ゼロの名の戦士―その未来を守るために―   作:水卵

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Episode02 ゼロノス

今回はほとんどが戦闘回です。




Episode02:ZERONOS

「最初に言っておく、俺はかーなーり、強い!!」

 

『ついでに言っておく……特に言うことはない!!』

 

「ならお前は黙ってろ!」

 

 コツンと、ゼロノスはデネビックバスターとなったデネブを叩く。

 そして意識を完全に戦闘態勢へと持っていった。

 

「かなり強い、か……」

 

 カチャリと、静かにモールイマジンはアックスハンドを構え、赤銅のゼロノスを見据える。

 

「面倒だが、キサマを排除しなければ、ことは進まないみたいだな」

 

「…………」

 

 詩音もまた、その仮面の下でモールイマジンを睨む。

 両者の間に広がる緊張感が、真姫たちの元にもひしひしと伝わってくる。

 これから始まるのは文字通り『命』を懸けた戦いだろう。勝者は生き残り、敗者は死ぬ。その場の空気が、真姫たちにそれを理解させた。

 両者は未だ動かない。

 真姫たちも、特に普段からいつもハイテンションな凛でさえ息をひそめている。

 静寂が広がる。呼吸を忘れ、瞬きを忘れ、いつ切れるかわからない張りつめた空気が広がっていく。

 そして──公園の水道の蛇口から、一滴の水が落ちた瞬間──―。

 

 

 

 

 ────両者の激突が始まった。

 

 

 

 

 ゼロノスは駆け出すのと同時に、デネビックバスターの引き金を引き、十個の砲門から放たれる光弾でモールイマジンを狙う。

 モールイマジンは放たれる光弾をアックスハンドで防ぐも、大雨のように降り注ぐ銃弾の雨をすべては防ぎきれず被弾。体より火花が散る。

 ゼロノスは跳躍し一気に距離を詰めると、再び引き金を引く。

 再び散る火花。

 地に着地すると同時に蹴りを放つ。ゼロノスの足がモールイマジンの腹部を捉え、肉弾戦が始まる。

 本来、遠距離武器であるガトリング銃を使用するのであれば、遠距離で戦うのがセオリーである。しかし、いくらガトリング銃でも距離が遠ければ当然光弾の威力も落ちる。

 また、詩音は直感的にこのイマジンは強敵だと判断した。強敵相手に慣れない遠距離戦法を取れば、隙を突かれて一瞬で敗北へ近づくだろう。ならば、ケンカ慣れしている詩音にとって、近距離へ持って行くのが妥当だった。

 そしてその判断は、間違っていなかった。気怠そうにしているがその視線はゼロノスを殺す、と訴えており、ひとつ気を緩めば一気に持っていかれる。

 拳を受け止められ、振り上げられたアックスハンドがゼロノスのアーマーを削る。

 

「ぐあっ」

 

「──ふんっ!!」

 

 放たれる拳、蹴り、振り抜かれるアックスハンド。

 ゼロノスはその素早さを生かし攻撃を躱していく。

 デネビックバスターの銃口はデネブの両腕が元となっている。つまり、それを振るえば実質デネブの裏拳となるのだ。銃口付近を叩き付け、怯んだところに光弾を打ち込む。

 傍から見てもゼロノスの戦い方は乱暴で荒々しく、泥臭かった。

 殴られたら殴り返す、モールイマジンの攻撃を食らっても、地面を転がっても、声を上げ戦う。

 アックスハンドを受け止め、モールイマジンの顔にひじ打ちを放つ。

 

「ガッ……!!」

 

「おらっ!」

 

 モールイマジンを投げ飛ばし転がっているところを狙い定めるが、振り上げられたアックスハンドに銃口をずらされ、反撃を受ける。

 

(──ちっ、あの手が邪魔だな)

 

 接近戦に持ち込めたのはよかったが、その手にあるアックスハンドが思いのほか邪魔だった。甘く見ていた自分の失態に舌打ちしつつ、勝機を掴むために思考を働かせる。

 ──まずは、あの手の攻撃をどうにかしないといけない。

 

(なら──)

 

 ゼロノスは一度飛翔し、距離を取る。

 

「すばしっこいやつだ。さっさと死んでくれないか?」

 

「やだね」

 

「……俺は面倒事が嫌なんだ。やるならさっさとやりたい」

 

「あっそ」

 

「かなり強いと言っておきながら、さほど強くもない貴様に、これ以上時間を使いたくない」

 

「あんまりしゃべると、小物になっていくぞ」

 

「…………」

 

 モールイマジンの言葉を、ゼロノスは簡単に流す。

 軽口を叩いてはいるが両者の間にある殺気は凄まじいものだ。

 ゴクリと、真姫は息を飲む。目の前で繰り広げられている戦い。本来なら、アニメや漫画の中でしかないようなヒーローと怪人の戦い。男の子なら目の前に広がる戦いに燃えていたりするだろう。

 だが真姫たちは女性だ。そんな気にはなれない。

 さらにいうなれば、目の前で広がる戦いは、そんなきれいなものではなかった。

 文字通り命を懸けた戦い。

 生きるか死ぬかの、殺し合いだ。

 見ているだけなのに、こちらの気力も消耗している気がした。

 

(──さて、賭けるか)

 

 詩音は覚悟を決めると、デネビックバスター構え走りながらトリガーを引く。

 放たれる光弾をモールイマジンは鼻のドリルから発生させた竜巻で弾き返す。ゼロノスは地面を転がることで竜巻を回避。しかし、迫っていたモールイマジンの攻撃の反応が遅れ、食らってしまう。

 迫る拳や蹴りをデネビックバスターで防いでいくゼロノス。

 

(──ここだな)

 

 振り抜かれたアックスハンドとそれを下から打ち上げるように振り上げられたデネビックバスターが音を立てて衝突する。鍔迫り合いとなる両者。ゼロノスは持てる力を最大限に発揮し、アックスハンドを上へと押し上げる。

 ──そのタイミングで、ゼロノスはデネビックバスターを空中へと放り投げる。

 

「──!?」

 

『詩音!?』

 

 モールイマジンのみならずデネブまでもが驚く。

 その隙にゼロノスは素早く両手を腰のゼロガッシャーのパーツに伸ばし、連結させサーベルモードにする。

 フリーエネルギーによって連結され巨大化するゼロガッシャー。

 ゼロノスはゼロガッシャーを斬り上げ刃をモールイマジンの体に走らせる。そのまま振りかぶると、今度は全力で振り下ろす。しかし手に返ってきた感触は固い金属との衝突。振り上げるというアクションを起こした隙に自分の元へと戻していたアックスハンドに防がれてしまったのだ。

 

「残念だったな」

 

「それはどうかな?」

 

「──なに?」

 

 仮面の下で不敵に笑う詩音。

 ゼロノスはゼロガッシャーを再び構え、何度も振り下ろす。そのたびに受け止められるもゼロノスは体全体の動きを使いゼロガッシャーを叩き込む。

 そして徐々にアックスハンドに異変が見られ始めら。

 

「──っつ!? コイツ!? まさか──!?」

 

「そのまさかだ──!!」

 

 ゼロノスは全力で何度もゼロガッシャーを叩き付ける。()()()()()()()()()()()。そして、何撃目だろうか。アックスハンドの破片が飛び散り始める。

 

「──くっ」

 

 これ以上はマズイと判断したモールイマジンは距離を取ろうとするが、ゼロノスの猛攻が許さない。

 

(マズイ──! これ以上は──)

 

「さっさと折れろおおおおぉぉぉぉ!!」

 

 そして振り下ろされた一撃が──―、アックスハンドを粉々に砕いた。

 

「キサマあああああああああああああああああぁぁぁぁ!!」

 

 己の武器を破壊され叫ぶモールイマジン。

 ゼロノスは反撃が来る前に後ろに飛ぶことで距離を取る。着地と同時に横に転がることで落ちているデネビックバスターを拾う。そして同時にベルトの左上のスイッチを押す。

 

『Full Charge』

 

 電子音声と共にフリーエネルギーがゼロノスカードにフルチャージされる。エネルギーが溜まったカードを引き、デネビックバスターにセットする。カードから伝わったフリーエネルギーが銃口に集まり、輝き始める。

 その後ろではアックスハンドを破壊され怒りの叫び声を上げながら迫るモールイマジン。己の武器が破壊されても、その戦意は喪失しておらず、ゼロノスの背中目掛けて攻撃を放とうとしていた。

 だが、

 

「──これで終わりだ」

 

 冷たく言い放つ詩音。

 振り返るのと同時に、引き金を引いた。

 放たれた高エネルギービーム『バスターノヴァ』がモールイマジンを飲み込む。

 ズザアァと、ゼロノスの体が『バスターノヴァ』の反動で後ろへ大きく下がる。

『バスターノヴァ』の光に飲み込まれたモールイマジンは跡形もなく爆散し、炎の中に消えて行った。あとに残ったのは、黒く立ち込める煙のみ。

 ゼロノスはゆっくりとデネビックバスターを下ろし、ベルトのカードに手をかける。

 

「……」

 

 その手がわずかに止まり、震えたのをデネブは見逃さなかった。

 

『詩音……』

 

「……別に、構わないさ」

 

 ゼロノスはそう言ってカードを抜き取る。抜き取られたカードは一瞬で錆びると砕け散るように消えていった。

 そしてベルトを取ることで、アーマーなどがすべて消え、詩音の変身が解かれた。

 同時にデネビックバスターから元に戻ったデネブ。詩音の表情を伺おうとするが、その背中から伝わる雰囲気で察し、やめた。

 

「…………」

 

 詩音の表情はデネブからでは見えない。

 今彼が何を思い、何を感じているのか。

 ひゅー、と秋風が詩音の頬を撫でた。

 

 

 

 

「──()()? ()()()()()()()()()()()()?」

「あれ? そういえば、()()()()()()()()()()?」

()()? ()()()()()()()()()? 

()()()()()()()……()()()()()()()()()?」

()()()()()()()()()()()()()?」

()()()()()()()()()()!?」

「ええ!? だ、大丈夫だよ凛ちゃん。()()()()()()()()()()()()()()()()()()

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 ────秋風が、少女たちの声を運んできた。

 

()()()()()()()()()()便()()()()()()()

 

 詩音はポケットから取り出したケースを見て言う。

 そして、右手で襟足の髪を弄りながら「もう、意味わからねえ」と呟いた。

 

「おーい、しおーん。し、お、ん!」

 

 一人物思いにふけっていると、陽気に自分の名を呼びながらデネブがこちらにやってきた。先ほどの件を思い出した詩音は、さっそくしばこうと助走をつけたところで、デネブが何か持っていることに気が付いた。

 

「デネブ、なに持ってる?」

 

「生徒手帳。落ちてたんだ。あの三人がいたところに落ちてたから、たぶん誰かのだと思うけど……。

 ──詩音、そんな顔しちゃいけない」

 

 デネブの言葉を聞いたとたん、詩音の顔が明らかに引きつっていた。

 その顔には「なんで拾ってきた」「なんで落ちてんだよ」「ふざけんなよ」と、明らかにデネブが拾った生徒手帳に関わりたくないと意思表示していた。

 はいと、デネブに渡された手帳を詩音はいやいや受け取る。

 そして、誰の生徒手帳なのかを確認するため開いた瞬間──。

 

「ゔぇえ、嘘だろ……」

 

 そこに書かれている名前を見た途端──詩音の頬がさらに吊り上がった。

 

 

 

 

 




うーん、テンポとかいろいろ難しいな。気になる点がありましたら感想にお書きください。今後の糧とさせていただきます。

それでは次回『Episode03 CHANCE MEETING』に続きます……。




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