小説・アニメでまだ見てみていない方、これから見ようとしておられる方はご注意・ご了承のうえお読みください(*^。^*)
よろしくお願いいたします。
(五十四章から五十六章まで、がっつりイタチ真伝の内容が入ります(-_-;)
イタチの心情を織り交ぜつつ…真伝をなぞる形となっております。)
静かな夜の空間に、川のせせらぎは優しく音を奏で続ける。
緩やかな流れのその上を、少し強い風が吹き流れ蛍の光が大きく揺れた。
揺らいだ灯りにイタチの顔が照らされ、瞳が切なげに色づく。
「何から話せばいいだろうな」
話し出そうとして言葉に詰まり、イタチは苦笑した。
「お前が知っている事もあるしな」
普段言葉に悩む事がないイタチの珍しい姿。
イタチにとって、本当に深い場所にあるものをさらけ出そうとしている…
水蓮は、言葉を、想いを導こうと柔らかく笑む。
「全部聞かせて。始めから全部。あなたの言葉であなたの真実を知りたい」
イタチはうなずき、宙を舞う光の中に記憶を探してゆく。
「初めて戦場を目の当たりにしたのは、4歳の頃だった」
細めたイタチの瞳の向こうに、その日の光景がよみがえる。
戦いの収まった戦場
いたるところに屍。血の匂い。死の静寂。
父にその場に連れてこられた幼いイタチは、その光景に動けず体が冷たくなっていくのを感じた。
木の葉の額宛をつけている忍。そうではない忍。
2度と動くことのないその者たちの表情は、どれも苦痛にゆがみ固まっていた。
誰一人として、望んで死んだ者はいない…
望まれて死んだ者もいない…
力で何かを解決しようと収めようとした結末…
その先に何があるのだろうか…
4歳という小さき体と心に、おさまりきらない感情がイタチを襲った。
「命は生まれ。命は、死ぬ…」
寂しげに。切なげに。ぽつりとこぼれた言葉。
「人は何のために生まれてくるのか…」
あの日、心に浮かんだ想いがよみがえる。
「争うためじゃない。そんなはずはない。そんなことはあってはいけない。人は皆幸せになるために生まれてくるはずだ。それはこの世に生を受けた者が唯一平等に与えられる権利だ。生まれ落ちたその瞬間は、誰もが同じようにそれを与えられる」
肯定されることを待つように黙したイタチに、水蓮はうなずく。
イタチは安心したような笑みを浮かべた。
「オレはその時心に決めた。この世から一切の争いをなくす。そのために誰よりも優れた忍になろうと」
イタチの想いは、里にとどまらず広く大きくすべてを見据えていたのだと水蓮は知る。
「初めてこの夢を口にしたのは、アカデミーに入った日だ。自己紹介で一人一人将来の夢を語った。誰も本気にはしなかったがな」
フッと小さく笑い、肩を抱く手で水蓮のほほをそっと撫でた。
「水蓮…」
瞳が真剣にきらめく。
「ここから先は誰にも話したことのない物だ」
話す側も、聞く側も、並みの覚悟では進めない…。
決意したイタチの表情にも、かすかな不安が見える。
そしてどこか懇願するような瞳の揺らぎ。
水蓮はそのすべてに、強いうなずきで応えた。
「聞かせて」
イタチもうなずきを返し、川の流れに目を向け、丁寧に大切そうに言葉を紡いだ。
「この世の一切の争いをなくす。その目的を達するためにオレは」
一度言葉を切り、静かに打ち明ける。
「オレは火影を目指した」
水蓮の脳裏に、過去にイタチの夢の中で見た火影姿のイタチがよぎった。
「この世の争いをなくすためには、まずは里を変えねばならない。そのためには火影になる必要があった。そこを目指し、まずは暗部に入り実績を上げ、里の中枢に地位を確立させる。そうして火影になる。そうすれば、他里の有力者たちとの会談の場も多くもてる。そこで違う里の忍同士の協力をよびかけ、実現させれば互いに勝ろうとする相克は解消されてゆく」
イタチは幼いころから誰よりも先を見据えていた。
「時間はかかるだろうが、それでいつか忍がいなくなればこの世から争いは消える。忍がいなければ戦う力を失うからな。火影は、オレにとってはこの夢を叶えるための通過点に過ぎなかった」
火影をも超えた存在…
何も起こらず里にいることができていたら…
イタチならきっとなれただろう…
水蓮の胸に悔しさが生まれた。
違う人生を歩むべき人だった…
その想いが溢れた。
「先の夢を目指してオレはアカデミーへと入学した」
イタチはゆっくりと順を追って話してゆく。
6歳でアカデミーに入学し、7歳で卒業。10歳で中忍となり、11歳で暗部へと入った。
そして12歳で暗部の分隊長。
めまぐるしく進められてゆくイタチの人生。
そこには想像を絶する痛みが、闇があった。
中でも、8歳で仲間の死を目の当たりにしたことは、水蓮にとっても衝撃的だった。
それがきっかけで写輪眼が開眼したことを聞き、その一件がイタチにとっていかに辛い物だったかがうかがえた。
それでも涙を流さず、一人その苦しみに耐えたのだと語るイタチは悲しげな眼で小さく笑った。
その後の中忍試験では、スリーマンセルが原則の中、ただ一人単独で試験を受け、すべての試験で他を寄せ付けない結果をたたきだし合格。
特に3次試験の対戦の場では、圧倒的な力を見せつける必要があったのだとイタチは言った。
そうすることで、観戦に来ている他里の【影】や大名たちに『木の葉にだけは手を出してはいけない』『木の葉にうちはイタチあり』と、知らしめなければいけなかったと…。
10歳。その幼さで彼はもう里を自分の手で、力で守るという自覚のもと生きていたのだ。
自身のその時とあまりにも次元の違う世界。
水蓮はそれを改めて痛感していた。
だがイタチの突出した才が、彼を悲しみの運命へと導いてゆく。
「父は、オレを一族と里とのパイプ役にするためにオレを暗部へ入れたいとの考えを口にした。違和感を感じた。暗部入りはオレの目的でもあった。だが里とのパイプ役とはどういう意味なのか。そう思った。里の上役には架け橋だと言われた。同じことだ。だが、うちは一族も木の葉の人間だ。同じ里で生きる者同士をつなぐ。意図してつながなければいけない。元々つながっているものではないのか。その関係性はいったい何なのか。木の葉とうちはは、並立する存在なのか。なぜ分けて考える必要があるのか。オレには分からなかった。オレはうちは一族だが、木の葉の人間だ。それは違った考えなのか…」
溢れ湧き出るイタチの疑問。苦悩。
それをずっと一人で抱えてきたのかと、水蓮はつないだままの手に少し力を入れた。
その手を握り返し、イタチは語り続ける。
「暗部へと入る前に、オレは実績をつけるという名目で任務を受けた。それは他里に情報を流しているスパイを暗殺するというものだった。木の葉の忍を殺すという任務」
スパイとはいえ、同じ里の人間。
里を愛するイタチにはどれほど辛かっただろう…
「妻も子供もいる男だった。子供は3歳と1歳。シスイと共に任務に当たり、その命を消した…。あの男が死に際にふかした煙草の煙がいまだに…記憶に残っている」
まるでこの場にその煙が立ったかのように、イタチは空を見上げた。
「そしてオレは暗部へと入った。だが、それが結果として火影への道を閉ざすことになった。クーデターを取り仕切っていた父は、オレの暗部入りをきっかけに、その実行を決めた。里の中枢にオレがかかわることで、深い情報を手に入れ、期を計り動く。そう決めたんだ…」
イタチの体が、少し震えた…
「オレの夢が、一族を破滅へと進ませるきっかけとなった」
…ちがう…
そう言いたかった。そう言ってあげたかった…
だが水蓮の口からは言葉が出なかった。
結果としてそうなったことに違いはないのだ…。
どれほど苦しかっただろう…
「オレはいったいどこへ向かっているのかとそう思った…」
水蓮は、初めて会った時のイタチの事を思い出していた。
『自分が何者なのか、わからなくなる時がある』
決してそんな弱音など吐かぬ人物だと思っていた。
自分の決めたことに一欠けらの疑問も不安も持たぬ強い人だと…そう思っていた。
だが、イタチは本当は誰よりも繊細でもろい一面を持った人だったのだ。
それでも強くあろうと自分を奮い立たせてきた。必死に。
「暗部に入り、里の一族への警戒を目の当たりにした。一族の居住地は里によって監視されていたんだ。いたるところに監視カメラが仕掛けられていた。それをモニターで監視する。それも暗部の任務だった」
「ひどい…」
思わず言葉がこぼれた。
同じ里の人間。そこにある確執。胸の奥が痛んだ。
「オレも信じられなかった。だが、里からしてみれば里を守るための処置…」
浮かべた小さな笑みに、いまだにその時のショックがぬぐい切れていないことがうかがえる。
イタチは少し考えるようなそぶりを見せ、水蓮をちらりと見た。
「その原因は九尾だ…」
「九尾が…」
イタチはうなずく。
「封印されていたはずの九尾が突如里に現れ里を襲い、甚大な被害をこうむった。その時疑われたのがうちは一族だ。九尾の力を操ることができるのは写輪眼のみ。それが一族への疑念を集めた。それゆえ、この事件の後そういった体制がとられた」
里の人々は九尾の事でうちは一族を疑い。疑われたうちは一族は里への不満を募らせた。
同じ里で暮らしていればいたるところで両者は顔を合わせる。
そのたびに負の感情が渦巻く。事態が悪化していくことが容易に想像でき、水蓮は気持ちと共に体が重くなるのを感じた。
「初代火影となった千住柱間の一族とうちは一族は、もともとは争いを続けてきた者同士だ。過去からの積年があった。そこに九尾の一件。一族の不満は募り溢れた」
それでも、うちは一族への疑念は確証のない物で、3代目火影の深い思慮もあり、強行的に居住地を調べたり、一族の誰かを尋問にかけるようなことはなされず、その監視体制も疑いを晴らすためという3代目による考えもあったのかもしれないと、イタチはそう言った。
「3代目は決して里に暮らすうちは一族を疑ってはいなかった。それは俺も同じだ。父も、そして他の一族の者も里を愛していた。歴史や政治的なものへの確執はあったが、木の葉はオレ達うちはにとっても故郷だ。故郷を愛する気持ちは何ら変わらない。故郷を守るために強くなり戦ってきた…」
里を守るためにうちはは力を求め、強くなり、戦ってきた。
その大きくなりすぎた力から里を守るために、木の葉はうちはを警戒し始めた…。
どちらも里を守りたい…
根底はそこにあるのに…
「想いは同じなのに…」
水蓮の胸の奥の痛みがどんどん強くなる。
その痛みをずっと抱えながら、イタチは両者の間で耐えてきたのかと息苦しさに襲われた。
「そうだ。どちらも同じだった。だが、うちは一族は【一族の誇り】に執着しすぎた。その枠にこだわりすぎた。そして里の対応が、さらにそれを膨張させた。そこに、【里側】【うちは側】という言葉が生まれた」
その言葉のはざまで、一族、そしてイタチは多くの中傷を受けてきたのだろうと、水蓮はその様子を脳裏にめぐらせる。
「暗部に入って、オレが里の上層部に求められた事。それは、一族の間で秘密裏に行われている会合での内容を里に流すこと。うちはの不穏な動きに感づいた上層部は、今まで以上に細かに監視し最悪の事態を避けようとした。3代目はただ純粋にそう考え、別の者はオレが里を裏切らぬか監視の手段として。そして、また別の者は【反旗の証拠】をつかみ【静粛】という名のもと一族を排除しようとしていた。それぞれに、里を守りたいという心のもとにな」
いくつもの絡み合う策略の中をイタチは生きてきた…
その奥にあるものは【里を守る】という想いただ一つなのに…
それをめぐる大きすぎる闇を、一身に受け戦ってきた…
重く、苦しく、辛い…
そして何より恐ろしい…
得体のしれぬ恐怖にその身を包まれ、水蓮の体が知らぬ間に震えだす。
それは、自分が感じている恐怖ではない。
イタチが感じてきた恐怖なのだと悟り、水蓮はその時のイタチの胸中を想い、たまらなくなり胸元にしがみつくようにして体を寄せた。
イタチはそっと水蓮の背中をさすり、震えがおさまるまで待つ。
だが、決して話すことをやめようとはしない。
水蓮はそこにイタチの想いを感じていた。
受け止められる…
そう信じてくれている…
受け止めてほしい…
そう求めてくれている…
その想いが水蓮の心を強くした。
少しして、水蓮の体の震えがおさまったのを確認し、イタチは再び話し出した。
「オレは里に監視されている事を一族には告げず、一族の会合の内容を里に流した。里の中枢である火影とつながれば、一族の暴走を止められる。そう考えた。だが、オレが里の情報を提供しないこともあり、一族の中にオレを疑う者が出始めた」
一族を守るための苦渋の決断が今度は一族の中に猜疑心を生んだ。
「お前は里と一族、どっちの味方なんだ。そう投げつけられた…」
フッと小さく浮かべたその笑みは、さみしく哀しげ。
「一族にとって、里は敵で、一族は味方。すでにその形は出来上がっていた。それでもあの時のオレは、まだ事は動いていない。まだ変えられる。そう思っていた。だが、もうすでに投げられた石は、坂道を転がり始めていたんだ…」
変わらず景色の中に浮かぶ蛍の光が一粒。イタチのほほを照らした。
それはまるで涙の一滴のように見えた。
いつもありがとうございます。
今回から真伝の流れに入ります(*^。^*)
誰にも語れなかったものを語る中で、私なりに感じたイタチの心情をうまく描ければいいのですが
(>_<)
何度も真伝を読んでは泣く日々です…。
そして夢に見るという(~_~;)
では、また次回に…。
いつも読んでくださり、本当にありがとうございます(^○^)