IS-理外の観察者   作:SINSOU

1 / 19
1話

少年は公園にいた。

普段は子供や大人の声で活気のある公園も、少年が揺らすブランコの音だけが響く。

空は赤と黒に染まり、電灯にぼんやりと灯りが燈りだす。

じきに夜になろうというのに、少年はブランコから離れようとしない。

少年は顔を下に向け、力なくブランコを揺らす。

唇はギュッと噛み締められ、目には涙が滲んでいる。

それでも、少年はブランコの鎖を握り、その場から離れない。

 

ふと、少年は自分が見られているような気がして顔を上げた。

すると突然、目の前に女性の顔が現れ、少年は声を上げて驚いた。

 

「うわぁ!」

 

その拍子に、少年はブランコから転げ落ち、地面に尻もちをついた。

 

「いたた・・・」

「少年、何してるのー?」

 

痛みにうめく少年にかけられたのは、力が抜けるような、間延びした声である。

ズボンに付いた土を払いながら立ち上がり、少年は女性を睨みつけた。

 

「なんだっていいだろ・・・!それよりあんた誰だよ」

「通りすがりですが何か?」

 

驚いた気恥ずかしさと、痛みの苛立ちで声を荒げるも、目の前の女性は気に留めた様子もない。

 

「通りすがりだか知らないけど、俺のことは放って・・・」

「少年は、もしかして家出かい?」

「!!」

 

その言葉に、少年はびくりと身体を振るわせた。

 

「なんで・・・」

「何となくそう思ったから。でも当たりの様だねー」

 

少し怯えた少年の言葉に、女性は気だるげに答えた。

 

「で、少年はどうするんだい?」

「・・・え?」

 

女性からの唐突な質問に、少年は少し呆けた。

 

「家出にしても、何も持たず、野宿するには少し厳しい服装。

 食べ物はないし、お金ももってなさそう。

 この寒い季節にそれは馬鹿のすることだ。家出するなら準備くらいしなさい」

「えっと・・・ごめんなさい」

 

傍から聞いたらおかしい説教なのだが、少年は流れで謝ってしまった。

 

「よしよし、失敗は誰にでもあることだ。

 では、反省と教訓を得たご褒美に、今日はうちで寝ていいよ」

「は?」

 

唐突な提案に、少年の思考は止まった。

 

「せっかく一つ学んだのに、それを生かさないのは罪だ。

 それに、この寒空に少年を放置するほど私は鬼でも畜生でもなく、一応人間なので」

「え?え?」

 

未だ混乱している少年の手を女性は握り、そのまま引っ張って歩き出す。

 

「あ、でも家族が来たら説明はしてね。私、捕まりたくないから」

「えっと・・・解りました」

 

公園から数分ほど歩き、住宅から少し離れたところで、二人は一軒の屋敷に着いた。

屋敷は年代を感じる趣きを持ち、木々がそれを囲むように茂っていた。

はっきり言って幽霊屋敷さながらである。

 

「どう?私のおうち」

「うわぁ・・・」

 

門前で、屋敷を示す笑顔の女性とは逆に、少年の顔は引き攣っていた。

 

「さぁさぁ、一日だけとはいえ君の家だ。存分にくつろぎたまえ」

「お、お邪魔します」

 

女性に促されるように、少年は屋敷へと入っていく。

ふと、女性は何かに気づいたように少年に振り返った。

 

「そういえば、少年の名前を聞いてなかったね。私はみやこ、如月(きさらぎ)みやこ。

 気軽にみやこ姉さんと呼ぶといい」

「何か余計なものついたよね!?えっと俺・・・一夏、織斑一夏・・・です」

「オリムライチカ君・・・か。それではイチカ少年、今日一日だけだがよろしく」

 

一夏のツッコミを聞き流しつつ、如月は笑顔で手を差し出す。

 

「えっと・・・よろしくお願いします」

 

これまでの如月の言動に戸惑いつつも、一夏はその手をとった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。