IS-理外の観察者   作:SINSOU

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19話

『お疲れ様一夏少年。それにしても災難だったな』

 

『そうですね』

 

ギャリギャリとタイヤが地面を擦る音を聞きながら、私たちは家へと向かって走る。私の後ろに座った一夏少年は落ちないように私の腰に手を回し、お腹の前でベルトのようにしっかりと結んでいる。じゃあ後ろに座ってくれ、と言った際に「ちょ、ちょっと待ってください!それって俺がみやこさんに抱き着くってことじゃ・・・?」と慌てていた。そんな一夏少年に苦笑し、こんな私にも気があるのかい?とからかいつつも有無を言わさず座らせた。

 

『まさか君がISを動かすとはねぇ。男の君が珍しいこともあるものだ。というか、そもそも何で触れたんだい?』

 

『えっと、それは偶々って言うか、なんて言ったら言いか・・・』

 

一夏少年本人も色々と混乱しているのだろう。彼の言葉は未だ現実を受け入れていないような印象だ。まさか男である自分がISに乗れたなんて誰が想像できるのだろうか。私からしても予想すらつかなかったんですけどね?まぁさか、君がISに乗るなんてね?だから私も色々と混乱してますよ。

おっとここは曲がらないといかんな。私はハンドルと身体を傾け、そのままの速さで方向を変える。ギギャギャギャギャと音が聞こえるが問題なくカーブを突破。

 

『何にせよ、君がISを動かしたことは紛れもない事実。しかも大々的なニュースになっちゃったわけだ。これから大変なことになるだろうねぇ』

 

『それは待ってた時に言われました。なんか上と話し合って決めるって。みやこさん、俺どうなっちゃうんですか?』

 

ギュッと私の腰に回された彼の手が強張る。そりゃ怖いだろうさ。自分の未来が誰かの手によって決められるということは。たとえそれが原作と言われる流れ(予定調和)だったとしても、彼には全く知らない未来なのだから。あ、次は行きが坂道だったから、返りだとたしか・・・。

 

『一夏君。しっかり掴まっててね』

 

『え、急になんです・・・!?』

 

バインと自転車が空を走り、そのまま地面へと落ちる。ダァンと音が響くが、その音とは逆に衝撃はそれほどでもなかった。ギリャリャとタイヤの焦げた臭いがしたが、気にせずにペダルを漕ぐ。

 

『私に言われても皆目検討がつかんよ。私は占い師でも預言者でもないのでね。取りあえずは大変なことになるんじゃないかな。言い方は悪いが、再び君は世界から注目される有名人になったわけだ。しかも女にしか扱えないISを動かした最初の少年としてね。まあ、悪いようにはされないんじゃない?多分だけどね』

 

『え・・・悪いようにはって、どういうことですか!?俺ナニされるんですか!?』

 

『例えば・・・いや止めておこう。君を不安がらせる必要もないしな』

 

『いや余計に不安になるし気になりますよそれ!』

 

必死な一夏少年の姿に、私はクフフと笑う。からかわれていたことに気付いたのか、『もういいです!』と拗ねる一夏少年。少し意地悪すぎたな、と反省。帰ったら一夏少年のご機嫌取りをしなくてはな。そうしないと、ブラコンの対処が大変になる。

 

『まあ、色々と気になるなら千冬少女に聴けばいいさ。一応、君の保護者なのだらかね。それにブリュンヒルデなのだからIS関係には顔が利くだろう。ISの関係者からしても、色々と功労者である君のお姉さんと仲違いになることは避けたいだろうさ。色々な意味でね』

 

私の言葉に対し、今も戸惑いのオーラを発している一夏少年。まあ、私の言葉は単なる気休めでしかないか。

 

『ところでみやこさん』

 

『なんだい一夏少年』

 

『これ、いつまでも被ってればいいんですか?』

 

『君は自転車に乗っている時にヘルメットを脱ぐのかい?』

 

『そもそもこんなヘルメットは被りませんよ。っていうか、これ何なんですか』

 

『昔取った杵柄だ。なぁに、安全性は保障するよ』

 

『安全は良くても目立ちますから!』

 

そんな一夏少年の言葉を聞きながら、私はペダルを漕ぐのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一夏少年を家へと送り届け、無事に着いたと千冬少女にメールを送る。帰り際に先に着いたことを知らせていたが、彼女からは取りあえず事情を聞きに行くとの返信が来た。まあなんにせよ、千冬少女も大変なのだろうと同情はしておいた。その後、自室で読書に勤しんでいたら、玄関のチャイムが響き、顔を出してみると千冬少女が立っていた。その目つきは鋭く、身体中からは何かしら黒い物が見えそうだったので、何も言わずに部屋へと通す。なぜか置かれている彼女用の湯飲みにレンジで温めた甘酒を注ぎ、目の前に置く。

彼女は何も言わずに甘酒をちびちびと飲み始め、それを私は無言で見つめる。コン、と空になった湯飲みが置かれ、「次いる?」と聞けば、肯く千冬少女。そのままもう一杯入れれば、湯気の上がる湯飲みを見つめながら、彼女はポツリポツリとつぶやき始める。

 

なんでも一夏少年のIS学園行きが決まったのこと。女性でしか扱えないISを動かしたという事実は思いのほか影響が大きかったようで。取りあえずは第二の織斑一夏を見つけ出すために、世界中でIS検査が行われるらしい。ま、私の記憶が確かならばまず出てこないだろうけどね。なにせ一夏少年は『主人公』なのだから。

それで最初の男性IS操縦者である織斑一夏の扱いに関しては、保護(と言う名の確保)のために、法を寄せ付けない、ある意味で法に守られたIS学園に置くということが決まったらしい。取りあえずは時間稼ぎと言うことだろう。3年間という短い時間ではあるが、その間に織斑一夏の扱いを正式に決めようって魂胆でしょうね。そりゃ色々と決められないのは確かですけど、問題の先送りって大抵悪い方向に転がるんですけど、それ大丈夫なんですかね?

 

そんなことを呟き始める千冬少女であるが、ふと私は気が付く。

それ、他人にべらべらと話していい内容じゃない(他言無用の重要案件)だよね?絶対に喋っちゃいけない、私みたいなのが知っていい物じゃないよね?そのことを指摘すると、千冬少女はぽつりと、「みやこさんならいい知恵を貸してくれるかなと思って・・・」と言い出した。

 

ちょっと、ちょぉぉぉっと待ちなさい。私は千冬少女の行動に頭を抱えだす。いやいや何をしてくれてるんですかこのブラコンンンンン!そりゃ私だって何も言わずに相談に乗っちゃいましたけど!ですけどこれは想定外だって!なに国の機密情報っぽいの話しちゃったの!?絶対にダメなやつよそれ!私、国家案件の相談なんてやったことないから!そんなことが頭を駆け巡るも、努めて冷静に、私は千冬少女を諭す。

 

「なんにせよ、決まってしまったことは仕方がないわ。貴女だってこんなことになるなんて予想できなかっただろうし。まあIS学園に保護されるってことは、一応は一夏君もそれなりに安全ってことでしょ?それに千冬ちゃん、そこで教師をやってるんだから、一夏君を見守ることは出来る訳だし。色々と不安になるだろう一夏君を助けてあげたら?姉として、教師としてね」

 

「しかし、教師が一生徒を贔屓するのは・・・」

 

「そりゃ確かに教師が特定の生徒に目をかけるのは駄目よ。でも一夏少年はすでに()()()()()()()()()()()()()()()。その時点で贔屓と言われたらそれまで。言いがかり?でも人は感情で動く動物なんだから、仕方がないじゃない。っと話が逸れたわね。でも贔屓と手助けは違うわ。IS学園ってようは女子高でしょ?そんな中に男である一夏君を放り込んでみなさい?絶対に齟齬が生まれるわ。それで一夏少年が孤立なんてしたら、彼にとって地獄と同じ。下手したらISに乗る前に心がつぶれるかもしれない。考えすぎ?それもそうね。でも、色々と考えるに越したことはないわ」

 

色々と喋り出す私にただた口を開けて聞いている千冬少女。おい、しっかりしなさい。

 

「そんな中で、一夏君を理解してあげられるのはお姉さんである千冬ちゃんしかいない。教師じゃなくて、お姉さんとして一夏君を見守ることも大事よ。貴女しか心を許せる人はいないんだから」

 

そんな言葉をかけるが、私とて何をしゃべっているのか頭が追いついていない。取りあえず、この場をやり過ごすことを考えよう。

 

「そう・・・ですね。私が一夏を守らなければいけませんからね」

 

そんな言葉を聞けば、一夏君の「守るために強くなりたい」という言葉を思い出す。なんだかんだ言って姉弟の考えることは一緒ね。冷えた甘酒を飲み干す千冬ちゃんの顔は、来た時よりも少し明るく見えた。さてさて、問題は解決したみたいだし、これであんし「あの、みやこさん・・・」

 

ホクホク顔でいた私は、突如割り込んできた千冬少女の言葉に固まった。ぎりぎりと油の切れた音を奏でながら私は千冬少女へと振り向く。彼女の顔は、思い詰めたように強ばり、私は嫌な予感を感じた。

 

「実は、みやこさんに折り入って頼みたいことがあるのですが・・・」

 

千冬少女の言葉に、私は張り付けた笑みで聞き、彼女が帰った後、叫び声をあげたのだった。




都市伝説『うさぴょんライダーwith狼学生』

白衣を着た兎と学生服を着た狼が、自転車に乗りながらものすごい速さで駆け抜けるとのこと。その速さは車に追い縋るほどで、目撃者によれば空さえも走ったという証言もあり、まるで映画のような光景だったらしい。
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