神尾くんとカミサマ   作:パス太郎

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神尾くんとむりゲー

 どうも皆さんごきげんよう。僕は神尾 降太(かみお こうた)といいます。

 年齢は16歳。実家は神社で、学校は近場の私立算文高校に通っています。

 

 僕には大きな特徴が二つあります。

 

 まず先天性白皮症、つまりは白子とかアルビノとか言われる人間であるという点。

 昔からいろいろと苦労していますが、もう慣れたものです。プラチナブロンドの髪も赤い目も乳白色の肌も、人目を惹きますが、気にならなくなりました。

 僕は僕だし、ほかの人はほかの人です。そう生まれてしまった以上変わることはできないのです。

 

 もう一つの特徴。こいつがどうも厄介なものなのです。

 例えば、神棚に向かって少しの時間祈りをささげてみたとします。普通ならば特に何も起きることはありませんが、僕の場合は違います。

 

『おいおい、降太~。もうちょっと祈ってくれてもいいんじゃない~』

 

 これです。

 この声は僕にしか聞こえず、神棚の周りをフワフワしている半透明のおっさんも僕にしか見えません。おっさんの名前は(じん)、氏神という種の神様で、僕の遠い先祖です。

 

 僕がこのように神様という存在を認識できるようになったきっかけは11年前にあります。僕はそのころ非常に体が弱く、半年に一度は死の淵に立たされていました。そして、その日はついにお迎えが来たと、小さいながらに理解していました。遠くなる意識と、霞む風景が完全に地上から離れたとき、気が付けば僕は空に浮いていました。

 死んだらこんな風になるんだ。

 神社の息子である僕は、のんきに空の散歩を楽しみました。僕にとって苦しくなく、自由に動くことができるというのは、初めての経験だったのです。

 僕がもっともっと遠くに行こうとしたとき、女の人の声が僕を止めました。

 

「ちょっとあんた」

「……なに? おばさん誰?」

「おば……! まあいいわ。あんたどこ行こうとしてんのよ」

「んーと……あっちのほう」

 

 あとで知ったことですが、このとき僕を止めたのは磐長姫という女神さまで、仁様よりもずっとえらい神様です。磐長姫様は失礼ですが、神様にしてはあまり美しいとは言えないお方です。それ故に僕は随分と失礼なこと言ってしまいました。それにもかかわらず、中学生の時、菓子折りもって感謝と謝罪をしに行った結果。磐長姫様は笑って許してくれました。次同じことやったらただじゃ置かない、とも言われましたが。

 

 それはさておき、この後僕は磐長姫様に諭され、自分のいた病院へと戻りました。

 心臓の止まった僕の体を見下ろしていると、なんだかとても悲しくて、思わず体に手が触れた瞬間、僕は病院のベッドで目を覚ましました。

 

 僕は心臓が40秒ほど止まった後、息を吹き返したそうです。

 

 その日から、僕は神様や、その他心霊の類を見ることができるようになったのです。

 主だった原因は、臨死体験をしたこと、磐長姫様にあったこと、神社で育ったこと、アルビノであることだと、仁様に聞きました。

 昔から、白い動物は神の使いであり、アルビノの僕は疑似的に神の使いになったとのことです。正直あまり理解できませんでしたが、信じることが大切だそうなので、下手に疑わないでいようと思います。

 

 こうして神の使いとして復活した僕の体には、神の力を借りるという少年漫画の主人公張りの能力が備わっていました。

 

 しかし、皆さん落ち着いて聞いてください。この力ははっきり言って、超! 使いづらいです。

 そもそも、神様たちは基本奔放すぎて、力を借りても大抵ろくなことが起きません。具体的な名前は伏せますが、ある神様に体を貸した時なんて、危うく日本の半分が蒸発しかけました。それくらい神様は制御不能です。

 

 さらにめんどくさいのは日本という土地です。

 神様は基本信仰されている土地や人々の間でしか力をふるえません。しかし、日本という土地は神仏習合と八百万の神という概念により、どんな神様でも力をふるえ、かつ意味不明な神様がバンバン生まれます。神様的に日本はオールスターゲームとかスマブラみたいなもんです。コントローラーは僕。登場キャラも、アイテムも、ディスク読み込みも、全部僕。

 

 いやマジほんと……つらい。

 

 もちろん神様たちに感謝してないわけではありません。神様たちのおかげで病弱だった体はかなり健康になり、今ではマラソンも(6kmまでなら)できます。視力は0.4まで回復しましたし、金運も上がりました。

 

 でもほんと……思いついたわけわかんない奇跡を起こすのは、勘弁してほしい……。

 

 畳から大量のバラが出るとかならまだ許せますが、勉強机にモモンガ十二匹も移住させるのはやめてください。夜な夜なガチャガチャの景品をうごかして、オペラやるのもやめてください。

 

 そんな自由な神様たちですが最近気になることがあるようです。

 

 それは僕のクラスメイトの天使ヶ原桜さんという、とっても優しくていい人(たぶんほとんどの神様よりずっと)が、悪魔に憑かれているということです。

 しかも悪魔を憑りつかせているのは、最近転校してきたクラスメイトの左門召介くんだそうです。確かに彼は転校初日に召喚術士(サモナー)やってますとか言ってました。本当だったんですね。びっくりです。

 

 で、神様たちは僕にお告げをするわけです。

 

『天使ヶ原桜を悪魔の手から救うのです』

 

 確かに天使ヶ原さんは気の毒だと思いますし、左門君は止めなければとも思いますが、5分おきにお告げ入れるのはやめてほしいです。目覚まし時計じゃないんだから。

 

 僕は神の使いとして行動を始めました。まずは彼女の現状を知らなければいけません。

 神様によれば天使ヶ原さんは無欲とも言っていい存在で、徳が高く、現在ぶっちぎりで天国入りが確定しているそうです。

 確かに彼女は、車酔いでげろを吐いたクラスメイトの下呂君のげろを受け止めてあげた逸話に違わぬ聖人です。一年生の時、彼女が普通に話してくれたのがきっかけで友達ができました。是非とも恩返しがしたいところです。

 

 見つけました! 彼女です!

 登校する天使ヶ原さんを見て僕は戦慄しました。彼女に憑りついた二柱の悪魔が原因です。

 

 一柱は確かゾロアスター教の悪魔で大したことはなかったと思いますが、もう一方は確か、七つの大罪を司る大悪魔の一柱であるレヴィアタンのライバル、べヒモスです。べヒモスにやられると猛烈におなかが減り、胃袋が爆発するまで食べ続けるそうです。

 これは想定外です。どうやら左門君は相当な腕を持つサモナーのようです。下手な神様では力を借りても返り討ちでしょう。

 

 あ! 天使ヶ原さんがべヒモスにやられてる! ……すごい、耐えてる。

 さすが神様の『今、死んだら自分のとこの天国に連れて行きたい人間ランキング』堂々の1位です。29位の僕とは比べ物になりません。

 天使ヶ原さんがスルーしたイチゴ大福をおやつに買った僕は、尾行を続けます。天使ヶ原さんには申し訳ないですが、サモナーを倒すには本体をたたくのが一番なので、左門君が来るのを待ちます。

 

 そして今のうちに神様に呼びかけておきます。神様は自由奔放なので、力を借りたいときに連絡がつかないことが多々あります。できれば武神の方とつながるといいのですが。

 

 神様、力を貸してください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あ、降太か。どうした』

 

 やりました! この声はアテナ様です! 

 ギリシャ神話の戦いの神の一人で、守る戦いが得意です。後は確か細かい仕事とかも好きだそうです。天使ヶ原さんを守らなきゃいけない今の状況では最高の神様です。性格も悪くありません。ちょっと威張った女子とか見ると虫と融合させようとしますけど、天使ヶ原さんなら問題ありません。

 

 アテナ様、僕はあの天使ヶ原桜を悪魔の手から守りたいのです。どうか力をお貸しください。

 

『なるほど。いいだろう! 天使ヶ原桜は高潔な魂を持つ人間! 私の力を使うがいい!』

 

 アテナ様はノリノリで力を貸してくれました。最近は人間と直接交流することが少なくなっているらしく、神様は割と甘い基準で力を貸してくれます。アテナ様はボトルシップ作るって言ったときもこれくらいノリノリでした。

 

 体全体に神の力の漲るのを感じます。神様の力は入れすぎると大抵よくないことが起きますが、アテナ様はしっかり考えて入れてくれるので安心です。ほかの神様は割と入れすぎます。

 

 うおォん!僕はまるで人間ブルドーザーだ。

 

 昂ぶる気持ちを抑えつつ左門君を待ちました。そして、ついにその時が来たのです。

 

 はっきり言って、僕はあほでした。11年間の経験をすっかり忘れていたのです。

 神様は自由奔放、そして快楽主義で自分勝手、慈愛はあってもどこか乱暴。そんな方たちなのです。

 

 左門君はやってきました。ラボラスという巨大で、()()()()()()()()()()()()()()()()()をまるでタクシーか何かのよう使って、飛んでいました。

 

 僕は神の力をあくまで借りているだけです。地獄の大総裁相手に自我を保ったまま戦うなんぞ、夢のまた夢です。

 

 そのときやっと理解しました。神様たちが何を望んでいたのかを。

 

 あの方々は左門君(強者)(弱者)が勝つという、王道にして、ひどく現実離れした物語を望んでいるのです。天使ヶ原さんをお姫様にして、(弱者)をたきつけていたのです。

 

 さらに、呆然とする僕を置き去りにして、左門君と天使ヶ原さんはラボラスに乗って行ってしまいました。

 わけがわからないよ……。

 どうやら様子を見るに二人の仲はさほど悪くないように思えます。

 

 どうやら、僕はさらわれてもいないお姫様(天使ヶ原さん)魔王(左門君)から救い出すという任務を受けてしまったようです。

 いったい僕はこの任務、成功することができるのだろうか――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――たぶん、むり。

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