の内容を聞き、

私はその内容に口を挟みながらも、数少ない旧友との楽しい時間を過ごした。

サーゼクスが去った後、私は深く物思いに耽る。

 

考えるのは、サーゼクスが会議で考えている内容、悪魔・天使・堕天使の和平条約。

互いに戦争で傷つけ合い、憎しみ合っているこの状況を打破するために、

互いのトップが垣根を越えての協力体制。

三すくみを続ければ、いずれは崩れ、最後は戦争となり、世界の害と化す。

それを防ぐためにも、和平を呼びかけるというらしい。

これで互いによい関係を築いていければ、と言ったサーゼクスに、私は言った。

 

「そうなってほしいね」と。

 

私の言葉に頷くサーゼクスだが、冷静な私がそれを否定する。

 

『出来ると思っているのか?』と。

 

現状、三すくみが成立しているわけだが、その間は平和だったのかと言われればそうじゃない。

表にでていないだけで、不和の種や小競り合いはあったのだ。

 

はぐれ悪魔を半ば放置し、悪魔の駒で眷属を増やしている悪魔(私たち)、

神の名の下にと、悪魔や魔の物を全て殺し尽くさんとする天使、

好き勝手に行動し、それを管理できていない堕天使。

 

どこをどうみれば、信頼が築けるというのだ。

私からしてみれば、自分を含め、地雷物件しかいない。

そして、悪魔は来たるべき戦いに備え、悪魔の駒を作り、勢力を増やしているのが真実。

その行為は、二つの勢力からはどのように見えているだろうか。

 

その上、サーゼクスは甘く見ている。

 

『私たち(悪魔・天使・堕天使)は、互いに戦争(殺し合い)をしていた』ということを。

 

互いに多くの犠牲者を出した。

互いに多くの犠牲者を出させた。

誰も彼もが死に、誰も彼もが殺し、誰も彼もが失い、誰も彼もが奪った。

今に至るまで、互いの勢力に、その傷は深く刻まれている。

 

その経緯を、その重さを、彼は甘く見ている気がしてならない。

 

私は、サーゼクスが和平の話をした時、彼に訊きたくなってしまった。

 

『君は、君の両親を、グレイフィアを、妹や息子を殺した相手と、握手が出来るかい?』と。

 

寸でのところで私は口を噤んだが、聞かなくても解っていた。

なぜなら彼は、情愛のグレモリーの一人なのだから。

彼がどういう反応をするかなんて、簡単に予測が立てれらる。

 

それと同じだ。

 

自分が持った感情を、相手が持っていない訳がない。

燻った負の感情は、簡単には消えないし、治まらない。

私が八つ当たりでフルボッコしたコカビエルだってそうかもしれない。

 

手を結んだから、もう仲良しだね!は、お伽話やゲームであって、

リアルで適用されるとは限らないと思っている。

サーゼクス、君はそれとどう向き合おうとしてるんだろうね。

 

私は、サーゼクスがそれを理解した上で、行わざるを得ない彼の心情を、

ただ心配することしか出来ない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「せんせー!オーちゃんがお友達を連れてきたんだけど、いいかな?」

 

「キアラ、我、我の友人、呼んだ。許可、求める」

 

 

唐突なセイウェルの言葉に、私は現実に戻される。

そしてオーちゃんの言葉に、私は呆けていたが、直ぐに理解した。

 

「なんだと?オーちゃんの友人?セイウェル、ちょっと待ちなさい。

 言っておくけど、この屋敷の主は私だからね?

 家に招くということは、私の客でもあるわけだからね。

 一応、どんな奴なのか視させてもらうから」

 

私は椅子から腰を上げ、ローブを纏って入り口の方へと足を運ぶ。

そしてふと、オーちゃんがやって来た時のことを思い出した。

あの時は、友人と言う存在に驚愕し、なおかつ家にやって来たという二重パンチを食らった。

そのせいで、随分とあたふたしていたが、今度はそうはいかんぞ。

私はこの屋敷の主であり、愛弟子で愛しの家族であるセイウェル、

そしてその友人であるオーちゃんの手前だ。

ここは、かっこいい師というのをビシッ!と見せなければな!

 

そう決心した私は、胸を張ってセイウェル達へと向かう。

二人は、私の姿を見ると、顔をぷくーと膨らませた。

いや、オーちゃんは相変わらず鉄面皮と言うか無表情なのだが、

雰囲気でなんとなく判るようになってはいるのだがね。

ちなみにセイウェルからすると、表情が違うから、オーちゃんのことが解るらしい。

うん、悔しい。

 

 

「先生おそーい!」

 

「キアラ、遅い。我、限界」

 

二人の姿を微笑ましく思いつつも、私は急いで駆け寄る。

 

「ごめんなさいね。急に言われたから、色々と準備をしていたのよ。

 それで、二人の友人と言うのは誰かしら?」

 

私の言葉に、二人は少し不安な顔する。

どうやら、私がどう反応するのか気になるご様子だ。

 

「心配しないで良いわ。だってセイウェルとオーちゃんの友人なんでしょ?

 もしかして、私が怒るような悪い子なの?」

 

私の言葉に、二人はブンブンと首を横に振る。

 

「だったら大丈夫よ。私は二人がそうじゃないって解っているんだから。

 でも、私がこの屋敷の主人だからね。

 一応は、どんな友達なのか確認させてちょうだい」

 

そう言うと、セイウェルはこくんと頷き、入り口の扉から外へ少し身体を出す。

どうやら、オーちゃんの時と同じように、外に待たせているようだ。

 

さてさて、一体どういうお友達なんだ?

先ほども言ったが、オーちゃんの時は、あくまで不意打ちを食らったからだ。

不意打ちだったからこそ、主としての醜態を見せてしまった。

だが今回は違う。心の準備はバッチリだ。

さぁ、バッチコーイ!

 

 

 

 

 

『どこか懐かしいと思ったが、そうか、そういうことか。

 それにその姿、あそこにいたのは貴様だったのか、ダンタリオン!』

 

「よく解らない内に連れてこられてきたが、なるほど、お前は強いな」

 

「なんか変な所だと思ったら、すっげぇ美人がいるじゃねぇか!俺っち的にはありだぜぃ!」

 

「外装は悪いですが、内装や調度品を見るに、結構しっかりされてますね」

 

「おじゃましますにゃ!」

 

 

私は無言で扉を閉めた。

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