Fate/Grand Order 二人目の生存者(仮称)   作:biwanosin

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さて、本格的にどう動いてもらおう。そんな苦悩の中の十話目です。


第十話

「・・・大丈夫です、主殿。追ってくる様子はありません」

「そっか・・・ふぅ、助かったー」

 

一瞬で豹変した辺りとか何のためらいもない自然破壊なんかからバーサーカーなんじゃないかと疑い始めたころ。太夫黒が安定して優秀だったおかげなのか逃げ切れたらしい。すぐに逃げられるようにと俺は乗ったままだったのだがどうにか自力で降りて、そのまま座り込んだ。同時に芝姉も指輪から人間体に戻る。

 

「いやー、うん。十字架とかなんだか聖女っぽかったのにあれだったねー」

「あれが聖女だとしたら俺、結構色々と困るんだけど・・・ほら、認識的なあれが」

「宗教に関わるものは人格者であるか狂人であるかでしょうし、そう言うものかもしれませんよ」

 

牛若丸の宗教への評価が辛口である。あれ、なんか宗教に関わる逸話とかあったっけ?

 

「けど、できるなら早く合流したいよねー。梓ちゃんたちでも味方側についてくれるサーヴァントでもいいんだけど」

「まだこの時代で何が起こってるのかすら分からないからなぁ・・・」

「情報収集をする必要がありますね。・・・私たちでは少々難しそうですが」

「・・・戦時中に明らかな異国人がいる、ってのはやっぱりマズいよね」

 

この時代の人に何か明らかな異常事態がなかったかを聞くのがベスト。とはいえそう言うわけにもいかない。どうしたもんかなぁと仰向けに寝転がると、空になんかあった。

 

「・・・ねえ、二人とも。召喚されてもらった知識の中にあれ、ない?」

「ん?・・・やー、フランスであんな神秘現象はないんじゃないかな」

「私の知識の中にもありませんね。生前含めても初の体験です」

 

ふむ・・・空によくわからない輪っかがある。正体不明。けどどう考えても特異点に関連ありそう、と。うむ、分からん。

 

「分からないものはこのまま放置で行こう」

「あ、そんなノリでいいんだ?」

「たぶん梓さんたちも見つけてロマン辺りが解析してるはずだしね。そもそも素人にそう言う面で頼るなってんだ」

 

というわけで、話を戻す。まずやるべきは情報収集か誰かしら味方との合流。どっちも難易度高いんだけど、どうしたもんかなぁ・・・あ、なんか一人で出歩いてる兵隊さんっぽい人がいる。隠れるべきかなー、とか思ってたら、

 

「よし、ひとまず彼を化かしといたよ。あと少しで気を失うと思う」

「何やってんの芝姉!?」

 

なんか、ウチのキャスターさんがやってるんですけど!?

 

「ん?情報収集しないといけないんでしょ?」

「いや、そうだけど・・・拷問とかヤダよ?俺。後味悪いし」

「そこで気にするの、道徳的な方じゃないんだね・・・」

 

そうしないと生き残れそうになければ気にしませんとも。自分の命大切。でもやらずに済むならやりたくないです。グロとか見たくないです。

 

「まあでも、そう言うベクトルじゃないよ。そもそも一人から十分な情報がもらえる気もしないし、やりたくないし」

「そうなのですか?すぐにでも始めようと準備していたのですが」

 

やだこの子、怖い。

 

「てっきり情報を吐かせるだけ吐かせてから首を落とすものだと」

「首落とす必要はないからねー。それにそもそも拷問でもないからねー。だからその刀を納めようか、よっちゃん」

 

芝姉はそう牛若丸に言いながら気を失った兵隊さんを運んできて、草陰に隠す。これだけの扱いをされて目を覚まさない辺り、ガッツリ化かしたんだろう。

 

「さて、と。じゃあ二人はしばらくここで待っててね」

「どこかへ行くのですか?」

「そう、行ってくるのです。情報収集と・・・あと食料も調達出来そうだったら調達してくるから、しばし待たれよ」

 

と、そう言いながら芝姉が取り出したのは召喚時にも着ていたあせぎ色の和服。なんでかここに来るのに現代の服着てたから何かと思ってたんだけど・・・

 

「それじゃ、使わなくてもいけるんだけど念には念を入れて、ついでにお披露目も兼ねまして・・・変幻自在の皮衣(ばけのかわごろも)

 

と、和服を羽織るようにしながら名前っぽいものを唱える。すると、そこには芝姉の姿はなく・・・さっき草陰に隠した兵隊さんがいた。

 

「うん、よし!初めて使う宝具だけどちゃんと機能してるなー」

「・・・あ、あの着物宝具だったんだ」

「うん、そだよー。正直こうして変化するだけならスキルでいけるんだけど、まあお披露目と練習を兼ねてってことで一つ」

 

・・・じゃあなんでその宝具があるの?という質問はやっちゃいけないんだろう。なんとなく、そう感じた。

 

「それじゃ、ちょっとあの砦っぽいところまでいってくるね~」

 

とか考えてる間になんかすっごく気軽な感じで向かっていった。や、大丈夫なのかな、あれ・・・

 

「まあ、私たちに何かできるわけではありませんし。何かあれば念話で呼ぶでしょうから、ここで待ちましょう」

「・・・それしかない、か。なんで葉っぱを何枚か毟っていったのかとか気になるところなんだけど、任せて待つとしますか」

 

ちょっと心配だなー。

 

 

 

 ▽▲▽▲

 

 

 

「たっだいまー。いやー、大量大量!」

「マジで大量だな」

「これで兵糧の心配はありませんね」

 

なんか、芝姉が袋一杯の食料を持って帰ってきた。戦時中だしこんな余裕があったとは思えないんだけど、大丈夫なのかな砦の中の人たち?

 

「あ、もちろんちゃんと情報も集めてきたよ」

「それは、あの姿で色んな人ん質問をして?」

「というよりは、あの姿で入って、一般市民っぽい感じの人になってから色々と話を聞いて、かな。あ、食料についてはその後偉そうな人に化けて、葉っぱをお金に変えて買ってきました」

 

あー、それで葉っぱを。有名だよね、狸が葉っぱでお買い物、って。

 

「まああの砦の中の食糧問題とか私が化けたお偉いさんの立場とか大変なことになるかもだけど、それはあきらめてもらう方向で」

「・・・なんかもう、すいません」

 

俺はつい、砦の方に手を合わせてしまった。でも返せません、お腹すいてるので。

 

「じゃあこれを調理しつつ食べつつ、集めてきた情報の公開といきましょうか」

 

と言いながら芝姉は化かしてあった兵隊さんをさらに化かしたのか、草陰からフラッと立ち上がってどこかへ歩いていった。あの人にも迷惑かけたっぽいけど、気にするのをやめよう。

あ、火打石で火起こしてる。これも砦の中から・・・や、考えるのはやめるって決めたんだ。気にしない気にしない。

 

「さて、それじゃあ何から話そうかな・・・」

 

 

 

 ▽▲▽▲

 

 

 

「ふむ、シャルル七世は殺されてて、竜が出てきてて、しかもそれを蘇って魔女になったジャンヌ・ダルクがやった、と」

「あの中で話を聞いた限りではそう言うことみたいだね」

「なんともまあ、大変な状況になっているのですね」

 

大変どころじゃない気がする。それにしても、ジャンヌ・ダルク、か・・・

 

「イメージではもっとこう、『人は恨みません』みたいな感じの怖くすらある聖女さん、なんだけど」

「でも冷静に考えてみれば、せっかく頑張ったのに火あぶりにされて殺されちゃったら、恨んでも当然ではあるよね」

「私は兄上のことを恨んでいませんけどね!」

 

牛若丸みたいな例もあるんだろうけど、やっぱり世間一般では恨むものだと思う。正直、蘇って何をするかって言われたら復讐ってのがしっくりきているのも確かなのだ。

 

「この時代の状況は何となく分かった。他には何かなかったの?」

「んー・・・あ、少し前にも竜の襲撃があったらしいよ?」

「あったんだ」

「うん。で、それを大きな盾を持った女の子が撃退して、それからジャンヌ・ダルクと一緒にいなくなった、って」

「それマシュさんじゃん」

 

さらっとかなり重要な情報が出てきた件について。というか、ジャンヌ・ダルクと一緒に消えたってのは大丈夫なんだろうか・・・

 

「えっと、それどこに行ったのかとか、分かる?」

「ドラゴンが出てきて、しかもそのタイミングでジャンヌ・ダルクまで出てきた。この時代の者たちがその状況でまだその場に残ったとは思えませんが・・・」

「よっちゃん正解。どこに行くかを見る前に砦に逃げ込んだっぽくて、どこに行ったのかって言う正確な情報はないよ」

 

となると、確実に合流するのは難しそうだなぁ・・・

 

「けど、こことは反対側の入り口付近で起こった出来事らしいから、そっち側の森の中に入れば合流できるかも。ほら、よっちゃんならサーヴァントの気配を察知できるでしょ?」

「ある程度近づけば可能です。・・・これはサーヴァント共通の力だと思うのですが」

「こんな三流、四流サーヴァントにサーヴァントらしいことを期待されてもねー。私にできるのはこういう裏仕事がほとんどだよ」

「それはそれでかなり助かるけどね。相手に警戒されずに近づいて情報収集できるんなら、こういう状況ではここまで助かることもないし」

「戦闘は私が行えますからね!」

 

こうして考えると、いい感じに役割分担できていると思う。俺の役割がないことに目をつむりさえすれば、だけど。

 

「よし、それじゃあ・・・もう十分に食べたし、急いで向こう側に向かいますか。早く合流したいし」

「そうですね。それに、向こうと合流したというジャンヌ・ダルクのことも気になります」

「そのジャンヌさんも竜と戦ってたらしい、っていう証言もあったからなおさら、だなー」

「では、そう言う感じで・・・」

 

と、砂をかけて火を消してから立ち上がる。ついさっきサーヴァントから逃げたときと同じように芝姉は指輪に化けて、俺は牛若丸の後ろから太夫黒に乗る。で、余った食料は芝姉が妖術なのか何なのかで小さな箱に姿を変えたので(どうなってるのかとか全くわからないけど)ポケットに入れて。

 

「では、極力この魔物っぽいのとの戦闘は避ける方向で、一つ!」

「了解しました、主殿!」

 

肉の焼ける匂いにつられたのか若干集まってきた魔物っぽいのを避けつつ逃げつつ、急ぎましょう!

 




芝姉は戦闘向けのサーヴァントではありませんが、こういった面ではかなり役立ちます。なお、調理担当も芝姉。主人公仕事して!

そして、本編にて登場した芝姉の一つ目の宝具。変幻自在の皮衣(ばけのかわごろも)についてですが、まだほとんど能力出てきていない状況なので、宝具のステータス(でいいのかな?)についてはまだ載せません。が、まあ一つだけちゃんと明記しておかないとならないこともあるかなー、と思うのでそれだけ載せておきます。

知っている方はいくらかいらっしゃるかもしれませんが、化けの皮衣は妖怪伝承の一つです。簡単にその説明を(自分の記憶で、ですが)書いてみると、

千年とかそれくらい長いこと生きた雌の狐がなる怪異。いかなるものにも化けられる衣となる。

というものです。狐が持ってるパターンもありますね。なんにせよ、狐関連の怪異です。当然といえば当然ですが、狸であるこのお方でありますし、伝承の中に化けの皮衣を持っているというものはありません。
ではなぜ持っているのか。それには2つほど理由が・・・というか設定があります。ギャグい設定と真面目な設定と。

で、ギャグい設定の方なのですが、化けの皮衣について伝承の中に『美女が持っている』、というものがありまして・・・で、芝姉が『私だって美女だし持っててもいいじゃん!押し付けたんだから少しは便利グッズよこせ!』とダダをこねてゲットしたとか言うものです。正直この設定だけだったらfate警察に見つかった瞬間にアウトでしょうねハイ分かってます。でも仕方なかったんだ、思いついてしまったんだ・・・


さて、そんなギャグ設定はどっか本棚のすみにでも突っ込んで、ですね。真面目な設定の方にいきましょう。ちゃんとありますとも、ええ。
で、ですね。『化けの皮を剥がす』、という言葉には皆さん聞き覚えがあると思います。剥がす、いがいにも剥がれたになったりもしますね。これの大元としては狸やら狐やらが化けていたが正体がばれてしまった、とかそういう時に使われたものです。では、なぜ皮なのか。そこに化けの皮衣が関わってきます。・・・まあ、名前の通り『皮』ですからね、これ。『皮の衣』ですから。つまり、これを剥がされたことによって正体がばれてしまった、という事柄が語源となるわけでございます。
で、そんな伝承というか語源というかから、化けることのできる動物妖怪全体として化けの皮衣が関わってくることとなるわけです。・・・という解釈の結果、芝姉は持ってきました。ぶっちゃけ姿を変えるだけならスキルでいいんでいらないんですけどね。じゃあなんで持たせたんだよ!?という質問については・・・しばらく待っていてください、出しますから。と言うしかありません次第でございまして。

以上、『なんで狸なのに化けの皮衣持ってるの?』に対する二つの言い訳でございました。一個目の方はギャグ設定だからね!ギャグだからね!ギャグなんだよ!?大切なことだから三回言いました!
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