IS-理外の観察者   作:SINSOU

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5話

振り下ろされる木刀を左右に避け、薙ぎ払いを上体逸らしで躱す。

足払いは、跳躍で避けて距離を取ろうとするも、

跳躍中に一気に距離を詰められて効果なし。

 

うん、空気を斬る音が怖いです。あ、ちょっと髪が掠った。

先ほどから繰り出される攻撃に、私は最小限で必死に避ける。

織斑姉は怒りのせいか、殺気が駄々漏れな上、ちょっと大振りしております。

これは実戦ではダメなパターンです。

怒りで強くなるのは力だけで、故に力任せになって攻撃予測がしやすい。

だから助かっているんですけどね!

でも当たったら大けがなんで、どっちみち私は必死なんですよ!

 

先ほどから織斑姉の攻撃を避ける中、私はもう一人の少女を探す。

私の方に走ってきた織斑姉と束と呼ばれた少女だが、

途中で束という少女の姿が消え、今は織斑姉しか見えない。

だが、私には微かに視線を感じる。隙あらばこちらを狙う視線が。

 

戦いにおいて、数というのは馬鹿に出来ない。

ゲームみたいに、1000人を吹っ飛ばして真の〇〇無双だ!なんてのはそうそうありえない。

ゲームにしても、下手をすれば数に負けるのだ。

まして現実では、動けば体力は勝手に減り、回復アイテムなんて無い。

 

話を戻すが、1対2というのは厄介である。

なにせ、2人になれば役割分担が出来るからだ。

片方が攻め、もう片方がその隙を狙う。これだけで、相手は2人に気を配らなければならない。

故に見えているだけでもその威圧感は凄まじい。

ましてや、こっちは相手の姿が見えないのだ。いつ襲われるのか予測がつけられない。

そんな状況を、かれこれ数十分ほど繰り広げているので、

私の精神力と体力はほぼ空に近いです。

正直、今すぐお布団に入って寝たいです。多分、8時間は寝れると思う。

 

流石に織斑姉も体力を消耗したのか、動きに張りもなければ、キレもなくなっていた。

木刀を振る速さも遅くなり、一振りごとに肩で息をする。

それでも私を見る眼だけは、決して私を見逃さず、射殺すように輝かせている。

今この人、精神が野生に帰っているんじゃないでしょうか。

 

もはや私自身の体力もきついので、私は逃げるのを止め、カウンターを決めることにした。

狙うは織斑姉の右手が握っている木刀。それを手から離せば、彼女の攻撃手段はなくなる。

私は、ちょうど彼女が振り下ろしてきた木刀をギリギリで避け、

その勢いを利用し、木刀めがけて全力蹴りを放つ。

木の折れる鈍い音が聞こえ、織斑姉の右手に目を移せば、

木刀は持ち手を残して綺麗に吹き飛んでいた。

私は、呆然とする織斑姉に駈け寄り、お腹に拳をめり込ませる。

空気の塊が抜ける音を口から発しながら、織斑姉は倒れた。

 

やった!これで織斑姉は無力化できた!

この状態からして、この子はしばらくは動けそうにないだろう。

あとは隠れているもう一人を見つけないと。

 

そう思い、ふと気を許した瞬間、私は地面に崩れ落ちた。

 

あ・・・れ・・・身体が動か・・・な・・・い・・・?

 

私は急に動かない身体に戸惑い、目を動かして身体を見ると、両手足に針が刺さっていた。

 

「いや~すごかったよ~。まるでカンフー映画みたいな攻防戦!

 怒り狂ったちーちゃんとまともに戦える人が存在していたなんてね~。

 最後の蹴りなんて、束さんもびっくりしたよ~?」

 

耳に残る甘ったるい声が聞こえると、私の後ろから今まで姿を消していた少女が現れた。

少女の右手には、4本もの針が、月光を反射して光っていた。

 

「でも、気を許したのが運のつき~。束さん特製の麻酔針、威力は身を持って実証済み。

 しばらくは動けないから、そこで無様に地面を這っててね~」

 

そう言うと束という少女は、倒れた織斑姉を抱き起し、

倒れた私を一瞥して、我が家に向かって行く。

 

おのれ!不意打ちとは卑怯なり!あと私の家に土足で入らないよね!?

土汚れって綺麗にするの大変なんだよ!? 

 

そんな私の思いを知ってか知らずか、二人は私を尻目に歩き出す。

もはや興味もないという風に。

 

このままでは家が土足で汚れる上に、一夏少年との約束を破ってしまう。

両方とも、それは私にとって我慢ならない。

ならば私も『奥の手』を使わせてもらうからね!

私は神様から貰った特典を、一気に、全力で、稼働させる!

 

私は、麻酔針が刺さったまま音もなく立ち上がり、背を向けた二人に一気に走って突進。

私が動けたことに驚いたのか、少女束は目を見開いて動きを止める。

その数秒が唯一の避けられた時間を失くし、私に弾き飛ばされる少女束の右手から針を奪い、

地面に落ちた彼女に、彼女ご自慢の針を私がされたように両手足に突き刺す。

 

「な、なんで・・・?」

「大人って恐いのよ?お勉強になったわね」

 

今起こった事に理解が及ばず、ただただ混乱している少女に、私はそう呟いた。

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