百花繚乱クロニクルセブン-僕らのセカイとキミのミライ-   作:白鷺 葵

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エーテル

「これは……」

 

「キミを動かす、かりそめの心臓。世界に蒔かれる、可能性の種」

 

 

 青年は緩慢な動作で、青く輝く欠片を弄ぶ。透き通った煌めきは、明星ナユタにとって見覚えがあった。

 姉――■■マリナが13班の未来を切り開くために作った、対竜戦闘における最強兵装。件の剣の輝きと、よく似ている。

 

 あれは、祈りだ。去り逝く者たちが、生きようと足掻く者たちのために残した道標。もしくは、生き抜いた人々が刻んだ存在の証。これから先を行く者たちへ残す未来。

 

 積み重ねた想いが、ひたむきな祈りが、滅びの運命を壊して未来を作り出した。創造と破壊、そうして帰滅。人々は喰らい、学び、成長し、地球における食物連鎖の頂点へと上り詰めたのだ。

 あの光に触れるということは、極点の捕食者が持ちうるすべての知識に触れるということ。壊し、作り上げるために必要なエネルギーの塊だ。だが、それは極点の捕食者に近しいモノになることを意味する。

 異質なものに触れ続けると正気を失い、人間としての精神が死んでしまうなんて話があるが、それとよく似たようなものだ。あの光を受け入れれば、人の論理感から遠ざかっていくのだろう。

 

 

「ぶっちゃけた話、これは膨大なエントロピーの塊だ。因果すら超えて定めを壊し、新たな未来の可能性を創り出す」

 

 

 「けれども」と、青年は欠伸をしながら言葉を続けた。

 

 

「キミは、己の命そのものと引き換えにして、“選択”を迫られるだろう」

 

 

 ()()ことは、即ち()()()()ことを意味する。運命を壊し、未来を作るために必要な膨大なエネルギーだ。ヒト1人の命で贖える量など、たかが知れていた。

 可能性の種を蒔くことは、心臓に込められたエントロピーを使い果すことと同義であった。そしてそれは、かりそめの命が()()()()()()尽きることを意味している。

 ……それでも、ナユタは()()のだ。恩師が蒔いた種を芽吹かせ、己自身もまた種を蒔くことを。そうやって、人は希望を繋いできた。花を咲かせてきたのだ。

 

 命を以てして、花を咲かせよ。嘗て恩師たちがそれを成し遂げたように、今度は、自分が。

 彼らが蒔いた種の1つとして、ささやかでも、ちっぽけでもいいから、()を咲かせたい。

 

 自分が枯れ果てた後で、何かが芽吹いてくれたなら――それはきっと、意味のあることだから。

 

 

「繋ぐか、断ち切るか」

 

 

 凛とした声が響いた。眠気に負けそうになっていた青年とは思えない程、明朗な口調だ。

 ナユタは思わず顔を上げた。青年から手渡された、青く輝く祈りの結晶を握り締める。

 

 

「――その選択を()()()()()()()ときこそ、()()()()()()()()()()だ」

 

 

 青年は優しく微笑む。その笑い方は、ナユタが一番憧れた恩師にして英雄を彷彿とさせた。

 

 透き通った青はきらきらと煌めき、ゆっくりと、ナユタの心臓部へと収まる。温かな熱を感じた途端、かりそめの命が脈打った。

 刹那、白い空間は霧が晴れたかのように本来の姿を現す。那由多の星が光り、生まれ、死する場所。星屑の大地には、色とりどりの花が咲いていた。

 季節も種類も問わぬ、文字通りの百花繚乱。鮮やかな色彩とかぐわしい芳香が鼻をくすぐる。吹き抜ける風はどこまでも優しい。

 

 

「キミは、花は好きか?」

 

「ああ。恩師がうんちくを披露してくれたからな。……彼の奥様が花好きだったから、その影響で」

 

「そうか。嬉しい限りだ」

 

 

 ナユタの答えを聞いた青年は、嬉しそうに頷いた。それは、彼を構成する意志の中に住まうモノの影響なのだろう。

 青年――意識集合体の舵取りを行っているのは、ナユタの一番よく知る人物らしい。なんだか懐かしくて、ナユタも思わず口元を綻ばせた。

 

 自分の真正面には、ナユタの誕生花であるモクレンが美しく花を咲かせていた。花言葉は『自然への愛』、『崇高』、『持続性』。外国の花言葉では、『忍耐』や『威厳』という意味もあるそうだ。

 

 足元には、ナユタが極東上層部に贈りつけるために育てていたスノードロップの花が咲いている。花言葉は『希望』と『慰め』だが、この花は死を象徴する花として有名である。

 転じて、「スノードロップを誰かに贈るということは、『相手の“死”を“希望する”』」ことになるのだ。他には、清らかな花のイメージもあるらしい。

 

 そこで、ナユタはふと目を留めた。

 

 

(……これは……)

 

 

 百花繚乱の中に紛れて咲いたのは、フロワロを連想させるような白い花。よく見ると、その花の花弁は半分透けており、何かが映り込んでいる。

 

 花弁には、白い髪に耳を持ったルシェ族の少女が映し出されていた。黒い戦闘用の制服は、まだ幼い(かんばせ)には似合わない。

 少女はとどめを刺そうと刃を振り上げる。だが、その刃は、対象者に振り下ろされることはなかった。それより先に、対象者が動いたためだ。

 短刀を抱えた少女の手よりも遥かに大きな――研究者にしては妙に武骨な手が、少女の頬を優しく撫でる。血みどろの手のため、少女の頬も真っ赤に染まった。

 

 少女が刺したのは、見覚えのある紳士だ。2021年の姿当時の姿を保ったまま、この時代を駆け抜けた科学者。命に対して真摯に向き合い続けた、ナユタの恩師。

 彼は愛おしげに少女の顔を見つめる。少女の顔は、彼が愛した女性と()()()()()()()()()()()()()。紳士は、妻の面影を宿す少女を傷つけられなかったのだ。

 

 

「先生……」

 

 

 ナユタは思わず花に手を伸ばした。ナユタの手が花に触れた途端、また別の景色が映し出される。

 そこには、先程の少女が成長した姿で佇んでいた。ISDFの野外制服に身を包み、青い帽子を頭にかぶったルシェ族の女性。

 自分の眼差しは、彼女に釘付けだった。どくり、と、かりそめの鼓動が不規則に刻まれる。――一瞬、惚けた。

 

 

(目が、離せない)

 

 

 彼女の表情はころころと変わる。時には満面の笑みを浮かべ、時には不敵に笑いながら軽口を叩き、時には拗ねるように口を尖らせ、時には静かに目を細めてはにかむ。

 胸の奥底に灯った熱を何と言えばいいのだろう。同時に、胸の底から這いあがってきた業火の如き激情も。相反する感情が、シズクの胸の奥で溢れてきた。

 

 守りたい、踏み躙りたい。託された、許せない。憎い、愛おしい。ああ、ああ、ああ――最早(もはや)、何が何やら。

 

 けれど、1つだけはっきりしていることがある。()()()()()()()()()()()()()()

 ナユタが下すべき判断は、“選択”は、この花に映る()()()()の行く末に関わっている。

 

 

「……僕は……」

 

 

 ()()()()は彼女だけではないらしい。

 

 次の瞬間、花に映し出された人物が変わった。鳶色の髪に深緑の瞳の少年が、銀髪の青年によって組み敷かれている。彼の瞳には明確な怯えがあった。床には血のついたナイフが転がっている。

 少年を組み強いた男は無事ではない。黒い服を身に纏っているから分かりにくいが、出血している。青年が何かを言う前に、少年は金切り声を上げた。『廃棄処分されるのは嫌だ』――彼の悲痛な叫びを聞いて、青年は目を見張った。

 半狂乱になって叫ぶ少年の言葉を聞いて、青年はすべてを理解したのだろう。彼は忌々しそうに表情を歪めた後、小さく舌打ちした。暴れる少年を何とか宥めすかした後、彼は転がっていたナイフを少年へ握らせた。

 

 青年は何かを囁いた。何を言われたかは知らないが、少年は弾かれたように青年を見上げる。青年は力強く微笑んだ後、即座に踵を返して走り出した。少年もまた、慌てた様子で彼の背中を追いかける。だが、少年は即座に身を隠し、物陰から様子を見つめた。

 凶悪なマモノが暴れている。その周辺には、怪我をして身動きが取れない少年少女たちの姿があった。マモノと対峙しているのは、少年が傷つけた張本人――青年である。勝負は互角だったが、ふとした拍子に青年が何かを庇って傷を負った。形成はマモノへと傾く。

 

 だが、青年は後ろを向いて何かを言うと、即座にマモノ目がけて突っ込んだ。全身全霊を賭けた自爆特攻。マモノと青年は共に崖から落ち――直後、凄まじい轟音が響き渡った。少年は凍り付いたように身を震わせたが、一歩、二歩と後退りした後、わき目もふらず逃げ出した。

 

 

(これが、あの人が蒔いた種。……あの人が守った、()()()())

 

 

 ナユタの手は震える。今すぐこの花をすくいあげたい。けれどそれと同じくらい、この花を握り潰してしまいたかった。

 ニセンの系譜を喰らって、()()()()は歪んだ芽吹きを迎えようとしている。――ああそうか、これが“選択”なのか。

 

 ナユタの足元に新しい花が咲く。モミジガサだ。花言葉は『罪と罰』。犠牲の上で咲こうとする命に、こんなに相応しい花言葉があろうか。

 

 モミジガサが咲いた場所の隣に、またスノードロップの花が咲く。

 犠牲の上で成り立つ命に、ナユタは『希望』と『慰め』を見出すのか。

 あるいは、彼女や彼らの『罪と罰』を突きつけるのか。

 

 

「さあ、いきなさい。そして、種を蒔き終わったらまた会おう」

 

 

 背後にいた青年が、ゆるりと笑った。それを最後に、世界は眩い光に包まれた。

 

 

 

***

 

 

 

 スノードロップ。花言葉は『希望』と『慰め』、他者への贈り物にすると『あなたの死を希望し(のぞみ)ます』。

 その名を和名へ直訳すれば、スノーは雪、ドロップは雫。春の訪れを告げる花として、この花は有名であった。

 

 

(――さて、僕に春は来るだろうか。それとも……)

 

 

 青年は苦笑したが、表情筋は一切の仕事を放棄している。口の端すら動かない。かりそめの命の代償、だろうか。

 

 そんなことを考えていたら、聲が聞こえた。「大丈夫?」と青年を気遣うのは、小脇に抱えた打刀だ。カレンが作った遺作の1つであり、彼女が作った武器の中で最高傑作に入る刀の1振りである。

 生みの親を亡くした打刀を引き取ったのは青年であった。本来なら相応な担い手に譲り渡されるはずだったのだが、この刀はかなりのじゃじゃ馬だ。しかも、気まぐれで我儘な気質の持ち主である。

 鉱石の聲を聴けない人間ではまず扱えない。聲を聴けたとしても、この打刀と心を通わせて力を引き出せるかどうかは別問題だ。青年の場合は後者である。青年は、刀を生業にしていなかった。

 

 青年は慈しむように柄を撫でる。打刀はくすぐったそうに聲を上げた。

 担い手候補との顔合わせということもあって、どこか浮足立っているように思えた。

 

 

「『あの人がすべてを賭して守った()()()は、そうするに値する命だったのか』……なんて、僕もついにアクツと同じところに墜ちてきたということか」

 

 

 むむむ、と唸りながら、青年は深々とため息をつく。打刀は青年の言葉を否定し、「大丈夫」だと訴えた。

 青年とこの打刀は家族のような間柄だ。生みの親であるカレン亡き後、ずっと打刀の面倒を見てきたというのもある。

 

 打ち解けるまで相当時間がかかったが、仲良くなれば気さくに話しかけてくれる子だ。回りくどいロゴスで武装しているけれど、担い手や刀身を綺麗に手入れしてくれる相手を思いやってくれる。要はツンデレだ。

 

 

「……僕は、あの人の遺言通り、()()()を救えるかな。あの人の遺言を――あの人たちが蒔いた種を、ちゃんと芽吹かせてやれるかな」

 

 

 凍り付いた自分の心は、まだ吹雪いている。雪解けなんてまだ遠い。春を告げる花はまだ咲きそうになかった。

 それでは種は芽吹かない――分かってはいる。分かっては、いるのだが。

 

 

「――なあ、小猫丸(こびょうまる)

 

 

 打刀――小猫丸の名を呼べば、大切な家族は力強く笑い返す。大丈夫だと、成し遂げるのだと、友の祈りを継いだ刀が煌めいた。

 青年は孤独だ。だが、孤りではない。連隊は孤独を制するのだ。自分には、何も言わずに協力してくれる人々と共犯者(こびょうまる)がいる。

 「仲良くしてくれよ」と囁けば、「相応しいか見極める」と勝気に笑う。頼もしい限りだ。よろしく頼むと柄を撫で、青年は扉の前に立つ。

 

 

「……何?」

 

「キミの教育係に任命された者だ。済まないが、入室の許可をもらえないか?」

 

「あっそ。入れば?」

 

 

 息を整え扉を叩けば、ぶっきらぼうな返事が返ってくる。投げやりな了承を経て、青年は扉を開けた。

 

 私物らしき私物が一切見当たらない部屋には、モミジガサの鉢植えが無造作に置かれている。青年が少女宛に贈ったものだが、幸か不幸か、彼女は何も気づいていない。

 鉢植えは完全に枯れていた。世話や手入れをした形跡は一切ない。やはりだめかと思ったけれど、まだファーストコンタクトなのだ。これからの変化に期待というところか。

 

 警戒心をあらわにしてこちらを睨みつける少女に笑いかけようとしたが、青年の表情は仏頂面のままだ。表情筋が仕事をしないというのはやりにくい。

 最も、青年の表情筋が完璧に仕事を果たしてしまったら、青年が飲み下した激情が濁流の如く溢れてしまうだろう。なかなか難しい話だった。

 青年は、海色の瞳をまっすぐに見つめた。なるべく優しい声色と口調になるよう気を使いながら、少女に自己紹介をした。

 

 

「――初めまして、伊倉(イクラ)由真(ユマ)士官。僕はキミの教育係に任命された、雪待(ユキマチ)(シズク)という者だ。同じルシェ族同士、よろしく頼むよ」

 

 

 

■■■

 

 

 

 きらきら、きらきら、きらきら。青く澄み渡った光が、ジャック=ミュラーの甲板全体を包み込む。青い光に呼応するように、黒いフロワロがはじけ飛んだ。

 

 間髪入れず、足元から様々な花が咲き始める。季節も種類も環境も、果てには物理法則さえ無視し、色とりどりの花が足元に広がった。文字通りの百花繚乱。

 立ち込めていた瘴気は一瞬で払われた。瘴気に蝕まれていた人間たちは、みんな元通りになったであろう。先程まで苦しそうだったユマがきょとんとしているのが証拠だ。

 

 呆気にとられるユマとユウマに、シズクは目で合図した。この好機(チャンス)は逃してはならない。

 2人は一瞬目を見張り、すぐに頷き返す。その瞳には一切の迷いはない。――ああ、あれならもう大丈夫だ。

 シズクがフォーマルハウトを見上げれば、奴は体を戦慄かせた。この光が()()()()()()()()だと理解しているようだった。

 

 

「コレハ……コノ忌マワシキ光ハ……!」

 

()()()()()()()? フォーマルハウト。これは嘗て、お前を屠った光だ。お前に死を与えた光だ」

 

「何故、コンナモノガ存在シテイル!? 何故、ニンゲン如キガ、コンナ膨大ナエントロピーヲ……!?」

 

「それはお前の知る所ではないよ」

 

 

 くつり、と、シズクは嗤った。

 

 今、この呪真竜はどんな気持ちなのだろう? 再び、自身が愛してやまない調味料によって、自身が調理される側になるなんて。

 遠い昔の光景がよぎる。フォーマルハウトによって倒れていく沢山の人々、瘴気に飲まれた国会議事堂。忘れられない、哀しい記憶。

 そして、姉が担い手のために創り上げた、青く輝く美しい剣――竜殺剣。人と星の祈りを受けて生み出された剣が、未来を切り開いた瞬間を、覚えている。

 

 

()()()()()()()()()()、好き放題に食い荒らしてくれたな。だが、それもここまでだ。年貢の納め時という言葉を知っているかな?」

 

「ホザケ!」

 

 

 フォーマルハウトのブレスが降り注ぐ。しかし、その一撃は見当違いの方向に着弾した。先程は甲板を結晶化させる威力だったのに、今では咲いた花すら消し飛ばせない。

 捕食者の名も形無しだと笑えば、奴は咆哮を上げて突進してくる。シズクはそれを余裕で回避し、キーボードを叩いた。フォーマルハウトへのハッキングはまだ続いている。

 

 

「仕込みは上々! 驚いたか? ――持っていけ!」

 

 

 発動したのは、ロストパワーX。ハッキング済みの敵を大幅に弱体化させる技だ。ぐらりとフォーマルハウトの体躯が傾く。

 

 

「オノレ、雑種ガ……!」

 

「その雑種に追いつめられた捕食者が何を言うんだ。窮鼠は猫をも噛み殺すんだぞ? 追いつめられた命を舐めるんじゃない」

 

 

 シズクはフォーマルハウトを挑発しながら、ウィンドウを展開した。キーボードでプログラムの羅列を打ち込めば打ち込むほど、この場を包み込む青い光が強くなっていく。

 極点の捕食者がシズクに手渡したかりそめの命にして、人と星の祈りそのものだ。死に逝くものが生きる者に託し、生きようと足掻く者たちの命の輝き。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。シズクがそんな確証を抱いたとき、足元にまた花が咲いた。白くて可憐なエーデルワイス。

 

 フォーマルハウトの幻覚に飲まれかけた如月ユウマを引きもどした、少女の祈りの具現化だ。如月ユウマを愛し、寄り添い続けた少女の想いそのもの。()()()()()()蒔かれた種から、惜しみない愛が芽吹き始める。それは確かに、ユウマを運命へと導いた。

 運命に挑む資格を得たことが良いことなのか悪いことなのかは分からない。むしろ、そんなものと無縁でいるほうが幸せだとシズクは思う。けれど、()()()()()()()()()青年がああだったなら、きっと――なんて、考えてしまうのだ。

 

 まあ、資格を得たとして、運命に挑めるか否かは今後に期待なのだが。

 

 

「死ニ損ナイメ……! 良イダロウ。貴様ハ、骸ヒトツ残サズ消シテヤロウゾ!!」

 

 

 ばちり、と、マナが爆ぜる。馬鹿の一つ覚えよろしく繰り出したのは魔槍フォーマルハウト。先程は禁断の秘技で防いでみせたが、今はエグゾーストを解き放つための条件は整っていない。勿論、だからといって万事休すという訳ではなかった。

 次の瞬間、その攻撃は一閃の元に切って捨てられる。眼前に立ったのは、小猫丸を構えたユマと試作刀を構えたユウマだ。2振りの刀は、嘗ての竜殺剣を彷彿とさせるように青光りしている。数多の祈りと想いを宿した剣が、滅びの運命を破壊し、未来を創造するのだ。

 

 

「ほら、()()()()()()()()()

 

「サセヌ……サセヌゾォォォォ!!」

 

 

 シズクの言葉に、フォーマルハウトは思い出したのだろう。渡来ミカゲが竜殺剣を奴へと振り下ろした瞬間を。

 悪夢に発狂する哀れな人間と同じように叫びながら、滅茶苦茶に攻撃を繰り出していく。どの攻撃も大振りで、簡単に躱すことができた。

 

 

「マダ終ワレヌ……マダ終ワラヌ……!!」

 

「行け、2人とも!」

 

「任せなさい!」

 

「任せてください!」

 

 

 シズクの指示を受けて、ユマとユウマが走り出す。まだ抵抗しようと足掻くフォーマルハウトは、2人に対してブレスを放った。だが、なけなしの一撃も、剣が纏った青き光によって無効化される。

 

 ならば、と、フォーマルハウトは自慢の牙と爪で応戦した。刃がぶつかり合い、派手に火花を散らす。

 ユマもユウマも、奴から放たれた一撃を簡単にいなした。

 75年前の光景が、時を超えて再現される。祈りを受けた剣が、強大な運命を破壊せんと向かう。

 

 

「迷うな! そのまま思いっきり、振り抜け!!」

 

「――これで、終わりよ!」

 

「――消えろ、フォーマルハウト!」

 

 

 ……多分、シズクが叫ばずとも、ユマとユウマは分かっていたのだと思う。2人の太刀筋には、一切の迷いはない。振り抜かれた軌跡は交差し、フォーマルハウトの胸に×印が叩きこまれた。

 小猫丸や試作刀が纏っていた青い光が弾ける。一歩遅れて、試作刀にひびが入った。役目は果たしたと言わんばかりに、試作刀の刀身は粉々に砕け散る。フォーマルハウトの体躯がゆっくりと崩れ落ちていた。

 

 奴の体が結晶化していく。ぼろぼろと崩れていく中で、フォーマルハウトはシズクだけを見ていた。

 あのときと同じ目。まさか自分が死ぬなんて、死に損ないに狩られるなんて信じられないと訴えている。

 「そんなバカな」という言葉を残して結晶となったフォーマルハウトは、間髪入れず砕け散った。

 

 空にはフロワロの花弁が待っている。赤い花弁は大地に降り積もることなく、光の粒子となって消えていった。

 

 長い、長い、沈黙。シズクはウィンドウを確認する。

 フォーマルハウトの反応は、今度こそ、完全に沈黙していた。

 

 

「フォーマルハウトの反応、完全消滅。……僕たちの、勝ちだ」

 

 

 それを告げれば、ユマとユウマはそのまま甲板にへたり込む。口元には満面の笑みが浮かんでいた。馬鹿みたいにハードな任務をやり遂げて、充実感で一杯なのだろう。

 これ以上ない充実感に包まれていたのは2人だけではない。雪待シズクも、()()()()()()()()()()も同じだった。久しぶりに、口角が動く。――笑えたのだ。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()。だから、あのポーカーフェイスも、自分をここまで生かしたモノも、もう必要ない。

 

 そう思った途端、シズクはその場に倒れこんだ。異常事態を察したのか、ユマとユウマが血相を変えてこちらへ駆け寄ってくる。特に、ユマの顔色が悪い。

 

 ……ああ、そういえば、シズクはかりそめの命を使うために、フォーマルハウトの一撃を心臓に喰らっていたのだった。

 成程。人間だったら完全に即死である。……いや、()()()()()()()()()()()()()()、1周回って“元に戻った”とも言えた。

 

 

()()()! 貴方、しっかりなさい!」

 

「……おや、珍しいな。キミが、僕の名前を呼び捨てにするなんて……明日は僕の誘いに応じてもらえるのかな?」

 

「こんなときに馬鹿言ってるんじゃないわよ! 頭の中お花畑なんじゃないの!?」

 

 

 ふざけた調子のシズクを一喝したユマの瞳は、涙の幕が張っている。おや、と、シズクは目を見張った。

 

 彼女は雪待シズクの死を悲しんでくれたということだろうか。それ程好かれているようには思っていなかったから、少しだけ意外で――とても嬉しかった。

 愛しさも、憎しみも、何もかもが解けていく。すべてを受け入れて、今までの想いは無駄ではなかったと認めて、前へ進むことができる。晴れやかな気持ちだけがあった。

 シズクは静かに目を細めた。自然と口元が弧を描く。海色の瞳に映し出された青年は、これ以上ないくらい、幸せそうな笑みを浮かべていた。ユマが息を飲む。

 

 

「……何よ。貴方、ちゃんと笑えるんじゃない……!」

 

「……そう、か……。そう、だな……」

 

 

 久しく笑えなかったから、正直不安だった。すべてが終わったら、表情筋はきちんと仕事してくれるのか否か。

 惚れた女の前で、死ぬまで仏頂面のままというのは、嫌だろう。普通に考えて。

 

 

「とにかく、手当を――!?」

 

 

 応急処置をしようと回復薬を取り出そうとしたユウマの手が止まる。少し遅れて、ユマが目を見開いた。シズクは目を瞬かせ、彼女や彼の視線を辿る。

 フォーマルハウトの爪によってざっくりと切り裂かれた傷口を拠点にして、シズクの体から()()()()()()()。咲いた花は、鮮やかな紫のモクレンだ。

 花はあっという間に体全体に咲いていく。それに比例し、シズクの体も塵となって崩れていった。あまりの状況に、ユマもユウマも狼狽える。

 

 

「何!? 何が起きてるのよこれ!?」

 

「俺が分かるわけないでしょう! こっちに当たらないでくださいよ!?」

 

「……ああ、気にしなくて結構だ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だからな」

 

 

 慌てる2人の顔は、親と死に分かれる子どもみたいだ。あるいは、子どもに置いて逝かれた親。――嘗て、恩師たちが我が子を奪われたときのような表情だった。

 

 置いて逝かないでと嘆きを叫んだ夜があった。奪わないでと叫んだ夜があった。何故、と、頭を抱えて悩んだ時間だってある。雪待シズクも、()()()()()()()人間だからだ。

 でも、シズクは一度だって、()()()()()()()()()()()ことなんて考えたことはない。おそらく、置いて逝く方はそんなことを考えられないのであろう。ただ、自分の歩いた後が道になってほしいと願うばかりだ。

 

 

「さっき私は『貴方の頭の中がお花畑』って言ったけど、何よコレ!? 貴方自身がお花畑になるって、冗談キツいわ!? 本当に、何がどうしてこうなるのよ!?」

 

 

 ユマは半狂乱になりながら、必死になってモクレンの花を握り潰す。彼女には、『モクレンの花がシズクの命を吸い取っている』ように見えているのだろうか。

 そんなことをしても無駄なのだが、ユマを止めるより先に、自分の命が尽きるほうが早いだろう。……それに、ユマがシズクのために必死になっている姿が、嬉しい。

 自分の意地の悪さに苦笑する。愛しているのも、憎んでいるのも事実だ。笑っていて欲しかったのも、苦しんで欲しかったのも、全部本当のことである。すべてが本心だ。

 

 愛憎入り混じった種は芽吹き、花を咲かせた。

 愛憎を飲み下し、新たな芽吹きを祝福する紫色のモクレン。

 

 雪待シズクの名の元となったスノードロップでもなく、()()()()に対する憎悪が込められたモミジガサでもなく、()()()()()()だなんて、感慨深く思える。

 

 

「頭のいいキミたちなら、分かっているんじゃないか? ――僕はもう……助からない」

 

「分からないし分かりたくもないわ。そんな弱気なことを言うなんて、全然貴方らしくない!」

 

「雪待一尉。75年前の英雄の如く、“しつこいくらいに諦めが悪い”ことが貴方の専売特権じゃなかったんですか!?」

 

 

 この2人は、意地でもシズクを連れ帰りたいらしい。雪待シズクという人間に、生きて欲しいと願ってくれている。こういうときになって、初めて、自分の選択は間違っていなかったのだと安堵するのだ。

 

 言いたいことは沢山あった。何を言おうか考えていた。恨み節全開で呪詛を吐きたいと思ったし、綺麗な言葉で終わらせたいとも思った。最後にユマたちが笑って前を向けるようになってほしいと言うのも、自分の罪を思い知って不幸になればいいと願ったのも事実である。

 今は、清濁併せた意味で、ユマとユウマには前を向いて歩いて行って欲しかった。()()()()故の業とはきちんと向かい合って欲しいし、踏みしめた大地の下に、数多の犠牲が積み上げられたことを知っていて欲しい。その上で、伊倉ユマや如月ユウマ個人の幸せを掴んで欲しかった。

 

 

『家族がいて、愛する人がいて、大事な仲間たちがいて、自分という存在を望んでくれる人たちがいて、帰る場所がある。……これ以上の幸せって、あるのかな。俺にはもう、これ以上の幸せなんて考えられないんだけどな』

 

『違いないな。議事堂に帰投すれば仲間たちが迎えてくれるし、戦場でも共に在る。隣を見れば愛する伴侶が微笑み返してくれて、周りには信頼できる仲間たちがいる。……この時代に生まれてきたことが1番の奇跡であり、幸いだと言えるだろう』

 

 

 婚礼衣装のタキシードを着た恩師たちが、そんな風に笑っていた。酒を煽った2人は何を思ったのか、自分の妻の好きなところを延々と語り続けて周囲に惚気をぶちまけていたか。

 

 

『誰かを愛するというカタチは、沢山あるんだよ。それは1人1人違うし、どれも間違いじゃない。……いつか貴方も、運命の人に出会えるはず。そうしたら、貴方と貴方が愛した人だけの、愛のカタチが見つかるはずだよ』

 

 

 「運命の人に会えるといいね」と締めくくって微笑んだ姉の姿が脳裏をよぎる。彼女の予言した通り、シズクは運命の人と出会えた。

 でも、シズクの愛のカタチは、あまりにも歪で滅茶苦茶だった。自分が知っている愛のカタチのように、優しく温かいものにはならなかった。

 ……シズクも、姉や恩師たちのようになりたかった。ただ真摯にひたむきに、伊倉ユマを愛してやりたかった。――今、この瞬間みたいに。

 

 さあ、最後の仕上げといこう。

 シズクはユウマの方へ視線を向けた。

 

 

「……はは。如月准尉、キミの在り方は、最早ただの人間だな。兵器が人の死を悼むはずがない」

 

「っ!?」

 

「……でも、いい。それでいいんだ。どうかそのまま、最後まで、()()()()()()()()くれ。……キミを想う、大切な人たちのために」

 

 

 間違っても、人という括りから外れてくれるな――その想いを込めて、ユウマを見上げる。深緑の瞳は困惑げに揺れていた。意味が分からないと言いたげな眼差しに、シズクは思わず苦笑した。

 

 今はまだ、如月ユウマには難しい案件だろう。でも、いつか、如月ユウマという人間を真摯に愛してくれる相手が現れる。そうなれば、きっと分かるはずだ。

 黒いショートボブに銀の髪飾りを付け、白い制服に身を包んだ少女の姿が浮かんだ。今はまだ、“彼女”も何も知らない。運命は()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「あと、胸ポケットに入れてある栞……大事にするんだよ? ……エーデルワイスの花が、キミの導になるから。……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 悪戯っぽく微笑めば、ユウマはぎょっとしたように肩をすくめた。自分がフォーマルハウトの幻覚に飲まれ、錯乱しかかったときのことを思い出したらしい。

 彼は気まずそうに視線を彷徨わせた。平時だったら、隣にいたユマに茶化されていたであろう。幸いなのか不幸なのか、ユマにはそんな余裕なんてなかった。

 可能性の種を蒔いた張本人としては、真摯でひたむきな愛のカタチ――ささやかでもいいから綺麗な花を咲かせてほしいものだ。

 

 きっとユウマなら、シズクのようなことにはなるまい。

 どんな困難にぶち当たっても、寄り添って行けるはずだ。

 

 シズクはゆっくり視線を向ける。緩慢な動作で手を伸ばし、小猫丸の柄に触れた。

 

 

「小猫丸……ユマを、頼むよ。彼女は……僕の、すべてなんだ」

 

 

 長らく共犯者として共に在った家族に、愛する人を託す。

 小猫丸は二つ返事で了承した。玉鋼から響く聲には、一切の迷いがない。

 

 

「……ふふ、頼もしいな。流石は■■カレンの傑作だ……」

 

 

 作り手であった友の名を出せば、小猫丸の聲に震えが混じる。高飛車だけれども優しい刀は、泣きだしそうなのを堪えて、気丈な態度でシズクを見送ろうとしていた。

 

 

「やめてよ……! お願いだから、小猫丸まで縁起悪いことを言わないでよ……! そりゃあ、刀の役目は殺すことだけど! 命を奪い取ることだけど、ッ」

 

「やめろ、ユマ。……この子を責めるな」

 

 

 癇癪を起した教え子を宥めようと手を伸ばす。ずる、と、鈍い音がした。モクレンの花が手の甲に咲き始める。死が迫っているというのに、どうしてか、穏やかな気持ちだった。

 緩慢な動作で、ユマの頬に触れた。血潮が通っているためか、心地よい熱が伝わってくる。途端にユマが口元を歪めた。シズクの体温がどんどん下がっているためであろう。

 ユマも軍人である。人の死には何度も触れてきた。でも、身近な人間の死は初めてではなかろうか。じわり、と、後ろめたい喜びが滲む。同時に、胸の痛みを覚えた。

 

 シズクが何も言わなければ、ユマはこれ以上、傷つかなくて済むはずだ。

 でも、知ってほしいことがある。……これは、シズクの我儘だ。

 

 吉と出るか、凶と出るか。

 

 ――それでも、信じたい。

 自分が愛した女性なら――伊倉ユマなら、きっと超えていけると。

 

 

「僕の制服のポケットに、僕の別荘の鍵が入ってる。……遺品整理、頼めるかな?」

 

「煩い! 自分の別荘の整理ぐらい、自分の手でやりなさいよ!」

 

「……それが、できそうにないから……一番信頼できるキミに、頼むんだよ。……見られたくないものだらけなんだが、キミになら見せてもいいかな、と……」

 

 

 シズクが言い終わるよりも先に、手の甲に咲いていたモクレンがぼとりと甲板に落ちる。刹那、ユマの頬に添えていた手が塵になって消えた。

 

 海色の瞳に映し出されたシズクの首元に、モクレンの花が咲き始める。あっという間に、左側の顔半分が花に埋まった。左目の視界が暗闇に飲まれてしまう。

 もう、時間がない。シズクは小さく息を吐いて、微笑んだ。対照的にユマの表情が歪む。その拍子に、彼女の涙腺が決壊した。大粒の涙がぽたぽたと降り注ぐ。

 

 

「まったく、華の(かんばせ)が台無しだ」

 

「誰のせいだと……!」

 

「あと、それから」

 

 

 これは、我儘。

 ささやかな、愛憎を込めて。

 

 

「……僕の名前、雪待シズクじゃないんだ」

 

「え……!?」

 

「――明星(アケボシ)那由多(ナユタ)というんだ。……()()()()()()、その名前で呼んでくれないか……?」

 

 

 ユマは困惑したように目を瞬かせた。幾何の沈黙の後、ユマは頷く。意地っ張りで高飛車な彼女もまた、小猫丸に続いて、気高くあろうとして微笑んだ。

 笑い方が歪んでいるように見えたのは、堪えきれなかったせいだろう。ああ、やはりこの子は聡い。それ以上に、優しい子だ。愛しさに、シズク――ナユタは目を細める。

 

 

「……ありがとう。キミに会えて……キミを好きになれて、本当に良かった」

 

「……ッ、待って! 私、私――」

 

 

 何か言いたいことがあるのか、ユマが口を開く。

 だが、残念なことに、ナユタにはもう何も聞こえなかった。

 ナユタは微笑み、口を開く。

 

 

「……じゃあ、()()()()()()()

 

 

 次の瞬間、右側の視界が潰れた。

 

 モクレンの香しい香りが、どんどん薄くなっていく。――もう、意識が……持たない。

 

 

 

■■■

 

 

 

『繋ぐか、断ち切るか』

 

 

 青い欠片――可能性の種を握り締め、茫然とこちらを見上げるルシェ族の青年を見下ろす。

 欠片は彼の手の中で光に変わると、心臓部分に収まった。それを見つめながら、()()は言葉を続ける。

 

 

『――その選択を()()()()()()()ときこそ、()()()()()()()()()()だ』

 

 

 種が咲き誇るとき、その代償としてすべてを失う。ニンゲンにとって、いささか大きな代償だ。

 けれど、この青年は成し遂げる。()()は、青年の魂に宿る想いを見出していた。

 揺らがぬ意志と決意こそが、新たな可能性を切り開く。彼の想いは未来を切り開くだろう。

 

 拓かれた道の先には、明日が続いていく。宿命も運命も壊し、世界を創り上げる。

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()7()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 送り出した青年の姿を思い出して、()()は呟く。

 

 青年はどのような花を咲かせ、どんな種を残すのか。彼が残した種からは、どんな花が咲き誇るのか。

 枯れ果てた命が再び大地に根差すのを見送りながら、()()はまどろむ。――そうして、ふと、目を留めた。

 

 

「……ああ、丁度いいところに。()()()にも種蒔きしてもらおう。……どうせ目的は俺と似たようなものだし、()()()の場合はニート決め込むだろうし、問題ないだろ」

 

 

 白い花弁が人影を映し出す。黒いバンダナを頭に巻き、緑のサングラスをかけた銀髪の男が、派手なくしゃみをした。

 

 

 




【参考および参照】
『セブンスドラゴンⅢ U.E.72 未完のユウマ』(カルロ・ゼン著)
『bokemaru.up.seesaa.net(http://bokemaru.up.seesaa.net/image/NNBBB2B9CD.txt)』より、『エーテル(光波を伝える可能性)』

―――
現在、『未完のユウマ』第5章終了まで。次回は第6章相当、補足と蛇足、および“伊倉ユマへの怒涛のSANチェック回”になると思われます。ついに『未完のユウマ』編に終わりが見えてきました。ここまで長かったです。
“ユマの生存”と“シズク=ナユタの選択と顛末”は最初から決めていました。『未完の行く先』を経たISDF勢の変化が、ゲーム本編の時間軸でどう絡んでくるかは、もう少しお待ちください。どの道、ISDF勢は阿鼻叫喚図になると思われます。
最後の方は、ニャルラトホテプの化身(=別個体)同士みたいなノリで見て頂ければ幸いですね。あの邪神、『化身が複数存在していて、化身同士だからと言って仲がいいとは限らない。場合によっては、互いを利用し合ったり、殺し合いをすることもある』らしいですから。

『ゲーム本編』編は、改定前のノリが引き継がれます。新旧13班が共演します。……何かを察して頂ければ幸いですが、今はまだもう少しだけお待ちください。
ユマとユウマの“人生の難易度”を凄まじい勢いで引き上げていますが、作者はセブンスドラゴンⅢのNPCの中ではISDF勢――特にユウマが大好きです。本当なんです。
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