世界は
はっきり言って出鱈目であろう。それこそ単に聞いただけでは、どこのサブカルチャー作品の物語だ?と言われるだろう、それも呆れられた視線を受けて。言ってしまえば、こんな話の作品はありふれているからな。しかし、これは紛れもない事実であり現実だった。いくら馬鹿げていようとも、事実は事実でしかないのだ。ゆえに、ISという存在を世界は認めざるを得なかった。現代兵器に勝てる存在はそれだけで脅威であり、そして喉から手が出るほどに魅力的なのだから。
ISに関する魅力はいくつかあった。
一つ、単純にその戦闘力だ。それこそ2000発のミサイルを撃墜させ、その後に既存の現代兵器の強襲を退けたという事実で説明は足りるだろう。圧倒的な力はそれだけで周りを引き付けるものだ。そして元が宇宙用に作られたせいか、搭乗者を守る防御性能が高い。ロボットアニメのようにバリアーが搭載され、そして搭乗者のダメージを消失させる『絶対防御』や、生命維持機能も搭載されている。まさに動く城塞でもあるのだ。
二つ、それは武器の量子化だ。一言でいうならば青狸のポケットだ。ISは武器を量子化し、データとして保存できるのだ。そして一瞬でそれを現物へと呼び出せることが出来る。もはやSFの世界だ。
三つ、それは既存の兵器にはない力、『自己進化』だ。いわばISは進化する兵器なのだ。使用者や戦闘経験を蓄積し、その情報を元に自分自身を適用させる。より強く、より効率的に、より合理的に、ISは自身を変えるのだ。正直、馬鹿馬鹿しいにもほどがあるだろう。一体どこの宇宙怪獣だ。それこそ例に挙げた怪獣はヒーローすらお手上げ状態になった代物だ。まあ、最後は優しい少女の演奏に地球は救われたわけだがな。っと失礼、話が逸れたな。自己進化する兵器、これだけ更に魅力が上がった。
だがISにはいくつかの問題があった。
一つ、ISの数である。肝心の製作者である篠ノ乃束博士はすでに雲隠れし、ISの量産が出来なくなったのだ。各国は互いに協力し、篠ノ乃束を探した。まあ、協力などういうのは建前なのだろう。唯一、
そして現在確認されているISの数は500余り。世界各国で分け合うにはあまりにも少ないのだ。そしてIS研究のために更にその数は削られる。ようはISの確保競争が起きたわけだ。結果、力ある大国が多数を有し、各国の戦力差が生じた。結局は力ISパワーなのだ。
二つ、それはISという存在が未知であること。そもそも作り上げた篠ノ乃束がいないのだ。そのため、各国は試行錯誤、暗中模索の中でISと向き合わなければならなくなった。特に心臓であるコアに関する情報はほとんどが不明であり、唯一解っていることと言えば『自己進化』をすることだ。逆を言えば、それだけでも開示できたことを褒めるべきであろうか。先に述べたように、ISのコアに関しての情報がないため、おいそれと手を出すことが出来ないのだ。変なことをして壊れました、なんてことになるのは誰だって嫌なのだから。結果、各国が出来たのはその表装だけ。ぶっちゃけ表面だけを弄ることしか出来ないというのが各国の現状だ。
三つ、それは『量子化』の負の面だ。ISは武装を量子化して保存し、すぐに呼び出せる機能が搭載されている。これがどんな恐ろしい物か解るだろう?ようは、街中で突然
そしてISに関する教育を行うために、教育機関として『IS学園』が設立された。そしてIS学園は特例として、各国の干渉を受けることがない、不干渉地域として取り決めがされた。操縦者や整備士などの人材を育成するため、各国のISの卵たちがそこに召集されている。そこでは日々、生徒たちがISへの理解を深めるために、勉学に励んでいる・・・らしい。
そして四つ目、これがあまりにも馬鹿馬鹿しいことだが、なぜかISは女性しか扱うことが出来ない。理由などは解らん。それこそ作った
はっきり言って馬鹿馬鹿しいとしか言えない。私からしてみれば、たかがISと言う『道具』を扱えるだけでしかない。いくつか例を挙げるならば、『車』を運転できる人間は運転できない人に暴力を振るっていいほどに優れているのか?『楽器』を演奏できる人間は、演奏できない人間を足で踏みつけてもいいほどに偉いのか?私からすればその程度の認識なのだ。あと、すごいのはISであって、お前等じゃないだろ?とも言えた。ぶっちゃけ、虎の威を借りる狐だろと。
まあ結末を言うのであれば、そんな思想はとっとと縮小していった。この思想が横行した一時期は、そりゃあ口にするの憚れるほどに世紀末だった。道を歩けば警官に連れて行かれる男性は雑草のように目に入り、たまに買い物に行けば、赤の他人に自分の商品の代金を支払わせる女どもがいた。お気に入りの喫茶店に行った際に、お金を払わないと喚き、それこそ店を潰してやると叫ぶ女性がいた時は流石に腹が立った。腹が立ったので、女の代わりに代金を払い、とっとと店から蹴りだした。そんなことが世界中で起きたのだからさあ大変。
男性陣は女性を恐れて自宅に引きこもり、大半の女性は流石に横暴すぎると声を上げた。今は以前のような世界へと戻りつつある。極端に振り切れた結果、その異常性に目を覚ましたと言える。
まあ、それでも『女性優生思想』の困った方々は今も声を上げている。だが以前とは違い、もはや無視されつつあるし、横暴を働こうものなら普通に逮捕されている。いつまでも過去の栄光にすがるのも考え物だ。
一方、そんな大人たちを見ていた子供たちも、そりゃあ影響を受けた。
『私はISを運転できる女の子だから偉いの!だから私のと、友達になりなさい!』とか『私の恋人になりなさい!私がISで守ってあげますわ!』とか『ISに乗れる私がわざわざお弁当を作ったのよ!貴方はただ喜んで食べれば良いのよ!』とか、そんな子供たちを見かけるようになった。まったく、どういう教育をしたのか親の顔が見てみたい。
と、そんなこんなでISの登場によって、世界は色々と変わったというわけだ。取りあえず、兎はしばく。
そしてその影響は私の周りにも起こった。まずは篠ノ乃家であろう。IS開発者と言う篠ノ乃束の存在によって、彼らの価値は世界トップレベルへと上がった。言ってしまえば、博士をおびき寄せるための餌になりうる存在になっただ。そのため、様々な組織やら何やらに狙われることを恐れた日本は、彼らを重要人物保護プログラムを適用。ようは保護、というなの監禁だ。正直迷惑この上ないだろう。それこそ篠ノ乃妹は号泣する事態だ。あれでは姉を大っ嫌いになるだろう。というわけで、偶々家に上がりこんだ兎を縛り上げ、取りあえず謝りに行ってこいと
肝心の一夏少年に関しては、学校帰りには必ず私の家に来る。相も変わらず千冬少女が迎えに来る。言っておくが、ここは託児所でもなければ待合場所でもないのぞ?解っているのか?おい?毎回彼らには言うが、なぜか苦笑する二人だ。新しい情報と言えば、篠ノ乃家が去った後、凰 鈴音(ファン・リンイン)というチャイナガールが来るようになった。最近この街に引っ越してきたらしく、色々困っていた時に一夏少年等に助けてもらったらしい。その後は一夏少年等と共に遊ぶようになったという。
チャイナガールが初めて来た時の怯えっぷりは、流石に私もこたえた。何をそんな不審者を見るような視線を送ってくるのだ?と内心で思ったほどだ。まあ、今ではその誤解は解け、時に五反田兄妹等と共に
そんなこんなでISを受け入れた世界で、私は何事もなく生きていた。おかしな世界にはなったが、だからとてそう絶望するほどでもなかったからだ。そして月日は数年流れた。各国のISによる世界大会、通称モンド・グロッソの第一回目を自宅で一夏少年らと見ていたのが去年のことだろうか。出場選手になった千冬少女の雄姿を、固焼き煎餅(醤油味)を齧り、濃いお茶を飲みながら見ていたのが懐かしい。そして千冬少女は優勝し、千冬少女は有名人、一躍時の人となった。その結果、家が取材陣に取り囲まれた一夏少年等がここに避難してきた時は、流石に「帰れ」とは言えず、無言で部屋を貸した。
そして第二回モンド・グロッソの出場が決まり、なぜか一夏少年と私がゲスト枠として呼ばれる羽目になった。正直、訳が分からない。そして最も訳が分からないのが今の私の現状である。
「すまないが、この縄を解いてくれないか?なにぶんきつく縛られているせいか、どうにも身動きが取れん。それに私は縛られるのがご褒美といった
「てめぇ、馬鹿じゃねぇの?」
目の前の女が顔に青筋を浮かべた。そう、私たちは誘拐されたのである。