Fate/Grand Order 二人目の生存者(仮称)   作:biwanosin

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いまだにいい解決策は思いついていません。


第十二話

「まずはこの森を抜けて、オルレアンの方へと向かいましょう」

 

これが、目を覚ました俺が最初に聞いた言葉である。敵が占拠した場所に真っ先に向かうというその方針を聞いて、一瞬で目が覚めた。と言うか冷や汗までかいている。

 

「でもさ、ジャンヌさん。黒ジャンヌが占拠してるところに攻め込むのって危なくない?」

「さすがに直接攻め込むのは危ないでしょう。ですが、周辺の街や砦であれば情報が得られるかもしれませんから」

 

そして、この会話を聞いてほっとした。うん、その方針ならまだ大丈夫。ただでさえ気づかれてるかもしれないのに近づくってのは、まあ仕方ない。このまま何もしないで倒されるのを待つのは勘弁だし。だから、そこの恐怖は飲みこむとしよう。

……さて、と。

 

「その話し合い、俺を参加させずに行ったのにはどのような意味が?」

「え、だって薫くん起きてたとしても何も言わないか文句を言うかでしょ?」

「失礼かとは思いますが、薫さんはひとまず逃げの一手を考えるだろう、と」

「今回、それでは手の打ちようがありませんから」

 

上から梓さん、マシュさん、ジャンヌさんでお届けしました。因みに、牛若丸は俺の腕を抱き枕にしていまだに寝ています。寝ずの番はどうした。

 

「あ、大丈夫だよ。ちゃんと薫ちゃん陣営として参加してたから」

「芝姉が参加してても何も口出しできないでしょ……」

「だって巻き込まれちゃった一般人だもーん」

 

サラッと開き直られた。どうしたもんかなこれ、と思いつつも腕を引き抜くと、それだけで牛若丸は目を開いた。寝起きのはずなのに目つきは鋭いし、刀に手が伸び欠けているのは……あ、俺が浚われた可能性かな?

 

「あ、おはようございます、主殿」

「うん、おはようライダー。とりあえずオルレアンの方に向かうって」

「敵将の首を取りに行くのですね!」

「まずは情報収集から、ね」

 

安定のぶっ飛び具合を見せてくれてるんだけど、うん。もう慣れてきたよ。

そんな呑気なことを考えていると三人が立ち上がったので、俺たちも立ち上がる。そして、もう根っから休むことが意識にあるのか、気が付けば芝姉の指輪を付けて太夫黒の上にいた。

 

「……や、薫くん。歩こうよ」

「ゴメン、情けない話だけど体力、身体能力に自信なし」

「……絶対、いざとなったら逃げる算段つけてるよね」

「ヤー、ソレナラライダーニモ乗ッテモラッテルッテ」

 

牛若丸には、馬から降りて歩いてもらっている。敵が現れたら戦ってもらうように、と言う点が最重要なんだけど、太夫黒を乗りこなせるのは牛若丸だし、そもそも芝姉だけ連れて逃げたところで敵サーヴァントに出会ったらそろって負ける。んぎ得るつもりは無いって思ってほしかったところだなぁ……

 

……なお、牛若丸の敏捷はA+だ。

 

 

 

 ♢

 

 

 

と、あれから俺と芝姉だけ太夫黒の上に乗ってしばらく揺られていると、あと少しでラ・シャリテと言う場所につくところまできた。ラ・シャリテがどこにあるのかは知らないけど。

 

「サーヴァントの視力であれば見えるかもしれませんが、あそこがラ・シャリテです」

「確か予定では、あそこで情報収集するんだよね?」

「はい。もちろん、ここでオルレアンの情報が得られなければさらに近づかなければなりませんが……そうならないように済ませたいですね」

「と、言うと?」

 

これは芝姉からの質問。指輪から音が出るって、結構奇妙な現象だよなぁ。

 

「今我々の戦力としては、戦闘できるサーヴァントが私を入れて三人。この戦力で彼らに打ち勝てるのかどうか、それが分かるまでは可能な限り近づきたくはありませんので」

「……つまり、確実に勝てるまでにならなければ攻め込まない?」

「いえ、これなら勝てるだろうな、と思えるまでは、です」

 

え、それ勝てない可能性そこそこ残ってるじゃん。……や、宝具ってのがどこまで来るか分からない以上、そもそも無理なのか。えー……はぁ。

 

「薫くん、肝心なところでビビって逃げ出さないでよ?」

「さすがにそれはやらないって……これでも一応、背負わされてるものの重さは分かってるつもりだよ?」

「……あ、分かってたんだ」

 

梓さん、さすがにそれは失礼じゃありませんかね。そう思われても仕方ないかもだけどさ!

 

「時には薫さんほどの慎重さが必要となることもありますし、今回は比較的そちらですけどね」

「あ、そうなの?」

「はい。正直、狂人となった私が何をするのか……それは、容易に想像できますから」

 

狂人怖い。俺でも何となく想像できちゃったし。

 

『あ、ちょっと待って』

「どうしたの、ロマン」

『ラ・シャリテからサーヴァント反応だ。どうする、君たちの目的地だけど』

 

反射的に太夫黒に方向転換の指示を出そうとして、直前で梓さんに視線を向けられた。笑顔って怖いですね、ハイ。

 

「ロマン、ちょっと詳しく調べてみれない?」

『うん、今やって……あれ、遠ざかって……ロスト!そっちでは何か起こっていないかい!?』

 

もうロマンの方では何もわからないそうなので、試しに肉眼で見てみる。進みながら話していたためもう既にそのラ・シャリテとやらは肉眼でも見えるんだけど……

 

「……あれ、燃えてない?」

『え!?』

 

馬に乗っている、ということから他の人より遠くまで見えていたおかげか、始めに気付いたのは俺だったようだ。フォウがこっちを睨んでる気がしないでもないけど、動物だしそれは気のせいだよね、うん。

 

「い、急ぎましょう!」

 

と、唐突にジャンヌさんが走り出した。一人で行かせるわけにはいかないし、しかし人間の脚力で追ったところで追いつけるものなのか……

 

「……よし。ライダー、追って」

「よろしいのですか、主殿?」

「正直まだジャンヌさん信用できないし、一人で行かせるわけにはいかない。何かあったら即念話、って感じでお願いし」

「承知しました」

 

そう言うと、さすがの敏捷で駆けていく牛若丸。そのままにはしておけないと考えたのか梓さんもマシュさんを先行させて。

 

「さ、薫くん。私を乗せてくれたまえ」

「……若干急ぐから、ちゃんと掴まってよ?」

「さすがにこの状況だしね。羞恥は感じませんって」

 

本人がそう言っているので乗ってもらい、たまにいざってときに逃げる練習として太夫黒に乗っていた感覚を思い出し、

 

「さ、任せた!」

「馬に丸投げした!?」

 

だって馬を乗りこなす技術とか身に着けられないし、だったら俺が学ぶのはバランスのとり方なわけで。というか、太夫黒に任せた方が早いし。

そんな言い訳を自分の中でしながら前を走る三人に追いついた。で、

 

「……完全に燃え尽きてるね」

「燃え尽きてるねー。因みにドクター、生体反応とかって」

『……ダメだ。その街に命と呼べるものは残っていない』

 

ちょっと待って、その言い方だと人間だけじゃなくて全部死んじゃってるじゃん。どれだけしっかり焼き払っていったのさ。とか考えながらそれでも周りを見回すと、動いている影が……

 

「あ、そちらの方!」

「ジャンヌさん待って!」

 

と、叫んだのは梓さん。果たしてそれが聞こえていたのか否かはわからないが、ジャンヌさんは手に持っていた旗でその人影を……明らかなゾンビを薙ぎ払った。それが皮切りになったのか、次から次へとゾンビがわいてきて……

 

「ライダー、任せた!」

「マシュもお願い!」

「「了解!」」

 

慌てて自身のサーヴァントに指示を出す。俺達にしてみれば脅威になる相手なんだけど……牛若丸はバッタバッタと、マシュさんもまだ戦いなれてはいなさそうだが盾で殴り飛ばしている。と、ジャンヌさんも旗を武器にして参加してきた。

…………

 

「ねえ、旗って武器だったっけ?」

「うーん……実はさ、同じ質問を昨日してるんだよね、ジャンヌさんに」

「ほうほう。で、その結果は?」

「『旗の先に槍が付いている。つまり、これで戦えという啓示です!』だって」

「それでいいのか、神様よ……」

 

本人がいいんなら、いいのかもしれない。

なんにせよこれ以上口出し出来る案件でもないし、戦ってくれるならありがたい限りなので気にしないことにする。

 

「……ねえ、薫くん。グロいのって、いける?」

「……正直、まだ無理だとはおもうんだけど、何?」

「やー、被害者がもう一人くらい欲しいなぁ、って……あちらをご覧ください」

 

そう言って指さす方を、梓さんが顔を向けているのとは逆側を見ると、そこには人の死体を喰ってる竜が……

 

「……ゴメン、ちょっと吐いて来てもいい?」

「私も吐いてきたいんだけど、今はマズくない?」

 

ごもっともである。なので、

 

「ライダー!あれ、早く何とかして!ASAP!」

「承知!」

 

俺なりに必死なのが伝わったのか、牛若丸は俺達と竜達との間に入って、腰の日本刀――この間“薄緑”だって教えてくれた――に手をかけて、

 

「薄緑・天刃縮歩!」

 

こちらが見失うような、おそらく竜達も見失っていたのではないかと思われる動きの後に、光が飛んでいって、全部の首が落ちた。同じ高さで。なんとなく、でっかい刃をブッ飛ばしたような感じに見える。

アーサー王の時、剣からビームが出て驚いたんだけどさ。牛若丸も出せたのね、剣からビーム。そしてそんな奥の手っぽいカッコいいやつは、できればジャンヌさんが味方だって確信できるまでは隠しておいてほしかったなぁ、とかマスター思ったり。頼朝さんもこう言うところに困ってたのかな?

 

「やりました、主殿!」

「……うん、よくやった!」

 

少し悩んで、サムズアップしてやる。少し首を傾げたが、牛若丸からも同じポーズが返ってきた。ああして首を落として満面の笑みを返してこられるとちょっと困ったものなんだけど、うん……

 

「大変だねぇ、薫くん」

「分かりますか、梓さん」

「一般人同士、分かることだとは思うよ。じゃ、私はあっちと話してくるから」

 

分かってるかどうかとここで手伝ってくれるかどうかは別ってことですね。分かります。俺だって同じ立場だったら同じことするもの。なんだか向うでも重そうな話をしているからどっちがいいのかはわからないんだけど。

あ、でも唐突な驚きのおかげで吐き気が収まった。梓さんは結局物陰で吐いてるっぽいし、これはちょっと助かったかも。

 

「主殿!牛若は役に立ったでしょうか!」

「うん、すっごく助かった。でも、できれば真名のヒントはまだ隠しておこうね」

「かしこまりました!」

 

満面の笑みで言われても大丈夫なのかと心配になるのだけれど、考えても無駄だから指輪をしていない方の手で頭を撫でる。ふぅ、ちょっと落ち着くなぁ……

 

『あ、ちょっと待って!さっきそこを去ったサーヴァントが反転した!君たちの存在を察知したらしい!』

「……ライダー、ここからそのサーヴァントのこと、察知できる?」

「…………すいません、集中しても無理ですね」

 

あ、これ相手側に探知機能力あるの確定しちゃったやつじゃん。完全なものかどうかは分からないけど、少なくともこっちのものよりは優秀な。

と、呆然としている人間組+マシュさん+芝姉だが、純英霊二人はそうでもなかったようで。

 

「数は!?」

『数は……うげっ、冗談だろ!?五騎もいる!』

「主殿、対軍を使うかもしれません。少々魔力消費がありますが、そのつもりでいてください」

 

声は出せなかったが、少し間を開けて小さく頷くことはできた。

 

『速度も予想外なほどに早い!何か幻獣の類に乗ってるのかもしれないけど……と、とにかく逃げろ!数で負けている以上、逃げるのが最善手だ!』

「ですが、差は一騎です。これならなんとか、」

『数が同じなら勝負を挑んでもいい!けど、実質的な戦力では君たちの倍近いんだ。冷静になれ、マシュ!』

 

こういう時は大人なんだなぁ、って思う。しっかりと芝姉が戦力にならない前提で話しているし、確かにマシュさんもまだ半人前だ。ほぼ倍である。

 

『撤退しよう!こんなの誰だって逃げる、三十六計さんだってそう言ってる!』

「「こういう発言さえなければ、信頼できるいい大人なんだけどなぁ……」」

 

マスター二人の心が被った。

しかし、うん。このロマンの選択肢は俺にとってはうれしいものだ。逃げる、いいことじゃないか。ということで。

 

「よし、選択肢は逃げる、だ!ライダー先行して、何かあったら臨機応変に!サーヴァント二人にも走ってもらうことになるけど、」

「……いえ、逃げません」

 

ちょ、この聖人さん何言っちゃってんの!?

 

「せめて、せめて真意を問いたださなければ……!」

「この状況でそんなことをして何になるのさ!?」

「私は知らなければならないんです!」

「そんなことに巻き込まれるこっちの身にもなってよ!?」

「主殿、見捨ててもよいのではないかと」

 

俺の中にもその選択肢が結構大部分を示し始めている。と、それを察せられたのかいつの間にか後ろに乗っていた梓さんから冷たい視線が。今後の関係維持もまた大事……けどやっぱり命優先!このまま梓さんを拉致すればマシュさんもついてくるだろうし、と思って牛若丸に指示を出そうとしたら、

 

『ダメだ、もう間に合わない!皆、とにかく逃げることを考えるんだ!いいね!?』

 

ロマンから、手遅れとのご報告が。その報告に頭が一瞬真っ白になって、戻ってくるのと同時にでかい竜に乗って現れた五騎のサーヴァント。それも、その先頭にいるのは……

 

「……なるほど、これは黒い」

「2Pカラーかな?」

 

うん、これは黒ジャンヌだ。などと、ちょっと自分の危機的状況を忘れてしまった。

 




思いついていないのに、自分に都合よく薄緑を使っていくスタイル。
あれ、むしろ首を絞めていっている・・・?
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