ガンゲイル・オンライン 〜ピンク色のチビと影を好む死神〜 作:人類種の天敵
今回のタイトルである変態企業の某ゲームに登場する兵器の名前が浮かんだ人は天敵といいお友達になれると思います。
なおかつそいつの行った銃器でブッ刺すシーンが即浮かんだ方は重度のコジマ汚染者で即入院もののフロム脳と思われます。
事の始まりは、別にたいそうな理由があった訳ではない。
ただ、今日は学校が午前中の講義だけで、どうせ学部に一緒にお昼ご飯を食べる友人もいないだろう、と小比類巻香蓮は、そそくさと今一人暮らしをしている高級アパートに帰宅し、1人で黙々と、神崎エルザの音楽を聴きながら昼食を食べ、今日習った事をきっちりと復習して、いつもの寝間着に着替え、部屋のカーテンを閉めてエアコンのスイッチを入れて部屋を快適な温度に設定してからベットに寝て、銀色の巨大ゴーグルを頭に被せて口に出す
「リンク、スタート!」
たった一言だけで今の香蓮の五感は全てこの巨大な銀のゴーグル 「アミュスフィア」によって遮断され、別の自分の体をGGO(ガンゲイル・オンライン)と呼ばれる銃を撃ち合い殺しあう世界で、擬似的に動かすことが出来る。
そしてGGOの世界へ降り立った彼女は、スタート地点の、巨大つくしのような超高速ビルが立ち並ぶ、首都グロッケンで、ビルのガラスに移る自分の姿を見て、小比類巻香蓮……のアバターであるレンは、頬を赤く染め、うっとりしたような顔でこう呟くのだった
「私……ちっこくて可愛い………」
……………………と
その後、首都グロッケンを出て愛棒である変な外見をしたベルギーのFN社が開発したPDW、名称をP90。又の名をぴーちゃんと呼ぶ銃器をストレージから出したレンは、いつもの砂漠地帯に足を運んだ
「んー、神崎エルザの曲はやっぱりいい!」
大きな岩陰の中で、ぴーちゃんは岩に立てかけてから、ストレージを操作して音楽プレイヤーと飲み物やお菓子を取り出したレンは、モグモグゴクゴクと太る心配も無く仮想世界を堪能していた
「ピトさんは……あー、今日は来てないんだ……」
メニューを操作して、フレンドの欄からピトフーイの名前を探すが、今の時間帯はピトフーイはGGOにログインしていないらしい。残念、と呟いたレンは、その直後に起こったドカンッという爆発音に素早く反応。立てかけておいたぴーちゃんを掴んで一目散に走り出す
「殺っちまえー!」
レンお手製の爆弾罠に嵌って痛みで悶え苦しむモンスターへ、レンはわくわく笑顔でP90の銃口から5.7×28mm弾を吐き出す。
ここまでなら、ピトフーイがいないのでレン1人でモンスターの狩りをしている……という状態だが、今日だけは少し違った。ーーそれは
「っ!………ひゃ!!」
「外した!すばしっこいぞ!あのチビッ!」
「あいつがシャドウ・ストーカーかもしれん!コロセー!!」
「いや……良くて仲間だろ?」
「そんなもんどうでも良いんだよ!いいから撃て撃て撃て!!」
「ひぃーー!!死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬーーー!!」
アサルトライフルやサブマシンガンの弾がピンクのチビ、レンの体を貫くーーー所でレンは左へ大きくサイドステップをして回避する。ステータスの中で最も敏捷性を上げ、走ることに特化したレンなら、1秒でも止まることがない限り敵の銃弾が当たることはない
「〜〜〜〜っ!!って!なんで撃たれるの!?私何かしたっけー!?」
レンは知らなかった事だが、先日砂漠地帯で、シャドウ・ストーカーとジャガーノートの2人にボコボコにされた狩り専門の複数のスコードロンのプレイヤーが、「遊びは終わりだ!××月××日××時間にもう一度砂漠地帯へシャドウ・スレイヤー狩りの大規模討伐隊を投入する。」という挑戦状のようなものが首都グロッケンやGGO関連のスレや掲示板などにバンバン貼られており、この日のこの時間の砂漠地帯は、地雷原になんの装備もなしに突入するくらい危険な場所となっていた
「な、なあ!アレは違うんじゃねえのか?俺の記憶だと、ありゃあ第一回スクワッド・ジャムの優勝チームのレンちゃんだぜ!?」
ソビエトのコブロフ社製のライトマシンガン、RPD軽機関銃をぶっ放しているデザート迷彩の男が銃声にも負けない声で怒鳴る
「んなもん知るか!俺たちがここに来た目的を思い出せバカヤロー!!首都グロッケンやら掲示板やらで大いに意気込んどいて誰も倒せませんでした!じゃ済まねーんだよ!!ぶっ殺せー!!」
距離が離れすぎて豆粒ほど小さくなったレンへ負けじとロシアのイズマッシュ製アサルトライフルであるAN-94「アバカン」を2点バーストで撃ちまくっていた男が、隣の男の頭をボコッと1発殴った
「な、殴るこたァねぇだろ?」
「うるせえ!おい、スナイパーはここに潜んで待機しろ」
「こっちに追い込むのか?だが、あのチビ、速いぞ」
「おぉい!装甲車が着いたぞ!とっとと乗れ!」
「おう!!」
ジャガーノート野郎を轢き殺すために用意した装甲車に乗った男たちが、アクセルを全開にしてレンを追い掛ける。
如何に人外のスピードを持つレンでも、流石に文明の利器には勝てなかった
「ちょーーー!!?装甲車とか無しでしょ!!ひゃーー!!追いつかれるっ!!」
今の時間帯が夕方なら周りの風景に溶け込めて良かったのだが、今は昼間、太陽が燦々と輝いている砂漠地帯では、ピンク色の戦闘服はとても目立ってしまうのだ
「死ねえええええ!!」
「わーーーーーっ!!?」
背後2、3メートルの距離から装甲車が迫っている。レンは意味もなく声を上げ、ぴーちゃんを抱いて次に来る衝撃に備えた。
「オオオオオオオオオオオッ!!」
「っ!?右から何か来るッ!!」
「回避しろ!!回避だっ!?」
ド ゴォンッッッ!!!
「ぐわおああえおあお!!!?」
しかし、レンが装甲車と衝突することはなかった。何故なら、レンを追いかけていた装甲車が、横合いから突っ込んできた2メートル台の巨大な何かとぶつかったからだーー
「な、なんだーーー!!?」
「っ!?タイヤがスリップしてーーー」
「うわぁぁぁぁぁぁ!!前!前!前えええ!!」
レンを轢き殺す軌道から逸れていった装甲車は、右へ大きくカーブしていき、自分たちから目の前の岩にぶつかって止まりました。映画だったらこの後にド派手に爆発したりしますが、GGOではそんな事にはなりません
「い、痛ててて………」
「一体………誰がぶつかってきやがった…?」
「お、俺は見たぞ……あの、じゃ、ジャガーノート野郎だ……!に、逃げろ!はやく逃げーー」
ぱしゅんーーーーパリンッ
風を切り裂く小さな音、装甲車のひび割れた窓が割れる音。そしてレンが見たのは頭に丸い風穴を開けて車のハンドルに頭を乗せた男。
「そ……狙撃……?」
レンがびくびくと体を震わせながら慌てて岩陰へと身を隠す。顔を少し覗かせると、ゴツゴツとした装甲に身を包んだ男が真正面からライトマシンガンを乱射して車の中で身動きの取れない男たちを蹂躙していた。
数秒後、レンを装甲車で散々追いかけ回した男たちは、大した反撃も出来ないまま車の中で息絶えた。
「おう、いっしーだ。全員殺したぞ」
ゴツゴツとしたメットに覆われてくぐもった男の声がレンの耳に届く。
どうやらあの装甲男はパートナーである狙撃手と通信をしているようだ。
「………分かったー、今から20人規模のプレイヤーがこっちに来るんだな。ああ、俺は何時も通り囮役、了解だ……そんでさー、なんか、一人めっちゃすばしっこい奴がいてよー……え?お前が殺る?分かった分かった。あーい」
ライトマシンガンを両手で抱えた男がガッチャガッチャと喧しい音を鳴らして砂塵の吹き荒れる砂漠を駆けていく。
男が姿を消したところでレンは岩陰から姿を表す。
「………20人、多分…私を撃ってきたプレイヤー…だよね?」
突然の銃弾による歓迎を受けて走りまくったレンは、パニックになった頭をどうにか回して今の状況を整理していた。
何故自分がこの砂漠フィールドに来て何十人ものプレイヤー達から撃たれなくてはいけないのか?如何に自分の脚に自信があるとはいえ装甲車と命懸けの鬼ごっこをしなくてはいけないのか?そして……あのゴツゴツとした装甲を纏ったプレイヤーは誰なのか?何故自分を助けてくれたのか?
解らない、とレンは砂漠の砂の地面へと頭を着けた。
今のレンは真昼間で砂漠のフィールドではとても目立つくすんだピンクの戦闘服、ではなく、その戦闘服の上から今の砂漠に適した迷彩柄のポンチョを着込んでいる。なので、レンが突如派手に動いて砂煙を上げない限りはどんなプレイヤーにもバレることはないだろう。
「ぅぅ……分かんない……」
「……………」
「あーもー!ピトさんさえ居てくれれば派手にPKするのにー!」
「……………」
「もう今日はこのままログアウトしちゃおうっかな………ぐすん」
「……………おい」
「……………へ………?」
しっかりとポンチョを頭まで着込んでいれば………だが
「っ!死ーーー」
頭に自動拳銃の銃口を突き付けられている。その事に遅まきながら気付いたレンは、次に迫る死の感覚と共に息を止めた
「………………………あれ?」
だが、幾度も待てど頭に突き付けられた銃口から弾丸はレンの頭を貫通することはなかった。不思議に思いながらも、レンはまず相手を観察して少しでも情報を手に入れる事を最優先に考える
(この、今私の頭に突き付けてるのって…確かMさんが使ってた……そう!H&K社製の自動拳銃のHK45だ!)
銃の詳細は知れた、次は相手を観察する、とレンはゆっくりと頭上の相手を、盗み見る。
しかし、砂漠フィールドに吹き荒れる砂塵と、真上から照りつける太陽光のせいで肝心の相手の素顔をしっかりと見ることができない。
目の前の相手は、まるで陽炎のようにゆらゆらとその姿を揺らしている。
これじゃあ何も分からないじゃないか!
レンはこれではマズイ、と口を動かす事にした。
「な、なな、なんで場所が分かったの?」
目の前の相手の顔を見る事は出来ないが、レンは直感的に相手がこう言ってるように感じられた。
『あぁん?そんなのお前に言うわけねーだろー!死んじまいなぁ!ベイビー!ヒャッハーーーー!!』
……………まあ、そんなわけ無いのだが。
「……ニットキャップが取れて思いっきり頭が出てたからだけ………ど………」
陽炎のようにゆらゆらと蠢き、漆黒の影のように姿を明確にしないプレイヤー。
そんな彼(彼女?)から比較的若い男のアバターの声が聞こえた。
やっとこの人の声が聞けたっ!とレンは歓喜すると同時に、ある一つの事実に気付いてしまった。それはーーー
「私のお気に入りがーー!!」
お気に入りのニットキャップが自分の頭の上から姿を消していることだ。
レンはHK45の銃口を物ともせずに体をバッと起こし、顔をブンブンと振って目まぐるしい速度で周囲を見回した。
「そんな………私のめんこいニットキャップが………」
ガクッと肩を落とし四つん這いとなったレンの耳に、それまで沈黙を守っていた男の声が届いた。
なんで……お前が……………“ラン”………
「へ?」
とても小さく、消え入るような声にレンは間抜けな声を発して男の顔を振り返った。
相も変わらずテカテカと照りつける太陽光に遮られて目を凝らしても素肌の色さえ分からない影のように真っ黒で不鮮明な容姿。
砂漠の地に足を踏みしめて立っているのは分かるけど、それはまるで、陽炎のようにゆらゆらと揺れていて、思わず人かどうかさえ半信半疑な目の前の人物。
そんな彼が呟いた、“ラン”とは一体誰なのか?
レンはぐびっと架空の生唾を飲み込んで息を吸い込み、“彼”へと問い掛けた。
「“ラン”って………誰の事?」
「ッ!………」
レンが“彼”へ問いかけて、“彼”が間を置かずして黙り込む。
たとえ太陽光に遮られて素顔を見ることが叶わなくても、たとえその立ち姿が、人かどうかも疑わしい陽炎の化身だとしても、レンにはそれが、悲しい事実に衝撃を受けたように見えた。
何故かは分からない。きっと、何時もの勘、なのだろう。
「なん……でも…な、い…!そうか…お前はレン…か」
「へ?な、なんで私の名前ーー」
男の言葉にこてん、と首を傾げ、続いて仰天したレンの頭に、ぽさっと何かが覆い被さった。
「……?これって……」
不思議に思ったレンがそれを手に取ってみた。それは、何時も彼女が被っている愛用の帽子だった。
「落ちてあったから……それじゃあ」
「あっ!ね、ねえっ!」
その言葉を最後にレンに背中を向けて立ち去ろうとする“彼”。そんな彼へとレンは思いがけない言葉を掛けた。
「あなたの名前、なんていうの?」
ひゅぅぅぅぅぅ、と風が大地を吹き荒れる。
男はレンの問いに答えず、黙って砂漠の地を歩き出した。
レンも、まさか答えてはくれないだろうとは予想していたのか、少し残念そうに男の背中を見ていた。
「………シュープリス」
………?
「俺の名前だ………じゃあ」
それだけ言って彼は走り出した。
その速度は足に絶対的な自信を持つレンでさえ、思わず早いと思ってしまうほどのスピードであった。
「シュープリス……………」
ぴーちゃんを両手で抱えて“彼”の名前を今一度呟いたレンは、意を決したようにストレージから双眼鏡を取り出し、手頃な場所にあり、かつ見通しの良い丘へと走り出した。
「うおおらああああああ!!」
「こ、こいつ!?エルボーだとぉぉ!ぐぼっ!!?」
「と、止まれえ!!このっ!バケモンがぁぁ!!止まれええええ!!」
「うぎゃぁぁ!!?」
場所は変わって、砂漠の中に唯一水が湧き、樹木の生えたオアシスに、喧しい音共に弾丸を弾く10人未満の人影と、人影の中心で暴れる2メートル台の巨大な何かが死闘を決していた。
「クソッ!!こいつだ!!ジャガーノート!!」
集団のリーダーらしき男が2メートル台の男へ指を盛んに差して叫んだ。必ずブチ殺せーーーーと
「既に20人の人数が半分まで減らされてんだ!!絶対にブチ殺せぇ!!」
吠えた男に追従するように、彼が手に持ったステアーAUGの重心が震え、銃口から弾丸が飛び出していく。
それは真っ直ぐにジャガーノートと呼ばれた装甲を纏った何かへとぶつかり、硬く分厚い装甲に弾かれて地面へ落ちた。
「クソがぁぁぁぁ!!!」
「ファーーーック!!ファック!ファック!」
「なんだよあんなん!!チートだろがどう見てもよおおお!!死ね死ね死ね!!!」
男達が口からジャガーノートを罵る言葉を散々吐き捨て、手に持った愛銃から銃弾を弾き、マガジン内の弾が切れてはストレージから新しいマガジンを出して交換し、またジャガーノートへ引き金を引く。そしてまた弾が切れたら新しいマガジンに交換する……と、終わらない悪夢のような時間を繰り返す。
「ッ!!クソッ!!弾が切れたァッ!」
一人の男が銃をストレージへと仕舞い込んで予備の携行用のハンドガン、ベレッタM92を取り出してジャガーノートの頭を狙い撃つ。しかしそれはまるで卵のように覆われたドーム上の装甲によって簡単に弾かれてしまう
「RPG!!」
すると、突然一人の男がストレージからロシア製の対戦車投擲発射機、RPG-7を取り出して、深く腰を構え、ジャガーノート目掛けてトリガーを引いた。
バシューーーーーーーーーーーーー!!!
男が撃ったRPGの弾頭をみて、男達が歓声を上げる。やった、これで厄介なジャガーノート野郎が死んじまうぜ!もし死んだらあれの装甲は俺がもらう!ああ?ありゃ俺のだ!などなど、男達の中でジャガーノートが死ぬのは確定事項だった。
ぷしゅん、という弾丸が発射された際の発射音をサプレッサーと呼ばれる消音器で抑制した音と、そのサプレッサーのお陰で音もなく飛来した弾丸がRPG-7の弾頭を狙撃するまではーーーー
ドガァァァァァァン!!!
「……………え」
「………………は」
「…………………ほわい?」
「ーーったくぅ、遅えよっ、シュープリス」
一人一人がなんとも滑稽な間抜け顏を晒し、ジャガーノートの男が呆れ気味に呟いたあるプレイヤーの名前。
ーーーシュープリス。
フランス語で「苦痛、拷問、断頭台」を意味する。そして、この名前が、俗にGGOプレイヤー達からシャドウ・リーパーなる二つ名を以って畏れらているPKプレイヤーの名前でありーーー
その名前を呼ばれた、通信機の向こうの男はジャガーノートと呼称されたパートナーへ笑いかけた。
「悪い、遅れた……それじゃあ、一気に行く、潰すぞ」
「おおよっ!!」
その後、ものの数分でシャドウ・リーパー討伐隊は壊滅し、全員が都市部グロッケンへと死に戻りしたのは、言うまでもない。
確かMさんがレンちゃんを撃ったのってHK45デシタヨネー?
あとレンちゃんのセリフが本家と同じ稼働不安。めっちゃ不安。
あとSAO最新刊でGGOプレイヤーが何人か出てたシーンがあって、その中にレンちゃんやピトさんが居るのかなーとついつい妄想してしまった。