乱世を駆ける男   作:黄粋

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第二十二話 邑へのアフターケア。その頃の建業

 海賊たちによる人身売買の詳細。

 捕らえられていた少女、そしてあの少女以外に売られた者たちについて。

 

 賊を締めあげて手に入れたそれらの情報を伝令二名に報告に行かせて既に一週間。

 何事もなければそろそろ建業に到着する頃だろう。

 報告にどの程度かかるかがわからないが、そこから馬と伝令自身を休ませこちらに戻ってくるには到着後から換算して最速でもさらに一週間ほどかかるだろう。

 

 さすがに遠征を続けていると建業との距離が離れていくから、報告を送るのにも時間がかかってしまう。

 交通手段で最速なのが馬なのだから当然だろう。

 時速百キロ越えも可能だった前世が、本当に恵まれていたと言う事を実感出来る。

 無い物ねだりをしても仕方ないが。

 

 村の被害は思った程に酷くはなく、修繕についても材料は取り壊した船で事足りている。

 一週間経った今では作業自体はほぼ完了した。

 

 生き残った海賊七十人については蘭雪様たちの判断を聞くまでは生きていてもらわなければ困るので最小限の水と食事を与えている。

 

 しかし連中も馬鹿ではない。

 このままでは自分たちが生き延びる可能性がほとんど無い事を理解している。

 だから夜闇に紛れて逃げ出そうとする輩が後を絶たない。

 

 現在、七十人いたはずの賊は四十人にまで減っている。

 逃げ出す奴を容赦なく処断した為だ。

 それでもまだ残りの連中は逃げ延びる事を諦めていない。

 そのバイタリティには頭が下がるが、だからと言って逃がしてやるつもりはない。

 

 奴らを逃がしてしまえば、また悪事を働くからだ。

 何度か尋問と称して話をしたが奴らに更正の余地はない。

 全員が全員、賊である事を楽しんでしまっている事が言葉の端々から感じ取れた。

 口では「反省している」だの「二度としない」だのと言っているが、その目に言葉通りの感情は見られない。

 生きてこの場を乗り切る為の方便以上の意志が無いのだ。

 

 逃がせば同じ事を繰り返す。

 そしてそれはつまりあの子のような犠牲者が増えると言う事に他ならない。

 そんな事を許すわけにはいかない。

 絶対に。

 

 だから逃げ出した奴には容赦はしない。

 そして十中八九、蘭雪様たちにも奴らを生かす意図はないはずだ。

 

 

 捕らわれていた少女の様子だがそれなりの時間が経過し、さらにしっかりと食事を取らせているお陰で身体的には回復してきている。

 

 相当に切り詰められた食事を強制されていたらしく、見つけた当初は子供である事を差し引いても病的なまでに痩せていたから血色が良くなってきたのは良い事だ。

 

 しかし食事以外の接触では誰が相手であっても怯えるのは変わらず。

 精神的な回復はまだまだ遠い様子だ。

 公苗たち女性陣に対して男が相手をする時に比べて怯えが少ない事だけが救いか。

 気に懸けていて思った事だが、発見当時よりもその傾向が顕著になっているように思えた。

 そして他の人間よりも多く会いに行っている事が功を奏したのか、俺に対しても怯えが少ない、らしい。

 『らしい』と言うのは俺自身には彼女の態度に明確な差異を感じ取れないせいだ。

 

 食事を持っていっても未だに俺が出て行ってからでないと手をつけないので気のせいじゃないかとも思うのだが、公苗たちに言わせると態度は確実に軟化していると言う。

 正直、その辺りの感覚はよくわからない。

 ただあいつらがそう思っているのなら頭の片隅に置いておくくらいはしておくべきだろう。

 

 まぁどちらにせよこれからも時間の許す限り、会いに行くつもりではいるのだが。

 

 しかし警戒、嫌悪する相手が異性に固定される傾向が出てきたのは問題かもしれない。

 これから彼女がどのように生きていくのかはわからないがその過程で異性と関わる事がないと言う事はありえない。

 そんな時に今回のように近づかれる事、触れられる事にすら過剰に反応するようでは最悪、生活や仕事に支障をきたす事になるかもしれない。

 

 さすがに考え過ぎだろうか?

 

 とはいえ少しずつでもいいから異性にも怯えない程度には慣れさせていかなければならないだろう。

 彼女の境遇を考えれば男という存在全体に対して嫌悪感を持ってしまっても仕方がないと思うのだが。

 

 なにかしらきっかけでもあれば良いのだが、彼女が外に出ようとしない事もあって食事を持っていく以外の接点を作れていない。

 俺が焦ったところで上手く行かないのは目に見えている。

 もどかしく思うが、今はゆっくり彼女の警戒を解いていくべきだろう。

 

 

 問題はまだある。

 襲われた村人たちだ。

 彼らは海賊に村を襲われた事で日々の生活に不安を抱くようになってしまった。

 

 賊の襲撃と言う身近になかった出来事が自分たちに降りかかってきたのだ。

 不安が膨れ上がるのも当然の事だと言える。

 

 彼らの心の安定を図る為にもしばらくはこの村に駐留する事にした。

 あの少女の事もある。

 

 行軍予定は大幅に遅れ、遠征任務自体にも支障が出るだろうがそれは既に仕方のない事と割り切っている。

 俺たちの役割は民を守る事であり、手柄を挙げる事でも名声を得る事でもない。

 目的を履き違えてはいけないのだ。

 

 部下たちには一度、話をして納得してもらった。

 元々、あの少女については隊全体が気にかけていたし、村の様子にも気づいている者は多かった。

 反対意見を出した者たちについても別に少女や村の事をないがしろにしている訳ではなく、任務遂行も大切だと意見したに過ぎない。

 最終的にはしばらくここに駐留すると言う結論でまとまった。

 

 

 少女については可能な限り気長に行くしかない。

 となると今出来るのは村人たちの不安を取り除く事になる。

 

「近隣に三十名、哨戒に出す。賊徒があれだけとは限らん。気になる事はどんなに小さな事でも記憶に留め、報告しろ」

「「「「「はっ!」」」」」

 

 不安を取り除くにはどうしたらいいか?

 確固たる安全を目に見える形で証明しなければならない。

 

 こんな時代だ。

 絶対に安全な場所など究極的には存在しないと言ってもいいだろう。

 西方では異民賊によって城を落とされた場所もあると聞く。

 治安向上に取り組んでいるこの呉の地ですら、今回のように建業から離れれば賊が現れる事があるのだ。

 

 では安全を保証する事は出来ないのか?

 そんな事はない。

 

 重要なのは彼らの不安を取り除く努力をする事。

 しかしただ努力をするだけでは駄目だ。

 村の平和を守る為にどういう根拠を持ってどの様に対応するのかを具体的に示し、実行する。

 

 行動する者の姿は人を惹き付け、時に安心感を与える。

 過去の経験から俺はその事を知っている。

 

 あの時は最初、俺と陽菜だけしかいなかった。

 しかし今の俺たちは二百名からなる部隊なのだ。

 精力的に動く俺たちの行動は、彼らの不安を緩和する事に繋がるだろう。

 まずはそこからだ。

 

「二十名は俺と共に来い。見晴らしの良い場所に物見櫓(ものみやぐら)を建てる。幸いな事に材料には事欠かないからな」

「どの辺りに建てますか?」

「何ヶ所か目星は付けているが皆の意見も聞いて決めたい。数はしっかりした造りの物を最低でも二つだ。建業に出した伝令が戻るまでに一つは組み上げるつもりだ。そのつもりでかかれ」

「「「「「はっ!」」」」」

 

 一糸乱れぬ動きで敬礼を返す部下たちに返礼する。

 次の指示を出すべく副官である豪人殿に声をかけた。

 

「豪人殿。今、見張りに付いている者たちを含めた八十名を率いて海賊たちの監視をお願いします」

「ふむ。賊の数は捕縛した当初に比べてかなり減っております。八十名は些か多いと考えますが?」

「未だ連中は逃げる事を諦めていません。それに村人たちは奴らの存在を怖がっていますから。安心させる意味合いもあります」

「成る程。そういう事ならば確かに納得ですな。承りました。……志願する者は私に続け!」

 

 豪人殿の低いがよく通る声に従い、部下たちが彼の後ろに並ぶ。

 

「公苗は残り七十名と共に村の警邏だ。女性兵はあの少女の近辺を気にかけてやってくれ」

「わかりました!」

 

 元気の良いハキハキとした声で俺の命令を受ける公苗。

 あの少女の有様や海賊との戦いで何か感じる事があったのか最近は特に気合いが入っているように思える。

 

「それでは各自、自分の役割を果たせ。散開!!」

「「「「「応っ!!!!」」」」」

 

 突き抜けるほどに青い空の下、兵たちの返事が響き渡った。

 

 

 

 あれからさらに六日が経過した。

 やる事があると時はあっと言う間に過ぎていくと言うが、まったくもってその通りだと実感する。

 

 二ヶ所に建造した物見櫓はほぼ完成している。

 安全第一で頑強さを重視して造ったお陰で鎧を着たごつい男が五、六人登っても大丈夫だったので強度としては申し分ないだろう。

 欲を言えば物見台に小型の鐘を取り付けて有事の際に速やかに情報伝達が出来るようにしたかったのだが、さすがに鋳造技術などは持っていないので断念した。

 海賊たちは相変わらず逃げ出す者が後を絶たず、その度に処断されていった。

 生き残っている賊は十二人にまで減っている。

 

 日替わりで周囲の哨戒を行っているが、賊と呼ばれるような者たちは今のところ見つかっていない。

 その事からとりあえず近隣で人災に遭う事はないと考えていいと見ている。

 

 得られた情報については村長を通じて村人たちに周知してもらっているので、彼らの不安も少しずつではあるが払拭されてきているようだ。

 物見櫓が完成した事も彼らを安心させるのに一役買っている。

 

 

 そしてこの日、まるで全ての作業が一段落するのを見計らったかと思えるようなタイミングで伝令二名が建業からの指示と共に戻ってきた。

 

「凌隊長! ただいま戻りましたぁ!!!」

「まいど〜。吉報と朗報をお届けに上がりましたよ、隊長〜〜!」

「元代(げんだい)、公奕(こうえき)。長旅ご苦労だったな」

 

 かなり飛ばしてきたのだろう馬共々ヘトヘトであるはずだと言うのに、そんな様子を見せずに笑う二人の部下に俺も釣られて笑った。

 

 

 董襲元代(とうしゅう・げんだい)

 会稽群出身の武官志望の女性だ。

 部隊の中でも飛び抜けた身長の持ち主で、男女間での意識の違いが起こす摩擦に対して進んで解決に乗り出す物怖じしない姉御肌な気質を持っている。

 そんな性格のお陰で男女問わず仲が良い。

 姉御肌な性格とその身長が災いして二十歳を越えていると勘違いされる事が多いが、実は彼女はまだ十七歳である。

 武については公苗同様に発展途上であり、まだまだこれからだが磨けば光る物を持っていると豪人殿にも見込まれている。

 史実では孫策、孫権と二代に渡って仕えた忠臣であり特に孫権には重宝されていたと言う。

 確か最後は曹操軍との戦いの折、自身が乗っていた船が転覆。

 その際、脱出するだけの時間がありながら将軍としての責任を果たす為に残り溺死したとされている。

 

 

 蒋欽公奕(しょうきん・こうえき)

 間延びした口調と商人のような語り口が特徴の男性だ。

 口調の通りの飄々とした性格だが、見た目や雰囲気程に軽い男ではなく思慮深く物事を見る目を持っている。

 言動から教養のある人間だと思われがちだが、実家はただの農家なのだと言う。

 聡明である事は間違いないので今後しっかりと学を身につけていけばどんどん伸びていくだろう。

 どちらかと言えば前線よりも指揮官向けの人間だと思われるが武力についても並の人間相手ならば引けを取らない。

 一旗揚げる為に兄弟揃って建業に仕官しており、弟もこの部隊にいる。

 史実では周泰(しゅうたい)と共に孫策に仕え、袁術に身を寄せていた頃からの側近だと言われている。

 呂蒙(りょもう)と共に勉学に励む事で教養を身につけ、孫権に讃えられた事でも有名だ。

 荊州を巡った劉備(りゅうび)との抗争の折には水軍を率いて関羽を背後から襲撃し呂蒙と共に見事勝利したと言う。

 

 

「疲れている所、悪いが報告を頼めるか?」

「この程度、あたしは平気だよ。こいつはどうか知らないけどな」

「おやおや〜〜、そんな事をおっしゃられると僕も男として意地でも大丈夫と言わざるをえませんねぇ」

 

 この二人、性格的な相性の問題なのか妙に仲が悪い。

 仕事は仕事としてしっかりやってくれるのだが、何かにつけて言い争いが耐えないのだ。

 

「はぁ……喧嘩は報告の後でしてくれ」

「はい!」

「はい〜〜!」

 

 誰かが諫めればすぐにやめてくれるので、どちらも本気でお互いを嫌っているわけではないとわかるのだが。

 

「とりあえずお前たちは先に会議小屋へ行って待機だ。俺は宋副隊長たちを集めてから行く」

「隊長がやるような事じゃないだろ、それ。あたしが行くよ」

「そうっすねぇ〜〜。そういう雑用は下っ端にやらせて隊長にはどっしり構えていてもらうべきだと僕は思いますよ〜〜〜」

「……いや、お前たちほど疲れているわけではないからな。雑事だろうとなんだろうと体力が余っている人間がやる方が効率的だろう」

 

 普段、言い争いが耐えないのに俺を立てようとする所だけ意気投合するのだから俺も扱いに苦慮している。

 

「だぁかぁらぁあたしは平気だっての! ほら、行くよ!」

「はいはい〜〜、それじゃ隊長、先に会議小屋に行ってて下さいね〜〜〜」

「お、おい……」

 

 俺の制止の声なんぞ馬耳東風と言わんばかりに無視し、二人は馬に乗って走り出してしまった。

 

「はぁ、まったく。隊長思いの部下を持ったものだ」

 

 俺を気遣う前に俺の意見に耳を貸してくれてもいいと思うんだが。

 とはいえもう行ってしまった彼らを無視して俺が豪人殿たちを召集するのは二度手間になってしまう。

 今回は俺の方がおとなしく引き下がろう。

 

 気合いを入れる為に手で頬を叩く。

 小気味良い音で緩んでしまった気を引き締めると俺は会議小屋(村長の好意で貸してもらっている家屋の事)に向かった。

 

 

 

 刀にぃから錦帆賊と協力関係を成立させたと言う報告をもらってから建業での政務は忙しさを増していた。

 

 原因は報告の折にもらった長江近隣の情報。

 僕たちの方で知らなかった事柄について詳細にまとめられたそれらを整理するのに文官は一人の例外もなくてんてこ舞いになっていた。

 

 僕も深冬さんも激も例外じゃない。

 文官寄りの武官として政務にも携わっていた僕たちが、猫の手も借りたいこの状況で駆り出されるのは当然と言えた。

 

 あの蘭雪様でさえ文句を言わずに仕事をしている事からどれだけの仕事量で、その仕事がどれだけ大切な物か察する事が出来ると思う。

 だから仕事を振られる事に不満なんてない。

 ないんだけど。

 

「皆、仕事ご苦労だった!! 今日は呑むぞぉおおお!!!」

「「「「「おおおおおおっ〜〜〜〜〜」」」」」

 

 蘭雪様の音頭で大広間に集まった臣下たちがお酒の注がれた杯を片手に叫ぶ。

 臣下の中には祭さんや塁、激の姿も当然のようにあった。

 しかも祭さんの横にはお酒が樽で置いてある。

 

 

 三日に一度、仕事の鬱憤を晴らす為にこんな規模の大きな宴会を開くのはやめてほしい。

 別に仕事が一段落しても明日の仕事が無くなるわけでもないんだから。

 とは言っても溜まりに溜まった鬱憤を晴らす場が大切な事もわかっている為、止めるに止められないのが現状なんだけど。

 

「「「……はぁ」」」

 

 僕と美命様、深冬さんのため息が唱和する。

 

「すまんな。慎、深冬。また貧乏くじを引かせた」

「いえいえ、美命様が謝られるような事ではありません」

「そうですよ。僕たちは僕たちで楽しませてもらっていますから。それに昔から貧乏くじを引くのは慣れていますし」

 

 小さな杯で軽めのお酒をちびちびと飲みながら談笑する。

 

「昔からと言うのは仕官する前の事か?」

 

 僕の言葉に美命様は興味を持ったらしい。

 

「ええ、そうです。あの頃から祭さんたちが騒ぎを起こして僕と刀にぃが止める、そんな流れが出来てましたから」

「た、大変だったんですね。慎さん」

 

 深冬さんが当時の様子を想像して同情してくれる。

 確かにすっごく色々あったから疲れるけど、そこまで同情されるような事でもないと思う。

 なんだかんだで慣れていたし、それに。

 

「一番大変だったのは刀にぃですよ。昔から頼りがいがあったから僕たちも甘えている所がありましたし」

「ああ、成る程な。まぁあれほどの男が傍にいてはな。甘えてしまうと言うのはわかる話だ」

「ええ、本当に。いつまでも俺を頼るなって怒られるまでずっとそうでしたからね」

 

 あの時の事はきっといつまでも僕の心に残るだろう。

 むしろ決して忘れてはいけない事だ。

 あの時、突き放されたお陰で僕はこうして今も刀にぃを追いかけていられるんだから。

 あの背の隣に立とうと努力し続ける事が出来るんだから。

 

「ほう。流石は駆狼と言うべきか。身内にも手厳しい事を言うな」

「すごく駆狼さんらしいと思います」

 

 美命様と深冬さんの言葉に苦笑する。

 

「刀にぃが厳しいのは誰であれ変わりませんよ。美命様もよくご存じでしょう?」

「まあ、な」

 

 冥琳様たちの教育方針で真夜中だと言うのに城中に響き渡る声で口論していたのは記憶に新しい。

 その時の事を言われていると理解したんだろう、美命様は眉を寄せた。

 もしかしたらその時、言われたことを思い出したのかもしれない。

 

「軍師である事を言い訳に母親としての責務から逃げるな」

「「えっ?」」

 

 美命様の呟きの意味がわからず僕と深冬さんは聞き返す。

 

「あの日、駆狼に言われた中で最も堪えた言葉さ。今、思い出しても思うが本当にあいつは容赦がないな」

 

 ため息を付きながら、でもその事を不快に思っている訳ではないとわかる微笑みを浮かべた美命様。

 

 その笑顔があまりに綺麗で。

 僕は少しの間、呆けてしまった。

 

「……!!」

「いたぁッ!?」

 

 急に耳に激痛が走って僕は正気に戻った。

 見れば深冬さんが不機嫌そうな顔をして僕の右耳を引っ張っている。

 

「なにするんですか、深冬さん!」

「美命様に不埒な視線を向けた罰です!」

「ふ、不埒ってそんな事……」

 

 なんで不機嫌になっているのかわからず困惑しながら弁明する。

 けれど深冬さんはそもそも話を聞いてくれなくて掴んだ耳も離してくれなかった。

 

「痛い! 痛いですって!?」

「正当な罰です」

「ふふふ、お前たちも仲が良いな。……うん、良い事だ」

 

 なんだかよくわからないけれど満足そうに呟いた美命様の言葉。

 その言葉は確かに僕の耳に届いていたけれど、深冬さんを宥めるのに必死ですぐに意識から外れてしまった。

 

 

 この翌日。

 僕たちの元に刀にぃから新しい報告が届き。

 その対応の為に僕たちはさらに忙しく仕事をする事になる。

 


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