目が覚めると知らない天井だった、ってよく聞くが、
目が覚めると少女が土下座してた、ってのは滅多にないと思う。
プルプルと震えているのが窺えて、私が動くとビクッとなる。
ナニコレすっごい可愛いし、弄りたくなる。
気が付いてぐるりとまわりを見渡したら、天井も床も壁も白、白、白と白一色。
ちょっとこれは部屋としてはダメでしょ、頭が痛くなってくる。
とりあえず、目の前で震えている少女に声をかけてみた。
「ぴゃぁぁぁぁぁぁぁ!?」
声をかけられてびっくりしたのか、少女の声から悲鳴が飛び出した。
悲鳴というには、高周波が出たんじゃないかと思うほどの声だったが。
一瞬、意識を失いかけたがなんとか耐え、プルプルと震える少女に改めて声をかけた。
「す、すみません!いきなり声をかけられてびっくりしまして・・・」
なるほど、いきなり話しかけたのは拙かったみたいだ。取りあえず謝っておこう。
「い、いえ!気にしないでください!私、こういう性格ですから!
それに元はと言えばこちらのミスでこうなったので!それで・・・あの・・・その・・・」
下を向いてモジモジする少女に胸きゅんと嗜虐心を焚き付けられたが、何とか抑えた。
よし、私の理性は本能に勝ったのだ。
それはさておき、白一色の部屋に、少女に私だけの状況。
何とも申し訳なさそうな表情と、まるで悪いことをしたことを告白するのような少女の姿。
そして私自身の知識を掛け合わせたことで、私の頭にはある結論が出た。
震える少女に確認するように、私は事もなげに言った。
「私、死んだんでしょ?」
窓から入る陽の光を目に、雀の囀る声を耳に受け、私は重い瞼を上げた。
真っ先に見えたのは自分の書斎の机であり、数々の本が積み上げられている。
どうやら、夜の読書中に寝てしまったらしい。
机にもたれかかって寝たことで、身体が酷く痛む。
痛みを堪えながら、椅子に身体をあずけて大きく伸びをする。あ、何か嫌な音がした。
よ・・・よし、ようやく頭が冴えてきた。取りあえず、朝ご飯でも作りますか。
まぁそれにしても、これまた懐かしいものを見たな。
私は今朝に見た夢の事を思い返した。
私の名は如月みやこ。俗にいう転生者というものだ。
神様のうっかりで殺されてしまい、その代わりとして、別の世界での生を与えられた存在だ。
なんでも、ここ最近の神様のうっかりは酷いらしく、一日で数十人ほど死んでいるらしい。
私もその犠牲者なのだが、なってしまったものは仕方ないと諦めた。
後悔としては、両親や祖父母に子供と孫の顔をみせられなかったことだが。
話を戻すが、神様の誤りで死んだ事による対応として、
犠牲者は本人の望む世界に転生できることになっている。
転生せずにそのまま成仏することも出来るが、そんな人はまずいないらしい。
かくいう私も、転生を望んだので何とも言えないのだが。
そして転生する際に、みな各々の望む力を与えられて転生できる。
もちろん、私も力を得て転生した。比較的安全そうな世界をお願いして、だ。
私が転生した世界は、昔に流行っていたインフィニット・ストラトスという小説らしく、
内容としては、鈍感主人公と美少女たちのハーレムラブコメ+ロボット?の世界と聞かされた。
まぁ、私は別に主人公と恋愛がしたいとか、ヒロインたちに関わる気はなかった。
むしろ、主人公たちに関わらないことで、平穏な生活を画作していたのだ。
誰だって、好き好んでトラブルに首を突っ込む奴はいない。
つまり、主人公らに出会わなければ自分の平穏な生活が約束される、と私は思っていたのだ。
ところで、人間は死にかけたりすると死生観が変わるというが、あれは本当のようだ。
実際、私の考えはがらりと変わったのだから。
一度死んで転生したことで、私は前世で出来なかったことに挑戦し続けた。
図書室の読書制覇や、部活への取り組み、多岐に渡る分野にも興味を広げた。
学校を卒業してからは、更に分野を広げ、図書館制覇等に勤しんだ。
自分に与えられた能力も相まって、思い返すと一種の怪奇的なナマモノと化していたと思う。
その後も数々の挑戦による結果、気付けばある種の有名人になっていた。
目立ち過ぎたと思った私は、すぐさま故郷から逃げるように引っ越し、
遠くの静かな町に住むことにした。
私の新たな家は、住宅地から少し離れた場所に建った、古き歴史のありそうな民家で、
周りは木々に囲まれ、草が生い茂っていた。
どう見ても人が住みそうもない雰囲気を醸しつつ、かといって人が住めない程壊れてもいない。
むしろ外見と反するように、中はしっかりしていた。
ひっそりと過ごしたい私の想いとしては、まさに完璧すぎて部屋の中で小躍りした程だ。
さっそく補修工事をお願いし、必要な雑貨に日用品を揃え、
実家から持ってきた趣味のモノや、機材に本を運び込んだ。
これで私の平穏人生が再び訪れるのだー!と自室で喜びで叫んだことは黒歴史である。
そうして新たな門出として、豪勢な食事にしようとスーパーで鍋の材料を買い出し、
早く帰ろうとして公園を横切ろうとした際に、ブランコを揺らす男の子を見つけた。
歳は見た目からして小学生で、この寒い季節なのに半袖に半ズボン。
そして夜も更けていたというのに、まるで石のように動かない。
こんな寒空に未だ家に帰らないとは、随分と遊びたがりの子だ
そう思って足早に去ろうとするも、どうも私はダメだった。
見つけた小さな子を外で置き去りにするほど、私は自分勝手になれないようだ。
どうして、こう・・・厄介事を見つけてしまうんだ
内心で自分を毒づきながら、私は少年へ足を運び、声をかけた。
「少年、何してるのー?」
頭の意識を夢の回想から現実に戻し、私は台所で朝食を作る。
焼きたてのパンにサラダ、ベーコンエッグにスクランブルエッグ、
飲み物はオレンジジュースと至って普通の朝食だ。
ぐうぐうとなるお腹を宥めつつ、朝食を食べようとした時に、家のチャイムが鳴った。
時計を見た私は、指し示された時間に疲れを感じた。
あー、もうそんな時間なのね、まったくタイミングの悪い・・・
手にした箸を戻し、空腹を我慢しつつ玄関の方へ向かう。
玄関の鍵を外し、私は戸を開けた。
「みやこさん、おはようございます!遊びに来ました!」
私の目の前には、偶々助けたブランコの少年である織斑一夏が、
目が眩むほどの輝かしい笑顔をみせていた。