神尾くんとカミサマ   作:パス太郎

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神尾くんと敵と味方

 どうも皆さんごきげんよう。今朝に引き続き僕、神尾降太は天使ヶ原さんを悪魔から守るために頑張りたいと思います。

 

 まぁ、相手がどうにもやばそうだってことはわかったんで、ここは穏便に行きたいところです。

 左門くんに直接言ったらやめてくれるでしょうか。僕はまだあまり彼とは仲良くないので、どういった反応が返ってくるか、判断が付きません。

 

 そもそも、どうして左門くんは天使ヶ原さんに悪魔を仕向けるのでしょうか。

 確かに彼女のように無欲なタイプは悪魔的には迷惑な存在でしょうが、結局は個人が起こすこ、たかが知れています。直ちにどうにかしなければいけない問題でもないと思うのですが。

 

 しかし、あれだけの腕を持つサモナーのやることです。きっとすさまじい理由があるのでしょう。彼女を使って、魔界へ続くトンネルを開くとかそんなとこでしょうか。

 

 さすがにまた死んで霊界探偵やるつもりはありません。どうにかして左門くんを止めなければ。

 

 六時限目終了のチャイムがなり、僕は真っ先に席を立ち、天使ヶ原さんに話しかけます。左門くんが少しこちらを見たような気がしますが、気にしません。

 

「天使ヶ原さん、ちょっといい?」

「うん? どうしたの神尾くん?」

「実は相談が。ここじゃ話しづらいから、えーと……こっち」

 

 僕はそう言った瞬間、ハッと気が付いて、教室の一角を見ます。視線の先にいるのは下呂くんです。彼こそが、非公式に活動している天使ヶ原さんのファンクラブの会長なのです。そんな彼は天使ヶ原さんに男子の影を見ると速攻でおう吐するという、まったくうらやましくない特技を持っているのです。

 一年生のころから割と交流があったとはいえ、こんな風に放課後呼び出すなんて、まるで告白そのもの! 僕にその気はありませんが、勘違いされても仕方ないでしょう。

 

 しかし、意外にも下呂くん、僕をスルー。

 

 あれー。どういうことだこれぇ。

 あれでしょうか、僕は真っ白っけで顔もあまり男性的とは言えません。二度ほど同性から告白されたこともあります。つまり、認めがたいですが。

 

 僕、男扱いされてない?

 

 そんな! 僕はれっきとした男です。好きな人だっています! 女子です!

 ああ、なんで天使ヶ原さんも何の緊張もなく、了承してくれるんですか……いや、断られたらそれはそれで悲しいのですが。

 異性から放課後呼び出されて、ほかの人に話しづらいことはなされるんですよ? どう考えたって告白じゃないですか! 僕なら間違いなくそう思います。

 

 もやもやした気持ちのまま僕と天使ヶ原さんは屋上に来ました。屋上って鍵空いてるんですね。いざとなったら神様に手助けしてもらおうと思いましたが、必要なかったようです。

 

 余計な体力を使わずに済んだとはいえ、僕の心はボロボロです。さっさと、本題切り出して、かえってふて寝することにしましょう。

 

「それで、神尾くん……相談て、まさか…」

「天使ヶ原さん」

「うん」

「悪魔に憑りつかれてますよね」

「え」

 

 天使ヶ原さんは僕の言葉が意外だったようで、驚いた顔で固まってしまいました。それはそうでしょう僕はそういった類の話はしたことありませんし、悪魔は普通の人間には見ることはできません。

 天使ヶ原さんの顔が、驚きからがっくりとした表情に変わります。

 

「どうしましたか?」

「いや少し、期待してたのと違って……」

「?………!?」

 

 これは!

 

「告白かと思いました?」

「いやそれは……」

 

 僕はまた一つ傷を作りました。

 

「……まぁ期待してた相談が何なのかは知りませんが。ともかく! 天使ヶ原さん、悪魔に憑りつかれていますよね!」

「え、ええっと……」

「隠さなくても大丈夫です。今朝あなたがべヒモスとブーシュヤンスタに襲われているところを見ていましたから」

「え!」

「あの悪魔たちが、左門くんに召喚されたということも知っています」

 

 僕の言葉を聞いて、天使ヶ原さんは先ほどよりもずっと驚いた顔になりました。

 彼女は少し、不安そうに僕に質問してきます。

 

「もしかして……神尾くんもサモナーだったりする?」

「いえ、僕は神の使いで……どちらかといえばシャーマンですかね」

「神の使い!?」

「はい。神様のお告げで、天使ヶ原さんを悪魔から守れと」

「神様が私を何で……」

「天使ヶ原さんのような無欲でいい人は神様大好きですからねぇ。モテモテですよ」

「へ、へぇ~」

「で、僕が何で天使ヶ原さんを呼び出したかといいますとね……実はお恥ずかしい話、今のところ左門くんに勝てる見込みがほとんどないんですよ」

「か、神様なのに?」

「はい……神様といっても僕はあくまで力を借りているだけですし、対するあっちは悪魔本人ががっつり来ます……ぶっちゃけむりゲー。というかむしろ何で天使ヶ原さんがべヒモスの誘惑に耐えられるのか聞きたいくらいですね」

「えーと、あれは別に気合いといいますか……根性といいますか」

「ええ!?」

 

 悪魔の誘惑を根性で耐えるって、なにこの人! この人のほうがよっぽど僕よりすごいよ!

 

「まぁとにかく、僕は天使ヶ原さんをできる限りで助けますから、何か困ったらどうか頼ってください」

「ありがとう、神尾くん! とっても心強いよ!」

「うんとっても心強いね」

「「へ?」」

 

 いったいいつの間に来たのでしょうか、屋上には左門くんの姿がありました。

 ところで左門くんのあの髪型ってどうなっているのでしょうか、あの悪魔的直角は悪魔にセットしてもらっているのでしょうか。僕気になります。

 

「ねぇ」

「はいぃ!」

 

 現実逃避は許さんと言わんばかりに、左門くんは僕に声をかけてきます。やめてください僕はただの石です。抵抗の意思はありません。

 

「きみ……」

「神尾降太であります!」

「……神尾くんさぁ。神の使いってマジで言ってんの?」

「は! マジであります!」

「ふーん」

 

 次の瞬間、左門くんは僕に向かってウィルオウィプスを撃ってきました。要するにただの火の玉なのですが、人間からしたらとんでもない威力です。僕はとっさに神様に力を借ります。

 

 ウィルオウィプスが僕の体に当たりますが、まったくの無傷です。それは火の神様であるオグンの力が僕に宿ったからですが、正直言ってまったくの偶然です。もし、明日同じことをされたら死にます。

 

 僕は内心の焦りを必死で隠しながら、言います。

 

「どどどどうですか、ししし信用してくれました?」

 

 隠せませんでした。

 しかし、左門くんはそれなりに驚いたようで、目を見開いています。

 これで引き下がってくれればいいのですが……あ、だめだ完全に殺る気の笑顔だ。

 

 僕はすでに過剰に入れられた神の力で頭がボーとしてきています。これ以上はやばいです。リミッターが外れてしまいます。

 左門くんが僕に次なる一手という名のとどめをさそうとまさにその時です。

 

「ま、まって左門くん! 神尾くんもうふらふらだよ! これ以上は……」

 

 さすが、天使ヶ原さんです。こんな危険を冒してまで、僕を助けようとしてくれるなんて……ここはこの流れに乗っけてもらいましょう。

 今朝の様子を考えるに思ったより左門くんは天使ヶ原さんに対して好意的なようです。ここは天使ヶ原さんを思わせる感じで……

 

「天使ヶ原さん……僕も広義では天使……仲間として、あなたを危険にさらすわけには」

「天使じゃねえよ」

 

 突っ込みが入ってしまいましたが、これで左門くんは僕に天使ヶ原さんとのシンパシーを感じて、少しは温情を……

 

「えー、天使ヶ原さんの仲間かー。じゃあ……僕は天使ヶ原さん『大っ嫌い』だから、きみにもなにか……」

 

 しまったぁ!! 思ったより左門くんは屈折した人だった!! 

 なにか、なにか妙案を出さなきゃまずい。何か……何か……!

 

『降太……降太よ……私の声が聞こえますか?』

 

 こ、この声はケロ様! 土地神のケロ様じゃないか! まさか僕のピンチに駆けつけてくれたのか? た、助かった! いったいどんな妙案を。

 

『明日……ロールケーキ持ってきてくれませんか?』

 

 今それどころじゃねぇんだよ!! ……あ。

 カッとなってしまったことで、神の力の氾濫を抑えていたリミッターが外れてしまいました。やばいです。これはほんとにやばいです。

 

 今体内に入っていたのが火の神の力だったために僕の体は激しく炎上し始めました。熱いとかはないですが、近くのものが燃えてしまいます。もちろん天使ヶ原さんも危険です。

 

「離れて!」

 

 僕はそう叫び、走り出しました。このままでは学校もろともお陀仏です。かくなる上は屋上からのダイブしかありません。神の力が入っている今なら、うまくいけば捻挫くらいで済むかもしれません。

 

 僕は炎で前がよく見えず、走り回り、そしてその勢いのままに柵を乗り越えジャンプしました。

 ああこれ思ったより高いですね。やばいかもしれません。 

 

 僕の体は地球の重力に引っ張られていきます。それに合わせてか体内時間も引っ張られて、やたら周りがゆっくりに感じます。

 

 いよいよ地面と再会するという所で、僕は不思議な感覚に襲われました。まるで大きな手に受け止められたような、比較的小さな衝撃です。

 

 それを認識したときに、ちょうど暴走が止まり、視界が開けました。

 

 僕の体は、炎を操る巨大な魔人、イフリートの手の中にありました。僕が驚きでうめいていると、魔人は姿を消し、僕の体は地面に落ちました。

 

 しばらく地面に呆然と座っていると、天使ヶ原さんと左門くんが下りてきました。

 

「神尾くん大丈夫!?」

「う、うん。え、えーと左門くんなんで?」

 

 僕の質問に左門くんは「別に……」と答えて、歩いて行ってしまいました。僕は天使ヶ原さんに手助けされながらなんとか家に帰りました。

 

 帰っている途中、天使ヶ原さんに左門くんのことを聞きました。

 彼は僕が神様の力を持っているということに初見で気づいていたらしく、僕が天使ヶ原さんを呼び出したとき、戦闘を警戒して、あらかじめ魔方陣を用意していたのだとか……しかし、予想外の僕の弱さにびっくりしたらしいです。

 どうやら僕が思っていたよりさらに僕と左門くんの力の差は大きいようです。

 ついでに、普段の彼の様子を聞いてみましたが、やっぱり左門くんと天使ヶ原さんの仲はあまり悪くないように思えます。

 ていうか、地獄のナンバーエイトとライバルっておかしいでしょ。人間がなっていい強さの範疇超えてるよ……

 

 ああ、神様。なぜあなたは僕にこんな試練をお与えになるのですか。……ええ、わかってます。面白いからですよね。

 

 しかし、今日の成果はちゃんとあります。僕は晴れて天使ヶ原さんと協力体制になったのです!

 左門くんに勝てる気とかは全くしませんけどね……

 

 次の日、僕は左門くんと天使ヶ原さんにロールケーキを差し入れました。

 左門くんは助けたのは気まぐれだったといっていましたが、ちゃんと受け取ってくれました。

 彼はやっぱり思ったよりも悪い人じゃないのだと思います。

 

 

 

 

 

 もちろんケロ様にも差し入れはしました。

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