ゼロの名の戦士―その未来を守るために―   作:水卵

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お久しぶりです。今まで更新せず申し訳ありませんでした。
リアルの都合やモチベにより不定期となっておりますが、完結目指して頑張りますのでよろしくお願いします。


Episode13:OBSERVER Ⅱ

 ──観測者。

 その単語を聞いた瞬間、今までもやっとしていた一部分が晴れて行くのを感じた。もちろん『観測者』という単語を聞いたのは今が初めてだし、それがどういった意味を含んでいるのかは全くわからない。

 しかし、まるで初めて見る景色に既視感を感じるかのように、『観測者』という単語には身に覚えがあった。

 

観測者(かんそくしゃ)……」

 

 改めてその単語を呟いてみる。

 

(うん……知ってる。初めて聞いたはずなのに、私はこの()()()()()()()()()……)

 

 正確な意味は分からない。それでもこの単語を知っているという実感がわいてくるのは確かなことだった。

 

「観測者。時の流れを観測し記録する者。時の管理者とも言われているらしい。観測者が観測しているからこそ、時は正常に流れている。その存在は秘匿であり、唯一『ゼロノス』となる者だけがその詳細を知ることが許されている」

 

「ゼロノス……あなたが変身する戦士の名前よね」

 

「ああ。ゼロノスは『観測者』を守護する者。膨大な『記録』を持つ観測者の記録を整理し、時には戦士として戦うのが主な役割だ。まあ、俺は今回の事件を解決するために、一時的にゼロノスの力を使っているだけだから、正確な『ゼロノス後継者』じゃない。だから『観測者』に関しても深くは知らない」

 

「……それって大丈夫なの?」

 

「お前の説明することに関しては何の支障もない」

 

 疑いの眼差しを向ける真姫だったが、詩音はそれをスルーして相変わらずの強気な態度で言葉を返す。その態度が気に食わないが、ここまで来て下手に喧嘩になっても仕方がない。なぜだか詩音との会話は下手をすればケンカに発展しかけないと頭のどこかで感じており、下手に言い返すよりさっさと説明に進んだ方がいいと思っていた。

 故に、用意されたトマトジュースを一口飲んでから切り出す。

 

「……観測者、それが私が狙われる理由なのね」

 

「ああ。『観測者』であるお前を殺すことがヤツの目的だ」

 

「…………」

 

 ごくり、と真姫は息を飲んだ。

 ──西木野真姫の殺害。

 それが敵の目的だということは頭の片隅で思っていたことなのでそう大きな驚きはない。怪人に二回も命を狙われたのだから、そういった予想がつくのは自然なことだ。

 しかし今こうして詩音の口からはっきり告げられると、言いようのない実感と恐怖が湧き上がってくる。

 

「私を殺して、望む時間を手に入れるのが敵の目的?」

 

「ああ。お前を殺して奴は望む時間を手に入れる。そして今のお前の状況を見るに、今度こそ確実に奴は望む時間を手に入れるだろうな」

 

「……どうやって」

 

 西木野真姫という少女を殺して、一体どうやって『望む時間』というのを手に入れるのだろうか? 

 

「それを説明するためには、『観測者』という存在の詳細を説明しなきゃいけない」

 

 そう言って詩音は真姫の方に向き直り、改めて向かい合った上で説明を始める。

 

「『観測者』は、厳密に言えば()()()()()()()()()()()()()()。『観測者』はその性質上『通常体』と『観測体』の『二つの人格』に分かれている。

 時間の中を普通の人間と同じように生活する『通常体』の人格。

『通常体』を通し、時を観測する『観測体』の人格。

 この二人を合わせた呼び名が『観測者』だ。

『通常体』の役割は『観測体』が時を観測しやすいようにするために観測のポイントとなること。『通常体』がその時間を過ごすことで、『観測体』はいつどこでどの時間に何が起こったのかを観測する。

『観測体』はつまり、『通常体』を通して時間を観測する記録係って訳だ。そして『通常体』はカメラのレンズのような物と思えばいい。

 この二つの人格は互いにその存在は認識できず、意思の疎通も行えない。特別なことがない限り『通常体』であるお前はただの人間と変わりのない存在だし、『観測体』が持つ『記録』を見ることもない。いたって普通の生活を送る存在だ」

 

「けど、今は違う」と詩音は続ける。

 

「お前がイマジンに襲われたことで、今や『通常体』と『観測体』の繋がりは相当強いものになっている。この繋がりが強くなればなるほど、『通常体』であるお前は無意識のうちに『観測体』の記録を見たり、時の改変に巻き込まれなかったりする。そして、このままリンクが強くなれば本来ありえるはずのない『観測体』との意思疎通が可能になる。もしそうなれば、お前を殺した場合本来であれば見つけるのが困難な『観測体』を容易に発見できる。もちろん、『ゼロノス』だけじゃなくて『敵側』もな」

 

 淡々と続けられた説明に一区切りついたのか、詩音は湯呑に手を伸ばしそして中身が空なことに気付いてデネブに注ぐよう要求する。

 一方、詩音の説明を聞いた真姫はそれまでの説明を脳内でまとめていた。

 曰く、観測者とは『時を観測し記録する者』。

 曰く、観測者とは『通常体』と『観測体』の二つに分かれる。

 曰く、真姫は『通常体』の方で『観測体』の役割を担う別人格のような存在がいる。

 曰く、この二人は互いに不干渉。しかし怪人に襲われ続けた結果このつながりは強くなっており、このまま襲われ続ければ不干渉であるはずの互いに干渉できるようになる。

 そして敵が今真姫を殺すと、本来であれば時間がかかる『観測体』の捕獲が容易となっている。それはつまり敵の目的である『望む時間』を簡単に手に入れられる状態だということ。

 

「…………」

 

 真姫は己の両手を見て、本当に自分がそんな存在なのかと思う。別人格がいるようなもの、という例えで説明されたが、真姫にはそんな実感はない。いや、不干渉の存在なのだから実感がないこの状態が正しい。もし実感を感じていたらそれはある意味問題があるということだろう。

 しかし、それを考慮したとしても自分が『特別な存在』であることの実感はわいてこなかった。

 

「どうかしたか?」

 

 真姫の様子が気になったのか、デネブが注いだ二杯目の茶を飲みながら聞いてくる詩音。

 

「別に……なんというか、実感? がないっていうか。いきなりそんな説明されても、わからないっていうか、うんうん、わかっているようなわかっていないような。この中途半端な感じが、なんか落ち着かないっていうか……」

 

「ま、お前のその反応がある意味正解だ。もしここで別人格を認識できる、なんて言われた方が問題だ」

 

「わかってるわよ」

 

 ある意味この落ち着かないことが正しい。それはわかってはいるが、どうも痒いところに手が届いていないというか、むずむずとしか感覚が正直言って気色悪かった。

 その様子を見ていた詩音は何を思ったのか、一瞬だけ視線を鋭く細めるとデネブへと問う。

 

「デネブ、別にこいつが『時の修復』を見ても問題はないよな?」

 

「うーん、どうだろうなぁ。今の真姫さんの具合を見るに問題はなさそうだけど……」

 

「なら、見てもらった方が早い。こいつの場合はその方がいいだろ」

 

 そう言って詩音は立ち上がると、

 

「ついてこい」

 

 と、真姫に言った。

 顎で指示されたことに、ムカッとしたが文句を言う前にドアをくぐってしまい、あとを追いかける形で真姫は詩音の背中を負った。

 二人が向かったのはゼロライナーの後部にあるデッキ。以前真姫は詩音がゼロノスとなってカマキリの姿をしたイマジンと戦っているのをここで見たことがあるため、初めてではないがやはり特別な場所に来ると驚きはある。

 ゼロライナーは普通の列車と同じような速度で走っているため、デッキに出れば当然風が真姫の髪を暴れさせる。それを手で押さえながら目の前に広がる光景に息を飲んでいた。

 

「ここは……」

 

 視界いっぱいに広がる世界は幻想的な空間だった。砂漠のような一面に荒野のような地平線。先ほどまでビルが溢れる東京の街にいたはずなのに、今は何もない空間が広がっている。

 

「ここは、簡単に言えば時の中だ」

 

「時の中……?」

 

「ま、今は別に深く説明するつもりもないし理解する必要もない。お前が見るべき光景はこれだ」

 

 真姫としては詳細な説明を求めたがったが、それよりも先に目の前の光景が変わったことで意識がそちらに引き寄せられた。

 

「な!?」

 

 再び驚きに襲われる真姫。目の前に広がる光景は紛れもなく破壊されたつ強の街だった。

 倒壊したビル、道路を埋め尽くす瓦礫の山、かすかに聞こえる悲鳴や怒声、ゼロライナーが空を走っているためか詳細なところまでは見れないが、それでも十分に目の前の光景が地獄絵図だと理解できる。

 

「ひどい……」

 

 これは間違いなく先ほどのイマジンが暴れた爪痕だ。真姫を狙ったものではなく、ただ破壊するだけの行動を起こした敵。こんなものをわざわざ見るためにここに呼んだのか? そんな怒りとも呼べる感情が湧き上がってくる中、信じられない現象が起きた。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。ビルだけではない、道路を埋め尽くしている瓦礫やその下敷きになったと思われる人、ケガをした人を助けるために来た救急車など、それらすべてが()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「なに、これ……!?」

 

「これが『時の修復』。イマジンによって破壊された時間は、『特異点』という存在によってこうやって修復されていく。()()()()()()()()()()()()っていう時間にな」

 

「…………」

 

「考えてもみろ。お前がこの前通り魔に襲われたとき、その後警察が来たりしたか? テレビニュースで取り上げられたか?」

 

 あ、と真姫は小さな声を上げた。カマキリのイマジンと詩音が戦う前、真姫は刃物を持った男に襲われた。正確に言えばマンティスイマジンが憑依していた人間だが、それでも傍から見れば刃物を持った男に襲われたことに違いはない。

 あの時はその後の出来事のせいで色々吹っ飛んでしまっていたが、よくよく思えばあの場には真姫たち以外にも大勢の人がいた。それなのに後日警察がやってくるわけもなく、通り魔事件としてニュースに取り上げられることもなく、()()()()()()()()()()かのように時が過ぎて行ったではないか。

 

「あれも、時の修復ってやつなの?」

 

「まあ、似たようなものだ」

 

「似たようなもの?」

 

 詩音の返答が気になりつい反射的に聞き返す真姫だったが、詩音は答えるつもりはないのかそっぽを向いてしまう。

 

「ちょっと──」

 

「──さて、これで修復される前の時間を知るのは『特異点』と俺と『観測者』であるお前だけ。そのほかの普通の人間たちは知らない」

 

 追求しようと迫った真姫を遮るように詩音は言った。

 

「そして、ここからがお前の問いに対する答えだ。『どうやって「観測者」を殺した後、望む感を手に入れるのか?』、その答えは『「観測体」を移動させる』だ」

 

「え? 移動?」

 

「『観測者』が殺されると、まず『通常体』と『観測体』のリンクが切れ、時の観測が不可能となる。『観測体』は『通常体』を通して時の観測を行っているとさっき言ったよな? つながりが切れたことで、『観測体』は『通常体』を通しての観測ができなくなるんだ。そして『観測体』に観測されなくなった時は一時的な崩壊を始める」

 

「崩壊って……!? どうして!?」

 

「観測されなくなれば崩壊するのは当たり前だ。詳しいことは知らん。そして時が完全に崩壊するまでは制限時間があり、この制限時間内に再び『通常体』と『観測体』のリンクを繋げられれば時の崩壊は止まり、正常な時へと戻る。だがな、ここで『観測体』が今まで観測していた時間とは別の時間を観測した場合、今まで観測していた時間は完全に消滅し『観測者』の記録からも消える。

 例えば、今の修復前の時間を『観測体』が観測を続けた場合、あの被害で亡くなった人は亡くなったままだし、破壊されたビルはそのままでこの先大きな爪痕を残し続ける。文字通り、地獄の日々が待っているわけだ」

 

「──っ」

 

 修復されなかった未来。

 それは詩音の言った通り地獄のような未来だろう。トータスイマジンの暴れた爪痕は大きく、きっと多くの被害が出ているに違いない。亡くなった人、ケガをした人、一生消えない恐怖を味わった人、そしてあの親子だって一歩間違えば母親がなくなっていたかもしれない。しかし、先ほどの修復でこれらすべては先ほどの修復でなかったことになった。修正され、何変哲もない日常が流れる時間になったのだ。

 だが、それらが『残った未来』を『観測者』を利用すれば現実に出来る。敵がどんな時間を望んでいるのかはわからないが、もしイマジンの襲撃によって破壊した時間を継続させるのが望みの場合、あの地獄絵図のあとの生活が待っている……。

 

「なによ、それ……!」

 

「考えるだけでも恐ろしいだろ? だけどな、ヤツが望むのはそんな単純な時間じゃない。ヤツが行おうとしているのはもっと複雑かつ不可能なことだ。もし実行した場合、あらゆる時間が消滅する。もちろんこの時間もすべてな」

 

「なっ!? 消滅って!? ──っ!」

 

 瞬間、真姫の脳裏にビジョンが走る。

 倒れ込む女性、女性に駆け寄ろうとする少年。しかし少年の体は倒れ込み、やがて体が砂のように消えて行くふたり。

 とても奇妙で、断片的で、ほんの一瞬しか浮かび上がってこなかったその光景は同時に襲ってきた頭痛の痛みに塗りつぶされていく。

 

「ァ……ぁぁあっ」

 

 頭を押さえ、膝を着いてうずくまってしまう真姫。

 

「──!? おい! どうした!?」

 

 真姫の様子が突然変わったことに、詩音も驚きの声を上げながら駆け寄る。しかしその時すでに真姫に意識はなかった。

 

「デネブ!?」

 

 車内にいるデネブに声を飛ばし、詩音の只ならぬ声を聞いてやってきたデネブもまた、真姫の様子に声を上げるのだった。

 

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

 

「ありがとう、送ってくれて」

 

「うんうん。それより真姫さん大丈夫なの? 何ともないの?」

 

「うん、大丈夫よ……」

 

 どうもやりにくい、と真姫は感じていた。というのも、目の前にいる詩音の表情が笑顔で、纏っている雰囲気が穏やかなのだ。いつもの他人を寄せ付けないツンケンとした雰囲気とは真逆の姿に戸惑いを隠せないでいた。

 しかしこれは仕方のないこと。今の詩音は見た目こそ詩音そのままであるが中身はデネブなのだ。故に髪は伸びて黄緑色のメッシュが入っている。

 ツリ目のツンケンとした雰囲気の詩音の体に、温厚な性格のデネブが憑依した状態であると、何とも言えないミスマッチ感が漂ってくる。

 

「……本当に覚えていないの?」

 

「うん」

 

 心配してくる詩音の表情が何とも言えない。

 それはともかく、なぜこんなにD詩音が真姫を心配しているのかというと、ゼロライナーで倒れたのが原因だ。もちろん意識を失って倒れたのならば誰でも心配するのが当たり前なのだが、真姫はそのことを覚えていない。真姫にしてみれば、デッキにいたと思ったら、目が覚めた途端車内で寝ていたのだ。

 突然倒れた、と詩音に説明されたものの真姫には()()()()()()、結局大事を取るために帰宅することになった。

 真姫としては、もしかして『観測者』としての力が働いたのではないか? と予想したのだが、「ただの疲労だろ」と詩音が強引に結論付けてしまった。

 帰宅することになれば、当然詩音は見送らなければいけない立場なのだが、なぜか行きたくない様子を見せたため仕方なくデネブが憑依する形となり現在に至る。

 

「……本当に『観測者』が影響していないの?」

 

「うーん、真姫さんが何も覚えていないとなると、こっちも説明のしようがないからな」

 

 そう言って苦い表情をするD詩音。

 

「……うん、わかった。今日はありがとう。じゃあね」

 

「うん、またね!」

 

 真姫が自宅の扉を開け、その姿が見えなくなるまでD詩音は手を振り続けた。そして真姫の自宅からわずかに距離を取ると、詩音の体からデネブが分離する。

 

「…………」

 

「……詩音」

 

 詩音の表情はツリ目の効果も合わさり、より厳しいものへとなっている。

 

(あいつ、気を失う寸前、俺の名前を呟いたよな……気のせいか?)

 

 ゼロライナーが走っていたためよく聞き取れなかったが、真姫が気を失う寸前『詩音』と呟いていたような気がした。別にそれがただの呟きならば特別に気にかけるようなことではない。ただ単純に詩音の名前を呼んだだけかもしれないのだから。

 しかし、その声音が、耳に届いた雰囲気が、忘れもしない()()()()()に重なって聞こえたのだ。詩音が()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()──。

 

「……なあ、デネブ。カードが残されてたとしても、もうあの時間は『観測者』の中にはないんだよな?」

 

「それは……」

 

 ──だよな。と詩音は返答がないことで察した。

 もうあの時間は『観測者』が持つ『記録』の中にはない。何度も確認したし、何度もあると信じた。

 しかし結果は『ない』。

 もうあの時間は、()()()()()()()にしか残されていのだ……。

 

「わるい、今のは忘れて────」

 

 くれ、とは続かなかった。突如詩音の表情に緊張が走り、同時にデネブも詩音にぶつけられる気配に気づいた。

 

「…………」

 

「……詩音」

 

「……俺一人行く。お前はここでアイツを見張ってろ」

 

「なにを言って──」

 

「──囮かもしれないだろ」

 

 その一言でデネブの言葉を遮り黙らせる。

 視線で詩音の考えを読み取ったのだろう。デネブは渋々頷くと一歩後ろに引きさがった。

 

「……頼んだぞ」

 

「詩音も、気を付けて」

 

 ああ、と答えて詩音は走り出した。

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

 

 詩音がやってきたのは立体駐車場。先ほどから殺気をぶつけてくる相手は詩音の出方を待っているのか、殺気を放ってくるだけで攻撃をしてこない。その点を不可解に思い、一番近くにあった戦いやすそうなここを選んだのだが、果たしてどう出るか……。

 

「……いい加減出てきたらどうだ? 殺気をバンバンぶつけやがって、その割には攻撃してこないってのはどういうつもりだ?」

 

「…………」

 

 詩音がやや煽り気味に声を飛ばすと、一台の車の影から一体のイマジンが姿を現す。ボロボロの絹を纏い、その手に鎌の武器を持つことから死神を連想させるイマジンは、声を発さず無言で詩音を見つめる。

 

「死神……って感じだな」

 

「いかにも。俺は死神。貴様を殺す者だ」

 

「その割には、すぐに俺を殺さなかったな。あの場で殺せば、アイツも俺も両方殺せたのに」

 

「それはならん。今彼女を殺しても、『あのお方』が望む時間は手に入りにくい。彼女が『あのお方』を観測し、百パーセント『あのお方』が望む時間が手に入る時こそ、彼女を殺すタイミングだ。そして貴様は、『あのお方』を唯一認識できる人間。そう簡単に殺してはならないと、言われている」

 

「そう命じられているにしては、殺気をぶつけてくるんだな」

 

「殺すなとは言われているが、戦うなとは言われていない」

 

 そう言って、目の前に死神は武器を構える。

 膨れ上がっていく殺気。

 詩音にかかるプレッシャーも大きくなっていく。

 

「そして、些か貴様の邪魔が鬱陶しくなってる。ここで一枚使ってもらおうか……ゼロノスッ!」

 

「──ッ」

 

 瞬間、ほぼ反射的に詩音は横へ飛んだ。

 ──その横を風を切る音共に鎌が通り過ぎる。

 

「ほう、反射神経はなかなか」

 

 声が聞こえた数秒後には二撃目が背後に迫る。

 

「──ちぃっ」

 

 ガキン! と詩音が突き出したベルトと鎌がぶつかり音を上げる。

 自らの変身アイテムを何の迷いなく防御手段として使うことに面白みを感じるイマジン。一方の詩音は防いだ際の勢いを利用し自ら飛んで距離を取る。そのまま車の影に飛び込むが、イマジンの一撃は車など簡単に切り裂くだろう。

 そしてそれはすぐに証明され、イマジンの一撃は車ごと詩音を切るため鎌を振るった。

 しかし、あらかじめ予期していた詩音はすでに車から距離を取っており──

 

『Charge And Up』

 

 ──車の切り裂かれた隙間からゼロガッシャーを突き出した。

 

 




次回、Episode14に続きます……

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