ラブライブ!+フォース    作:愚民グミ

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今回時系列的に「花陽ちゃんが真姫の家に訪問」と「花陽ちゃんが穂乃果の家に訪問」のシーンが前後します。ご注意ください


第3話「燃える男の勧誘活動」

~前回のラブライブ!+フォース~

 

 新入生歓迎会で、初めてのライブをする事になった高坂達、μ’s。

 だが、お客さんは殆ど来てはくれなかった。

 それでも高坂達はやってきた僅かなお客さんの為にライブを行い、生徒会長にも毅然とした態度で決意表明をして見せた。

「いつか……いつか私達必ず……ここを満員にしてみせます!」

 俺達マネージャーも、μ’sを支えていく決意を固めた。

 

 ☆☆☆★★

 

 昼休み。俺、剣持 真琴は吹奏楽部の友達に頼まれて楽器を運ぶのを手伝っていた。

 なんでも春の大会が有るらしく、会場に運ぶため、男子部員と一部の女子部員が楽器をトラックに運び込み事になったのだが、人手不足とのことでピンチヒッターが必要になったらしい。まあ、音ノ木坂学園は元女子校だ。男子部員が少ないから当然だ。

「あ」

「お。よう、西木野じゃん」

「どうも。……えっと」

「剣持だよ。一応自己紹介したはずなんだが……もしかして忘れてたか?」

 馬鹿でかいチューバを運び終え、元来た道を戻っていると、西木野に出会った。ぺこりと此方に会釈する西木野。どうやら俺の名前を憶えてなかったらしく、指摘したらバツの悪そうな顔をした。

「そんな顔すんなよ。あんときゃ俺も適当に名乗っただけだからな。気にすんな」

「……そう、ありがとうございます。ところで、何やってたの?」

「ん?」

「さっきチューバ運んでたけど、あなた吹奏楽部にも入ってたの?」

「いやいや、違う違う。友達が運ぶの手伝ってくれって言ったから手伝ってるだけだよ」

「へえ、手伝うなんて、あなた良い人なのね」

「まあ、頼まれたからな。手伝うのは当然だろ」

 俺がそう言うとふーん、と髪をクルクル弄る西木野。どうでも良いけど、こいつなんかえらい気安いな。まあいいや。それより丁度良いところに来てくれた。これが終わったら探しに行く予定だったからな。

「なあ、西木野。お前、スクールアイドルやってみる気ないか?」

「……あなたも勧誘?」

 俺は西木野を思い切って誘ってみると、予想に反して、西木野は面倒くさそうにため息をついてヤレヤレと頭を振る。

 この反応、それに「も」ってことはまさか……。

「昨日からあの、穂乃果先輩に誘われてるんです。何度も断ってるんだけどしつこいくらい来るし」

「……簡単に想像つくな」

 短い付き合いだが、あの高坂のことだ。満面の笑顔であの手この手で何度も誘いに来てるんだろうなぁ。しかも直球ドストレートな言葉で。

「それから、あいつも……」

「あ~。もしかして、飛鳥も?」

「……そうですよ!あいつホントにしつこくって!迷惑っていうか鬱陶しいっていうか、もう!」

「そいつは、その、すまん。監督不行き届きだった。後できつく言っとくよ」

 あいつの場合は……うん。マジで想像がつく。

 もう半端じゃないくらい顔近づけてしつこく追い回してんだろうな。あの馬鹿でかい声で芝居じみたこと言ってんだろうなぁ。勝手に(それでいて割と的外れじゃない)相手の思いを想像し、「任せたまえ!」とか言って変なフォローを入れたり。

 断ろうがなにしようがポジティブシンキングで勝手に良いように解釈して諦めない。多分、「成る程!そうして断ることで僕の意志の強さ、μ’sへの思いを計っているのだな!ならば!全力で僕もそれに答えよう!」とか言って。

 しかも同じクラスだろうし、高坂よりヤバそうだ。

 迷惑やらなんやらも考えない。思い込んだら一直線。もはやスカウトっつーかストーカーだな。

「ハァ……とにかく、お断りします。私はやりませんから」

「うーん、どうしてもか?」

「……曲作りには協力しますけど、それは……」

「そっかー、残念だ。でもやりたくなったら来て良いからな」

「……考えておきます」 

 

 ☆☆☆★★

 

 放課後。俺達は何時もの屋上に集合していた。いつも通り、軽くストレッチした後、前回の俺が撮ったライブ映像を3人に見てもらった。

 俺は映像を見てもらいながら今回のライブで良かったところや改善点、もっと練習が必要なところを挙げて、3人に意見を出し合ってもらった。早い話が反省会である。

「うーん、やっぱり練習不足なところかな?私もそうだけど、まだ駄目なところがあるって言うか……」

「だな。それは間違いないだろう。実際、『A-RISE』とか他のスクールアイドルの映像を見たけど、完成度とかの面ではやっぱりまだまだなんだよなぁ」

「あーあ、あんなに練習頑張ったのになー」

「それは仕方有りませんよ。私達はスクールアイドルを始めたばかりですし、私達が努力するのと同じように他のアイドル達も日々努力しているのですから」

「うぉおぉぉおぉ!」

 南の意見に俺は相槌をうつ。確かに、高坂が言うように3人は練習を頑張っていた。

 この間のライブも、(失敗したが)それぞれ練習していたところがきちんと出来ていた。

 だが、廃校阻止のためには生半可な評価では足りない。1位とは言わないでもランキング上位を目指さなければならない。

 そして上位を目指すとなると目に付くのは、なんと言っても「A-RISE」だ。

 スクールアイドルランキング不動の1位。人気も明らかに2位以下のチームとは圧倒的大差が出ている。

 うちの学校のすぐ側の馬鹿でかい「UTX学院」所属のスクールアイドル。

 プロ顔負けの演出に加えてメンバーの3人は何人もいる他の候補生との激しい競争を勝ち抜き、しかも3年間その座を譲らなかった、正に選ばれた3人だ。当然、そのために俺らとは比べ物にならないくらい練習し、経験も積んでいるはずだ。

 A-RISEのライブ映像を見たときはその完成度に舌を巻かされた。

 

 が、

 

「ぶっちゃけそこら辺はあんまり心配してない。この数週間見てたけど、お前らって運動神経自体は悪くないんだなって感じたぜ。特に高坂は飲み込み早いし、体力も付いてきたから難しい振り付けとかも覚えられるだろうし」

「えへへ、そうかな?」

「ああ。それに南も体力に自信ないって言ってたけど、結構動けてるしリズムもとれてる。園田は流石に鍛えてるだけあって動きがいいし、だからもっと練習を頑張って個人のレベルを上げていけばどうとでもなると俺は思っている」

「ウゴゴゴゴ!」

「どうした飛鳥?後128回も残ってるぞ」

「ぐぐぐぐ……な、なんの、これ、しきいいいいぃぃ!」

「あの、剣持くん。そろそろ許してあげてもいいんじゃないでしょうか?」

 園田が憐れみの目で飛鳥を見ていた。

 西木野に対してしつこくスカウト(もしくはストーカー)し続け迷惑を掛けた罰として、俺は飛鳥に大量の重しを胴体に括り付けた状態で500回休まず腕立て伏せを命じた。

 園田は止めてやれと言うが、先ほど間先輩から風紀委員からマークされるレベルで迷惑なスカウトをしていたらしいことを聞かされた。

「只でさえお前らは綾瀬生徒会長に目を付けられているんだ。第一、婦女子を追い回すなど言語道断。お前も先輩としてもっと自覚を持って指導して行動するようにだな……」

 と間先輩からお小言を頂いたのだ。てかどういうことだよ。風紀委員に目ぇ付けられるスカウトって……。

「俺はな?お前の真っ直ぐなところは悪くないと思ってるんだぜ?猪突猛進つーか、思い込みが激しいつーか、後先考えないで即行動つーか、その行動力には尊敬するよ。新しいメンバーが必要だとお前に話したのは俺だ。でもな?

 

だ れ が 迷 惑 行 為 し て こ い っ つ っ た よ !!

 

変な噂が立つ方が問題だって分かんねえのかテメエはよお!!」

「痛い痛い痛い!すいません先輩!でも今二の腕高速で突っつかないでください!痛いです!」

「……反省してるか?」

「ウグググ、せ、先輩のお役に立つどころか、ご迷惑おかけしたこと、誠に申し訳ありませんでした……に、真姫くんや多くの皆様にご迷惑をおかけしたこと、大変反省しております……ですので脇腹をグリグリするのは止めていただけませんか……?」

「……西木野や間先輩達にも謝れよ?そん時は俺も行くから」

 俺が重しを外してやると、ビッターン!と

地面に崩れ落ちる馬鹿。ゼェゼェハァハァと荒い息を吐く馬鹿は置いておいて、俺は3人に向き直る。

「まあ、この馬鹿が暴走して突っ走っちまったが、やっぱり新しいメンバーは必要だと思ってるんだ。ダンスとか演出に幅が広がるし」

 5人揃えないと部として認められてないし、マネージャーは数に入らないらしい。なんでさ。

「うーん、私もそう思って真姫ちゃんスカウトしてるんだけど、良い返事貰えないんだよねー」

「でもあいつ絶対入りたがってるよな。なんかツンデレっぽいし、あいつ」

「うん!私もそんな気がしてる!それに絶対真姫ちゃんがμ’sに入ったら面白いよ!」

「ま、西木野に関しては置いといて、他に入ってくれそうな感じの奴っているか?」

「やっぱり、花陽ちゃんとか来てくれると嬉しいよね」

「そうですね。昨日も穂乃果の家に来たときも熱心にライブ映像を見てましたし、入ってくれると良いのですが……」

 南が言っている花陽って……あ、もしかしてあの時の眼鏡っ子か?

 ふーむ……。確かになかなか可愛い顔立ちの子だったし、悪くはないな。

 その友達の子も、元気がありそうな可愛い子だったな。

「ただ、ちょと恥ずかしがってたよね。綺麗な服は着たいけれど、やっぱり人に見せるのは恥ずかしいって思ってるのかも。向いてないって言ってたし」

「最初の頃の海未ちゃんみたいだね!」

「わ、私みたいは余計です!」

「えー、だって海未ちゃん最初乗り気じゃなかったのに、最近ウィンクとかポーズの練習したり、この間だって鏡に向かってウィンクの練習しながら『ラブアロー「止めなさい!」」

 ワーワーとなんだかイチャツき始めた高坂と園田。ホント仲良いよなコイツら。

「それで?鏡に向かいながらなんの練習してたんですか園田さん?そこら辺ちょこっとワタクシめにに教えてくれませんかね?」

「け、剣持くんまで悪乗りしないでください!」

「えっと、『あなたのハート「だから止めなさい!」」

「えー、教えるくらい良いじゃねぇかー。なんなら実演してもらいたいんですよ園田センセー」

「絶対しません!」

「もう、2人とも!海未ちゃんをいじめちゃダメだよ?」

「こ、ことり……」

 南が園田に助け舟を出した。園田はまるで救われたような笑顔を南に向ける。

「ところで海未ちゃん、『あなたのハートにラブアローシュート♡』って海未ちゃんが考えたの?」

「あああああああことりまでぇぇぇ!」

 南の不意打ちを食らって頭を抱える園田。耳や首まで真っ赤になって、顔を手で覆いながら絶叫する。

 上げて落とすとか南も地味にえげつないことするな。思わず南にグッとサムズアップした。ってか、ら、ラブアローシュートって、お、お前……!

「えーそんなに恥ずかしがらなくてもいいのに。絶対可愛いって!」

「止めてください!追撃しないでください!」

「ら、ラブアローシュート……ぶふっ!か、可愛いんじゃねえの?そ、園田……ク、ククク……」

「笑わないでください!」

「だ、だって園田、ハハハ!可愛い奴だなお前!アハハハ!メッチャクチャ可愛いぞ、ラブアローシュート!おま、そんな可愛いこと考えてたのかよ!ハハハハ!」

「か、からかわないでください剣持くん!もう!」

「悪い!ホント、ごめん!いや、でもホントに可愛いって!ただ、ちょと、いつものお前と、ギャップ有りす、ぎ、て、アハハハハハ!ゲホッゴホッ!……ハハハハ!」

 つ、ツボった!ラブアローシュート!こ、今年1番の衝撃だ!色々と!

 俺が可愛い可愛い連呼したからなのか顔を真っ赤にした園田は「だったらそんなに笑わなくても……」とかブツブツ言っている。

 薄々感じてたが、園田は面白可愛い奴だな。弄ればちゃんと反応する。なんつーんだろうな。打てば響く?

「ラブアローシュートとても良いですね!僕も明日から使いわせて頂きます!」

「止めなさい!」

「ぶへっ!」

 気力で回復したのか復活した馬鹿は、園田のチョップで再度沈んだ。

「ま、ラブアローシュートはともかく「ともかく!?」西木野や小泉ちゃん?にはお前らからも声かけといてくれ。他の新メンバーの勧誘は俺らでやっておくよ。会えればその2人にも声かけるけど」

「でもどうやって新しいメンバーを集めるの?」

「でしたら僕に良い案があります!」

 シャキーン!と二度目の復活をした馬鹿。かなり自信満々な様子だ。

「まさかまた了承得られるまでしつこく追い回すとかじゃないよな」

「ご安心ください。第一案はたった今否決されたので第二案をご紹介します!」

「お前絶対反省してねえだろ」

 

 ☆☆☆★★

 

「にゃー。かよちん居ないとつまらないにゃー」

 今日いきなり「凛ちゃんごめん!先に帰ってて!」って言ってどっか行っちゃった。

 最近できた美味しいラーメン屋さんに一緒に行こうと思ったのにー。

 一人トボトボと玄関に向かっていると、

「さあ、下校中の皆!スクールアイドルμ’sのデビュー曲を収めた初のCDだ!ぜひ家で!我らが学園の歌姫達の歌声を聞いてくれたまえ!」

 どこかで聞いたことのある、というか聞いたら忘れられそうもない大きな声が聞こえてきた。

 玄関から出て外を見ると、予想通り、飛鳥くんがいた。手には夕日でキラキラ光るCDケースを掲げてた。

 その大きな声を聞きつけ、人が一杯集まってる。何人かは、飛鳥くんの側に置かれているレコーダーから伸びるヘッドホンを耳に当てて、「綺麗な歌!」「これいい!」って言ってる。

「素晴らしいでしょう先輩!どうぞ!お一つ持って行って家でも聞いてください!」

 飛鳥くんは側に置いてあるダンボールから次々とCDケースを取り出して、生徒に配っていった。CDを渡された生徒は嬉しそうに笑い合いながら帰って行って、人だかりは暫くすると少なくなった。

「うむ!多くの人が手に取ってくれたようだな!これで後は新しいメンバーが来てくれるのを待つばかりだ!」

「新しいメンバー?」

 凛はなんとなく飛鳥くんに声をかけた。飛鳥くんとはそこまで仲が良いわけじゃ無いけど、飛鳥くんがしていることに興味が湧いて声をかけてみた。

「おお、星空くん!一人で帰るのかい?小泉くんは一緒ではないのだな」

「うん!陸上部の体験入部に行ってきたんだ!かよちんは用事があって先に帰っちゃった」

「陸上部か!確かに活発な星空くんにはとてもピッタリだな!」

「えへへへ!こう見えて凛、中学校の頃に凄いタイム出したんだ!」

「それは凄いな!今度走ることがあれば是非競争してみたいものだ!」

「うん!いいよ!ところで飛鳥くん、何でCD持ってるにゃ?」

 そう凛が聞くと、ニヤリと得意げ笑う飛鳥くん。

「ふふふ、よく聞いてくれた!これこそ新しいメンバーを得るために僕が考えた秘策!このデビュー曲を収めたCDを配ることで、新たなファンを増やすとともに、共に歌いたい、踊りたいと思う同志を引き入れるという作戦……その名も、『ハーメルン作戦』!」

「か、格好いいにゃ!」

 よく分からないけど作戦名が付くと凄いことしている気がするにゃ!

「…ただ、CDを焼いて複製してくださったのは剣持先輩だし、剣持先輩が注意して下さなければ、生徒会や風紀委員に許可を申請することさえ考えつかなかった……。くっ!先輩のお役に立ちたいのに!僕はまだまだ未熟者だ!」

「げ、元気出して?大丈夫だよ!飛鳥くんならすぐに上手くできるようになるにゃ!」

「ああ、ありがとう星空くん。そうだな。凹んではいられない!まずは自力でCDを焼くことができるようになってみせる!マスターしてみせるぞ!」

 ゴウッ!と背中に炎を背負いそうな感じで燃えている飛鳥くん。飛鳥くんは、少し落ち込んだようだけど、なんだかとっても楽しそうに凛には見えた。

 そこで凛は前から思ってたことを聞いてみた。

「ねぇ、何で飛鳥くんは演劇部に入らなかったの?」

「む?」

「演劇部の人が『あんな逸材が入らないなんて勿体ない!』って言ってたの聞いたこと有るにゃ」

 クラスの子で演劇部に入った子も飛鳥くんが入らないことに意外だって言ってた。凛は分からないけど、それだけ凄いのにどうして入らないのかな?

「?よく分からないな?やりたいことをしているだけなのに、何故そんなに不思議がられるんだね?」

「やりたいこと?」

「そうだ、その通り!最初、僕は高坂先輩方の熱き思いと大恩ある剣持先輩が頑張っているのを聞いて、ほんの少しでも力になれたらと思っていた。だが、僕は彼女達に魅了された。……初めてだった……。父母のミュージカルを始め、多くの劇を見てきたが、アイドルのライブは初めて見た。そして彼女達のライブを見て、これまで見てきた劇とはどこか違う、沸き上がるような高揚感を感じた!これだ!これこそ僕が求めていた物だと確信した!」

 あ、かよちんと同じ顔だ。

 ほっぺを赤くして目をキラキラさせながら話す飛鳥くんの姿は、アイドルのことを話しているときのかよちんそっくりだった。

 凛もなんとなく飛鳥くんの気持ちが分かる気がする。よくかよちんとアイドルのライブとか動画は見る。特に「アライズ」?っていうアイドルのライブはドキドキする感じ。だけど、この間の講堂で見た先輩達のライブはワクワクした。

 かよちんもワクワクしたって言ってた。だから、かよちんにも先輩達みたいになってもらいたいと思っちゃう。アイドルになれたら、きっとかよちんはもっとワクワク出来るはずだから。それにかよちんは可愛いし、アイドルが好きだから。

「星空くん、君はこの言葉を知ってるかい?『全ての道は舞台に繋がる』!」

「知らないにゃー」

「何故なら役者はこの世の様々なものを舞台の上で表現する!様々な経験から『役』を構成し、多くの観客に感動と興奮を伝える!父からもよく言われた。『良き出会い、良き経験が人を、そして役者を作り上げる』と!そして、僕はこの間のライブで、更なる経験を積むには目標とする人物達の側が一番だと僕は気付いた。だから僕はこのスクールアイドルのマネージャーを続ける!ここなら多くの経験を、そして僕の求めるものが手に入れられる!尊敬する人達と共に成長をする事が出来る!この場所こそが、『僕』を『作り上げる場所』なのだ!」

 あ、熱い!飛鳥くんの近く凄く熱い!本当に燃え上がってる!

「そして我らがμ’sは新たな目標に向けて練習している!」

「あ、新しい目標?」

「そう!」

 そう言って飛鳥くんは、ズビシィッ!と夕焼け空に出始めた一番星を指差しながら高らかに宣誓した。

「廃校阻止!そして、打倒『アライズ』だ!」

「え、えー!?」

「剣持先輩は言っていた。我らがμ’sが廃校を阻止するには『アライズ』なるチームが最大の障害になりえると!つまりそのチームを倒すことが出来れば、廃校阻止も目の前ということだ!」

「あ、飛鳥くんはアライズがどういうチームか知ってるのにゃ?」

「いや全く!名前も今日初めて知った!」

 ガクッ!

 思わずコケちゃった。

 でも凛もそんなに詳しくないけど、アライズって1位のチームだってかよちん言ってた。そんな凄い人達を越せるのかな?

「アライズがどのようなチームかは僕も知らない。だが、必ず勝てるさ」

「な、なんで断言できるにゃ?」

「決まっている。高坂先輩、園田先輩、南先輩には、どんな困難も突破できると思わせる可能性と希望を感じさせる魅力を持っている!そんな彼女達が『やってみせる』と言ったんだ!そして何より彼女達には、剣持 真琴先輩という素晴らしい方が付いているのだから!無論、微力ながら僕も加わっているんだ。これで不可能なことなど有る筈がない!」

 凄い自信。それから先輩達、特に剣持先輩って人を凄く尊敬して信頼しているのを飛鳥くんから感じた。

 ……何だか、飛鳥くんがちょっと羨ましいな。

「星空くん、君にもこれを。それから小泉くんにも渡して欲しい」

「え?」 

 そう言って飛鳥くんは2枚のCDを渡した来た。

「僕はアイドルがどういうものなのか、よく分からない。アライズがどれほどの実力を持っているのかすら知らない。だが、μ’sはまだ成長段階で、更なる進化が可能だと言うことだけは分かっている。そのためにも、小泉くんや君のような者の力が必要なんだ!星空くん、小泉くんとともにμ’sに入ってみないか?そして共に廃校を阻止しよう!」

「無理無理!凛出来ないよ!」

「ん?」

「かよちんは分かるにゃ。かよちんは可愛いしアイドルが好きだから。で、でも凛、そんなに女の子っぽくないし、髪も短いし、飛鳥くんがいう力っていうのもないし、アイドルなんて……」

「?何を言っているんだね?確かに君達とは1ヶ月しか付き合いはないが、小泉くんも君も十二分に魅力的だと僕は思うぞ。特に君の笑顔は素晴らしい!その笑顔が小泉くんを勇気づけているのだろう!だから必ず多くの者を魅了する事が出来る!大丈夫!君達なら必ずμ’sに新たな風を起こせる筈だ!この僕が保障しよう!」

「あ、あう~……」

 そ、そんなはっきり言われると恥ずかしいよ……。で、でもやっぱり……。

「あぁっ!?」

「にゃ!?」

 凛がまた断ろうとしたとき、飛鳥くんが時計を見て叫び声を上げた。な、何!?

「しまった!もうこんな時間か!『暴れん坊御奉行』の放送が始まってしまう!す、すまない星空くん!返事はまた明日聞かせてもらう!」

 大慌てでCDの入ったダンボールとレコーダーを片付け始める飛鳥くん。呆気にとられている間に片付けを終えた飛鳥くんはこちらを向いた。

「兎に角、星空くん!どうか小泉くんと一緒に考えてくれたまえ!μ’sは、スクールアイドルは、君達のことを待っているぞ!」

 そう言って飛鳥くんはダンボールを抱えて校舎に走っていった。

 ……ビックリした。

 突然凛までスクールアイドルをやってみないかなんて、しかもあんまり話を聞いてもらえなかったし……。

 

 飛鳥くん凄かったなぁ。スッゴく楽しそうで、イキイキしてて、どんなことがあっても頑張れそうな気合いがあって……。

 

『やりたいことをしているだけなのに、何故そんなに不思議がられることが有るんだね?』

 

『この場所こそが、「僕」を「作り上げる場所」なんだ!』

 

『君達なら必ずμ’sに新たな風を起こせる筈だ!』

 

 凛も、あんな風に楽しくできるかな?キラキラ輝くことが出来るかな?……可愛い服を着ても、大丈夫なのかな?

 

 凛も……

 

「……凛も、アイドルになれるかな?」

 

 ☆☆☆★★

 

 放課後だ!

 

 さあ、待ちに待った放課後だ!

 僕はいそいそと荷物をまとめ始める。宿題は既に昼休みの時点で終わらせてある。全ては放課後の練習のお手伝いをするためだ。

「お前、最近楽しそうだなー」

「うむ!日々充実しているぞ!」

 声を掛けてきたのは中学時代からの友人だ。とてもマイペースで、ゆったりとした雰囲気を持つ彼とはとても馬が合うので、休日は共に遊びに行く仲だ。

「スクールアイドルのマネージャーだっけー?お前また変なチャレンジするよなー」

「これも経験さ!この世に無駄な経験など、一切ない!それどころか一生懸けても学びきれないことばかりなのだ。マネージャーもなかなか楽しいぞ!思っていた以上に多くのことを学べるぞ!」

「相っ変わらず格好いい奴だなーお前はー」

「君だって、高校から弓道を始めたじゃないか!君も何か、チャレンジしてみようと思う心境の変化が有ったのかい?」

「いやー、部活の先輩にさーめっちゃ美人な人が居たんだよー。ちょー大和撫子って感じのー。だから思わず入っちゃったねー。でもなー、今は筋トレばっかだけど、先輩達がやってるの見てるだけで楽しいんだわこれがー。案外合ってたのかもなー」

「そうだったのか。うむ、良い出会いがあったようだな!大会の時は呼んでくれ!応援に行こう!」

「ありがとー。昨日のCD良かったぜー。お前も頑張れよー」

「ああ!お互い頑張ろう!」

 そう言って僕は一足先に教室を出た。さあ、屋上へ向かおうとしたとき、

「む?」

 あそこにいるのは、小泉くん?何故か彼女は立ち止まって、一心不乱に掲示板を見ていた。確かあそこには、先輩が作成した「スクールアイドル通信」がなかったか?

 

「小泉くん!!」

 

「ひゃあッ!?」

 

 声をかけながら走って近づくと小泉くんはとても驚いたように固まってしまった。そう言えば

 

『飛鳥くんは身体が大きいから、あんまり女の子に詰め寄っちゃダメだよ。気が弱い子だと怖がらせたり、ビックリさせちゃうからちょっと離れて話した方が良いよ。大きな声も怖がらせちゃうから気をつけてね』

 

 と、南先輩から注意されたことがあった。言われてみると思い当たる節がある話だったので、心に留めておいたが、今こそその助言を実行するべきだな。

 僕はブレーキをかけ、小泉くんから2歩ほど離れたところで止まった。

「驚かせてしまったようですまない。君の姿を見かけたのでつい声をかけたんだ」

「は、は、はい。だ、大丈夫です……」

 普段より少し声量に気をつけて謝ると、まだ肩をビクビクさせているが、小泉くんはか細い声で答えてくれた。

「小泉くん、スクールアイドル通信を見てくれているのかね?」

「はい……。とても、面白いから、新しいのが出来る度に見てます……」

「おお、ありがとう。先輩もお喜びになるだろう。ところで、小泉くん、君もスクールアイドルにならないかい?」

「え!?む、無理です……わ、私、背も、声も小さいし……」

 ……むぅ。確かに、前から思っていたが小泉くんはもう少し腹に力を入れて話すことができれば、より聞き取りやすいのだが、何故彼女はこんなにも自信なさげなのだろう?

 先程の授業でも声が聞こえ辛かったし。

「あれ?その缶バッチ……」

 その時、小泉くんは僕の鞄に付いていた缶バッチに気付いた。缶バッチには僕は名前すら知らないが、有名なアイドルの写真がプリントされている。

「ん?これかい?これは「A-RISEの300個限定缶バッチじゃないですか!!」ファッ!?」

 アイドル好きな友人がマネージャーになった記念だといってプレゼントしてくれたものだと説明するよりも早く、小泉くんがズイッ!と近付いてきた。声も先程の蚊の鳴くような声ではなく、しっかりとした声量だった。

「これはA-RISEが結成一周年を記念して作られ一部の店舗でのみ発売されてすぐに売り切れた限定品!そ、それも一番人気の綺羅ツバサの缶バッチ!は、初めてみました!私も発売時風邪さえひいてなければ……!」

 本当に悔しそうに、羨ましげに僕の鞄を見つめる小泉くん。

 あの友人は「布教用だから気にするな」と言ってたが、成る程、この缶バッチの人物がアライズの……。

 だが、僕からすれば、そんなことは些細なことだった……。

「……フフフ」

「?あ、あの?」

「フゥーハッハッハッハッハッハーッ!!」

 神よ!この運命に感謝します!

 やはり小泉花陽!彼女はμ’sに必要な人材だ!彼女がこの場に居るのも、彼女をμsに引き入れ、共に廃校を阻止するべしという神の思し召しか!

「小泉くん!!」

「は、はい!?」

 

「僕は……君(の力)が欲しい!!」

「……ひぇあ!?」

 小泉くんはボンッ!と一瞬で顔を真っ赤にさせた。そうかそうか、顔を赤らめるほど嬉しいのだな!

 

 剣持先輩が言っていた。我々にはアイドルに対する予備知識が不足していると。アイドルの知識があれば、自分達に不足しているものが分かったり、他のアイドルの良いところや練習を参考にする事が出来ると言っていた。

 

 そして、小泉くんはどうやらアイドルが好きでμ’sに入りたがっている。しかもどうやらライバルであるアライズのことも熟知しているらしい!

 

 更に、小泉くんの特徴的で高い声は甘い響きを持っている。声を大きく出すようにし、訓練すれば、多くの人々を魅了するに違いない!まさに金の卵だ!μ’sをより完全に近づけられる!

 

 これは、小泉くんにμ’sに入ってもらう他、ない!

 

「小泉くん!僕達には君のアイドルの知識、そしてその熱き情熱が必要だ!是非!君もμ’s入ってくれ!

 

 共に!

 

 新 た な 伝 説 を 刻 も う !        」

 

小泉くんの小さな手をガシィッ!と両手で掴み、全身全霊の熱意を小泉くんに伝える。すると、

「あ、アワワワワワワワ!ご、ごごご、ご!!」

「ご?」

 何故か顔を紅潮させ、目を回して混乱したような小泉くん。そしてバッ!と目にも留まらぬスピードで僕の手を振りほどき、高速で回れ右をして

「ごめんなさーーーーい!!!!」

「ま、待ちたまえ!」

 猛スピードで走り出した。僕は直ぐに彼女の後を追って走り出す。

 このままでは見失う!

 逃がさんぞ金の卵!必ず先輩達の下に連れて行き、μ’sに入ってもらうぞ!

「逃がすかああああああああ!」

「ひぃえーーー!!」

 

 ☆☆☆★★

 

「ハァ、ハァ、な、なんとか逃げられたぁ~……」

 飛鳥くんに追われて、私は中庭のベンチに座り込んだ。

 木のそばだから木陰が出来てて、そよそよと吹いてくる風が汗ばんだ肌には気持ちよく感じた。

 それにしてもビックリした~。飛鳥くん、いきなり大声で笑い出したと思ったらこ、告白(!?)みたいなこと言ってきたけど、あれってμ’sへの勧誘だったのかな?なんかそれっぽいこと言ってたけど……。

 

 飛鳥くんは、ちょっと苦手。

 

 男の人自体、人見知りする私としては苦手なんだけど、飛鳥くんはもう色々と驚かされる。

 

 入学式で初めて会ったときも、見上げるくらい大きいから、それだけでも萎縮しちゃってたのに、いきなり握手してきて、しかも力が強いから振り回されちゃうかと思ったほどだった。顔を凄く近付けてきて大きな声で挨拶するから、正直怖かった。すぐに別の人にも同じようにしてたけど、その人も引き気味だった。

 だから飛鳥くんには、そんなに悪い人ではないのは分かってるんだけど、どうしても苦手意識を持っちゃう。

 あ、でもさっき、距離をとって(大体私の歩幅で5歩くらい?)、声も抑えて(それでも大きいし、最後はいつも通り)話してくれてた。あれは、私に気を使ってくれた、のかな?

 綺羅ツバサの缶バッチを持ってたのも意外だったけど、それが一番意外だった。

 

「でもやっぱり無理だよ。私にアイドルなんて……」

「あなた、こんな所にいたのね」

「ひぃッ!?」

 私はビックリして身構えちゃったけど、そこにいたのは西木野さんだった。

「ど、どうしたのよそんな飛び跳ねて?」

「う、ううん。なんでもない」

 西木野さんを驚かせちゃった。うぅ……、ちょっと罪悪感……。

「……あなた、声は綺麗なんだから、後はちゃんと大きな声を出す練習をすれば良いだけでしょう?」

「でも……」

「……ア~ア~ア~ア~ア~♪……はい」

「え?」

「やって」

 俯く私に、西木野さんは声を出す練習をしてくれた。

 最初は緊張と恥ずかしさで出なかった声も次第に出るようになった。

「ね?気持ちいいでしょ?」

「うん。楽しい」

 本当に楽しい。ただ声を出すだけなのに、誰かと声を合わせて出すのがこんなに楽しいなんて、思わなかった。

「かよちーん!あれ?西木野さん、どうしてここに?」

 その時、凛ちゃんがこちらにやってきた。西木野さんが居ることに不思議そうな声をあげる。

 

「励ましてもらったんだ」

「わ、私は別に……」

 西木野さんは少し顔を赤くして言い訳したけど、それが照れ隠しだと何となく分かった。

「それより、今日こそ先輩や飛鳥くんのところに行ってアイドルになりますって言わなきゃ!」

「そんなに急かさなくていいわ!もう少し自信をつけてからでも……」

 私の手をつかんで引っ張る凛ちゃん。それを西木野さんが止めようとした時、

「話は聞かせてもらった!!」

「「「!?」」」

 中庭中に響き渡るどこかで聞いた、というか聞いたら忘れられそうもないテノールボイス。渡り廊下を歩いていた生徒もビックリして辺りを見渡している。

 すると、私達がいる木の後ろから腕組みしながら飛鳥くんがゆっくりと現れた。

「あ、あんたいつからそこに!?」

「うむ!無論、小泉くんが『でもやっぱり無理だよ』と言ったところからだ!」

「最初から!?しかももしかして先回りされてたの!?」

 嘘!?だって私が来たとき誰も居なかった筈なのに!

「そんなことより!まさか小泉くんを勧誘していたのに真姫くんや星空くんまで入ってくれるとは!今日はなんて素晴らしい日なのだ!」

「へ?」

「ちょっと!なんで私までカウントされてんのよ!」

「ハハハハ!恥ずかしがらなくても良い。君が小泉くんにボイストレーニングをしていたのも、共にアイドルになるためだろう?星空くんも共に入るため小泉くんを呼びに来たのだろう?」

「え!?ち、違うよ!凛はただ……」

「そうよ、何言ってんのよ!私は別に……」

「さあ行くぞ諸君!先輩達はいつもの屋上にいるぞ!」

「え!?ちょっと!ま、待ちなさいよ!」

「アワワワワ!?」

「にゃぁっ!?」

 2人の話を聞かず、飛鳥くんは西木野さんの手を掴み、西木野さんは慌てて私の手を掴み、焦った私も凛ちゃんの手を掴んだ。

 

 まるで連行されているような感じだった。

 

「離しなさいよ!この人攫い!」

「あ、飛鳥くん速いよ!凛たち普通に歩けるから!」

「フハハハハ!急ぐぞ諸君!青春が、先輩達が、μ’sが待っているぞ!」

「だ、誰か!誰かた~す~け~て~~~!」

 

 こうして私達は手をつなぎながら、飛鳥くんに連れて行かれました。

 

 ☆☆☆★★

 

「先輩!小泉花陽、西木野真姫、星空凛の3人をスカウトして来ました!」

「いや、スカウトっつーかお前それ……」

 

 お前に手を引かれてグッタリしている3人は本当にスカウトされてきたのか?拉致ってきたの間違いじゃないよな?

 

 高坂たち3人の基礎体力作りの運動を終えた直後、飛鳥は何故か西木野と他に2人の女子達と手を繋ぎながら、というか手を引っ張りながら、屋上に現れた。高坂達もガチャーン!と思いっ切り扉が開けられた驚いたあと、飛鳥に引っ張られて消耗した3人を見て更に驚いたようだった。

 俺は肩で息をしている3人の女の子達にスポーツドリンクを注いだ紙コップを手渡した。受け取った3人は一気にスポーツドリンクを飲み干した。

 幸い、3人とも肩は痛めてないらしい。飛鳥は一応は手加減した、のか?

 3人から落ち着いて、事情を聞くことが出来たのはそれから暫く経ってからだった。

 

「つまり、メンバーになるってこと?」

「は、はい!かよちんはずっとずっと前からアイドルやってみたいと思ってたんです!」

「そ、そんなことはどうでもよくって!この子は歌唱力結構有るんです」

「うむ!そしてアイドルの知識、そして素晴らしい情熱を秘めています!」

「あんたは黙ってて!」

「オゴッ!?」

 南の質問に、西木野とオレンジ髪の子が、眼鏡の子を挟んでそれぞれ答えた。それから変なフォローを入れた飛鳥は、西木野の強烈な肘鉄を鳩尾に食らってダウンした。

「わ、私はまだ……なんて言うか……」

 と、眼鏡の、恐らく昨日あいつらが言ってた「はなよちゃん」が指を合わせて、俯きながらそう言った。なんだか随分もじもじした子だな。若干猫背なので両隣の二人に比べて更に小さく見えた。

 

「もう!いつまで迷っているの!絶対やったほうが良いの!」

「それには賛成。やってみたい気持ちがあるならやってみた方がいいわ!」

「あ、ああ!な、何事も思い立ったが吉日だ小泉くん!」

「うっさい!」

「ガハッ!」

 今度は背中を踏みつけられる飛鳥。

「さっきも言ったでしょ。声出すなんて簡単。貴方だったら出来るわ!」

「凛は知ってるよ!かよちんはずっとずっとアイドルになりたいって思ってたこと!」

「僕もグェッ!」

 今度は頭を踏みつけられる飛鳥。お前は喋ってないと死ぬ病気にでも罹ってんのか……。

「頑張って!凛がずっとついててあげるから」

「私も応援するって言ったでしょ?」

「凛ちゃん……西木野さん……」

 二人の激励を聞いて、少しずつ、眼鏡の少女の顔に希望と自信がつき始める。

「こ、小泉くん……」

「飛鳥くん……」

「君が、自分に自信を持てなくても構わない。失敗したって良い。やりたいことをしてみたまえ。なにせ君には、この飛鳥 麗が、マネージャーとしてついているのだから」

 グッ!と笑顔でサムズアップしてみせる飛鳥。これで女の子の足の下に頭が無くて鼻血さえ出てなければかなり格好良いのだが。

 

 不意に、2人の少女は自信なさげなはなよちゃんの小さな背中を押した。

 振り向いて2人を見たはなよちゃん。2人は力強く頷いてみせた。

 大丈夫、応援してる。そんな感情を込めた笑みで。

 

 そして、もう一度此方を向いた彼女の目には、迷いはなかった。

 

「    私、小泉 花陽と言います!

 

  一年生で、背も小さくて、声も小さくて、人見知りで、得意なものも何も無いです。

 

 

         でも、

 

 

  でも、アイドルへの思いは誰にも負けないつもりです!

 

 

 

  だから、μ’sのメンバーにしてください!!!        」

 

「          こちらこそ、よろしく!          」

 

 

 夕焼けの屋上。

 

 そこで、先程まで自信なさげだった小さな女の子は、差し出された手を強く握った。

 俺は不思議と、その子の背が一回り大きく見えた気がした。

 

 俺は、足元に転がりながら、滝のような涙を流しながら号泣する、不器用で馬鹿な後輩を見る。

 

 こいつは本当に馬鹿で、五月蝿くて、鬱陶しい位暑苦しくって、どうしようもない奴だが、一応、こいつもあの子が前へ踏み出すきっかけになったのかもな。

 本当に馬鹿な奴だが。

 それでもこいつは、誰かを引っ張ることは出来るんだな。

 どこまでも直球で、やりたいことに正直で、どんなこともチャレンジしてみる。そんな姿が、迷っている奴を無理やりでも引っ張り上げる。だから、あの子や西木野達をここに呼ぶことが出来た。これは多分、俺には出来ないことだ。

 あいつ、飛鳥だから出来たことなんだろう。

 

「それで、二人は?」

「まだまだメンバーは、募集中ですよ!」

 

 こうしてこの日。

 μ’sは6人になった。

 

 

 ☆☆☆☆☆☆★★

 

 

 休日練習のとき、先に神社に来るのは俺である。

 まずは神主さんにご挨拶し、次にお参りをする。

 それから高坂達が来るまでの間、境内の掃除をする。

 神社の一画を使わせてもらっているので、お礼代わりにしている。

 

 そして俺の次にやってくるのは大体飛鳥なのだが、

「おはようごさいます」

「おはよう小泉ちゃん。随分早いな」

「エヘヘヘ、ちょっと早く練習したくて」

 今日は小泉ちゃんが先にやってきた。しかも、

「コンタクトにしたのか?」

「はい、ちょっとでも変われるかなって」

「良いんじゃないか。そういうところからスタートするのも」

 昨日、最初に見たときとはえらい違いだ。少しずつ変わっていくのは良いことだし、今後も頑張ってほしいなこの子は。とても応援したくなる。

「剣持先輩!おはようごさいます!」

 ……そして朝からボリュームマックスの飛鳥の声が聞こえてきた。

 やれやれうるせぇ奴が来たなぁと思っていると、

「おお、小泉くん。おはよう」

「あ、うん。おはよう」

 

 ………………………………。

 うん?

 

「小泉くん、眼鏡はどうしたんだい?」

「コンタクトにしてみたんだ。どう、かな?」

「うむ、良いと思うぞ。外していても悪くない」

 

 ……………………………………。

 うん????

 

「飛鳥」

「はい、なんでしょう先輩」

「……お前、悪いものでも食ったか!?」

 

 それとも昨日西木野に踏まれてどっかおかしくなったのか!?若しくは宇宙人にキャトルミューティレーションされて改造されたのか!?

 いきなり声のボリュームが小さくなったぞ!?

 

「いえ、前に南先輩に注意されたので、今後は女子と接するとき、特に小泉くんに接するときは態度や声量を気をつけようと思いまして。今までの行動が女性を怖がらせてしまっているらしいので」

「そ、そうか」

 成る程。そういうことだったのか。道理でさっきから、大きな声が出さないように我慢してソワソワしてるわけだ。さっきから右手でやたら左腕を掻いてて静かなのに逆に鬱陶しい。

「あ、飛鳥くん」

「ん?なんだい?」

「声の大きさ、別に私はいつも通りでいいよ。それからね、飛鳥くんにお願いがあるの」

「お願い?」

「うん。飛鳥くんに声を大きく出す練習の、先生になってほしいの」

 

 ……驚いた。

 

 飛鳥にも驚かされたが小泉ちゃんにはさっきから驚かされてばかりだ。

 

 昨日の自信の無さはどこへやら。真っ直ぐ飛鳥を見つめてお願いする小泉ちゃんの姿は、あの元気が良すぎるクラスメートに似ている気がした。

 それだけ彼女は、変わろうと一生懸命なんだな。

「先輩……」

 こちらに助けを求めるように視線を送る飛鳥。デカい図体で、待てをくらった犬みたいな顔しているのが何となく可笑しくて笑いそうになったが。

「良いんじゃないか、μ’sの前ではいつも通りで。あと、やるなら近所迷惑にならないようにな」

 そう言ってやると、パァッと笑顔になり、小泉ちゃんの方に向き直った。

「はい!小泉くん!必ず僕が小泉くんの声を200%引き出し、観客を魅了する声にしてみせよう!この飛鳥 麗に任せたまえ!」

 

「は、はい!お願いします!」

 

 ドン!と自分の胸を拳で叩きながら飛鳥は自信満々で応え、小泉ちゃんも負けないようにと大き目な声で深々と頭を下げた。

 

「よし!では早速始めよう!」

「はい!」

「まずは足を肩幅に広げてお腹に手を当て、お腹に力を入れながらゆっくり五十音を叫ぶのだ!」

「はい!」

「いくぞ!あ!!い!!う!!え!!お!!」

「あ!い!う!え!お!」

「声が小さい!」

「あ!い!う!え!お!」

「もっとお腹に力を入れて!」

「あ!い!う!え!お!」

「もっとだ!あの雲を声の弾丸で吹き飛ばすように!」

「あ!い!う!え!お!」

「良いぞ!もっとだ!もっと出すんだ!!」

「あ!い!う!え!お!」

「もう一度!!」

「あ!い!う!え!お!」

「か!!き!!く!!け!!こ!!」

「か!き!く!け!こ!」

「さ!!し!!す!!せ!!そ!!」

「さ!し!す!せ!そ!」

 

 それから暫く、他の連中が来るまで2人はボイストレーニングを続けた。

 

 ボイストレーニングをする2人は、どこか楽しそうで、その姿がまるで、μ’sそのものが、新しい一歩を踏み出したことを物語っているような、そんな気がした。

 

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