誕生日が楽しいなんて誰が決めた?   作:月白弥音

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夢の行方(にこ誕)

彼女はアイドルに憧れていた。

時は流れ、彼女は仲間たちとともにアイドルになった。

そして、彼女たちと道を分かれたあと、彼女は本物のアイドルになった。

彼女は元の知名度も相まってどんどん人気を集めていった。

 

 

にこは音ノ木坂学院を卒業してから短大に進学した。

その裏でにこはアイドルの養育所にも通い、アイドルになるという夢を追いかけ続けていた。

「にこちゃん、やっぱりすごいね!」

「だってあのμ'sに入ってたんだよ! 当たり前だよ!」

「あ、当たり前でしょ! 

にこは自前の明るさとμ'sでの経験で養成所の同期の中でリーダー的な存在になっていた。

「1,2,3,4……」

「ちょっとあんた、タイミングが遅れてるわよ」

「あ、すみません!」

「先輩! 少し腕が落ちてます!」

「わかってるわよ!」

にこの的確な指示に徐々に養成所に通う生徒全体のダンスのレベルが上がっていた。

「矢澤さん、また音外れてる!」

「にこ!?」

少し歌が苦手なのは相変わらずなのだが。

同期の中でもリーダー的なポジションであることはもちろん、いつの間にか先輩からも可愛がられるようになり、ダンスのことについて聞かれたり、どこかに連れて行ってもらったりと先輩後輩の枠を超えた交流が行われ、すっかり人気者になっていた。

だが、人気者、注目が集まっている者は自然と反感を買う。

出る杭は打たれる、その言葉通り、にこにも少しずつ敵ができていった。

最初は些細なことだった。彼女をわざと無視したり、わざと仲間外れになるようにしたり……

だが、にこにとってはそれは大したことではなかった。

高校時代の経験もあるのだろう。

つらく寂しい高校時代があったからこそ些細なことを気に留めないということも可能になったということは事実だろう。

だが、それ以上に彼女には大きな理由があった。

 

――ずっと追いかけていた夢に本当に追いつける

 

スクールアイドルでトップになったといってもにこは本当のアイドルになるという夢をあきらめたことはなかった。

彼女にとって、アイドルになるという夢のためなら少しの妨害など気に留めるものではなかった。

そうなると面白くないのはいじめている人たちだ。

ゆえに。

彼女たちのいじめはエスカレートし始める。

「ねぇ、誰かにこのクツ知らない?」

「にこちゃんのクツ? ないの?」

「変だね、一緒に探してみよっ!」

にこと仲のいい子が一緒ににこのクツを探し始める。

だが見つからない。

見つかるはずがない。

懸命に探す彼女たちを遠巻きに見て楽しそうに笑っている集団の一人が彼女のクツを持っているのだから。

 

 

 

 

彼女たちのにこに対するいじめは間接的なものから直接的なものに変わっていた。

そして、彼女たちはにこと仲が良かった人をも取り込み、どんどんにこを孤立させていった。

にこだけ座る椅子が出されていなかったり。

練習で使う物品が壊されていたリ。

時には呼び出されて直接暴力を受けたり。

だが、にこは逃げなかった。正面から受け止め、立ち向かった。

妹たちにはつらさを一切見せず、いつも通り世話を続けた。

 

 

 

 

その日もにこはいつものように練習後に養成所の近くにある人気のない公園に呼ばれた。

「何偉そうに私たちに口出してんだよ。新人は黙って見てろよ!」

「ちょっとくらい人気があったからって偉そうに」

先輩である女性五人くらいで囲まれて暴行を受けるにこ。だが、にこは何も言わずに堪えていた。彼女たちがにこの反応を楽しんでいるということをわかっていたからだ。

「なんだっけ、あんたがいたグループ。ユーズだかなんかだった気がするけどねぇ」

「ユーズじゃなくてμ'sだよ! バカかよお前」

一斉に笑い声が起こる。にこにとって正直なところ不愉快でしかなかった。

「なあ、あんなちっぽけな雑魚いとこいたから知らないかもしれないけどなぁ、あんたちょーうざい。

仲良しこよしでやってたからわかんないかもだけどさぁ、人の批判ばっかして自分は何にもしないとか何様?

あ、仲良しこよしのお友達グループもおバカだから何も思わなかったのかぁ! そんなんでよく優勝とかしたねぇ!」

「うらでなんかやったんじゃない? ほら、体売ったりしてさ! あそこのおじさんたちスクールアイドルの若い子狙ってるって有名じゃん」

より一層甲高い笑い声が公園に響く。

にこもさすがに我慢の限界だった。

立ち上がろう手をついたとき、手に硬い円柱状の何かが触れた。

にこはそれが何かを認識する前に手に握っておもむろに立ち上がる。

「な、お前、勝手に……」

彼女の言葉はそこで途絶えた。いや、途絶えさせられた。にこが手に持ったものを振ったからだ。

「ひ、ひぃ……く、くるな……」

「ふふふふ……」

にこの不気味な笑い声が響く。

無慈悲にただ手に持ったものを彼女たちに振っていくことを繰り返すだけだった。

にこの顔は素晴らしいほどの笑顔が張り付き、それが彼女たちにより恐怖を与えた。

機械的にただ振るだけの仕事。全員にそれを終えるころにはにこは赤く染まっていた。

我に返ったにこはその場の惨状に目をふさぎたくなる。

それから彼女の体の状況を見て、その場から逃げ出した。

 

 

 

 

 

 

彼女は翌日、警察に事情聴取された。そのときは何も答えなかった、いや、答えることができなかった。なぜなら彼女は何も覚えていなかったのだから。

だが、彼女は自分が何かをしたことはわかっていた。その時の感触が何となく体に残っていた。

彼女は実感はないが自分がやってしまったのではないのかと思っていた。

彼女は毎日練習に行くたび何か聞かれることが苦痛になっていった。

そして、彼女はある日突然姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

発見された彼女は変わり果てた姿になっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女のおかげで養成所にいじめがあることが判明し、その養成所は閉鎖された。

この事件はその先のアイドル育成にも影響が出るだろうと思われていた。

だが、実際には一瞬で忘れ去られ、彼女の死は身近な人に悲しみを与え、彼女から夢を奪っただけだった。

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