原作では同時進行のように進んでいた話が、順序立てて一つずつ始まって終わったりするかと…。
作品の流れ、効果、演出のためご了承ください(>_<)
よろしくお願いいたします(*^_^*)
デイダラの死から数日が過ぎた。
それでもいまだにその事を受け止めきれず、見上げた空にあの白い鳥が舞い飛んでいるのではないかと、ふとそんな事を考えてしまう。
夜の闇に知らずこぼれた水蓮のため息が溶ける。
今事態はどのあたりに来ているのだろうか…。
この世界に来て約3年。すっかり記憶の薄れた原作の流れを思い出そうと思考をめぐらせる。
飛段と角都の死がどのタイミングで起こったのかも分からない。
自分たちが十拳剣の封印を解いている間だったのか、それともイタチと鬼鮫を待っている間だったのか。
ただわかるのは、イタチは事の起こりを自分には伝えずにいるつもりだという事。
再び水蓮の口からため息が落ちた。
イタチは水蓮がこちらの世界の事をどこまで知っているのかを知らない。
だが何かを伝えることで事の成り行きを計っている様子を、どこかで感じていたのかもしれない。
知ることで不安と恐怖を脹れあがらせるのではないかと、そう考えているのだろうと水蓮はそう感じていた。
そう感じたのは水蓮自身も同じことを考えていたからであった。
自分がうちはマダラの存在を知っている事を話さないのは、それをイタチが知れば自分の身を心配して動きにくくなるだろうと考えての事だった。
ましてマダラに知れれば確実に殺される。
そうなればイタチは自分を守るために何もかもを捨てようとするだろう。
だけどサスケを想い、悩み、その間で苦しむ事になる。
だからこそ、それは口には出せない。
知ることで相手を苦しませたくない。
イタチもきっと同じように考えているのだろう。
だから何も聞かされなかったのだ。
そしてこれからも…
だけど知らなければ何もできない。
ただ時を待つだけでは、後悔が残るばかりなのだ。
知っているからこそできることはある…
いつまでも落ち込んで立ち止まっているわけにはいかない。
急がなければ…
「眠れませんか…」
不意に背中にかけられた鬼鮫の声に、水蓮の思考が断ち切られた。
「少しでも眠ったほうがいい」
振り向かぬまま水蓮は首を小さく振る。
「もう少し起きてる」
はぁ…。と、今度は鬼鮫のため息が空気を揺らした。
季節はすっかり梅雨の気配を遠ざけ、乾いた外気が広がりを見せ、その固さが余計に痛みを増長させているように感じた。
「イタチは?」
「今日はよく眠っていますよ」
フッと笑って、鬼鮫は水蓮の隣に腰を下ろした。
「あなたの薬がよく効いているようだ」
「そう」
良かった…と、水蓮は短く返してまた空を見上げた。
ナキサワメの泉の効力なのか、体の弱まりは隠せないもののイタチはあれから激しい痛みを訴える事はなく、血を吐くようなこともしなくなった。
それでもサスケとの対戦が近いことを本能に感じるのか、今までにもまして眠りが浅くなっていた。
ここ数日もほとんど眠れていなかったため、今夜は水蓮が調合した誘眠剤を飲んで眠った。
「あなたも飲めばいい」
イタチ同様最近ほとんどまともに眠れていない水蓮に、鬼鮫が笑い交じりに言う。
「大丈夫だって」
笑って返し、また空を見る。
高い場所にあるこの西アジトから見える空。
いつだったか、前にもこうして鬼鮫と二人で眺めたなと、その記憶をたどる。
確かあれは小南と共に、天隠の里の一件を終えたときだった。
あの時は、事の収めにサソリとデイダラも合流し、夕飯をここで一緒に食べた。
あれからそう時は経っていないのに、もうずいぶんと昔の事のように感じる。
それでいて二人の存在は未だ遠くならず、やはり不意に現れるのではないかと思ってしまう。
「帰ってきませんよ」
いつまでも空を見上げたままの水蓮に鬼鮫が感情のない声で言った。
「わかってる」
もうデイダラは帰らない。
それでもこうして空を見上げてしまうのは…
戻ってくるような気がしてしまうのは…
自分が何もできなかったからなのだろう。
「わかってる」
グッとこぶしを握りしめる。
夜を見つめる瞳には、何か強い光がさしていた。
それを見て鬼鮫が目を細める。
「あまり無茶な事はしないでくださいよ」
「え?」
「何かよからぬことを考えている時の目だ」
ピッと指で目元を指されて水蓮は少し身を引いた。
「別にそんなんじゃぁ」
「ないと言い切れますか」
「う…」
追って身を寄せ、ジトリとにらむ鬼鮫に水蓮は言葉を返せず目を反らした。
「何をするつもりです」
問い詰める鬼鮫。水蓮はしばし黙り、静かに立ち上がった。
「何もしないったら」
「私の目はごまかせませんよ」
続いて立ち上がり鬼鮫はなおも問い詰める。
「ごまかしてない」
「嘘だ。一応あなたの師匠ですからね。それくらいはわかる」
「一応って何よ。鬼鮫はれっきとしたお師匠様でしょ」
小さな笑いと共に発せられた言葉に鬼鮫は一瞬言葉を詰まらせる。
が、歩き出した水蓮を少し慌てて追いかけ顔をしかめた。
「話をそらそうとしても無駄ですよ」
「そんなんじゃないったら」
「どうだか」
頭上から振るため息とあきれた声。
水蓮はそれ以上何も返さずアジトの中に入り、一言二言鬼鮫の尋問をあしらって横になった。
鬼鮫はしばらく水蓮の背を見つめていたが、ややあって諦めたようにため息をつき壁にもたれて目を閉じた。
中心ではイタチが静かに寝入っており、久しぶりに聞くその柔らかな寝息が二人を眠りに誘った。
何も特別な夜ではない。
幾度となくこんな夜を過ごしてきた。
自分たちにとっては『日常』と呼べる光景。
それでもその時の流れのなかに、水蓮も鬼鮫も何か粛々としたものを感じ取っていた。
翌朝、鬼鮫は単身で外へと出ることになった。
イタチに言われ、大蛇丸の死の確認とサスケの動向を調査するためだ。
「2日後に一度戻りますが…」
ジトリと水蓮に視線を向ける。
「くれぐれも勝手なことはしないでくださいよ」
「わかってるって。しつこいなぁ」
「しつこいくらいに言っても聞きませんからね。あなたは」
鮫肌を背に携え、鬼鮫はイタチに向き直る。
「よく見張っておいた方がいい」
鬼鮫の指が水蓮を指す。
水蓮はその指をムッとした顔で押し返した。
「ちょっと、指ささないでよ」
グッと力を入れるが鬼鮫の腕はびくともしない。
それに余計に腹が立ったが、水蓮は諦めて手を離した。
「もう早く行ってよ。ほら。行ってらっしゃい!」
苛立たしげな水蓮に鬼鮫はもう一度大人しくしているように釘を差し、静かに姿を消した。
「口うるさいんだから」
鬼鮫がいた場所にため息を投げる。
そこにイタチが声を重ねた。
「で?お前は何をするつもりなんだ?」
「え?」
振り向いた先ではイタチが答えを待って小さく笑んでいた。
「何かを考え込んでいただろう」
「………」
水蓮は言葉に詰まってイタチを見つめた。
この数日デイダラの事でずっと気落ちしていた。
何もできなかった自分を責め、後悔の念に襲われていた。
だがそれではいけない。自分にできることが何かないかとそうも考えていた。
見せぬよう、分からぬようにしていたつもりであった。
しかしそれは鬼鮫やイタチには通用しなかったようであった。
「あいつも案外お前の事をちゃんと見ていたようだな」
イタチのその言葉がその事を肯定する。
「だが、あいつがいては動きにくい。違うか?」
「イタチ…」
思っていた事を見透かされていた事に驚きつつ、だからこそイタチは鬼鮫を離すために用を命じたのだと、水蓮はしばしの沈黙の後小さくうなづいた。
そして意を決して静かに告げた。
「暁の本拠地に行きたい」
思いもよらぬその言葉にイタチが眉根をゆがませた。
「お願い」
イタチに「ダメだ」との言葉を発せさせまいと水蓮は強い口調で言う。
「お願い」
重ねられた懇願にイタチはしばし黙し、厳しい表情を浮かべた。
「何をするつもりだ」
飛段と角都が死に、サソリやデイダラもいない。
大きな戦力を立て続けに失った組織は、今警戒が深まっている。
その警戒を見て、それぞれの下で動いていた部下や、組織に関係している者の間にも不安や疑心が広がり始めているだろう。
きわめて不安定であると考えられる組織の中心部に、あえて行くほどの理由があるのか。
イタチはその真意を確かめようと水蓮を見つめた。
その厳しい視線を受け、水蓮は「ごめん」と返した。
「今はまだ言えない。でも、終わったらちゃんと話す。ちゃんと話すから」
最後に「お願い」ともう一度繰り返し、水蓮は黙ってイタチの返答を待った。
少し動いたイタチの唇。「ダメだ」との言葉はなぜか無意識に飲み込まれた。
イタチを見つめる強い光をたたえた水蓮の瞳がそうさせていた。
そのまなざし…
イタチには見覚えが…いや、身に覚えがあった。
かつて決断を下した自分の姿がそこに重なって見えた。
それに気づいてしまえば、もう止めることなどできなかった。
「わかった」
水蓮の瞳の中の光がさらに大きくなる。
何かの決意を深くする水蓮に、イタチも表情に厳しさを増した。
「ただし、二日間だけだ。鬼鮫が戻るまでに終わらせろ」
水蓮は強くうなづきを返した。