いつの日か…   作:かなで☆

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暁秘伝のネタバレが含まれています。(引用も少しあり)
ご注意、ご了承ください。
よろしくお願いいたします。


第三十七章【伝わるぬくもり】

 「キャー!」

 

 「いやぁっ!」

 

 

 夕方から降り出した雨をしのぐために入った、そう大きくはない洞窟の中。水蓮の叫びが響き渡った。

 入り口で外の様子を伺っていたイタチと鬼鮫が慌てて中に走り()る。

 数ヵ月前のゼツの一件が脳裏をよぎった。

 「水蓮!」

 「何事です!」

 水蓮は自分に向かって駆けてくる姿を目に留め、イタチに飛び付く。

 「お、おい…」

 戸惑いながらも抱きとめ、辺りを警戒する。が…

 「特に怪しい気配はありませんね」

 隣で鬼鮫が呟く。

 その時…

 

 ゴロゴロゴロゴロ…

 

 ピシィィィ!

 

 黒い雲に覆われた空に、今日2度目の雷鳴が(とどろ)き渡った。

 

 「ひぃぃぃっ!」

 

 水蓮が体を固くしながらイタチにさらにしがみつく。

 「あ…」

 鬼鮫が呟き

 「お前、もしかして…」

 イタチがあきれた顔で続き、そのすぐ後に再び雷が鳴り響いた。

 「無理無理無理無理ーっ!」

 その場にしゃがみこんで、自分の外套で体を包み隠して丸くなる。

 その姿にイタチと鬼鮫が声を並べる。

 「亀」

 「ですね」

 ククク…と笑いながら鬼鮫が水蓮の外套を少しめくって顔を除き混む。

 「あなたにも怖いものがあったとは」

 「う~…」

 顔をひきつらせながらも、水蓮は鬼鮫をにらみつけた。

 「昔からダメなのよ、雷」

 こちらの世界に来てから初めての雷。

 水蓮は子供のころから苦手なその存在に、かすかに体を震わせている。

 

 ドォォンッ!

 

 地響きすら感じる大きな一撃。

 「きゃぁー!」

 水蓮があげた幾度目かの叫びに、イタチがその口を手で塞いだ。

 「大声を出すな。場所が割れる」

 「んー!」

 もがきながら、水蓮はその目に外が光る(さま)を捉え、次に来る雷鳴を予測して自分の手で口を押えイタチにしがみつく。

 数秒後に来た空気を切り裂く音に、水蓮は「むぅぅぅ!」と妙な声で叫びたい衝動を抑えた。

 その様子に、鬼鮫が笑いながら水蓮の頭にポンッと手を置いた。

 「怖い物なんてないのかと思ってましたがね。こんな弱点があったとは。イタチさん、今度彼女が無茶をしそうになったら雷遁を使うといい」

 「ああ。そうだな」

 二人の会話に怒りを返そうとするが、幾度目かの空の嘶きに、水蓮は口を結んだ。

 

 この日は一日中雨が降り、長く続いた雷に水蓮はすっかり体力を消耗していた。

 それでも、夜には空も落ち着き、食事を済ませてからは水蓮もようやくいつもの調子を取り戻した。

 「あ~。え~と。ごめんなさい…」

 気まずく言葉を投げた先には、走り回ったり、丸まったり、しがみつきに来たりと、そうして騒ぎ立てた水蓮に付き合い疲れた二人の顔。

 「いや…」

 「面白い物を見せてもらいましたよ」

 水蓮は「はは」と濁った笑いをこぼした。

 その視線の先で、雨宿りに入ってきたのであろう一匹の蜂が洞窟の外へと飛び立っていった。

 小さく鳴った羽音の向こうではすっかり雲が晴れ、大きな満月が浮かんでいた。

 

 

 この日は気温がかなり下がったこともあり、移動をあきらめてそのまま洞窟で夜露をしのぐこととなった。

 

 静寂が落ち、水蓮がすっかり寝入ったころ、イタチは一人洞窟の外へと足を進めた。

 見上げた先に浮かぶ満月。

 こんな月の日は、決まってその脳裏には血塗られた過去が浮かぶ。

 夜の闇の中、月明かりに照らされた衣の赤い雲と、美しい黒髪が冷たい夜風に揺れた。

 そっと伸ばした手で額宛をなぞる。

 指先に触れる横一線に走った傷は木の葉の文様を二つに切り裂いている。それは抜け忍の証。

 その鋭い指ざわりは、切ない痛みと共に木の葉の里を思い出させる。

 

 そしてこの傷と同じくらい深く傷つけた愛する存在を…。

 

 …サスケ…

 

 今や里を抜けたサスケ。

 本来なら里を守り、里と共に生きる存在でいてほしかった。

 その思いの中にはもう一人の男の存在があった。

 親友のうちはシスイ。

 

 …頼めるのは親友のお前だけだ。

 この里を、うちはの名を守ってくれ…

 

 木の葉を思い、うちはを思い、陰に徹して戦い散っていった彼の最後の言葉。最大の願い。

 

 そのために、クーデターを止めた

 そのために、一族を手にかけた

 

 そして残ったサスケと自分

 

 里の外と中。両方から木の葉を守れれば…

 

 そう思っていた。

 そしていつかサスケが自分を討ち、里に貢献する存在となれば、一族から初めて…

 

 ふわりと凪いだ風を受け、脳裏に、幼き頃に憧れた羽織が揺れた。

 

 「いや、そう簡単ではないな…」

 

 拭き流れてゆく風に、何かを乗せるように手を伸ばす。

 

 せめてこの想いを…

 

 里を愛するこの気持ちだけなら、故郷へ届けることは許されるだろうか。

 

 しかし、イタチはすぐにその手を引いた。

 

 この手は里へ向けるには、血に染まりすぎた。

 

 だが、この衣を身にまとい、罪を背負い汚名を着る事など、サスケやシスイの痛みに比べれば動作もない。

 暁という組織の中で罪を犯し続ける自分ならば、サスケは躊躇なく殺せるだろう。

 

 そうであってほしい…

 自分を殺めるとき、ほんの少しの悲しみも、痛みも感じさせたくはない…

 

 その時まで今しばらく、この目は人の血をすする。

 

 これからも…

 

 月明かりを遮るように目を閉じる。

 

 「眠れませんか?イタチさん」

 

 背後からの声に振り向くと、鮫肌を手に携えた鬼鮫が立っていた。

 「世間話をしに来たのか?」

 「まさか」

 クク…と笑う。

 どうやら、彼もまたこれから流れるであろう血の気配に気づいたようだ。

 「さて。どちらですかね」

 何もない虚空に目を向けながら隣に立ち並ぶ。

 

 月がかすんだ…

 

 瞬時に深い霧が立ち込め、隣にいる鬼鮫の姿さえも見えなくなる。

 

 

 霧隠れの術…

 

 

 濃霧の中に浮かび上がる

 

 気配、殺気…

 

 「どうやら私のようですね!」

 声と同時に一閃させた鮫肌がクナイを弾き飛ばす音が響いた。

 

 

 

 「………っ!」

 洞窟の中、硬い金属音をその耳に捉え、水蓮が飛び起きた。

 と、同時に隣にイタチの影分身が現れる。

 「イタチ…」

 「静かに」

 水蓮の手を引き、洞窟の奥、岩陰に身を隠す。

 「霧隠れの追い忍だ。お前は待て」

 気配を殺してじっと身をひそめる。

 洞窟の外では水遁同士の戦いが繰り広げられているようで、水蓮と影分身(イタチ)のすぐそばまで水が入り込んでくる。

 「鬼鮫。派手に…」

 目を細める影分身(イタチ)に、水蓮は小さくつぶやく。

 「私のせい?」

 先ほど騒ぎ立てた声を聞かれていたのかと不安になる。

 影分身(イタチ)は外の様子を探りながら「さぁな」と少し軽い口調で答えた。

 「まぁ、どちらにしてもいずれは起こることだ。気にするな」

 その言葉の終わりと同時に、中に再び水が流れ込み、二人の足元まで迫る。

 「わわ…」

 慌てる水蓮を抱えて影分身(イタチ)が飛びあがり、手足にチャクラをためて壁に張り付く。

 

 ざぁぁぁっ…

 

 奥まで水が入り込み、壁にぶつかりしぶき立つ。

 「あいつ。やりすぎだ」

 ため息交じりに吐き出された言葉。

 それを連れ出るように、水が引いてゆく。

 「大丈夫なの?」

 「ああ。問題ない」

 派手な戦況を見て不安げな水蓮に、影分身(イタチ)はさして心配する様子なく答えた。

 「そう…」

 

 フツッ…と表に揺らめいていた気配が消える。

 

 「場所を変えたか」

 外が静かになったことを確認し、影分身(イタチ)が水蓮を抱えたままススっと壁を滑り降りる。

 「あ…」

 水蓮がふいに声を上げた。

 「…ん?…ああ」

 降り立ったイタチが思い立ったようにつぶやき、水蓮が小さく笑った。

 「思い出した」

 「そうだな」

 二人の脳裏に浮かんだのは渦潮の里での事だった。

 突然消えた床から落ち、イタチが今のように水蓮を抱えながら壁を滑り降りたあの場面。

 「懐かしい」

 「ああ」

 外の静寂を見つめながら思い出す。

 「もう、こっちに来てから一年以上たつんだね」

 水蓮の脳裏に様々なことがよみがえる。

 その中でもやはり、渦潮の里での事は大きかった。

 順を追って記憶が流れ、母親との別れを思い出すが、さみしさや悲しみが少し薄れて感じるのは、隣に流れる空気があの時よりも柔らかく、そしてその存在が近くなったからなのだろうと、水蓮は思った。

 あれから、暁に入って、夢隠れの里や鬼鮫との任務。そしてゼツやペインとの対面。

 「色々あったね」

 「そうだな」

 影分身(イタチ)は少し遠くを見つめて黙り込んだ。

 しばらく沈黙が続いた後、影分身(イタチ)がポツリと言った。

 「お前は、オレが怖くないのか?」

 その視線はゆるく組まれた腕、袖の端から少しだけ見える手に向けられていた。

 水蓮はその姿に、以前血に汚れた自分の手を隠すように引いたイタチを思い出した。

 そして、出会ってすぐの頃、同じように聞かれたことを合わせて思い出す。

 ジッと手を見つめる影分身(イタチ)の瞳は、一見無感情に見える。だが、そこに揺れるかすかな色に水蓮は気づいていた。

 どこか切なげなその色…

 過去の闇を思い出しているときの瞳。

 水蓮が過去を振り返る中で、影分身(イタチ)もまた自分の過去を振り返っていたのだろう。

 そして、多くの命を奪ってきた自分の存在が、恐ろしくないのかとそう聞いているのだ。

 

 あの時と同じように…

 

 水蓮は、しっかりと影分身(イタチ)を見つめて、あの時と同じように答えた。

 「怖くないよ」

 柔らかく微笑む。

 「イタチを怖いと思ったことはない」

 影分身(イタチ)はどこか戸惑ったような顔をし、小さく笑った。

 「お前はおかしなやつだな」

 「イタチまで…」

 鬼鮫によくそう言われていたことを思い出す。

 「オレや鬼鮫は怖くなくて、雷は恐いのか」

 「そ、それとこれとは、話がちがう」

 ふてくされて顔を背ける。

 「オレは犯罪者だ」

 まるで自分に言い聞かせるような口調に、水蓮は再び視線を影分身(イタチ)に向ける。

 複雑な感情が入り交じったその瞳は、また自身の手を見つめていた。

 その目は先ほどとは違う揺らめき。

 

 里を。サスケを思い出している目…

 

 「イタチ…」

 影分身(イタチ)はハッとしたように視線を上げ、フッと笑う。

 「何でもない」

 

 またこの笑顔…

 

 全てを隠した寂しげな…

 

 この笑顔は、きっと痛い…

 

 少しでも和らげることができれば…

 

 「イタチ…」

 水蓮はスッ…と影分身(イタチ)の手を取る。

 影分身(イタチ)の体が驚きに一瞬揺れた。

 「私は、この手を怖いと思ったことは一度もない。一度もないよ」

 

 静かな空気が流れた

 

 「水蓮…」

 小さくつぶやいたすぐ後、影分身(イタチ)は何かに気づき入り口に目を向けた。

 月明かりに浮かび上がる二つの影。

 「戻ったようだな」

 自然と手が離れ、影分身(イタチ)は戦いから戻った本体(イタチ)と入れ替わりに、外の様子を伺うために洞窟の外へと出た。

 その背を見つめながら、水蓮は今まで触れていた温もりがイタチの心の痛みに届くことを願って、手をキュッと握りしめた。

 

 

 

 「お帰り」

 冷たい風を受けながら、霧隠れの追い忍との戦闘を終え、戻ってきたイタチと鬼鮫。

 迎え寄り、その姿をとらえて水蓮は目を見開いた。

 「鬼鮫!」

 鬼鮫の腕からかなりの出血が見て取れた。

 慌てて駆け寄る。

 「大したことはありませんよ」

 とは言うものの、傷口は深くえぐれており、その周りに数か所腫れが見て取れる。

 「すぐに治ります」

 「こいつが自分でやった傷だ」

 あきれたように放たれたイタチの言葉に顔をしかめる。

 「自分でって。鮫肌で?」

 深く削ったあと。周囲の腫れ…

 水蓮は思考を巡らせ、ハッとする。

 「毒?」

 気鮫が頷いて笑う。

 「ええ。すっかり医療忍者らしくなりましたねぇ」

 少ない情報での判断に、関心の声を漏らす。

 「相手が変わった術を使う者でしてね油断しました」

 「おかげで逃した」

 「追うのをやめたのはあなたですよ」

 「お前がその状態だったからな」

 「平気だと言ったのに」

 「お前の根拠のない自信で不利に巻き込まれたくはない」

 イタチのそれは、攻めるような口調ではなく、鬼鮫もまた嫌な空気を感じさせないやり取り。

 今までにも幾度か見てきたその光景に、水蓮は不思議なものを感じていた。

 イタチはもちろん、鬼鮫も決してイタチに対して『仲間』という意識ではない。

 ただ同じチームという括りで暁からの命令に動いているに過ぎない。

 ましてイタチはスパイとしてここにる。

 それでも、互いにどこか気持ちの良い遠慮なさを持っているように思えた。

 気を許していると言えるようなものではないが、そこには水蓮には計り知れない何かが存在しているように感じた。

 「とにかく、今は少し休め。明日の朝出て見つける。そう遠くには行っていないだろうからな」

 そう言って目を細めたイタチの頬には、冷たい夜風を受けながらも少し汗が浮かび、表情にかすかな疲労が見える。

 水蓮はまたハッとしたように息を飲んだ。

 「月読使ったの?」

 イタチと鬼鮫が驚いたように水蓮を見た。

 その表情は水蓮の言葉を肯定づけていた。

 「もう。二人ともあんまり無茶しないで…」

 二人の視線に気付かぬまま、水蓮はすでに鬼鮫の腕に手をかざしていた。

 「まだ全部取りきれてないみたい。奥に座って。毒抜きして傷も塞ぐから」

 「毒抜きも覚えたんですか」

 「最近ね。でも、全部は取りきれないかも」

 「大丈夫ですよ。これくらいはほっておいても治るくらいだ」

 話しながら中に入りゆく水蓮の背に、イタチは「いつの間に…」とつぶやきながら、外に異常がないと判断して影分身を解いた。

 「……………」

 伝わりくる情報。先ほどまでの水蓮とのやり取りに、不思議な温かさが流れ込み、その場に立ち尽くす。

 「……………」

 無意識に手を握っていた。そこには優しいぬくもりがあった。

 「イタチ?」

 その場から動かないイタチに水蓮が振り返る。

 イタチはハッとしたように顔を上げ「ああ。今いく」と、短く答えた。

 が、静かなその歩みに、大きな羽がはばたく音が混じり、イタチは振り向く。

 満月を背に、見覚えのある白い鳥が舞い降りてきた。

 「またですか…」

 少しうんざりした鬼鮫のその言葉に、誰もが思い浮かべた人物だいた。

 しかし、その鳥の背から降りてきたのはヒルコを身にまとったサソリ一人だった。

 「ようやく見つけた」

 相変わらずの苛立ちだが、何カ所かアジトを回ったのであろうその言葉に、水蓮たちは顔を見合わせた。

 「何かあったのか?」

 一人で来たことにも十分異常が感じられ、イタチがすぐにそう聞いた。

 サソリはイタチの横をすり抜けながら、すでに鬼鮫の治療に入っていた水蓮に、音なく近寄る。

 「おい。お前一緒に来い。デイダラが負傷して動けない」

 「えっ!」

 「早く来い」

 治療途中の水蓮の腕をつかんで立ち上がらせようとする。

 「ちょ、ちょっと待って。まだ…」

 「おい。はなせ」

 イタチがサソリの腕をつかんで水蓮から離し、間に割って入る。

 サソリは苛立ちあらわに、低い声でイタチを通り越して水蓮に言葉を投げる。

 「急げ。毒を受けて死にかけだ」

 「ええっ!」

 水蓮が大きな声を上げた。

 さすがにイタチも戸惑う。

 「水蓮。私はもういい」

 鬼鮫の言葉を受けて、水蓮はイタチを見上げる。

 イタチはしばし黙して息を吐きだした。

 「デイダラには以前借りがある…。頼めるか…」

 水蓮に向けられたイタチの表情は苦渋の決断を浮かべていた。

 「わかった」

 「影分身を…」

 うなずく水蓮の前で、イタチは印を組もうとする。

 しかし、

 「いらないよ」

 組まれたその手と言葉を水蓮が止めた。

 月読後であることと、明日の戦いのことを考えてだった。

 「戦いに行くんじゃないんだから。大丈夫。チャクラ使わないで」

 「しかし…」

 「大丈夫だから」 

 強い口調でそう返して、水蓮は壁のくぼみに置いていた自分のカバンを取り、準備する。

 その様子を見ながらイタチがサソリに強い口調で言った。

 「終わったらすぐに戻せ。任務に連れて出るようなことはするな…」

 サソリは一瞬黙し「誰がするか。邪魔になるだけだ」と、苛立たしく返して踵を返した。

 「行くぞ」

 「あ、うん」

 サソリは素早い動きですでに鳥の背に移動していた。

 そのあとに続こうとして、水蓮は鬼鮫に振り替える。

 「鬼鮫、ごめんね。だいぶ毒は抜けたと思うんだけど…」

 「大丈夫ですよ。気を付けて」

 うなずいてイタチに視線を向ける。

 「イタチ、行ってくる」

 「ああ。終わったら西アジトへ来い」

 「わかった」

 答えて水蓮は背を向ける。

 「水蓮」

 少し慌てた様子でイタチがその背を呼びとめた。

 そして振り向く水蓮に「無理はするな」と小さな声で言った。

 「うん」

 水蓮は笑顔でそう答えて「さっさとしろ!」と声を上げるサソリに急かされて鳥の背に飛び乗った。

 月の中に消えゆく鳥を見つめるイタチの隣に鬼鮫が並ぶ。

 「心配ありませんよ。任務にだってついて行けそうなくらいだ」

 イタチはジトリと目を細めて無言を返す。

 「まぁ、危険を避けるに越したことはない。貴重な医療忍者ですからね」

 どこか含んだその物言いに、イタチは「お前は休め」と一言こぼして、見張りのため外へ出た。

 

 

 こういった形で水蓮がどこかへ一人で行くのは初めてだ…

 

 

 月の沈みをその目に捉えながら、イタチは何者かわからない妙な感情を自身の中に感じていた。

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