IS-理外の観察者   作:SINSOU

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4話

玄関を開けたら、木刀を携えた女学生がいた。

想像するとえらくシュールな光景だが、実際に自分の身に起こるとその考えは変わる。

なんと言うか、痛い。色んな意味で痛い。

目の前の女学生から放たれる殺気が痛い。

もう目なんて、私を射殺そうとするほどに鋭いのだ。

 

しかし、自分は目の前の少女に殺意を抱かれることは記憶にない。

なにせ、こっちに引っ越したのは少し前で、この家に住むのは今日からだ。

その間に、目の前の少女に出会ったことも、すれ違ったこともない。

なら、何でそんなに私を睨むんですか。

 

「おやおや、こんな夜中に珍客だ。押し入りならここにはお金はないよ」

「・・・・・・」

 

私の言葉に少女の目は更に細くなる。あら、冗談通じないわこの子。

 

「ふむ、黙ったままではこちらも困るんだが。この家に何か用かい?」

「・・・・・・弟を返せ」

 

少女の言葉に、私は合点がいった。

どうやらこの少女は一夏少年のお姉さんのようだ。

顔に目を移せば、なるほど、確かに顔立ちは一夏少年と似ている。

しかし、弟を返せとはどういうことだ。留守電に連絡を入れたんだが。

この様子だと、留守電を聞いていないようだ。

 

さて困った。私は約束を破るのは好きではない。

一夏少年に、今日はここで寝なさいと言った手前、

「お姉さんが来たから帰れ」と言いたくはない。

 

それに、さっきの一夏少年の話を聞いた後では、

今の一夏少年に彼女を合わせるのは非常にまずいだろう。

姉との関係に悩んでいる一夏少年に、野生の母熊の如く殺気塗れのお姉さん。

下手すれば、私の家で喧嘩を起こす。そうしたら私の家が壊れる。

 

「すまないが、今は君を一夏少年に会わせるわけにはいかないよ。

 留守電に入れたが、彼は私の家で休むことになった。お迎えは明日にしておくれ」

 

ここは穏便に帰ってもらうことにしよう。

お姉さんも解ってく「一夏を、かえせぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」れなかったよ。

絶叫にも似た声で、織斑姉は私に木刀を振り下ろした。

 

私は身体を左にずらし、振り下ろされた木刀を避ける。

風を切る音を耳にし、私は内心ビビる。当たったら痛いってレベルじゃない。折れる。

私が避けたことに織斑姉は一瞬顔を呆けるも、距離を取るためか、一気に後ろに跳ぶ。

私は、それを見ながら、ゆっくりと玄関をくぐって外に出る。

 

正直、どうしてこうなった、としか思えない。

家出少年を家で保護したら、少年の家族に殺されかけたのです。

明日迎えに来てって言ったのに、その対応はあんまりです。

ちょっと私は少し怒りました。

とりあえず正当防衛ってことで、おしりぺんぺんの刑にしちゃる。

 

とはいえ、家の中で暴れられるよりかはマシだが、外に連れ出されたことには正直辛い。

広くない家の庭だが、子供がヒット&アウェイするには十分な広さだ。

それに私は、あまり運動が得意ではない。

身体を動かすのは好きだが、運動能力はそこそこでしかない。

年齢の差にしても、運動万能らしい織斑姉と比べれば、

体力的にも、運動能力的にも、長時間の運動はきつい。それに、

 

「もう一人出てきなさいな。見てるんでしょ?」

 

感じるのだ。目の前の狼の他に、私を見ているもう一人の視線が。

 

「ちーちゃ~ん、この人すごいよ~。私のこと気付いちゃった~」

 

甘ったるい声が聞こえると、ちーちゃんと呼ばれた織斑姉の隣から、もう一人女学生が現れた。

腰までかかる程に長い、紫がかった髪を流し、

人を馬鹿にした・・・いや、そもそも私を認識してないだろう、澄んだ目をしていた。

 

「どういうことだ、束。お前の姿は見えないんじゃなかったのか」

「唯の馬鹿にはそうだよ~。でも、こいつは気が付いた。つまり、普通じゃないよ」

 

束と呼ばれた少女は、私を(モルモット的に)興味深そうに見つめてきた。

おい、普通じゃないってなんだ。私はれっきとした普通の人ですよ!

 

「私はこれでも普通の人間だよ、女学生さんら。

 もう真夜中に差し掛かるのに、学生の夜遊びは厳禁では?」

「遊びじゃない。さっさと弟を返せ」

「じゃないと~、すっごい痛い目に合わせちゃうぞ~?」

「ほう、私に怪我をさせる気満々ね。これで正当防衛は成立かな」

 

私の言葉に、二人は細い目を更に細めた。あーあ、怒っちゃったよ。

そして彼女らは、私に向かって走り出した。

 

 

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