Fate/Grand Order 二人目の生存者(仮称)   作:biwanosin

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迷走中!


第十四話

一瞬の隙は、願っていた通り訪れた。まるで一世代前のヒーロー物のように飛んできて地面に突き刺さった薔薇(ガラス製)。同時に現れたキラキラサーヴァント。真名をマリー・アントワネット。そしていつの間にか隣にいた肌のとっても白い男性のサーヴァント。以上二人組。牛若丸の戦闘能力からさらなる戦力の投入が起こりそうだったのだが、完全に停止している現状である。

なんだろう、真名からしてすっごく目立つ人だし、そのおかげか全員の視線がそっちに注目している。……よし、情報収集。

 

「あの、サーヴァントさん?」

「ああ、何だい少年。僕について聞きたいことが?」

「あー、無いではないんですけどそっちじゃなくて」

 

牛若丸もこっちに戻ってきたし、梓さんもある程度近い距離にいる。芝姉は言うまでもない。

 

「貴方かマリーさん、どちらかが何か乗り物持っていたりしません?」

「マリアは積載量三トン以上のガラスの馬車とガラスの馬を持っているはずだけれど」

 

ヤッバイガラス率。ガラスの馬が実際に走るとか、さすがな世界だなこれ。とまあそれは置いといて、条件はそろったらしい。

 

「梓さん、チャンスだから逃げよう」

「あ、やっぱりチャンスだよねこれ」

 

よし、マスターの同意は得た。サーヴァント……特にジャンヌさんは事後承諾ということでこのまま行こう。ハッキリ言ってしまうのなら、あまり良い印象は無いので考慮しないことにする。

 

「おや、何か作戦があるのか。だったら目くらましは必要かな?」

「あると大変助かりますね」

「よし、ならそれは任された。ちょうどいいタイミングを指示してくれ」

 

そう言ってくれると助かるので、視線で牛若丸へ指示。前もって言われていた通りごっそりと魔力が吸い取られ、

 

「自在天眼・六韜看破」

 

真名開放と同時にこの場にいる全員が移動する。敵の皆さんは足場、視界ともに最悪な場所に纏めて押し込む形になった。何も知らせる余裕がなかった三名は困惑しているが、まあ、うん。

 

「よっし、三十六計逃げるに如かず!」

「逃げろ逃げろ逃げろー!」

 

マスター二名の掛け声で何とか状況は理解してくれたらしく、全員逃亡準備に入った。マスター二名は太夫黒に乗って駆け、他サーヴァントは普通に走って逃げるという状況。もうちょっと距離を開けたら馬車を出してもらって全員乗って逃げる方針で行きたいなんて考えていたところ、背後で大きな破壊音。視界を遮っている諸々をぶち壊したのだろう。狂化怖い。

 

「色白さんお願いします!」

「アッハッハ!また面白い呼び方をされたなぁ!」

 

なんて笑いながら足を止め、その手に握る指揮棒を構え、

 

死神のための葬送曲(レクイエム・フォー・デス)

 

宝具の真名と思わしき発言と同時、敵側へ重圧。目くらましとは何か違う気がするけど、時間を稼げるって意味では同じだし、気にしないことにした。

逃げられればなんでもいいのである。

 

 

 

 ♢

 

 

 

十二分に逃げられただろうという位置で一度止まって馬車を出してもらい、霊脈へ向かってさらに駆けた。サークルを設立し、ひとまず落ち着くだけの状況を作れたであろうところで、お互いに自己紹介並びに状況の説明を済ませる。ライダーのマリー・アントワネットさんにキャスターのヴォルフガンク・アマデウス・モーツァルトさんだとか。

どうしよう、芝姉並みに戦闘能力がない予感がするのだけれども。というか、音楽のために魔術を嗜んだってそこまでするのか。ヤバいな、尊敬する。

尊敬したけど、その後の諸々のやり取りでいい感じに冷めた。

 

「なんにせよ、現状の戦力さは大きすぎる状況です」

 

と、今後の方針について話し合う段になって牛若丸が発言する。

 

「相手側のサーヴァントは五騎、それに対してこちらはマシュ殿を含めて六騎と数字の上では勝っていますが、十分に戦闘が可能なのは二人です」

「確かに、頭数はともかく戦力さは絶望的だなぁ」

 

割とはっきり戦力外だと言われているのだけど、アマデウスさんは気にしない方針らしい。では後のメンバーはどうなのかと見回してみるとマシュさんは申し訳なさそうな顔、マリーさんと芝姉はいやーと言う感じの笑顔で頭をかいている。大丈夫かなぁ、これ。

 

「エリザベート・バートリーは逸話から考えるなら戦闘能力は無いように感じますが、ヴラド三世はその伝承から考えると戦闘能力があるように思えますし」

「その辺り、直接戦った牛若丸はどう思う?」

「……あのまま戦うのであれば、首を獲れると思います」

 

直接戦った上での感想を聞いてみると、そう返ってきた。

 

「ですが、与えられた知識に載っているそれを考えるとそれだけとは思えません。宝具も使っておらず、吸血鬼らしき能力も見ていない状態ですので、確信を持って、とは」

「なんにせよ、戦闘できる上で警戒すべき対象、と」

 

ドラキュラのモデルであるという状態に、敵兵を串刺しにしたという伝承。それらが宝具になっていると考えると、まあ怖い怖い。

 

「あと一人、セイバーらしき人物はマリーさんの知己のようでしたが……」

 

と、真名を探るためかマシュさんがマリーさんへ訪ねる。

 

「……そうね」

 

一瞬、その表情に影が差したように見えたが。それでも顔を上げて、心当たりを口にする。

 

「もし彼女が私のことを知っているとすれば……シュヴァリエ・デオン、じゃないかしら。確証はないけれど」

 

大変申し訳ないことに、全く知らない名前であった。誰なのだろう、それは。

 

『シュヴァリエ・デオン……ルイ十五世が設立した情報機関、「スクレ・ドゥ・ロワ」の工作員(スパイ)だね』

 

などと思っていたらしっかりロマンが捕捉してくれた。そこまで言われても全くわからなかったので梓さんに目配せをするも、肩をすくめられた。こちらも知らないらしい。

 

『同時に軍所属の竜騎士、最高特権を持つ特命全権大使でもある。……彼女、いや、彼かな……?』

「瑣末なことですよ、遠い世界の魔術師さん」

 

性別がどっちなのか分からないのって瑣末なことなのかな?と言うか知り合いじゃなかったのです?

 

「わたしとは全盛期がすれ違っているけれど、あの素敵な顔立ちは変わっていませんでした」

「そうか……彼女が味方に加わってくれればいいんだけど……」

「それは難しい、と思います」

 

ジャンヌさんによれば、狂化スキルが全員に付与されているとのこと。向こうの呼び方から勝手にあるものと考えていたのだけど、間違ってはいなかったらしい。よかった、うん。

 

「しっかし、相手がもう既に聖杯を持っているのが怖いなぁ」

「その気になれば追加でサーヴァントを呼び出したりできそうだし、より一層戦力が広がっていくのか……」

 

マスター二人はやっぱりそちらが気になるところだ。や、うん。カルデア側も有限ではあるけれどそれなりにサーヴァントを召喚できる。出来るのだけど、いかんせんマスター二人が素人なせいで同時に契約できるサーヴァントの数が限られており、その枠内であっても一気に増やせばぶっ倒れるであろうとのこと。どうしようもないなぁ、うん。

 

「……もしかすると、だからこそ、なのかもしれませんね」

「だからこそ?」

「はい。だからこそ、マリー達が召喚されたのかもしれません」

 

続けて語られたのは、あくまでも推測でしかない内容。

聖杯戦争が開始されていないにもかかわらず、聖杯を勝ち取った勝者が存在している。この矛盾した状態に対して聖杯が対抗するため、追加でサーヴァントを召喚したのではないか、と。

 

「つまり」

「他にもサーヴァントが召喚されてる?」

「はい。その可能性が高いのではないか、と」

 

つまり、こっちの味方になってくれるサーヴァントは他にもいるのではないかということだ。この状況でそれは大変ありがたい。敵が増えるって可能性もあるけれど、それは気にしないことにする。その辺りについては、ロマンが担当してくれるとか。

そんな感じで話が付いて、一休みすることとなった。

 

 

 

 ♢

 

 

 

「主殿、お時間よろしいでしょうか」

「うん?牛若丸?」

 

休憩、ということでカルデアから送ってもらった食料を一人モグモグしていると、牛若丸が後ろから声をかけてきた。確かついさっき芝姉と一緒に見回りに行ってきたはずなので、直行してきたと思われる。

 

「食べながらで良ければ大丈夫だけど、どうしたの?」

「一つ、策を提案させていただきたく」

 

……うん?俺に聞いたところで何もアドバイスをできないのだから戦争経験のありそうなジャンヌさん辺りと相談するべきじゃないかな?

 

「いいけど、間違いなく何のアドバイスもできないよ?」

「それでも、主に許可を得てからにするべきかと思いまして。……生前はそれで失敗続きでしたから」

 

そう言われると断れない。重すぎて。スープを飲み干し、前に座った牛若丸の目を見て話を促す。

 

「正直に言ってしまえば、効率面では最も良いと思います。だからこそ自分で却下せず、相談することにしました」

「うん、まあ戦闘とか戦争とかでは素人ばっかりだし、頼りにしてる」

「ありがとうございます」

 

おや、俺が褒めたのに嬉しそうじゃないのは珍しいな。

 

「単刀直入に申します。マリー・アントワネット、ヴォルフガンク・アマデウス・モーツァルト。以上二名を使い捨て、ジャンヌ・オルタへたどり着きその首を落とすべきかと」

「…………」

 

コップを置き、こちらも姿勢を正す。頭を抱えたり声を上げたくなったのだけど、何となく、それが正解でないような気がしたのでそれをやめて、提案された作戦を吟味する。

敵側の戦力は、現状では五騎のサーヴァント。一秒でも早く攻め込めば、それだけ敵戦力が増える可能性は低くなる。その点に関してはすぐにでも動くというのは、大きく間違った作戦ではない。

次に、どのようにして戦っていくのか。相手側にいたのはヴラド三世、エリザベート、ジャンヌ・オルタ、仮称デオン、樹をぶん投げてきた人の五人。一人百面相の際に名前が出てきたジルとやらもいると考えると六人か。それを可能な限り先ほど言っていた『使い捨てる』サーヴァントに相手させ、あるいは囮にして、将を討つ。普通に考えれば無理なんだけど、牛若丸の突破力があれば可能なようにも思える。何かたくさんいたドラゴン系統を含むと、若干賭けになるかな?

 

「可能ならもう数名と考えましたが、特異点がここだけではないことを考えるとそうすべきではないかと」

 

と、腕を組んで考えていたら追加情報が。おそらくだけど、そうでなかったりそれしかない状況だったのならマシュさんや芝姉も使い捨ての対象だったのだろうと思われる。この思考回路で相談もなく色々やっていったのならば、頼朝さん大変だったと思うよ、うん。

 

「ひとまず、マシュさんはカルデアでサーヴァントを召喚する際の基点になるらしいから、取り返しのつかないことになるのでそのつもりでいてね」

「承知しました」

 

今後のためにも確実に伝えておかないといけないことだけ伝えて、さてどうしたものかと考える。考えてみて。

聞いた時に思った通りの結論が出た。なので、あらかじめ伝えておく。

 

「牛若丸。今後、味方を犠牲にすることを前提とした作戦は、本当にそれしかない状況を除いて禁止します」

「……承知しました」

 

目をつむり、なんの反論もなく承諾された。なんか言われるかなと思ってたので大変拍子抜けであるのだけども。

 

「ところで、質問なのですが」

「何?」

「本当にそれしかない状況、とはどれほどを指しますか?」

「うーん……」

 

曖昧に返すと間違いなくそのずれによって今後大変なことになるので、しっかり定義しておこう。

 

「完全に追い込まれてその場でそれをしないとどうしようもなくなる状況、かな。あらかじめ立てる作戦としては禁止」

「承知しました」

「あと……マリーさんたちの前では絶対に言えないけど、守る対象としてはカルデアから来てるメンバーを優先で」

 

自分が怖いのもある。と言うかそれなりに大きな部分を占めているのだけど、ちゃんとした理由を込みで言うのなら俺と梓さんが死ねばそこで人類おしまいだし、マシュさんがいなくなればサーヴァントの召喚が出来なくなる。カルデアから来たサーヴァントは今後も一緒に戦っていくのだ。

自分が怖いから、死にたくないから守ってほしいだけではないのだ、うん。

 

「なんにせよ、そんな感じでお願い。……令呪使っておくべきかな、とも思ってたんだけど大丈夫そう?」

「私からは何とも。主殿の判断にお任せします」

 

ここまでいっても変わらないサーヴァントからの信頼が怖いです。ぜひとも頼朝さんとあってどのあたりに不信感を抱いたのかをお尋ねしたい気分です。

 

「じゃあ、うん。いいや。戦略面では何の頼りにもならないマスターなのに相談してくれてありがとね」

「いえ。……それで生前は失敗しましたから。これも主殿のために戦う、の一環だと思いまして」

「まあ、うん。今後もこんな感じなら相談する余裕があれば相談してほしいかな」

 

じゃないと怖いからね。

 

「……それと」

「はい?」

「令呪を使わなくても大丈夫だと信頼していただき、ありがとうございます。このような状況ではありますが、牛若は嬉しいです」

 

と、そう言って。自分の作戦が否定されたことに不満があったりしないかなと心配していたのに、嬉しそうに笑われてしまった。こっちがリアクションに困っていると、そのまま場所を移動する。見回りの後はマスター二名の守護につくことになっていたので、それに移ったのだろう。

 

「……ホント、難しいなぁ、牛若丸の扱い」

 

価値観が違いすぎて、ホントに困る。あんな作戦を立てられても変わらない信頼を抱いている自分にも、太変困ります。

 




迷走は続く!特に牛若丸の扱いと、オルレアン編で出したいオリ鯖をいつ出すかについて!
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