IS-理外の観察者   作:SINSOU

8 / 19
8話

「みーいーちゃーん!遊びに来たよぉー!」

 

「帰れ」

 

私は戸を開け、ニコニコ顔で玄関に立っている少女を一瞥すると、

一言告げて戸を閉め「ちょ、ちょっと、閉めないでよ!」られなかった。

兎耳を着けた存在が、素早く戸の間に靴を挿みやがったのだ。

なので、すかさず靴を踏みつける。

以前はまさか踏まれるなんて思わなかったようで、痛がった隙に戸を閉めた。

だが、まるで鉄板でも仕込んでいるかのように、靴はびくともしない。

 

「むっふっふー、前回のような失敗をしない束さんなのですよ。

 無防備な靴を踏みつけられないように、安全靴を作ってみ・・・へぶぅ!?」

 

なので、戸を開け、呆けた隙に束本体に蹴りをかます。

とりあえず、脛を蹴ってみた。

予想外の行動か、兎耳は蹴られた痛みで悶絶したので、

「次からは足にプロテクターでもつけて来なさい」と言って、

ぴくぴくする束を抱きかかえて家へと上がらせた。

 

 

「酷いよ、みーちゃん!

 いくら天才の束さんでも、身体の構造は人間なんだから、脛を蹴られたら痛いんだよ!?」

 

「なら約束も連絡も全くなく、突然家に来るのは止めなさい。

 これでも私は忙しい身なんだよ」

 

プンプン!と頭から湯気を出しながら怒る束の言葉を、私は読書をしながら聞き流す。

 

「忙しいって、そんな訳ないじゃん!

 束さんは、みーちゃんのことは、ぜーんぶ知ってるんだよ!?」

 

「ほう?どれくらい知っているんだ?」

 

「むっふっふー、とりあえず戸籍や家族関係といった書類関連、

 学業やこれまでやってきた仕事についてもそうだし、

 いっちーや箒ちゃんとの一週間の予定もぜーんぶ知ってるんだよ!」

 

「ふむ、それは凄い。ちなみに、先週の日曜日、私は何をしていたんだい?」

 

「午前中に遊びに来た、いっくんと買い物に出かけて、お昼に一緒にパスタを食べたんだよね。

 多めに作って、ちーちゃんの夕食に食わせてやれって言ってたよね。

 その後は、箒ちゃんやその他のために、いっくんと一緒におはぎを作ってた。

 里芋を混ぜたおはぎなんて束さん、知らなかったよ!

 午後からは、遊びに来た箒ちゃんたちに、かくれんぼや鬼ごっこに駆り出されてた」

 

「おお、その通りだ。それで、どうしてお前がそれを知っているんだい、束大先生?」

 

「それはもちろん、市役所に忍び込んでハッキングしたり、

 この家にこっそりとカメラやマイクを置いた・・・り・・・」

 

ふと、兎耳の顔がどんどんと蒼白になっていく。

 

「おやおや、どうしたんだい束大先生?今の続きを聞かせてくれないか?

 一体、私の家に何をしたのかを・・・?」

 

私が本から顔を上げ、そのまま彼女の方へ向けると、兎耳が「ひぅ!?」という可愛い声を出した。

あらあら、可愛い声を出すじゃぁないか。

 

「私は話を寸止めされるのが嫌いなんだ。ほら、続きを聞かせてくれないか?」

 

私は本をテーブルの上に置き、ゆっくりと兎耳へと近づく。

私の顔が歪むのを見た兎耳は、もはや震えだしている。

織斑姉のようなアイアンクローは出来ないが、私にだって必殺技くらいはあるのだよ。

私は右手を前に付きだし、わざとゆっくりに兎耳へと近づける。

そして中指と親指をくっ付け、そう、凸ピンがなぁ!

 

「で、言うことがあるんじゃないかな?」

 

「ごめんなさーい!」

 

束が謝ったことで、私は指を引っ込めて溜息を吐く。

 

「今度同じことをやったら、織斑姉とコンボだからな」

 

私の言葉に、束は本当に恐怖したと思う。これで少しは懲りてほしいよ。

 

 

 

 

 

 

「それで、今日は何しに来たんだ?」

 

弄っておいて言うのもなんだが、私は束に尋ねる。

取りあえず、通販で取り寄せた茶請け用の醤油せんべいを渡す。

 

「そうだったよ!(バリボリ)

 束さんとしたこが(バリボリ)すっかり(バリボリ)忘れてたよ(バリボリ)

 みーちゃん(バリボリ)実は(バリボリ)みーちゃんに(バリボリ)プレゼントがあるんだ!」

 

「とあえず、喋るか食べるかどっちかにしようか?

 食べてる時に喋るのは私に失礼だし、聞き取りづらい。そして畳が汚れる」

 

束は、そのまませんべいを一袋食べ終えた後、私に尋ねきた。

 

「ねぇ、みーちゃん。この世界についてどう思ってる?」

 

「急に哲学家にでもなったのか?

 そうだな、生きるのは大変だが、かといって嘆かない程度には絶望もしない。

 私がこの家で平穏に生きれるなら、まだまだ救いはあるんじゃないかね。

 ま、今では忙しすぎて楽しくもあるんだがな」

 

「そう、みーちゃんらしいね」

 

私の言葉に、束は苦笑しながら、何かを私に差し出した。

丸く光り輝くもので、一見すればビー玉かガラス玉、トンボ玉のように見える。

だが、私は騙されない。

こいつが何か渡す時は、絶対に何か仕込んでいることが多い。

 

万能包丁を持ってきた際は、まな板ごと斬れるほどの切れ味を備え、

眼鏡を持ってきた際は、赤外線や紫外線、果てに映像を傍受する無駄な機能を搭載し、

ドライヤーに至っては、鉄板で目玉焼きが焼けるほどの出力であった。

取りあえず、調整し直して使わせて貰っているが。

 

「ほう?これは変わったプレゼントだな。

 突然魔法のステッキになるのか?それとも銀河天使戦闘機の起動キーか?

 暗器が貯蔵庫されているのか、タイムマシンに必要な機械か、

 もしかしたら、全身装甲のパワースーツにでもなるのかね?」

 

私が適当に茶化し、束の反応を窺うと、束は面食らったような顔をしていた。

 

「おい、待て。今のは冗談だぞ?

 本当に冗談だからな?いや、本当に勘弁してよ?

 今話したことは全てアニメーション、お伽話だからね?

 まさかそんなことはないと思うし、思いたいのだが、え、本当に?」

 

私は願った。

今言ったことはまさにアニメーションのお話であり、現実ではない。

確かにこの世界はライトノベルの世界ではあるが、

それはここでは違う場所で起こる事であって、私とは無関係のはずだ。

だから、お願いだから平穏を、私に平穏をください、神様。

 

「うん、それ、私が作った機械のコア。

 インフィニットストラトスって名づけるつもりなの」

 

束、私はたった今、世界に絶望したよ

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。