いつの日か…   作:かなで☆

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第百五章 【未来への希望】

 オロチは8つの尾をもつ巨人で、その戦いは死闘との言葉通り諦めぬ心と死の気配のぶつかり合い。その2つの間には本当に薄い紙1枚しかないように思えたとタゴリが言った。

 「追い詰められ、やはり勝てぬのかとわらわ達は思った。だがそれでもお前たちは諦めなかった。自分たちを、わらわ達を、世界を。そして信じて祈る人々を諦めなかった。決して希望を捨てなかった」

 タゴリが水蓮に視線を向けてフッと笑みを見せた。

 「先頭に立ち写輪眼の力を酷使して戦うイタチを支えたいとのお前の祈りが、回復の効力を持つ神力を引き寄せ、お前には驚くべき回復術が与えられた」

 視線がイタチに向けられる。

 「そして、守るために勝ちたい。そのための力がほしいと願ったイタチは万華鏡写輪眼を開眼し、スサノオの能力を目覚めさせた。そこにさらに強い封印の力を持つ神力が呼応して具現化し、スサノオに与えられた。それが十拳剣だ」

 

 それを聞き、なぜイタチのスサノオにかけらが反応したのかが分かった。

 

 「もともと十拳剣は、イタチ…お前の祈りから生まれたお前のための物ぞ」

 

 イタチはグッと右手を握りしめて見つめ、小さくうなづいた。

 

 先ほど剣を手にした時に何かを感じていたのか、その瞳には納得したような落ち着いた色が浮かんでいた。

 

 「そうして得た力でお前たちはオロチに挑んだ」

 

 それでもその戦いは苦闘を極めたのだという。

 

 だが逆転の機が訪れたとタゴリはニッと笑った。

 「先ほどサヨリが言ったように、あの当時わらわ達以外にも立ち上がった者が多くいた。その者達が援軍として駆けつけたのだ」

 

 その事で事態は一気に好機を逸した。

 集まり来た者たちがオロチの周りを固めていた敵を引き付け倒し、戦力を削いだ。

 「そのおかげでわらわ達はオロチに集中することができた」

 「その機にワシとタギツが元来からの力であった封印術で…」

 「そしてわらわがナキサワメから授かった封印術を使い、オロチの8つの尾を封じて動きを止めた」

 「その術でボクたちが動きを封じている隙に、イタチが十拳剣でオロチを封印したんだ」

 

 水蓮とイタチはまるで本に描かれた物語を聞いているような気持であった。

 それでも、そうありながら自分たちの中にしっくりと来るような感覚も感じていた。

 

 「そのオロチの消滅と共に、残っていた敵は全て霧のように消え、世界は勝利で終戦を迎えた」

 タゴリの言葉にその時の気持ちがこみ上げたのか、3姉妹のほほが少し紅潮した。

 その頬を柔らかく緩ませタゴリが水蓮に言った。

 「お前はその時、ずっとイタチのそばでイタチを回復し続けていた。先ほどのようにな」

 「自分の事はお構いなしに、ありったけのチャクラを注いでたよ」

 「そしてこの度は回復だけでは気がすまず、身を挺して守ろうとするとはな」

 サヨリのその言葉にタゴリが「むちゃくちゃぞ」と笑った。

 「だが、その強い想いに此度また神力が呼応し、新たな力…八咫の鏡をイタチに与えたのだ」

 「八咫の鏡」

 イタチが今度は左手を握りしめた。

 「この空間にはナキサワメを慕う神が多くいるからな。水蓮の祈りでイタチにとって最も必要であろう神力が呼応したのだろう。…あれは如何なる物をも跳ね除ける最強の盾ぞ。よかったなイタチ」

 「全てをはじく盾と全てを封じる十拳剣。もう無敵だな」

 「怖い物なしだね」

 

 イタチは何と返せばいのかわからず、複雑な表情で小さく笑み、すぐに難しい顔をした。

 「だが、なぜそれほどの戦いが歴史上に残っていないんだ?そんな話今まで聞いたこともない…」

 タゴリが同じように難しい顔でそれに答える。

 「この戦いの事は後に人々の胸の内にしまわれた…。まぁ、順を追って話してやろう」

 

 

 タゴリは水蓮とイタチを交互に見つめ再び語りだした。

 「お前たちはあの戦いの後わらわ達の故郷へと共に戻った。そして勝利の報告と感謝の祈りをナキサワメに捧げた。そこに再びナキサワメが現れた」

 

 「ナキサワメは、戦いで多くの命が失われたことに悲しみの涙を流した。そして次に、自分たちの存在が人の目に見えなくなったこの時代に、自分をこうして具現させるだけの祈りがあること、そして多くの神力を引き寄せた想いがあった事への喜びの涙を流した。その涙が落ちた先に泉がわき出でた。それがこのナキサワメの泉だ」

 タゴリは両手で泉に漂う神力をすくい上げ、抱きしめるように胸元に引き寄せた。

 「強い再生と封印の力を持つこの泉を、ナキサワメは勝利への功績として人の世界に与えた。だがこの泉の力を使うにはある条件があった」

 「この泉の力を人の世界に影響させるためには、人間が行使せねばならない」

 サヨリも同じように泉の神力をすくい寄せ、タギツも続いた。

 「だけど、その力を扱えるのは神のみ。すなわち、人でありながら神の力をも持つ者でなければならなかったんだ」

 「人でありながら」

 「神の力を持つ」

 水蓮とイタチはその意味をつかみきれない表情を浮かべた。

 そんな二人にタゴリはゆっくりとうなづいた。

 「そのために、この泉の管理者となる者に自身の神力を譲るとナキサワメは話した。貸し与えるのではなく、同化し、ひとつになると」

 水蓮とイタチがハッとしたようにタゴリを見つめた。

 「そうぞ。わらわが志願した。それが自分の役目だと思った。いや、使命なのだと感じたからだ。そしてわらわはナキサワメと同化し、この泉の管理者となった。わらわは人でありながら神であり、タゴリでありナキサワメなのだ。そして泉が消えぬ限り、この存在が消えることもない」

 

 タゴリはその時にナキサワメの持つ知識の一端を得、また人の世に起こることの一部を夢に見る能力を身に着けたのだという。

 

 「泉の力を使うためにはそれだけではなくもう一つ条件があった。それは、まず泉に大きなエネルギーを与える事であった。いかにナキサワメから生まれたとはいえ、いきなり何でもできるような都合の良いものではない。その力の使用のためにはそれ相応のエネルギーを持つ物を封印する必要があったのだ」

 「エネルギー」

 水蓮がつぶやき、イタチが自身の右手を見た。

 「そうぞ。十拳剣ぞ。あの時イタチがそれを申し出た。この剣は人が持つにはあまりにも強すぎる。これ以上人の世界に…自分の手に置くのは危険すぎるとな」

 

 そこにはイタチがうちは一族であるという事も大きな要因としてあったとタゴリがそう言った。

 

 「うちは一族は愛情深い一族ではあるが、それを失った時、大きな悲しみと憎しみにさいなまれる。そこに現れる闇の深さは計り知れず、それが精神にどういう影響を与えるか分からない。イタチはその事を十分に理解し受け止めていた。それに自分が誰かに幻術で操られるようなことがあってはいけないとも考えた。それ故に剣を手放すことを決断したのだ」

 

 そうしてまず十拳剣を封印することで、その力をエネルギーに変える事となった。

 

 「封印が終わってすぐに、共にオロチと戦った他の4人の記憶をイタチが幻術ですり替えた。月から来たという事と、十拳剣に関しての事を消したのだ」

 「そんな存在がいるという情報は後の世に不安と混乱を生みかねないと考えたんだ。そして、剣を守るためにもね」

 「ワシらが知る限り、オロチ達が月から来たという事を知っているのは直接オロチとの戦いに関わり、その時奴からその話を聞いた者のみ。他の地での戦いにおいてそのような事は聞かなかったからな。それに、のちにその話が世に残っていないのならやはりそうであったという事だ」

 「うむ。そうして、月から襲い来たという事と、十拳剣の事を知る者はわらわ達以外にいなくなった」

 

 タゴリは一区切りつけるように、大きく息を吐き出しイタチを見つめた。

 

 「だがあの戦いの記憶は誰の中にも残った。それでもなお歴史にそれが詳しく残っていないのは、当時を生きた人々が、あの戦いの事に関して揃って口をつぐんだからぞ」

 「ワシらはあ奴らが月から来たという事を知っており、故に人外の力を持っていたと納得はできた。だが他の者たちにしてみれば、得体のしれない脅威。そこには計り知れない恐怖が残された」

 

 正体のわからぬ何者かに突然襲われ、奪われ、滅ぼされていく…

 

 水蓮はほんの少しの想像でもその恐怖の一端を感じ、身を縮めた。

 「あの時、戦う力を持たぬ者たちの多くが死に、残った者たちはあまりにも壮絶で残酷なあの戦いを必死に忘れようとした。まぁ、忘れられるようなものではないが、それでも皆口に出すことを拒んだ。後に語り残すようなことではない…と」

 タゴリは家族を失った時の事を思い出したのか眉間を苦しげに揺らした。

 「そして、戦う力を持ちながらに敵わず圧倒された者たちは、その事を【恥】ととらえ沈黙した。何もできなかった己らの無力さ…。それを歴史に残すことを拒んだ。その両方を責め、問いただす者などいなかった。口にし、思い出すにはあまりにも悲惨な出来事であり、歴史に残すにはあまりにも惨烈であった」

 「だがそうしてすべてに蓋をしながらにでもようやく訪れた安穏は、もろくも崩れ去った」

 サヨリの重々しい言葉にタギツが続く。

 「人の手によってこわされたんだ」

 タゴリが表情を厳しくして静かに言った。

 「それは、種族同士の争いぞ」

 

 「種族同士の争い…」

 

 イタチが低い声でつぶやき、タゴリがうなづく。

 「先の戦いで敵わぬとも戦った一族は多かった。特に力の強い一族はな。そして、その多くが命を落とした。そこに生まれたのが権力争いぞ」

 

 ようやく手にした戦いの終わりを喜んだのも束の間に、今度はそれを機にかねてから続けられてきた一族と一族の戦いが熱を増したのだと姉妹たちは話した。

 

 「戦力の低下を見て今こそ好機と、いくつもの種族が戦いを白熱させ、奪い合い、滅ぼし合った。その中で先の戦いを知る者の多くがまた命を消し、生きる者たちは目の前の戦いに向き合う事に必死となり、過去の事を語る者はいなくなった。そしてその争いで名を上げ、存在を大きくしたのがうちはと千手。そこからは、イタチ。お前の知る歴史へとつながってゆく」

 

 長く続けられたうちはと千手の戦い。木の葉創設。そして第一次忍界大戦。

 

 「めまぐるしく変化を続ける世界で、もうはやあの時の事を口にする者はいなくなり、それを知る者達は皆命を終えて行った」

 

 

 

 そうして月からの襲来者との戦いは歴史から消えた…

 

 

 「………」

 

 水蓮もイタチも事の大きさに言葉が出なかった。

 それでも、少ししてからイタチが絞り出すように言った。

 

 「そんな事がこの世界の歴史にあったのか」

 

 驚きというよりも、そこには怒りを感じた。

 

 「せっかく手にした安穏を、種族同士の勝手な戦いでまた…」

 

 そこには多くの死があったであろう…

 

 水蓮はイタチのその想いを感じ、ギュッと固く握りしめられたイタチのこぶしにそっと手を重ねた。

 

 イタチはその体温にハッとしたように顔を上げ「すまない」と一つ息を吐き気持ちを落ち着かせた。

 

 「種族同士の争いの中には、おそらく先の戦いで力及ばなかったことへの念晴らしもあったのだろう。意地とプライドのぶつかり合いが大きかったのは確かぞ」

 

 イタチの怒りをタゴリも感じ、切なく悲しげな表情を浮かべた。

 

 「まぁそういう流れで月から来た者たちとの戦いは歴史から薄れ消えて行った。それでもやはり何も残っていないわけではない。各地には何かしらの名でその闘いの記録は少なからず残っている。だが、十拳剣の事は今ここにいるわらわ達以外の記憶の中から完全に消された。…はずだった。しかし、消したはずの記憶が何らかの原因でかすかによみがえったのか、十拳剣の事を書き記した文献がいくつか人の世に残ったようだ…」

 その言葉に水蓮の脳裏にはゼツや大蛇丸が十拳剣を探していた事が思い出されていた。

 その隣で、古い文献を見て剣の事を知ったイタチも小さくうなづく。

 「だがお前の見た物は誰かが残した物ではないぞ」

 タゴリがイタチにそう言った。

 「うちはシスイから受け取った物であろう」

 イタチは静かにうなづいた。

 「シスイから巻物を受け取った。【この巻物が開けるか?】と。そこに十拳剣の事が書かれていた。読み終わった後に燃えて消えた…」

 「うむ。あれはお前にしか開けぬ巻物ぞ。お前が書き記し、そのように八尋が術をかけた。そして、もう一つお前たちが残した物があった…」

 「壁画…」

 水蓮の脳裏にはうずしおの里で見たあの壁画が浮かんでいた。

 

 

 【うちは一族とうずまき一族の者が悪しき存在を倒し、剣を3つにわかって封印した】

 

 

 「そうぞ。あの壁画に描かれていたうちはとうずまき一族の者とはお前たちの事ぞ。そしてあの壁画をあそこに残したのもお前達ぞ」

 

 タゴリはちらりとイタチを見て少し目を細めた。

 「あの壁画に情報を残すため万華鏡写輪眼の力を使ったイタチは、その時光を失った」

 

 「…っ」

 

 息を飲んだ水蓮の隣で、イタチは落ち着いた声で「失明か」とつぶやいた。

 

 「そうぞ。それまでにもかなり力を酷使していたからな。限界が来たのだ」

 

 イタチは「そうか…」と小さく返して黙した。

 

 じっと静かに泉を見つめるその姿は、今の自分の視力を確かめているようにも見えて、水蓮は思わず息苦しくなり胸元を握りしめた。

 「そのせいで100年以上130年以内という期間について壁画に記せなかった。故にその事はうずまき一族が口頭で語り継いできた。こちらの空間につながる道を開くための術を知るうちはの者と共に、扉は100年後に必ず開かなければならない…と」

 「だけど、それが途切れた…」

 自分の母がそれを引き継げずに途切れ、間に会ったとは言え期間ギリギリとなったのだと、水蓮は重く息を吐き出した。

 

 …命と共に引き継がれてきた物は正しく受け継がれなければならない…

 

 以前イタチが言った言葉が脳裏によみがえった。

 

 命と共に継がれてきた物は、それと同等ともいえる価値と責任があるのだ…。

 

 水蓮はそれをひしひしと感じ、今ここにたどり着けていなかったら…と、恐ろしさを感じていた。

 その様子に、タゴリが空気を変えようと少し声を明るくした。

 

 「まぁ、そうしてお前たちはあの壁画を残し、入口を封印したのだ」

 「そしてギリギリではあったがワシのところへとたどり着き」

 「130年という時を経てボクたちと共にここにこうしているってわけさ」

 

 水蓮とイタチは姉妹の顔を見回してから視線を合わせた。

 

 

 今までに聞いた話の事の大きさに胸中は戸惑い揺れていたが、遠い過去にかわした約束で生まれ変わってもなお自分たちが出会えたのだという事に、不思議な穏やかさが溢れた。

 

 

 「もう少し話をつづけるぞ」

 タゴリは小さく咳払いをしてから泉の事を語りだした。

 「過去に剣を封印した時、泉から封印の力を帯びた神力が湧き溢れ、雨のごとく人の世に降り注いだ。神力の持つ力はおもに自然界に対しての物であり、そこに働く封印の効力は大気中に潜む病の根源や、毒性の強い植物の繁殖を抑えたりというような類の物だ。そして時には人の邪な心をも抑制する。その力を100年かけて人の世に与え続けた」

 

 すべてを抑える事は出来ないが、それでも世界はその力に守られてきたのだとタゴリは話した。

 

 「それがなければ、もっとひどかったという事か…」

 イタチが苦しげな表情でつぶやいた。

 「うむ。お前が知る歴史以上の事が世界には起こっていた」

 ぐっと唇をかみしめるイタチの様子に、忍世界の抱える闇の深さを水蓮は改めて感じていた。

 「泉の効力は100年で一度切れ、次に再生の力へと移行するため30年の間停止期間に入る。その間は力は使えない。それゆえここ30年は特に世が荒れた…」

 イタチの視線がフッと落ち、手がギュッと握りこまれた。

 その手に水蓮がそっと手を重ねた。

 イタチはその30年間の真っただ中を生きてきたのだ…。

 その身に受けた痛みの一つ一つを思い出し、また痛みを感じている。

 

 重ねた手からその痛みの少しでも、取り除ければとそう思った。

 

 「先ほども言ったが、その停止期間の間に剣を再生せねば泉の力を継続できない。すなわち、封印も再生も同じものをきっかけに発動する仕組みというわけぞ」

 「それをきっかけに、今まで封印してきた物のエネルギーが再生の力へと変換される」

 サヨリが泉を指でなぞって少し波立たせた。

 「だが、それがなされなければそのエネルギーは消えてしまう」

 「泉もろともね。だから本当にギリギリだったってことさ」

 タギツが、やれやれと言った様子で両手を持ち上げてため息をついた。

 「まぁしかし」

 タゴリが柔らかく笑んで静かに立ち上がった。

 「こうして間にあった。それはこうなることが決まっていたという事ぞ。何事もなるようになり、なるようにしかならん。偶然のようですべては必然」

 ゆっくりと掲げられた右手の動きに泉の中の神力が揺れて反応を示した。

 「これから100年。世界は再生の時へと入る。その効力の対象は、封印の時と同じく自然界に主に作用する。失われた貴重な植物、枯れた泉や滅びた生物を蘇らせるのだ。そして、幼い子供の命にも効力を発揮する」

 「子供の命?」

 思わず問いかけた水蓮にタゴリが一層優しく微笑み、力強い口調で言葉を馳せた。

 「すべてではないが一度命を落とした子が再び息を吹き返す。いわゆる【奇跡】と呼ばれるものを多く起こす。生まれ落ちるとき、育ちゆく過程。様々な場面で奪われた命を再び呼び戻すのだ。これから降り注ぐナキサワメのしずくを受け取った者がそうして救われてゆく。そして救われた子らはその事に感謝し、恩を返すための想いが生まれる。その想いが世界を救うための力となるであろう。その子らが平和への架け橋となるのだ。それこそがナキサワメが人々に与えた物。未来への希望ぞ」

 

 その言葉と共にタゴリの体が黄金の輝きを放った。

 

 その光は泉にもあふれ、水蓮とイタチが戸惑い立ち上がる。

 

 サヨリとタギツも立ち上がり、姉妹は顔を見合わせてうなづいた。

 

 それぞれの両手が泉の神力をすくい上げるようなしぐさで空へと掲げられた。

 その動きに誘われるように、金色に輝く泉の神力が空へと舞いあがる。

 空にはいつの間にか大きな穴が開いており、そこへと神力が吸い込まれてゆく。

 

 「時空の穴か…」

 

 つぶやくように言ったイタチの瞳はどこか嬉しそうな…安心したような色を浮かべていた。

 

 大きく開かれた時空の穴に、神力はどんどん吸い込まれてゆく。

 そこから時空を渡り、世界に降り注ぐ。

 

 

 水蓮とイタチは身を寄せ合い、強く手をつなぎ合わせた。

 

 

 これからの世界がどうなってゆくのかは分からない。

 でもその中で、幼い子供たちの命が救われる。

 その光景を想像すると水蓮も同じように嬉しく、安堵の想いが溢れた。

 

 そしてその先に未来への希望があることに、二人の瞳から涙がこぼれ、泉に溶けた…

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