Fate/Grand Order 二人目の生存者(仮称) 作:biwanosin
そして今更感のある情報。梓と薫の見た目はFGOの主人公のあれです。
では、本編へどうぞ!
第七話
「ふぁ・・・眠い・・・」
初めてのレイシフトやらなんやらというゴタゴタまみれだったあの日から数日がたち、ちょっとだけあれが現実味を失ってきたころ。俺は寝起きのまま、しかし恰好だけは整えてカルデアの廊下を歩いている。向かう先は食堂、まあ朝食を取りに行きたいわけだ。おなか減ったし。
「あ、オハヨ―薫くん」
「ん、おはよう梓さん」
「梓でいいって言ってるじゃんかー」
「それはそっちも呼び捨てにしてくれてからね」
カッタイなー、とか言ってる梓さんをあしらうのにももう慣れてきた。はじめは同年代の女子ということで若干どう接するものかとは思ってたんだけど、この閉鎖空間、人が増えることはない、おまけに同年代はマシュさんと梓さんの二人だけなのだ。そら、馴れる。
「やー、うん。お互いにお互いのこと馴れてきたよねぇ・・・そのうちざっつーな格好で出てきちゃいそうで女の子としては心配な限りですよ」
「それはさすがにやめてください無理です無理無理です」
「あははー、うん。さすがにそうなったらアウトだなー、とは分かってるから」
そうなら安心、と思ったんだけどしっかりと否定はしてくれなかった。なんだろう、ちょっと心配だぞ・・・や、さすがにそこは大丈夫か。うん、大丈夫だろう。もしくは、そう言った方向性に俺が先になれる可能性もある。なんせ・・・
「おはようございます、主殿!それに梓殿も!」
「今日もはやいなー。おはよう、牛若丸」
「オハヨー、牛若ちゃん。今日もトレーニングルーム帰り?」
「はい!体を動かしてまいりました!」
と、食堂に来たらすでに座っていた牛若丸にあった。
この牛若丸、元気があり余っているのかそもそも生前からそうだったのか、朝は結構早い時間に起きてトレーニングルームとやらを使って体を動かしている。最初の時などは汗まみれのまま鎧から服に着替え、色々と透けており、梓さんにものすごい剣幕で連れていかれたものだ。それ以来はちゃんとシャワーを浴びて下着なんかもつけてくれるようになって目のやり場に困ることもなくなった。本人が一度霊体化すればいいとぼやていたのは今でも覚えている。
「あ、先輩。薫さんも、おはようございます」
「あ、マシュ。マシュももう起きてたんだ」
「というかそれは・・・今日の朝食?」
「はい。偶然早く目が覚めたので、準備をさせていただきました。といっても、料理らしいことをしたわけではありませんが」
まあ、朝食なら手軽に済ませられるレベルがちょうどいい。そう考えながら自分の分は自分で運び、途中で来たドクターやダ・ヴィンチちゃんも一緒になって朝食を取った。
それが、再びの騒乱の始まる前の最後の食事だとは、思ってなかったんだけど。
▽▲▽▲
「さて、朝食の時に簡単に話はしたんだけど、新たな特異点が発見された。場所はフランス、時代的には百年戦争の最中、って感じになるのかな」
そんな説明を受けながら、俺は目の前にあるものを見る。今いる場所はカルデアスってのがあるあそこではなくて・・・英霊召喚のための場所。
「もちろん、その異常に対するカウンターとして現地にもサーヴァントは召喚されているだろう。けれどそれだけを頼りにはせず、そもそもカルデアの戦力不足も解消するために薫くんにはサーヴァントを召喚してほしい。・・・というわけだ。理解できたかな?」
「あー、うん。状況は理解できた」
そう、召喚。相手がどれだけのものなのか、今後の特異点がどれだけのものなのかもわからないことから、戦力強化のために英霊を召喚することになったわけだ。本来なら一人で何人もの英霊と契約するのは無理だって話なんだけど、そこはカルデアが何とかしてくれるらしい。相変わらずすごいなカルデア。
「えっと、その理論ならもっとたくさん召喚した方がいいんじゃないかな?あと、私も召喚するとか」
「そうできるのがベストなんだけどね。カルデアが送り込める上限とか、各人の契約を保持できる数とかの問題もある。あと、コミュ力的に彼に現地であったサーヴァントと短時間で信頼関係を築ききるのは難しいと思う」
「ロマン、後で覚えてろよ・・・」
いや、梓さんに比べられたら惨敗なのは確かなんだけども。それでもこう、釈然としないものがある。
「契約を保持できる数とか、そういう点では彼の方が敵性が高いのも確かだしね。特に前回、あれだけ牛若丸の宝具を連発させても耐えられた辺り、色々と複数契約するメリットが高そうだ」
「なるほどなるほど・・・」
梓さんがどこか納得したような様子なのを聞きながら、俺は言われたとおりに準備を進める。基本的には冬木でやったのと同じで、もう既に準備されている魔方陣に自分の血を少し垂らして、きれいな石を握りこむ。
「薫くん、準備はできたかい?」
「・・・大丈夫、いけるはず」
「うん、了解。落ち着いてやってほしい。マシュと牛若丸の二人もいいかな?」
「はい、問題ありません」
「何が現れたとしても主殿をお守りして見せます」
そして、完全な触媒なしの召喚のため何が出てくるのか分からないとかで、念のために牛若丸とマシュさんが後ろにいる。これでまあ、大体何があったとしても何とかなるだろう、とのことだ。
「よし、全部完了だ。薫くん、召喚を始めてくれ」
「了解。・・・カルデアが47番目のマスターが、ここに汝の降臨を願う」
前回と違って、何か慌てることもない。落ち着いて、しっかりと、一息にすませる。
「素に銀と鉄。礎に石と契約の大公。降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ。
―――告げる。汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。カルデアの寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ。
誓いを此処に。我は常世全ての善となるもの。我は常世全ての悪を敷く者。
汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」
前回と同じ詠唱を、全快と同じ動作とともに、しかし前回はなかった安心感を抱いて完遂する。視界の先ではそれでも冬木で行った時と同じ現象が起こっており、視界は光に満たされていた。そしてその中で、魔方陣の中心にいる人物へと視線を向ける。
その身にまとっているのは、あせぎ色の和服。であれば日本人なのかと思ったが、その顔立ちは日本のものではない。おそらくは、オランダ系。それでも、その格好との間にチグハグ感はない。そして、その腰にはひょうたんが下げられている、そんな女性。
「えーっと、キャスターのクラスで召喚されたサーヴァントなんだけど・・・サーヴァント二人いるし、これどういう状況?」
「それについては、僕の方から説明させていただきます」
ロマンが声をかけると、キャスターさんはそちらに顔を向けて、それからこちらを向いて。
「ねえ、ボク。私を召喚したのって君であってる?」
「え、あ・・・はい。そうです、けど」
「あー、敬語はなしなし。気軽にしてくれればいーって」
そう言って笑みを浮かべて手を左右に振る姿は、何と言うか、英雄って感じがしない。何だろうか、この感じは・・・
「それじゃあ、質問。説明はあっちの人がしてくれるっぽいんだけど、あのかるっそーな感じの人、信頼できる?」
「僕の評価ひどくないか!?」
「あ、大丈夫。軽薄って感じがするけど、実力は確からしいしこの状況の理解度も俺より高いから」
「そうなんだ。じゃあよろしく、軽薄そうな人!」
「僕はロマニ!ロマンって読んでください!」
ロマンはそんな叫びを出してから説明を開始した。よっぽどだったんだな、うん。
しかしそれでもすぐに立ち直って、ちゃんと説明を開始する。そして、それを全部聞いてから。
「あー、なるほどなるほど。それで他にもサーヴァントがここにいたわけか。しっかし、それは何と言うか・・・あんまり期待にこたえられないかもなー」
「そうな・・・のか?」
「うんうん、そんな感じの話し方でいいよ」
と、しゃべり方の方を肯定してから。
「そして、戦力的な意味合いでもね。なんせ私は生前はモブAくらいな感じだったし、英霊とか言うのになっちゃったのだって巻き込まれた感じだからねー」
「巻き込まれた?」
「うん。私、生前ちょっと珍しい事態こそあったんだけど、それだってごくごく一部の人にしか知られてないはずだし。英霊になるようなことはなーんもなかったの」
「あー・・・であればまずは、あなたの真名をお聞きしても?」
と、ロマンが口を挟んだ。本人はモブだって言ってるけど、英霊になるくらいなんだから何かしら知ってる要素はあるはずだし。
「あー、うん。生前の名前は言っても仕方ないけど、英霊としての真名なら少しはあるかも。そっちの一般人だっていう二人は知らないだろうけどね。
うん、確かに知らなかった。タヌキ、って言うからには日本でよくある狸の妖怪関連のものなんだろうけど・・・
「確か、狸の妖怪のはずだけど、だとしたらオランダ系の人が出てきた理由が・・・ああ、そういうことか。そんなこともあるのか」
「お、知ってたか。知られてない可能性も高いと思ったんだけど、結構意外だなー」
ロマンは何かに納得したような様子なんだけど、結局何がどうなってるんだ・・・?
「さて、まあ自分で説明するけど・・・祀られてる神社まであるってのにそもそも存在しないのよね、芝右衛門狸って」
「・・・目の前にいるあなたは?」
「いないものをいることにするための代理人?英霊の座、とか言うところに登録するための依代、みたいな」
うむ、分からん。
「魔術師でもない立場だからわからないとは思うけど、そう言うこともあるみたいだ。おそらく彼女は、『偶然日本に漂流したオランダ人』、なんだろう」
「せーかい。そもそも、私の・・・って言い方も違和感。芝右衛門狸の伝承が生まれたのはね」
という言い出しから説明してくれたものを俺なりにザックリまとめると、元々はとあるお偉いさんが流れ着いたオランダ人を秘密で自分のお城見たなところにかくまっていたら、その姿を見られ、「狸の妖怪が化けているから見た目が違うんだ」と言い訳したことが始まりなんだとか。
「で、まあその伝承が実はマジモンで私がそれだった、って可能性もゼロではないんだけど、どっちにせよ私は運がよかっただけのオランダ人女性なのです」
あの人も性的なことは求めてこなかったし、悠々自適な生活だったなー、とか言ってるけど、昔でオランダから漂流して日本にたどり着けるとか、運がいいとか言うレベルの話じゃない気がする。そう思いついこの間教わった“サーヴァントのステータスを見る”とか言う方法で見てみると、幸運:Ex。カンストしてるじゃないですか。
「そのような立場の場合、どうなるのでしょうか?さすがに宝具もない、となれば戦力として連れていくのには反対なのですが」
「あ、さすがに宝具はあるよ。私自身が芝右衛門狸って扱いにされちゃってる関係でその伝承とか合計で三つ」
「三つ!多い部類だよ、それは!」
ロマンが驚いてる。結構なことらしい。
「といっても、一つは化けることしかできなくて、残り二つは消費魔力多すぎて使い物にならないんだけどねー」
「・・・主殿、これはちょっと戦力になるのでしょうか?」
うん、俺も思った。でも、カルデアの魔力供給とかを利用すれば・・・
「ちなみに、どれくらい?」
「そうねー。・・・マスターちゃんの魔力をギリギリまでもらって、令呪三つ全部魔力にしてくれればいけるかな?」
「ロマンー」
「どうしても薫くんを介して魔力を渡す形になるから・・・令呪消費を一画に抑えるのがギリギリかな」
俺が爆ぜることになっても困るので、それくらいでお願いします。
「あ、なんか特殊な方法があるの?それなら役に立てるかも。片方は条件が合えば必殺だし」
「一気に頼もしくなった!」
「いいじゃん、面白いじゃんそういうピーキー性能!」
毎度毎度、梓さんは男前だなぁ・・・とはいえ、うん。
どうなるにしても今後長い付き合いになるのは間違いないわけなので。
「えーっと、じゃあ・・・今後ともよろしくできますか?」
「その日本語おかしくない?」
おかしいですけど、じゃあどういえばいいんですか。
「まあいいけど、一個だけ条件」
「・・・条件?さすがに内容次第になるんだけど・・・」
出されること自体は、まあ予想外じゃない。牛若丸だって一応出してきてるわけだし。あんまり難しくないものだといいんだけど・・・
「あだ名、考えて。キャスターなんてカッタイのヤだし、芝右衛門狸ってのも長いしゴツいし」
まって。ちょっとまって。別の意味で難易度高いんですけどそれ。思春期の男子には難易度高すぎるんですけど、それ。
「それくらいなら薫くんがなんとかしてくれるはず!」
「そうですね。そもそもサーヴァントからの協力を得る条件としては軽すぎる程です。何とかしてくれるでしょう」
「主殿ですからね!」
「そこの女性陣三人!ハードルを上げるんじゃない!」
ああもう、なんでこうなった・・・
「あ、そう言えばまだ君の名前直接聞いてなかったや」
「水瀬薫、です・・・好きに呼んでください・・・」
「じゃあ薫ちゃん、期待してるよ~♪」
ポン、と肩を叩き、梓さん、マシュさん、牛若丸の女性陣で部屋を出ていく。話しからすると、交流会兼服探しに行くようだ。
・・・・・・ホントに、なんでこうなった・・・
というわけで結構初めの方でも言っていたオリ鯖。真名を芝衛右門狸。その正体はオランダ人のお姉さんです。とりあえず、現時点で定まっているステータスとか設定とかだけ。
クラス:キャスター
真名:芝衛右門狸
性別:女性
身長・体重:171㎝ 42㎏
スリーサイズ:B86/W55/H80
出典:絵本百物語等
属性:中立・中庸
ステータス
筋力:D(E‐) 耐久:D(E-) 敏捷:A+(E-) 魔力:C(E-) 幸運:Ex(E-) 宝具:Ex(無し)
()内はその場に犬がいる時。
犬がいるだけでステータスがゴミと化し、宝具が消えてなくなるのはこの狸の伝承ゆえです。
さーて、この人どう動いてくれるのかなぁ・・・