ラブライブ!+フォース    作:愚民グミ

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今回はいつもより短めの短編ものその①。タイトルの通り、あの人が出てきます


第6話「父との遭遇」

 

 そういえば俺は穂乃果の家、もっと言えば老舗和菓子店「穂むら」に立ち寄ったことがない。

 

 理由としては、単純に敷居が高かったからだが。

 

 個人的な考えだけど、いくら近場にあるからって、コンビニみたいにフラッと気軽に行けるような場所ではないと思う。だから、両親や一番上の姉が菓子折りや誰かへのお土産に買いに行くことがあるが、俺は穂むらには一度も足を運んだことがない。

 

 ただ、うちの家族は俺を含めて6人とも甘党で甘いものには目がない。だから時々姉が食べたくなって買って来るときがあるがその美味いこと美味いこと。特に下の姉と弟は争奪戦になることがしばしば。

 

 今日はたまたま用事を済ませた帰りに穂むらの近くまで来ていた。その時、風に流れて蒸したお米の甘い香りが漂ってきて、それに釣られて穂むらの前までやってきた。玄関の上にでかでかと「穂むら」と書かれた看板がかかっているから間違いない。

 

 今日は特に買い物をする予定はなかったしやっぱり気後れしたけど、お米の匂いを嗅いだだけであの饅頭の味を思い出して、よだれが出てきた。

 

 もう一度食べたいな、あの饅頭。それに今日は練習休みだったし、もしかしたら穂乃果が店番をしてるかもしれない。前に時々手伝っているって聞いたし。もしそうならこの後暇だしちょっと雑談でもしに行こう。ってかもうお腹減ってきた。昼飯もまだだしさっきから腹の虫が鳴りまくってる。

 

 俺はついに食欲に負けて、俺は店の戸を引いた。躊躇してられるほどの余裕がなかった。

 

 開けた瞬間、ふわっと優しい香りが強くなった。カウンターには色とりどりの団子や饅頭、おかきが並べられている。一つ一つが宝石のような輝きを放っていて、見ているだけで幸せな気分になってきた。

 

「あ、まこくんだ。いらっしゃい!」

 

「よう、穂乃果」

 

 カウンターには予想通り穂乃果がいた。普段見慣れない割烹着姿でカウンターに立っていた。不思議なくらい穂乃果には割烹着が似合っていて、制服や練習着とか、私服とかとなんか違う感じで、雰囲気が正に看板娘といった感じだった。

 

 ……浮竹先生がこの場にいたら「割烹着という新たな道(フェチズム)」とか何とかいってエロ談義かましてくる気がした。

 

「どうしたのまこくん?何か買いにきたの?」

 

「ああ。近くに来たら匂いに釣られてさ。なんかお腹減ってきたから饅頭でも買ってこうかなぁって思って」

 

「ほほー、お客さん運がいい!今日は新作饅頭ができたんだ!他のも美味しいから一杯買ってってね!」

 

「マジで!?新作!?うわー!どうしよう!?どれにしようか迷うなこれ!」

 

「どれもうちの自慢の逸品だよ!うふふ~、何なら全部買ってっちゃう~?」

 

「うーん、どれも美味そうだし……マジで全部買いたいけど財布の中身が……うん?」

 

 あれ?何だ?店の奥からなんか大きな気配とプレッシャーが………………。

 

「ヒッ」

 

 店の奥からやってきた人物を見て、俺は喉の奥から小さく変な声が出たのを聞いた。 

 

 カウンター横の暖簾から……。

 

 

 

 割烹着を着たゴ○ゴみたいな人がこちらを睨んでた。

 

 

 

 ……………………………………………こ…………………………………………。

 

 

怖えええええええええええええええ!!??

 

 

 何だあの人!?何だあの人ぉ!?怖えぇ!滅茶苦茶怖ええええ!!あれ!あれってあれだよな!?ゴ○ゴ13とかもしくは堂○の龍とか呼ばれるタイプだよな!?ライフルでスナイプか背中に龍とか桜を背負ってる感じじゃないかあれ!?

 

 

「あ、お父さん。どうしたの?」

 

「お父さん!?」

 

 穂乃果のお父さん!?嘘だろ全然似てな……あ、でも目元とか眉毛似てる?い、いやそれより挨拶しないと!穂乃果の親御さだ。失礼の無いようにしないと。礼儀礼節、挨拶は社会人の基本。社会人としてもマネージャーとしても当然のこと。そうだ。そもそも雰囲気に飲まれてるけど単純に娘の友達だから挨拶しにきただけかもしれない。話したらスッゴい気さくなお父さんかもしれない。よし!

 

「はじめまして。俺、穂乃果さんのクラスメートの剣持って言います。穂乃果さんには日頃からお世話になってます」

 

「……………」

 

「え、えーと。穂乃果さんがやってるスクールアイドルのマネージャーもしてます。未熟者ですが穂乃果さんとμ’sの活動をしておりまして……」

 

「……………」

 

「アハハハハ、まこくんそんなに気を使わなくてもいいのに。ね、お父さん」

 

「……………」

 

 ……駄目だあああああ!!絶対あれ怒ってるううううう!!怒ってらっしゃるううううう!!そりゃそうだよ!だって年頃の娘の男友達とか怪しすぎるもん!絶対疑うわ!俺だって疑う。しかもこのお父さん多分あれだ!穂乃果が彼氏連れてきたら「娘が欲しかったら俺を倒せ!」とか言うタイプの人だ!い、いや落ち着け!落ち着け俺!俺は別に穂乃果の彼氏でもなんでもないし、そもそもそんなやましいこともないし……。

 

 ああああああああああ!!一緒に遊園地に遊びに行ってるううううう!!しかも海未とことりも一緒だあああああああ!

 

「あ、電話だ。もしもし、あ、お母さん?」

 

 俺が必死でスマイルを顔に張り付けながら内心悲鳴をあげていると、穂乃果が鳴りだした電話に出る。どうやら穂乃果のお母さんのようだ。

 

「うん、うん、うん、良いよ!」

 

 そう言うと、穂乃果は割烹着を脱ぎ、店の奥に消える。すぐにまた出てきた穂乃果は財布を持っていた。

 

「お父さん、ちょっと私お母さんに忘れ物渡してくるから店番お願い!」

 

「あ、じゃあ俺……」

 

「ううん。すぐ戻ってくるからまこくんも待ってて!」

 

「ファッ!?」

 

「じゃあ行ってきまーす!」

 

「お、おい穂乃果!?」

 

 言うが早いか穂乃果はさっさと裏口に向かい、ガラララ、ピシャ。っと引き戸の音が聞こえた。そして後には、俺と穂乃果のお父さんだけが残された……。

 

 …………やべぇ。

 

「え、えー……じ、実はうちの家族、皆ここのお饅頭好きでして、よく姉が買ってきてくれるんですが、そのたびにもう一人の姉と弟が取り合いになるんですよ」

 

「……………………」

 

「穂乃果さんはいっつも練習頑張ってて、俺達の中心的な感じになってるんです」

 

「……………………」

 

「海未さんやことりさんとも仲良くさせていただいてて……」

 

「……………………」

 

「キョ、キョウハイイテンキデスネ!?」

 

「……………………」

 

 …………駄目だ…………。もう駄目だ……。ああ、まさかこんな変なところで死亡フラグが立ってるなんて思わなかった……。食欲に負けたのが運の尽きだったか……。俺はどうなるんだ?東京湾に沈められるのか……。……もしくは海外に出荷か……?

 

 俺がそんな風に悲観的に考えていると、穂乃果のお父さんはズイッと俺に何かを渡してきた。

 

 俺は一瞬、何を渡されたのか分からなくってビビったけど、よくよく見ると白と黒のほむらまんじゅうが二つ並べられた皿だった。

 

 白いほうは良く見る普通のやつだが、黒いほうは初めて見た。

 

 ……恐らく食べろということだと思うけど、チラッと穂乃果のお父さんの顔を見る。ジッと仁王立ちでこちらを見つめている。眼光だけで心臓止まるかと思った。俺は恐る恐る黒いほうに手を伸ばしてみる。

 

 見た目は黒いだけのほむらまんじゅうだ。丸の中に「ほ」のマーク。でも、この仄かに香る香り……まさか……。

 

「い、いただきます……」

 

 俺は一口、黒い饅頭を食べた。

 

 

 

「ぅぅんんまあぁ~~~~いぃ!!」

 

 

 

「う、美味い!これは……間違いない!ゴマ餡だ!ゴマが餡に練りこまられている!香り立つゴマの香ばしい風味!ツブツブとしたゴマの食感!しかし決して餡の甘味を邪魔してない!それにこれは、皮にもゴマを使われているのか?何というゴマ尽くし!ベースは間違いなくほむらまんじゅう。しかしほむらまんじゅうとは明らかに一線を画す!これが、新たなほむらまんじゅうの姿なのか!それに!」

 

 

 パクッ!

 

 

「うぅぅまああぁ~~~~いぃ!!」

 

 

 

「や、やはりほむらまんじゅう!美味い!口に入れた瞬間、口の中一杯に広がる優しい米と甘い餡の甘味のハーモニー!伝統的な完成された調和!しかしそれでいながら、以前食べた時よりもより深く甘味と風味を感じる!作り手の飽くなき挑戦の表れか!これが、伝統の味!くぅ~!完成された伝統と新たなる進歩!まさか一度にこの二つを食べ比べすることが出来るなんて!感動的だ!!

 

 

…………………………………………はっ」

 

 

 あ、あまりの感動に我を忘れてた。我ながら恥ずかしい……。ってかいきなりこんなベラベラと喋ったら絶対引かれる……。こんなの飛鳥のキャラだろ…………。

 

「す、すみませんいきなりこんな!あ、あのえっと、このお饅頭があまりにも美味しすぎて我を忘れたというか……」

 

 慌てて穂乃果のお父さんに言い訳する。それに対して穂乃果のお父さんはズイッと今度は皿に三食団子を乗せて渡してきた。

 

 俺は驚いて穂乃果のお父さんを見る。相変わらず仁王立ちでゴ○ゴ並の眼光にビビるけど、良く見るとわずかに口角が上がっている……ような気がする……。そして不思議なことに、先ほどまでの恐怖を感じなくなっていた。

 

 …………俺は、穂乃果のお父さんの雰囲気に飲まれて、馬鹿な想像をしていた自分が恥ずかしくなった。考えてみれば、単純なことだったんだ。

 

 こんなにも優しく、食べた人を幸せにしようという思いが籠もったものを作れる人が、恐ろしい人なはずがない。

 

 そうだ。料理は人を映す鏡。そんな当たり前のことを忘れていたなんて……。

 

「……穂乃果のお父さん……」

 

 俺は、串を摘まんで持ち上げる。

 

 今なら分かる。

 

 この小さな団子の重み。これこそが、作 り手の思いの重み、そして、幸せの重みなんだ。

 

 この団子から、穂乃果のお父さんの感情が伝わってくる。

 

 

「…………いただきます!!」

 

 

 そう。和菓子の前に、言葉は不要なんだ。

 

 

「もう、財布忘れちゃうなんてお母さんてホントおっちょこちょいなんだからぁ……あれ?」

 

「んんんんまぁぁぁ~~~~い!!このわらび餅も美味しいです!師匠!」

 

「…………………」

 

「師匠!また、お邪魔してもよろしいですか?今度は作り方などを是非学ばせてください!お願いします!」

 

「…………………」コクリ

 

「ありがとうございます、師匠!」

 

「あ、まこくんお父さんと仲良くなってる!お父さんも笑ってるし珍しいー」

 

 その後、俺は師匠とメアドを交換し、財布の中身を全て使い果たした。

 

 

 余談だが、

 

『うちのほのかと遊園地にいったってのはほんとうか』

 

 というメールをいただいた時は、返信を決意するのに三日かかった。

 

 

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