Fate/Grand Order 二人目の生存者(仮称)   作:biwanosin

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何故だろう。かけてしまった。


特異点F 炎上汚染都市”冬木”
第一話


目を開けると、そこはまた火の海だった。

 

「・・・でもまあ、レイシフトしてない、ってわけではないのか・・・?」

 

これが夢の中とか地獄とかそう言うものではないのなら、そのはずである。どうにかしてアナウンスの記憶を思い出せば、ここは『冬木』という街だ。

 

「冬木、ってことは日本なんだろうけど・・・その関係でのメリットはなさそうだなぁ」

 

こんな状況でなければ、言語の壁がないというのは大きい。が、こんな火の海では話をする相手がいるとも思えない。はてさて、どうしたものか・・・

 

「・・・・・・うん?」

 

と、完全に一人放り出された状況でどうするかを考えていると、視界の端になにか動くものが映った。そんなに風があるわけではないし、その状況で動くものがあるということは、誰かいるのかもしれない。さっき否定した可能性がさらっと現れたことに恥ずかしさを感じるが、まあ他に誰が聞いてたってわけでもないしよしとしよ、

 

「あれ、ガイコツだよな・・・」

 

全然よくなかった。ガイコツとか、ゲームでも基本的キャラじゃん。最初の方で出てきそうな相手ではあるけれど、それこそゲーム開始と同時に現れたらとりあえずそっちにいっておけば何か起こるか、とか行ける相手ではあるけれど、しかしここはゲームの世界ではない。まだ夢の中って可能性を否定したくはないんだけれど、それでもおそらくは現実だ。で、あるのなら・・・

 

「三十六計逃げるに如かず、ってこういうときに使うのかね・・・!」

 

逃げる。背を向けて、ひたすら走る。これが魔術師の人たちだったら戦う手段もあるのかもしれないけど、残念なことに俺は一般人だ。そんな手段は持ち合わせていない。だから、逃げる。

 

「あ、が・・・」

 

と、腕に何かがかすった。何が傷つけたのかとみると、視線の先には矢が刺さっている。どうせ何もできないからあれだけど、武器の種類くらいは把握しておくべきだったのかもしれない。

 

「なんだってんだよ、これは・・・!」

 

いや、何なのかは知っている。ちゃんと説明もされている。ただ俺が、それを現実だと認識してなかっただけだ。ただ俺が、呑気に考えていただけだ。

人類史の消滅。基点となる七つの特異点。そこにいる敵に対抗するための英霊(サーヴァント)・・・全部、たしかに聞いていた。それを、間抜けな俺が受け入れなかっただけだ。

現実を見もしないような間抜けが、ただ自分のミスで怪我をしただけだ。

 

「あーもう、なんで断らなかったんだ、俺はよ・・・!」

 

血が流れてくる腕を抑えながら、傷に響くのも考えないで、全力で走り続ける。

 

 

 

  ▽▲▽▲

 

 

 

「ハァ、ハァ・・・にげ、れた・・・」

 

あの後、何も考えずにただひたすら走って、建物の中に逃げ込んだ。このままずっと隠れられるとは思えないし、そもそもここへ逃げ込むのはみられている気がするが、この建物には階が多い。時間稼ぎ程度にはなるはずだ。

 

「それで、確か・・・」

 

そして、その間に最低限治療を、可能ならこの状況を打破する案を出さなければならない。このレベルの傷であれば無視しろとそう言われるかもしれないが、俺にはつらいのだ。だから、仕方ない。

 

「まずは、イメージ・・・」

 

教官に言われたように、まずはイメージする。自分のやりやすいものをとのことだったので、楽器を。物と物とのぶつかりを、こすれを綺麗な音へと変え、その連続を旋律にまで引き上げる。そんな連続性を自分の中で組み立てるイメージ。そうして魔術回路というものを起動してから、制服へとそのイメージをつなげ・・・

 

「応急手当・・・」

 

制服に備わった機能を、使う。すると、腕にできた傷がふさがっていく。傷のレベルによって現れる回復の度合いもかわり酷ければその分だけ時間もかかるし治りきらない場合もあるといわれたので、やはりさっきのは小さかったのだろう。貴重な治療手段を使てしまったと考えると、やはりもったいなかったかもしれない。

 

「後悔先に立たず、過ぎたことは考えても仕方ないよな・・・今は、これからを考えよう」

 

さしあたっての問題は、あのガイコツだ。あのガイコツを相手取り生き残る手段が必要になる。一度だけなら強化を使って頑張ればいけるかもしれないが、二体三体となれば効果がなくなって終わるし、そもそもあれだけだとは思えない。さすがにそこそこの時間がたてば俺でも二度目、三度目の行使はできるにしても、その間に死ぬだろう。

 

「何か、ないか・・・」

 

魔術的な持ち物は、この制服のみ。であればこの制服に何かしこまれていないかと上着を脱いで確かめる。ポケットの中とか、どこかをいじくりまわせば何か出てきたり・・・

 

「・・・・・・あ」

 

と、内ポケットをあさったところで出てきたのが、何枚かの写真と一つの綺麗な石。そうだ、英霊の召喚。そもそもはこの状況を打破するために英霊を召喚しサーヴァントとして使役する、とあったじゃないか。そのためにこの写真を撮ったのではないか。

 

「・・・やるしかない、か」

 

できることなら、ちゃんと魔術について分かっている人に手伝ってもらいながら行いたかった。そもそもはちゃんとできる人間の補助の元行うはずだったから安心していたというのに、これでは全ておじゃんだ。とはいえ、こうぶつくさ言っているだけの余裕すら、もうない。状況がどうなっているのかはわからないけど、精神的にもう辛すぎて仕方ない。何かにすがりたい。

 

「よし・・・やる、か」

 

先ほど制服の機能が使えたということは、まだあそことのつながりはあるはず。そしてその状況において、召喚の大部分は自動的に補助されると聞いている。だから、魔方陣も素材とかは気にしないでちゃんと描ければいいと、そう言われている。だから、できる限り写真の通りになるように描く。描いて、最後に自分の血を一滴落とし・・・読み上げる。

 

「カルデアが47番目のマスターが、ここに汝の降臨を願う」

 

これはカルデアが組み込んだ詠唱で、これがなければあちらの補助を受けられないらしい。全くもってどういう仕組みなのかはわからないが、これからは言葉の意味すら分からないものを唱えるのだ。そう大差はないだろう。

 

「素に銀と鉄。礎に石と契約の大公。降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」

 

ここまで唱えたところで、輝きだした魔方陣の中心へ向けて石を放る。細かい説明は忘れたけど、この石も召喚を手伝ってくれるらしい。

 

閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)。繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する」

 

閉じよ、と書いて満たせ。その意味もまた、俺にはわからない。だけどその意味はあるのか、その違いを意識に載せるようにやったところ、石にひびが入った。

 

「―――告げる。汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。カルデアの寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」

 

そして、ここまで唱えたところで石は砕け、それが円環を描く。魔方陣の上で、輝きながら回る円環。何かが起こると、そう実感できる何か。

 

「誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を悪を敷く者」

 

ここで、円環は三つに分かれる。下の魔方陣の輝きもその強さを増し、それを中心に荒れ狂う風は、容赦なく俺の体を叩く。それだけではなく、俺自身の中から何かが抜けていく感覚も、確かに存在した。

もう、疑うよしもない。これは間違いなく、何かを呼び出している。理屈はなく、直感的にそれを理解させられながら、最後の詠唱を―――。

 

「汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」

 

唱え、きった。それと同時に三つの円環が収縮し、光の柱が現れる。そんなどう頑張っても隠し切れない、目立ちすぎる程のそれ。だがしかし、そんなことは気にならなかった。それよりも、今魔方陣の中心にいる人物に意識を割く。

 

その身にまとっているのは、日本の鎧だろうか。だが、間違いなくそのものではない。日本の鎧はあのような部分部分だけで他は露出する、なんてものではない。ほとんどが、露出されてしまっている。そして、腰には一振りの日本刀をさしている、歳のほどは少し下に見える、女性。

 

何ともちぐはぐ、そして痴女にしか見えないようなその格好。だが、俺はどうしてもそれを

『みっともない』とは思えなかった。

どうしようもなく、美しかった。どうしても、それに違和感を感じることが出来なかった。そして・・・どうやっても、自分と同じ人間であるとは、思えなかった。

 

「サーヴァント、ライダー。まかりこしました。武士として誠心誠意、尽くさせていただきます」

 

その声が聞こえてきて、俺はようやく戻ってこれた。完全に意識を奪われていたのだ。それこそ、右手の甲に痛みが走っていたことを、今になって知ったほどに。

 

「あ、ああ・・・よろしく、頼む」

「はい、よろしくお願いします。主殿。・・・それで、私は何をすればよろしいでしょうか?」

 

何をするのか。何を、してもらうのか。そもそもなんで召喚するなんてことになったのかを今になって思い出した俺は、そこでガイコツたちが部屋に入ってくるのを見て、反射的にライダーに対して頭を下げた。

 

「お願い、します・・・俺を、あいつらから守ってください・・・!」

 

正直、この絵面は情けないだろう。見た目同い年か、もしくは俺のが年上に見えるのだ。にもかかわらず、男が女に守ってほしいと、頭を下げて全力で懇願しているのだ。もしかしたら、呆れられたかもしれない。・・・だが。

 

「かしこまりました。それでは、そちらでお待ちください」

 

だが、彼女はそんな様子は微塵も見せないで、俺の前に立ってその刀を抜く。

狸の尾のような鞘から抜かれたその刀は、模造刀やなんかとはどこか一線を引いている。おそらく、武器として扱われているかどうかなのだろうか。なんにせよ、明らかに何かが違う。

それを抜刀したライダーは、踏み込むような体制を取り・・・次の瞬間、消えた。

 

「ハッ!」

 

いや、消えてはいない。俺の目では追いつけなかっただけで、確かにそこにいる。というか、一体を完全に破壊している。

 

「うっそぉ・・・」

 

今度は、全体を見ていたからかライダーの動きがちゃんと見えた。踏み込んで、壁を蹴って、三次元的に跳び回りながら攻撃を続ける。そして、また一体の首を落とし、蹴飛ばしてバラバラにした。そういえば、ガイコツの急所ってどこになるんだろうか・・・と、そんなことを考えている間に終わっていた。

そこにあるのは、大量の骨片。その山を築いた張本人は、今しがた方刀を納めて、こちらえ振り返り。

 

「終わりました、主殿!」

 

そう笑顔で告げて、こちらに歩いてくる。その様子には無邪気さがあって、敵意がない。親愛に似た何かがあって、今の行為を何とも思わない異常性があって。そして・・・俺を、守ってくれる存在で。

 

「たすか、った・・・」

 

何故か俺の視界には、床が迫ってきていた。

 

 

 

  ▽▲▽▲

 

 

 

「主殿!?主殿、どうなさいました!?」

 

主殿が倒れてきたので、慌てて滑り込んで受け止めましたが・・・意識は、ありませんね。脈はありますし、呼吸は乱れていませんから・・・

 

「よっぽど追い詰められていらしたのですね、主殿は」

 

このような場所で、このような設備での召喚、先ほどの必死な様子での私へのお言葉。それらの緊張が解けたのでしょう。もう大丈夫だと思っていただける程度には心を開いてくださったと考えると、とてもくるものがあります。

 

「しかし、主殿をこのような硬い畳に寝かせるのも問題ですし・・・」

 

よいしょ、っと。崩して座った自分のももに主殿の頭を乗せる。先ほどまでの必死な様子。それに対して今の、気を抜ききってお眠りになられている姿。ああっ、これは何とも・・・!

 

『薫くん!水瀬薫くん!大丈夫かい!?』

「ええい、無粋な!」

 

せっかくの、せっかくの至福の時が!

 

「ええい、何やつ!姿を現せ、すぐにきり捨てて主殿との至福の時に戻らせてもらう!」

『わぁ、待って待って!敵じゃない、むしろ味方だから待って!』

 

と、目の前にやけに青いくせ者の姿が。妙に怪しい・・・

 

『えっと、僕はそこの彼と同じ機関に属してる。ロマニって言います、ハイ』

「・・・何とも軽薄そうな声」

『なんなのさその認識!?って、そうじゃなくて・・・』

 

しかし、主殿と同じ機関に属しているというなら、切り捨てるわけにも・・・しかし確実なわけではない。であればきり捨ててしまった方が後々の危険性は避けられるのでは・・・

 

『あのー・・・こう、彼が起きてから確認するってことで、ひとまず僕の説明を聞くだけ聞いてみる、というのはいかがでしょうか?』

 

なるほど、その手がありましたか。これは失念しておりました。

 

「では、そのように。主殿がお目覚めになられてからその情報を信じるかを決めましょう」

『ぼく、会ったことがあるわけじゃないから不安だなぁ・・・まあ、そこは何とかなるでしょ』

 

やはりこの者、軽薄、テキトーで間違いないのではないか?

 

 ――ただいま説明中――

 

「ふむ、なるほど。人類史の消滅、と。そして、それを防ぐために主殿はこの時代へ」

『そうなるね。さらに言うのなら、自衛手段として貴女を召喚したのでしょう』

 

それはおそらく事実でしょう。つい先ほど、そう頼まれましたし。しかし、にわかに信じがたい。

 

「ん・・・あれ、おれ・・・」

「お目覚めになられましたか、主殿!」

 

お声からそちらを見ると、確かに表情に動きが・・・!目を開けられました!

 

「えっと、ここは・・・」

「お加減はいかがでしょうか、主殿?」

 

あぁ、うれしくてついほおが緩んでしまいます。いえ、先ほどまでのお眠りになられていた様子も、こう何とも言えぬ愛らしさがあって緩んでいたのですが、やはり会話をしたいですし。おや、赤くなっていく・・・

 

「え、ちょ、なんで膝枕!?」

「主殿を床で直接など、できませんから!」

 

恥ずかしがられている様子もまた愛らしい・・・しかし。

 

「その・・・ご迷惑、でしたか?」

 

もしそうであったのなら、謝らなければなりません・・・

 

「や、そんなことはないし、むしろありがたいんだけど・・・」

『うんうん、思春期の少年には、美少女からの膝枕に加えてあの角度からの視界だ。仕方ない仕方ない』

 

その声で気付かれたのか、主殿はそちらを見て・・・

 

「・・・だれ、アンタ?」

「よし、斬りましょう」

『わー、待って待って!』

 




そう、自分が書きたかったのは彼女なのです。いいですよね、彼女。妹キャラ大好きな自分にはもう・・・です。

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