ゼロの名の戦士―その未来を守るために―   作:水卵

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久しぶりの三日置き更新!

しかしまぁ、その分文字数が4000字と少ないんですけどね……。




Episode10:ATTACK FROM THE FUTURE

 ふぅーと、息を吐いて詩音はゲームセンター内になるベンチに腰を下ろした。

 詩音と真姫のエアホッケー対決は詩音の圧勝になるかと思われたが、思いの外接戦となった。序盤こそ詩音がリードしていたが、徐々に真姫が追い上げていき、油断していたところをつかれ同点となり、一回戦目は時間切れ。すぐさま二戦目を始めるが決着がつかず、三ゲーム目にしてようやく詩音が勝利をもぎ取った。

 三ゲームもやればおのずと汗をかいてくるため、次のゲームに行く前に休憩を取っていた。横に視線を動かしてみれば真姫が自動販売機を前に何を買おうか迷っている姿が見える。

 

(ったく、意味わかんねぇ)

 

 詩音は改めて、今の状況を客観的に捉えその奇妙さに苦い顔をした。

 まったく、どんな理由があればアイツとゲームセンターで遊ばなければいけないのか。普通ならあり得ない状況、しかしその『あり得ない状況』が今目の前で起こっていることに対し、少々物申したい気分だった。

 

 

 

 

「お母さん、次これやりたい!」

 

 

 

 

 と、そんな風に考え事をしていると、詩音の耳に元気な子供の声が聞こえてきた。見てみれば小学校低学年くらいの男の子が母親の手を引きながら、さっきまで詩音たちが遊んでいたエアホッケーを指差していた。

 

「はいはい、そんなに焦らないの」

 

 母親は仕方ないわね、といった様子で息子を連れてエアホッケーへと移動した。その後ろから、父親と思われる人物とエアホッケーをやりたいといった男の子にそっくりな子が──おそらく双子だろう──現れて、二対二のゲームが始まった。

 母親と組んだ男の子は見るからに元気のいい男の子で、点数が決まるごとに母親とハイタッチを交わす。母親もそれに笑顔で応じるあたり、よほど仲なのだろう。反対に、父親と組んだ男の子はとても悔しそうに頬を膨らませている。

 

「…………」

 

 なんとなく、詩音はその視線を動かさず親子を見続けた。同時に、詩音の脳裏に一つの思い出が浮かび上がってくる。

 

 ──ほら詩音! 右! 右よ! 

 

 ──詩音! シュートよ! 

 

 ──おめでとう、詩音。

 

 ──すごいわよ、詩音。もうピアノ弾けるようになったの? さすがね。

 

 ──詩音、またケンカしてきたの? 仕方ないわね。

 

 一人の女性が、笑顔で詩音を褒めてくる。心配した表情で詩音を見てくる。

 そんな思い出が目の前の親子と重なる。

 だが、その思い出は次第に詩音の表情が暗くしていき、寂しそうな表情へと変えていく。そして、無意識にだろうか。詩音の口が勝手に開き、とても小さな声が漏れる。

 

「──さん」

 

「はい」

 

 突然、詩音の視界に黒い缶が入ってきた。

 少し驚いた様子を見せる詩音は、それが缶の飲み物だとわかると、視線を上げてそれを差し出してきた人物を見上げる。

 

「…………」

 

「早く受け取りなさいよ。って、何泣いているの?」

 

「……! べ、別に泣いてねぇよ! これは、あれだ、その……あーもう! なんでもいいだろ!」

 

 知らない間に涙が流れていたのか、頬に感じる湿った感覚を袖で拭う。そして誤魔化すように目の前の缶を乱暴にとると、プルタブを開けて口をつけるが、流れ込んできた液体の味を感じた瞬間詩音はむせた。さすがに中身を吐きだすことはなかったが、何度か咳き込んで一体何の飲み物だったのか缶を見る。

 

「お前、なんでコーヒー買って来てんだよ!」

 

「え?」

 

「え、じゃねぇ! 俺はコーヒー嫌いなんだよ! つか、普通こういう時はお茶とかだろ!?」

 

「あなたがすぐに飲める缶のやつがいいって言ったんでしょ!? コーヒー系しかなかったのよ!?」

 

 真姫がそう言うと、詩音はぐっと言葉に詰まらせ、舌打ちをするとベンチから立ち上がりどこかへ行こうとする。

 

「どこ行くのよ?」

 

「トイレだ。これを捨ててくるんだよ、俺は飲めねえからな。それとも、お前が飲むか?」

 

「飲むわよ」

 

「は?」

 

「え?」

 

 眉間に皺を寄せ、何言ってんだコイツ? という視線を向ける詩音と、自分が何を言ったのか次第に理解していき顔を赤くする真姫。真姫も無意識に言ったのか、「あ、いや、ちが」と何度も口ごもっていた。

 二人の間に何とも言えない微妙な雰囲気が漂う。

 そんな中突如、

 

 

 

 

 建物の外から爆発音と悲鳴が聞こえてきた。

 

 

 

 

 爆音とともに建物全体が揺れ、詩音は膝を着く。

 一体なんだ? と瞬時に意識を切り替える詩音。同じくその場にぺたんと座り込んだ真姫の方を一瞥して安全を確認。真姫も事態の急変についてこれていないのか、目を白黒させていた。

 

「しおーん!」

 

 いつもや陽気な声であるデネブも、かすかな緊張感を含んだ声音で詩音を呼び駆け寄ってきた。

 

「デネブ、一体何、が……」

 

 しかし、だんだんと語尾が落ちていく詩音。無理もない、こちらに来たデネブはその両手に大きなカメとクマのぬいぐるみを抱えているのだ。デフォルメされ可愛らしい姿となったぬいぐるみに、首には景品らしき花びらが掛けられている。その何とも緊張感に欠けた姿を見るだけで詩音は脱力感に襲われた。

 一発ぶっ叩きたい衝動にかられる詩音だったが、グッと飲み込むとデネブに今どういった事態なのかを聞く。

 

「イマジンだ」

 

「アイツのか?」

 

「いいや、未来から来たイマジンだ。どうやら未来の時間(向こう)で契約を完了させたみたい」

 

「となると電王(向こう)の役割か」

 

 建物の外からは未だに悲鳴と爆発音が聞こえてくる。ゲームセンター内にいる人々は野次馬精神から外に行くものや、係員の案内に従って避難する者、突然の事態に泣き出す子供がいる。

 

「ちょっと!」

 

 詩音が状況を冷静に分析し、動こうとしないこと不審に思ったのか、真姫は声を荒げて詩音の肩を掴む。

 

「これ、昨日と同じ怪人の仕業なんでしょ? なら何でここで立ち止まってるのよ!?」

 

「確かにイマジンの仕業だが、今回はゼロノス(俺たち)の敵じゃない。電王の方だ。自分たちの役割じゃない相手に、無駄にカードを使いたくないんだよ」

 

「はぁ? ふざけたこと言ってんじゃないわよ!! この事態を放っておくってこと!?」

 

「放っておくつもりはない」

 

 即答だった。詩音は真姫の問いに即答しながら、デネブを見る。

 

「デネブ、アイツらが来るまで時間を稼げるか?」

 

「了解。あ、詩音これお願いね」

 

 デネブは両手に持ってたクマとカメのぬいぐるみを詩音に預けると、ゲームセンターを出て行く。

 

「同じイマジンであるアイツなら、少しは時間を稼げるだろ。俺たちは避難するぞ」

 

「あなたはあくまで戦わないつもりなのね」

 

「…………」

 

 険しい目つきで睨んでくる真姫。詩音はそれを無視して、あたりを見回す。扉らしき物があれば、そこからゼロライナーに避難することができる。しかし、周囲いに扉はなく、トイレのドアを利用しようにも係員の声が飛び交っており向かうの難しいだろう。

 

「ひとまず、外に出るぞ」

 

 詩音は真姫を見て言う。外へ出ることは危険を伴うが、ここにとどまった場合建物の下敷きになりかねない。それを避けるために詩音は真姫の腕を掴むと外へと駆け出す。避難経路に向かわない詩音を呼び止める声が聞こえてきたが、詩音は無視して走る。

 外に出た瞬間、突如路肩にあるタクシーが爆発した。

 詩音と真姫はハッとなってそちらに目をやれば、緑色の亀のようなイマジン──トータスイマジンが暴れていた。その口から黒い鉄球を放ち、周囲のビルを破壊していく。鉄球はいとも簡単にビルを破壊させ、火災を起こし人々を恐怖へと突き落としてく。

 交通網はあっという間に麻痺し、人々の悲鳴が、子供の泣き叫ぶ声があたりに響く。我先にと逃げていく人々。鉄球の流れ弾が人々を襲い、倒壊したビルの瓦礫の下敷きになり息絶える人々、日曜日という休日があっという間に地獄絵図に代わって行った。

 

「うそ……なによ、これ」

 

 真姫は目の前に広がる光景が信じられないといった様子でつぶやく。

 また自分の目の前で怪人が暴れている、しかも今度は周囲を破壊し人の命までも奪っている。明らかに過去二回以上に過激だった。

 敵は自分を狙っていたのではないのか? 

 わからない。だが、確実に今回の怪人は自分ではなく周囲の破壊を目的としているようだった。

 

「──っ危ない!!」

 

「──おい、ばかっ!!」

 

 イマジンの破壊行動に目が行っていた真姫だが、視界の端に泣いている女の子を見つけ詩音の腕を振り払って駆け出す。女の子は恐怖からその場に座り込み泣き叫んでいた。あのままでは危ないと判断した真姫は、急いで少女の元へと向かう。後ろから詩音の声が聞こえてくるが、聞いているひまなどなかった。

 真姫は少女の元へたどり着くと、

 

「もう大丈夫よ」

 

 と、優しく問いかけて少女を立ち上がらせる。

 しかし、

 

 

 

 

 ──ドゴッ、と上の方から明らかに何かが崩壊する音が聞こえた。

 

 

 

 

「────え?」

 

 真姫は上を見上げて頭が真っ白になった。

 真姫の目の前に広がっていたのは、倒壊したビルの瓦礫。それがゆっくりと落ちてきていたのだ。

 空白になった真姫の思考ではそれをただ見ているだけ。

 故に────。

 

 

 

 

 ──音を立てて瓦礫が降り注いだ。

 

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

 

 一方、トータスイマジンの破壊活動は続いていた。すでに周囲に人影は見当たらないが、トータスイマジンは構わず口から鉄球を放つ。

 

「あー、めんどくさいなぁ」

 

 その声音は本当に面倒くさいと思っているのか、非常にのんびりとしており次第に攻撃の手数も少なくなっていた。それでも、やめることはしない。腐っても彼(?)はイマジンだ。任された任務がある以上それを果たさなければならない。

 ということで、再度鉄球を放つのだが、突如出現した白い新幹線の様な列車に阻まれてしまった。

 

「んー? なぁんだぁ」

 

 列車は止まることはせずに走り去って行く。

 その後を視線で追うトータスイマジンだったが、自分への危害がないとわかると破壊活動に戻ろうとしたのだが、列車の走り去った後に一人の青年が立っていることに気が付いた。

 

「あー、おまぁえー、たしかぁ」

 

 トータスイマジンはその青年に見覚えがあった。

 女性にも見えなくない童顔にダークブルーの少し長い髪。赤い瞳は垂れ目ではあり普段は頼りない印象を受ける細身の青年だ。しかし、今の青年の瞳には力強い意思が込められており、トータスイマジンが覚えている姿とは別人のように見える。

 青年は睨みつけるように視線を細めてトータスイマジンを見ると、取り出したベルトを腰へと装着する。

 

「それ以上はさせない。行くよ、モモタロス」

 

『おうよ』

 

 青年はベルトの赤いボタンを押す。するとベルトの中央部分が赤色になり待機音があたりに鳴り響く。

 そして青年は、取り出した黒いパスをベルトへとかざす。 

 戦士となるための、合言葉も忘れずに──。

 

「変身」

 

『ソードフォーム』

 

 瞬間、青年の体を黒いスーツが包み込み、同時に赤い何かが青年へと憑依することで、赤いアーマーが形成され装着される。最後に、桃をモチーフにした電化面が装着され、時の守り人──電王の変身が完了された。

 そして、変身を終えた電王は己を示すと、キメ台詞と共にポーズをとる。

 

 

 

 

「俺、参上!!」

 

 

 

 





まさかの電王登場!
最初の構想では一番最後に登場させる予定でしたが、プロットを練り直したら結構早まりました(笑)
そのおかげで意外と区切りがよかったので今回はここで終了です。

次回「Episode11」に続きます……。

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