IS-理外の観察者   作:SINSOU

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9話

「みやこさん、どうしたの?びょうきなの?おなかいたいの?」

 

「みやこさん、かぜひいたの?」

 

「だいじょうぶ?」

 

「頼む、そっとしておいてくれ・・・」

 

ベッドで毛布をかぶって蹲っている私を、一夏や他の子供たちが心配そうに見ている。

止めてくれ、その純真な目で見ないでくれ。心に刺さるから勘弁してください。

そう思いながらも、私は頻りに、

「大丈夫だから、心配しなくても大丈夫だからね」と答える。

 

別にお腹が痛いわけではない。

そもそも私の場合、

『重大な肉体の損傷や病気にかかるといったことは、まずない』のだ。

それこそ本気を出せば、怪我をしても直ぐに傷口を塞ぎ、

病原菌をも寄せ付けなくすることも可能かもしれない。

もしかすると、モンスター映画や、ホラーゲーム真っ青の、超再生ができるかもしれない。

まぁ、試そうとも思わないし、したくもないが。

 

そんな私が、どうして体調を崩しているかというと、

原因は私自身がよく解っている。

『肉体面』ではない、ようは『精神面』で疲れてしまったのだ。

 

諸悪の根源は先日、卯耳束に渡されたプレゼントだ。

『インフィニットストラトス』と名付けられたものを見せられたのだ。

その名と役割を知っていた私は、あまりの衝撃的な話を聞いて精神的にまいって、

気が付けばベッドで横になっていた。

やはり精神的な疲れは、肉体と違って瞬時に直しようがないみたいだ。

そう言えば、同じようなことを、昔にもやってしまった気がする。

あれはたしか、学生時代だったか・・・。

 

私自身、半ば忘れかけていたが、この世界は、元々が本を題材にしたものだ。

そして、元になった本の名が、『インフィニットストラトス』

まさに、束のプレゼントの名前そのままなのだ。

そのことで私は、卯耳少女束が原作における重要人物であると、嫌でも気付かされたのだ。

 

もともと私は、神様のせいで前世で死に、二度目の人生として、

神様が用意した箱庭世界に新たな生を受けた。

私自身、転生前に大まかな内容を聞かされたが、私は原作に何ら興味はなかった。

私の望みは、原作に関わることなく、生前に出来なかったことに取り組み、

ゆっくりと生きていくことだった。

そのために私は、こうしたのんびりした町で、ひっそりとした家に引っ越してきたというのだ。

 

それなのに、出会った住民の一人が、まさかの原作関係者と気付ける訳がない。

しかも、何やら気に入られてしまったのか、何度も遊びに来ているではないか。

その上、原作タイトルまんまなものを、『プレゼント』として貰ってしまった。

これはどう見ても、『重要人物』や『友人関係者』という既成事実となっている。

まぁ私個人としては、『篠ノ乃束』は、一緒にいて退屈しない人物と評価しているが。

 

だが、それとこれとは別問題だ。

このままでは、私のゆっくりライフが木端微塵になってしまう可能性がある。

しかし!だがしかし!だからといって引っ越す気はない。

私はこの町もこの家も気に入ってしまったし、なにより、

引っ越してしまったらなんとなく『負けた』ような、そんな敗北感がある。

 

そうだ、私は私の意志でここに来たんだ。

たとえ元がライトノベルだろうが本だろうが、今この瞬間、私は生きているのだ。

たかが『原作』の分際で、私の人生を阻み、それに屈するなど、はっきり言って悔しい。

 

ええ悔しい。悔しいったら悔しい。

ならばどうすべきか?

布団に蹲りながらも、悶々と考える中、私は思い至った。

 

そうだ、好きに生きてしまおう。

 

原作?物語?そんなことは、私は最初から知らない。

そもそも、『インフィニットストラトス』という内容自体、私は大まかにしか知らないのだ。

何か、主人公がモテモテハーレムになるんじゃなかったっけ?

ならば私には関係ないな!私のような二十代に、惚れる理由など無いのだから!

学生は学生同士で、各々の青春を謳歌していればいいのだ!

 

そうだ、物語がどう動こうが、私には知ったことではない。

 

そう、『知ったことではない』のだ。

 

私のしたいことは何だ? 『のんびりと生きることだ!』

私の望みは何だ?    『のんびりと生きることだ!』

私の人生は何だ?    『のんびりと生きることだ!』

 

そうだ!『のんびりと生きること』それが私の目的なのだ。

何のことはない、後はそれに向けて行動すればいい。

うむ、目的が出来たことで、私の気分が晴れてきたぞ。

人間、『病は気から』と言うのは本当だね。

気が滅入っていたら、物事も良くならないし、悪いことに繋がってしまう。

皆さんも、身体には気をつけてくださいね。

 

ならば、こうしてベッドに蹲っている暇はない。

だが、今日はゆっくりと惰眠を貪ろうかな。最近、何かと忙しかったし。

 

ただ、

 

「みやこさん、だいじょうぶ?おなかいたくない?」

 

「いえからえいようのつくもの、もってきたよ」

 

「みやこさん、しんじゃやだー」

 

「ふぇーん」

 

私にために、必死に頑張っている子供たちを見ていると、少し罪悪感を覚えるが、

それはそれ、これはこれ。

 

まぁ、少ししたらベッドから起き上がりましょうか。

あんまり心配かけさせるのも、駄目だよね。

でも今は、少し休んでも良いよね?

そう思い、私は束の間の休息を貪ろうとし・・・

 

「大丈夫だよ箒ちゃん!

 この、束さん特製、病気なんてお茶の子さいさい栄養ドリンク、『束汁』を飲めば、

 風邪だろうがなんだろうが、直ぐに治っちゃ「それは貴女が飲みなさい!」

 

いつの間に侵入してきたのか、何か怪しいラベルの付いた瓶を兎から瓶を奪うと、

そのまま彼女の口に突っ込んで流し込んだ。

すると、兎の顔が、紫や青や赤や緑とカラフルな色に変わる。

ワー、キレイダナー。いったい何が入っていたのかなー?

そして、口から紫の煙を出した後、そのまま動かなくなった。

 

『私の睡眠を妨げる者には私の怒りに触れるべし』

 

気を失った兎を見下しながら、私は呪詛を唱える。

『貴様は私を怒らせた』

 

ちなみに、その光景を見てしまった子供たちは、1D6のSAN値減少判定を受けました。

一時的狂気に陥る子はいなかったので、問題はありません。

 

その後、気絶から立ち直った束は、

肌がつやつやで、血色も良く、そして気力に満ち溢れていた。

 

なお「ぽんぽこ狸さん」だの「ガッテンオー!」だの、「マーベラス!」だの言いだすわ、

髪が金髪ロングになるわ、ツインテールになるわと、恐ろしい変異が起こったとか、

そんな光景を見てはいない。見ていないったら見ていない。

ところで、『カズくん』って誰だったのだろうか・・・?

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